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銀河進化の解明につながる? これまでで最も遠い場所で、合体しつつある小さな2つの銀河と酸素、炭素、チリのセットを発見

2019年06月27日 | 銀河・銀河団
131億光年彼方の銀河に存在する酸素、炭素、チリから放射される電波が、アルマ望遠鏡による観測により検出されたんですねー

酸素、炭素、チリの3種類が揃った検出例としてはこれままでで最遠の記録。

そして確認されたのが、合体しつつある2つの小さな銀河の存在。
こちらも合体中の銀河としては、観測史上最遠になるようですよ。


重元素の生成と銀河の成長

138億年前にビッグバンで誕生した直後の宇宙には、水素とヘリウム、そして少量のリチウウだけが存在していて、宇宙で最初の恒星はこれらの元素から作られました。

その後、恒星内での核融合反応によって炭素や酸素が作られ、これらの重い元素は恒星の超新星爆発によって周囲にバラ撒かれることになります。

バラ撒かれた元素の一部は、互いに結びついて微粒子(チリ)を作り、元素やチリは水素やヘリウムとともに次世代の星の材料になっていきます。

このように元素の生成には、星の誕生と死というサイクルが存在しています。
なので、初期宇宙における酸素や炭素の発見は、それ以前の時代にどのような星が誕生して死を迎えたのかを知る手がかりになるので、盛んに観測研究が行われています。

また、星の大集団である銀河は、お互いに衝突、合体を繰り返して大きくなってきたと考えられていて、こうした銀河の進化史を明らかにすることも重要な天文学の課題になります。

今回、早稲田大学の研究チームがアルマ望遠鏡を使って観測したのは、ろくぶんぎ座の方向131億光年彼方に位置する(131億年前の宇宙に存在する)銀河“B14-65666”。

研究チームは、これまでにも宇宙誕生から数億年以内という初期宇宙の銀河を観測して、銀河の形成と成長の過程を明らかにする研究を進めてきました。

観測の結果、この銀河に存在する酸素、炭素、チリが放つ電波の検出に成功。

これまで、アルマ望遠鏡などによる観測で、他の遠方銀河でも酸素やチリの電波は検出されていました。
でも、3種類の物質が放つ電波が揃ってとらえられたものとしては、今回の観測が最も古い時代の(最も遠い)天体になるようです。
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合体銀河“B14-65666”の疑似カラー画像。
アルマ望遠鏡で観測したチリ、炭素、酸素の分布をそれぞれ赤、黄、緑で、
ハッブル宇宙望遠鏡で観測した星の分布を青で表している。


2つの銀河が衝突し合体しつつある

銀河“B14-65666”は、これまでに行われたハッブル宇宙望遠鏡による赤外線観測で、ほぼ同じ規模の2つの銀河で構成されていることが明らかになっていました。

今回の観測で確認されたのは、酸素、炭素、チリのいずれもハッブル宇宙望遠鏡が撮影した2つの銀河の位置に塊を形作って存在していたこと。

また、電波の波長の引き伸ばされ方を調べることで、2つの銀河が地球からほぼ同じ距離にあることが確かめられ、これらの銀河が実際に並んで存在していることもはっきりと示されることになります。

これら、複数のデータと解析の結果から分かってきたのは、この銀河が衝突・合体しつつあるということでした。
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アルマ望遠鏡による観測結果をもとに描かれた“B14-65666”のイメージ図。
さらに、研究チームが導き出したのは、2つの銀河に含まれる星の総質量が太陽約8億個分に相当すること。
天の川銀河はおよそ1000億太陽質量なので、“B14-65666”は非常に小さい銀河だと分かります。

その一方で明らかになったのが、この銀河では天の川銀河の100倍ほどのペースで星が生み出されていることでした。
これは、130億年以上昔の宇宙に存在する銀河の中では大きな値になり、同時代の一般的な銀河よりも星形成活動が活発だといえます。

そして、星形成が活発になる要因の1つとして挙げられるのが、銀河の衝突・合体なんですねー

銀河が衝突すると、それぞれの銀河に含まれていたガスが圧縮され、星が生まれやすい状況が作られます。

“B14-65666”は、2つの銀河が接するほど近くにあること、活発な星形成活動を起こしていることから、まだ小さな2つの銀河が互いに衝突し合体しつつあるところであると結論付けられることになります。

このような合体銀河は、これまでにも数多く見つかっていて、その中でも“B14-65666”は最古の(最も遠い)ものでした。

初期の宇宙に合体しつつある銀河“B14-65666”がとらえられたことは、銀河進化の歴史の始まりをひも解くという意味でも重要な成果になります。

これほど遠方の銀河からの酸素、炭素、チリを、初めて全部そろえることが出来たのは快挙といえます。
今後研究チームは、窒素や一酸化炭素分子を検出し、銀河の形成と進化や、その中での元素・物質の蓄積過程の解明を目指すそうですよ。


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