
4回目となる軌道修正を今月17日から3回に分けて実施します。
“あかつき”は現在、太陽の周りを回る軌道に乗っていて、
今年の12月7日に金星周回軌道に入ることを目指しています。
でも、現在のままで金星に接近すると、
太陽の重力の影響で、金星に落下するリスクがあるんですねー
そこで、このリスクを回避し、
また再投入後の観測に有利な軌道に修正するため、
7月17日から31日にかけて、
合計3回の軌道修正が行われることになりました。
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“あかつき”と金星、地球の軌道図。 今月の軌道修正には、それぞれ四角マークの位置に来る。 |
これまでに“あかつき”は、3回の軌道修正を実施していて、
今回で4回目になります。
これまで使われてきたのは、
壊れたと思われる主推進エンジンがある側(ボトム側)にある、
姿勢制御用エンジン4基。
でも今回は、高利得アンテナがある側(トップ側)にある
姿勢制御用エンジン4基が用いられるようです。
トップ側のエンジンは、
今年12月の再投入時にも用いられる予定になっていますが、
長時間の燃焼が行われた実績がありませんでした。
なので今回の軌道修正は、
その性能確認や特性を把握するための試験もかねているんですねー
軌道修正“DV4”
この4回目の軌道修正は“DV4”と呼ばれていて、
合計3回実施されます。
はじめの計画は、1回の噴射で“DV4”を実施するものでした。
でも、その後の検討で、噴射は計3回に分けられることに…
噴射を複数回に分けて、それぞれ少しずつ噴射するほうが、
リスクが小さくなると判断したそうです。
1回目の噴射(DV4-1)は7月17日に、2回目(DV4-2)は7月24日、
そして3回目(DV4-3)は7月31日に実施されることになります。
この3回の噴射で、
“あかつき”の速度の変化量は合計で秒速87メートルへ。
これによって12月7日に最適な軌道に入るための準備が、
整うことになるんですねー
それぞれの噴射の割合は、
“DV4-1”は94秒間で変化量が秒速約18メートル、
“DV4-2”が276秒間で秒速53メートル、
そして、これらを踏まえて“DV4-3”の噴射時間を、
決定することになります。
ただ、トップ側のエンジンの性能が、どれぐらい出るか不明なんですねー
もし性能が若干下がっているようなら、
2回目、3回目の噴射時間を変えたり追加で噴射することで、
対応するそうです。
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今回の軌道修正前後の軌道変化 |
噴射の結果が分かるのは、地上のアンテナで測定する必要や、
その測定に海外のアンテナを使う必要もあるので、
おおよそ“DV4-3”から3日後ぐらいです。
今回の軌道修正は、12月の金星周回軌道投入への再挑戦に向けて、
ここ数か月で最大の難所になりそうです。
日本初の金星探査へ
“あかつき”は日本初の金星探査機として、2010年5月21日に打ち上げられ、
2010年12月7日に金星を回る軌道へ投入されるはずでした。
でも、軌道投入に必要なエンジンの噴射中に、
“あかつき”の姿勢が乱れ、異常を検知した探査機のコンピュータが噴射を停止。
それにより“あかつき”は守られたものの、
噴射時間が短かったため、金星周回軌道への投入には失敗しています。
その後の調査で分かったことは、
燃料配管にあるバルブが詰まってしまい、
投入時に使うロケット・エンジンへ送り込まれる
燃料と酸化剤の比率が変わってしまったこと。
燃料(ヒドラジン)と酸化剤(四酸化二窒素)が反応して出来た、
硝酸アンモニウムの結晶によって詰まってしまったようです。
その結果、エンジンが異常燃焼を起こし、
破壊されたものと推定されています。
地上での実験でも、
実際にエンジンが破壊されることが再現されています。
今年12月に“あかつき”の再挑戦が成功し、無事に軌道に入ることができれば、
当初の予定よりも細長い軌道になります。
そうすると計画されていた、いくつかの観測は出来なくなります。
ただ、新たに観測が可能になる事柄も増えます。
“あかつき”の投入後約3か月をかけて、観測機器のチェックなどを行い、
2016年の春に遠金点高度を32万キロに下げ、そこから本格的な観測が始まります。
ミッション期間は、まず約2年間ほどと見込まれていて、
また探査機の状態によっては、最大4年まで延ばせる可能性があるそうです。
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