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ブラックホールから噴き出すジェットが銀河団に巨大な空洞を作っていた! そのエネルギーはこれまでの記録の5倍大きいようです。

2020年03月07日 | ブラックホール
X線と電波による観測から、へびつかい座銀河団に巨大な空洞が存在していることが確認されました。
この空洞を作った犯人は、銀河団の中心に位置している銀河に潜む超大質量ブラックホール。
空洞は、このブラックホールから噴出したジェットで形成されたとみられ、このエネルギー量はこれまでの記録より5倍も大きいそうです。


銀河団の空洞を生み出したもの

約3億9000万光年の彼方に存在するへびつかい座銀河団は、数千個の銀河や高温ガス、ダークマターが重力で結び付いた巨大な領域です。

そして、この銀河団の中心に位置する銀河には、超大質量ブラックホールが存在しています。

このブラックホールは周囲の物質を飲み込んでいるのですが、時折り大量の物質とエネルギーがジェットになって噴き出しています。

この銀河団をNASAのX線天文衛星“チャンドラ”が観測したのは2014年のことでした。
観測データからは、不自然に曲がった縁のような構造が銀河団内に見つかることになります。

当初考えられていたのは、ブラックホールから噴き出したジェットが銀河団内の高温ガスを削って、この構造が形成されたというもの。
観測により見えていたのは、巨大な空洞の壁の一部だと推測されていたんですねー

その後、空洞を作り出すのに必要とされるエネルギーの量が大き過ぎることが、計算により分かってきます。
その結果、この構造はブラックホールのジェットで作られたものでは無いと考えられるようになりました。
へびつかい座銀河団の疑似カラー画像(長さは280万光年)。ピンクがX線、青が電波、白(メイン画像)が赤外線データに対応。黒い十字の位置に銀河団中心の銀河があり、点線は空洞の縁を示している。
へびつかい座銀河団の疑似カラー画像(長さは280万光年)。ピンクがX線、青が電波、白(メイン画像)が赤外線データに対応。黒い十字の位置に銀河団中心の銀河があり、点線は空洞の縁を示している。


ブラックホールから放たれたジェット

この構造については、アメリカ・海軍調査研究所のチームが再度研究を進めています。
  研究に用いられたのは、ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”や西オーストラリアのマーチソン広視野電波干渉計、インドの巨大メートル波電波望遠鏡が観測したへびつかい座銀河団のデータ。

すると、“XMMニュートン”のX線観測で“チャンドラ”と同様に高温ガス内に縁が見つかるんですねー
さらに、電波観測から明らかになったのは、光速近くまで加速された電子から放出される電波で空洞が満たされていることでした。

これらの結果から、観測された構造は銀河団の高温ガス内の空洞の縁であることが確認され、この空洞を生み出すような非常に大量のエネルギーを伴ったジェットがブラックホールから放出されたことが示されます。

気になるエネルギーの量は、これまでに知られていた同種の現象の中では最大のもの。
5倍も大きく、観測史上最も大きいものになりました。

観測データから示されたのは、ジェットの噴出はおそらく数億年前に起こったものであること。
最近はジェットの噴出が止んでいるようです。
宇宙で見られた最大の爆発現象を解説する動画


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