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超新星1987Aによって作られたのはブラックホール? アルマ望遠鏡が発見したのは中性子星の兆候でした。

2020年08月10日 | 宇宙 space
1987年に出現した超新星1987Aによって作られたのは何か?
ニュートリノの検出により中性子星の可能性があったのですが、これまで探しても見つからなかったんですねー
今回、アルマ望遠鏡を使った観測と理論研究をもとに、超新星1987Aで中性子星が作られた可能性が見出されました。
もし、このことが正しければ、これまでに見つかった中で最も若い中性子星になるようです。


中性子星は温度の高いチリの集まりの中に隠れている

1987年2月のこと、天の川銀河から16万光年の距離にある矮小銀河“大マゼラン雲”に、巨大な星が一生の最期に起こした大爆発“超新星1987A”が出現します。

理論的に考えられるのは、この超新星爆発を質量の大きな恒星が起こしているので、その後には“中性子星”と呼ばれる超高温高密度の天体が残されるということ。
日本の実験装置カミオカンデが、この超新星爆発で生じたニュートリノを検出していたので、ブラックホールではなく中性子星が作られたのは確かなはずでした。

このため、超新星1987Aの出現以降には、多くの研究者によって中性子星探しが行われてきたんですねー
でも、これまでその確かな証拠は見つかっていませんでした。

2014年のアルマ望遠鏡による観測で、超新星1987Aが出現した場所にチリが存在することは、すでに明らかになっていました。

今回の研究では、このチリをアルマ望遠鏡による高い解像度で観測。
その結果明らかになったのが、超新星1987Aが出現した場所の中心近くに、周囲よりも温度の高いチリの集まりが存在することでした。

その場所は、中性子星が存在すると想定される場所と一致することになります。
アルマ望遠鏡による超高解像度観測で発見された、周囲より温度の高いチリの集まり(左)。右図の赤色は、アルマ望遠鏡が電波でとらえた冷たいガスとチリの分布。緑色はハッブル宇宙望遠鏡が撮影した可視光、青色はX線天文衛星“チャンドラ”がとらえたX線の広がりを示している。リング状の構造は、超新星爆発によって生じた衝撃波が宇宙空間を進み、周囲の物質と衝突しながら広がっている様子を示している。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), P. Cigan and R. Indebetouw; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton; NASA/ESA)
アルマ望遠鏡による超高解像度観測で発見された、周囲より温度の高いチリの集まり(左)。右図の赤色は、アルマ望遠鏡が電波でとらえた冷たいガスとチリの分布。緑色はハッブル宇宙望遠鏡が撮影した可視光、青色はX線天文衛星“チャンドラ”がとらえたX線の広がりを示している。リング状の構造は、超新星爆発によって生じた衝撃波が宇宙空間を進み、周囲の物質と衝突しながら広がっている様子を示している。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), P. Cigan and R. Indebetouw; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton; NASA/ESA)
超新星残骸の中心に温度の高いチリの集まりがあったこと、それらが電波を出しているということは、その中に熱源があるはずです。

そう、中に隠れているのは探していた中性子星だと考えることができます。

一方、不思議だったのが、このチリの集まりの明るさ… 中性子星にしては明るすぎたんですねー
そんなときに発表されたのが、非常に若い中性子星であればこの明るさになりうる っという論文でした。

つまり、中性子星によってチリの集まりが加熱されているということなります。


これまでに発見された中で最も若い中性子星

理論的予測とは、中性子星の位置と温度に関するものです。

シミュレーションで予測されているのは、超新星爆発によって中性子星が秒速数百キロもの速度ではじき出されること。

アルマ望遠鏡が発見した温かいチリの集まりは、周囲のリング中心よりもわずかにズレた位置にあり、爆発から30年余りのうちに中性子星が高速で移動したという予測と一致していました。

温度に関しては、超新星爆発から間もない時期の中性子星の温度は500万度と予測されていて、観測で推測される塵の温度を説明するには十分でした。

中性子星は、超高温高密度の天体で、直径は25キロほどと考えられています。

超新星1987Aによって中性子星が生まれたとすれば、わずか33歳なので、これまでに発見された中で最も若い中性子星になります。
この次に若いのは超新星残骸“カシオペアA”にある中性子星で年齢は330歳。

もし中性子星そのものを直接観測できたとしたら、今回の研究結果の正しさが証明できるはずです。

ただ、現在の中性子星は超新星残骸のチリやガスに覆われていて、そのものを見ることはできません。
塵やガスが晴れ上がるまでには、まだ数十年かかると考えられているようです。


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