さそり座の1等星アンタレスの高分解能観測を行ってみると、星表面のすぐ上にある彩層と星から流れ出すガスに至るまで、ガスの広がりと温度が明らかになってきたんですねー
この観測結果は、アルマ望遠鏡とVLAという2つの電波望遠鏡の高い感度と解像度のおかげ。
アンタレスの彩層は非常に厚く、その温度は太陽の彩層よりかなり低いようです。
星の一生で晩年にあたる赤色超巨星のアンタレス
今回、アイルランド・ダブリン高等研究所のチームが観測したのは、さそり座の1等星アンタレス。
アルマ望遠鏡とアメリカ国立電波天文台のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を使って、極めて高い分解能で観測は行われています。
オリオン座のベテルギウスと同じく、アンタレスも星の一生で晩年にあたる“赤色超巨星”と呼ばれるタイプの星になります。
星全体が大きく膨張していて表面温度は低く、星の中心部では核融合反応の燃料をほとんど使い尽くした状態。
やがては中心核が自らの重力でつぶれ、超新星爆発に至る運命にあります。
恒星風が放出される仕組み
赤色超巨星の表面からは“恒星風”と呼ばれる大量のガスが宇宙空間に流れます。
このガスには、星の内部で作られた様々な重元素が含まれていて、こうした元素が生命の材料にもなります。
なので、赤色超巨星から放出されたガスがどのように宇宙空間に拡がるかを知ることは、生命の起源を解明することにもつながるんですねー
ただ、恒星風がどのような仕組みで放出されるのかは、いまだ完全には解明されていません。
なので、地球に最も近い(約550光年)赤色超巨星の一つであるアンタレスは、大気を詳しく観測するのにもってこいの存在。
恒星風の謎を解く上でも非常に重要な天体といえます。
アンタレスの彩層は分厚く低温
研究チームは、アルマ望遠鏡で波長0.7~4ミリの電波を使い、アンタレスの表面近くの様子を調査。
さらに、VLAではやや波長の長い7ミリ~10センチの電波を使って、アンタレスの大気の外層を調べています。
ちなみに、今回得られた画像は、太陽以外の恒星の電波画像としては、これまでで最も解像度が高いものになりました。
恒星はガスからなる球体なので、固体の天体のようなはっきりとした表面はありません。
そこで、入った光の強さが恒星本体のガスに吸収・散乱されて約1/3にまで減る深さの場所を便宜的に“表面”として、これより深い不透明な部分を“光球”、これより浅く比較的透明な部分を“恒星大気”と呼んでいます。
このため、星のサイズは観測する電波によって変わってしまうんですねー
可視光線で観測すると、アンタレスは太陽の700倍の直径を持っていることが知られています。
でも、アルマ望遠鏡とVLAの観測結果からは、アンタレスの周囲のガスはもっと広大な領域に広がっていることが分かります。
VLAが観測した長波長の電波では、アンタレスの大気は星自体の半径のおよそ12倍の範囲にまで広がっていました。
彩層は光球のすぐ上の部分で、電離水素のHα線など様々な輝線が見られます。
太陽の彩層は皆既日食の時には赤い縁取りのように見えますが、太陽以外の星の彩層を電波で詳しく調べることに成功したのは今回が初めてのことでした。
観測の結果明らかになったのは、アンタレスの彩層は光球の2.5倍の領域にまで広がっていること。
太陽の彩層の厚みが光球の200分の1であることと比べると、アンタレスの彩層がいかに分厚いかが分かります。
また、太陽の彩層の温度が約2万度なのに対して、アンタレスの彩層は最高でも3500度と、過去の観測に比べてもかなり低いことも分かります。
アンタレスやベテルギウスのような“赤色超巨星”は不均一な大気を持っていると考えられます。
こうした星の大気は、異なる温度を表す違った色の点で描かれた点描の絵のようなもの。
ほとんどの点は電波で見ることができる“ぬるい”ガスですが、赤外線望遠鏡でしか見えない低温の点や紫外線で見える高温の点もあります。
ただ、今のところ、これらの点を一つ一つ見分けることはできません… 将来の研究における挑戦ですね。
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アンタレスの彩層は非常に厚く、その温度は太陽の彩層よりかなり低いようです。
星の一生で晩年にあたる赤色超巨星のアンタレス
今回、アイルランド・ダブリン高等研究所のチームが観測したのは、さそり座の1等星アンタレス。
アルマ望遠鏡とアメリカ国立電波天文台のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を使って、極めて高い分解能で観測は行われています。
オリオン座のベテルギウスと同じく、アンタレスも星の一生で晩年にあたる“赤色超巨星”と呼ばれるタイプの星になります。
星全体が大きく膨張していて表面温度は低く、星の中心部では核融合反応の燃料をほとんど使い尽くした状態。
やがては中心核が自らの重力でつぶれ、超新星爆発に至る運命にあります。
恒星風が放出される仕組み
赤色超巨星の表面からは“恒星風”と呼ばれる大量のガスが宇宙空間に流れます。
このガスには、星の内部で作られた様々な重元素が含まれていて、こうした元素が生命の材料にもなります。
なので、赤色超巨星から放出されたガスがどのように宇宙空間に拡がるかを知ることは、生命の起源を解明することにもつながるんですねー
ただ、恒星風がどのような仕組みで放出されるのかは、いまだ完全には解明されていません。
なので、地球に最も近い(約550光年)赤色超巨星の一つであるアンタレスは、大気を詳しく観測するのにもってこいの存在。
恒星風の謎を解く上でも非常に重要な天体といえます。
アンタレスの彩層は分厚く低温
研究チームは、アルマ望遠鏡で波長0.7~4ミリの電波を使い、アンタレスの表面近くの様子を調査。
さらに、VLAではやや波長の長い7ミリ~10センチの電波を使って、アンタレスの大気の外層を調べています。
ちなみに、今回得られた画像は、太陽以外の恒星の電波画像としては、これまでで最も解像度が高いものになりました。
恒星はガスからなる球体なので、固体の天体のようなはっきりとした表面はありません。
そこで、入った光の強さが恒星本体のガスに吸収・散乱されて約1/3にまで減る深さの場所を便宜的に“表面”として、これより深い不透明な部分を“光球”、これより浅く比較的透明な部分を“恒星大気”と呼んでいます。
このため、星のサイズは観測する電波によって変わってしまうんですねー
可視光線で観測すると、アンタレスは太陽の700倍の直径を持っていることが知られています。
でも、アルマ望遠鏡とVLAの観測結果からは、アンタレスの周囲のガスはもっと広大な領域に広がっていることが分かります。
VLAが観測した長波長の電波では、アンタレスの大気は星自体の半径のおよそ12倍の範囲にまで広がっていました。
彩層は光球のすぐ上の部分で、電離水素のHα線など様々な輝線が見られます。
太陽の彩層は皆既日食の時には赤い縁取りのように見えますが、太陽以外の星の彩層を電波で詳しく調べることに成功したのは今回が初めてのことでした。
観測の結果明らかになったのは、アンタレスの彩層は光球の2.5倍の領域にまで広がっていること。
太陽の彩層の厚みが光球の200分の1であることと比べると、アンタレスの彩層がいかに分厚いかが分かります。
また、太陽の彩層の温度が約2万度なのに対して、アンタレスの彩層は最高でも3500度と、過去の観測に比べてもかなり低いことも分かります。
アンタレスやベテルギウスのような“赤色超巨星”は不均一な大気を持っていると考えられます。
こうした星の大気は、異なる温度を表す違った色の点で描かれた点描の絵のようなもの。
ほとんどの点は電波で見ることができる“ぬるい”ガスですが、赤外線望遠鏡でしか見えない低温の点や紫外線で見える高温の点もあります。
ただ、今のところ、これらの点を一つ一つ見分けることはできません… 将来の研究における挑戦ですね。
アンタレスの大気構造のイラスト。最も内側に光球があり、その上に下部彩層・上部彩層がある。彩層の外には宇宙空間へと流れだす恒星風の加速領域が広がる。下段の軸は太陽系のサイズとの比較。アンタレスの光球は火星軌道を飲み込むほど大きく、彩層は木星軌道と土星軌道の間まで広がっている。(Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello) |
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