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モバライダー mobarider

オリオン座大星雲の巨大星は分子雲同士の衝突で作られていた

2018年07月08日 | 宇宙 space
巨大星は希少な天体であり、膨大な放出エネルギーによって宇宙の進化に多大な影響を与える存在でもあります。

また、巨大星は進化の最後に超新星爆発を起こしてブラックホールを形成するとされ、その際に鉄などの重元素を生成し宇宙に供給する役割を果たしています。

なので、巨大星の起源を解明して形成メカニズムを理解することは、銀河の進化、宇宙の進化を解明する上で大きな意義があるんですねー

冬の夜空を彩る有名な星雲の1つであるオリオン座大星雲M42の中心にも、“トランペジウム”と呼ばれる四重星を含めたおよそ10個の巨大星が存在していて、これらの星からの強い光によってオリオン座大星雲が輝いています。

オリオン座大星雲は地球から1200光年と比較的近距離にあるので、古くから盛んに研究が進められてきました。

でも、星雲や巨大星の起源はこれまで解明されていませんでした。


分子雲はいくつある

今回、名古屋大学の研究チームはオリオン座大星雲を取り巻く目に見えない“分子雲”の観測データを詳細に解析します。
  分子雲は水素分子を主成分とする銀河を漂う冷たいガス。
  星は分子雲から生まれるので、星の起源を知る上で分子雲は重要な天体になる。


そして、分子雲の運動状態の解析から、1つだと考えられえていた分子雲は2つあることを突き止めます。

わずかながら互いに異なる速度を持っている、形の違う2つの分子雲が重なって1つに見えていたんですねー
○○○
2つの分子雲の分布。
2枚とも同じ方向を示しているが、
左は太陽系に対しておよそ9キロ秒の速度で遠ざかっている分子雲、
右はおよそ14キロ秒の速度で遠ざかっている分子雲を表している。
このことから、2つの分子雲は衝突していて、その最中のある瞬間を目撃していると考えることができるのですが、これだけの情報では断定することはできませんでした。


衝突を裏付けるもの

そこで研究チームは、この2つの分子雲の空間分布を慎重に比較。

すると、パズルの2つのピースのようにお互いを補う“相補的な分布”が見つかります。
○○○
2つの分子雲の“相補的な分布”。
背景の青い分布が9キロ秒の分子雲を、
黄色い等高線が14キロ秒の分子雲を示している。
分子雲衝突の数値シミュレーションでは、大きさの異なる2つの分子雲を衝突させると、小さな雲が大きな雲に突入する際に、小さな雲と同じサイズの空洞が大きな雲の中にできる様子を見ることができます。

実際に観測された分子雲でも、大きな分子雲に「穴」が空いていて、この「穴」と小さな分子雲の分布はぴたりと一致していたんですねー

この一致が“相補的な分布”で、2つの分子雲の衝突を強く裏付けるものになりました。
○○○
オリオン座大星雲を作った分子雲衝突のイメージ(上)と、
特徴的な2つの“相補的分布”を作った衝突のイメージ図。

超音速の衝突

これらの結果から考えられることは、オリオン座大星雲の分子雲は10万年前におよそ7キロ秒の速度で衝突したということ。

この10万年という時間がオリオン座大星雲にある巨大星の年齢と一致。

このことが意味しているのが、分子雲衝突が引き金となって巨大星が形成され、星雲中心にあるトラペジウムなどの巨大星を生み出したということでした。

分子雲同士が超音速で衝突することにより、衝突面でガスが急激な圧縮を受け、その中で通常では誕生しないような巨大な星が生まれたんですねー

衝突は現在も続いていて、将来さらに多くの星を生み出すと予測されています。

今回の研究成果は、星雲や巨大星だけでなく、100憶年以上前の球状星団や宇宙の初代星の形成にも適用できる可能性があるそうです。

銀河の進化、宇宙の進化を解明する上で重要な手がかりになるといいですね。


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