宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

材料はあるのに星が生まれない楕円銀河

2014年06月09日 | 宇宙 space
これまで、年老いた軽い星ばかりで構成される楕円銀河は、星の材料になる低温ガスが不足しているので、新しい星が作られないと考えられてきました。

でも、赤外線天文衛星“ハーシェル”の観測により、
星の材料となる低温ガスを豊富に含む楕円銀河が6つ見つかったんですねー

低温ガスが豊富にあるのに、なぜ新しい星が生まれないのか?

その謎を探るために、X線天文衛星“チャンドラ”や地上の望遠鏡でも、
これらの銀河を観測したんですねー

すると、X線を放射する高温ガスや赤外線を放つ低温ガス、それらの中間の温度を持つガスが、
どれも似たような分布をしていることが明らかになり、高温ガスが徐々に冷えて、これらの銀河に見られる低温ガスの源となっているらしいことが、まず分かりました。

ただ低温ガスはそれ以上冷えず、星の形成には至らない…
その理由を明らかにするのが、低温ガスが豊富な銀河に見られるガスの乱れなんですねー
(画像下段)
低温ガスを豊富に含む楕円銀河(下段)は、
そうでない銀河(上段)に比べて、ガスの乱れが見られる。
低温ガスが、中心ブラックホールに引き込まれることで、
爆発的な物質放出が起こり、周囲のガスの冷却を妨げている。

この乱れは、低温ガスの塊が銀河中心ブラックホールに引き込まれることによって、
爆発的な物質の放出が起こったことを示しています。

爆発的な物質放出の際にエネルギーのほとんどは、銀河中心部の低温ガスに渡ってしまいます。
そのため、低温ガスの冷却が止まり、星の形成が妨げられるようです。

一方で低温ガスのない銀河の中心部では、高エネルギー粒子のジェットが電波で観測されています。

これは、中心のブラックホールに、高温ガスが引き込まれることで発生しているものになり、
X線観測では、ジェットが周囲の高温ガスにぶつかってできた巨大な穴も見られました。

中心の高温ガスが乱れなくまとまって見えるのは、
ジェットが銀河中心部の広い範囲のガスを吹き払って、ガスの密度が減り、
ガスの塊や乱れが生じにくい状態になっているからなんだとか。

これらの銀河では高温ガスが冷えることなく、低温ガスも存在しないので、やはり星の形成が起こらないんですねー