宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

アルマ望遠鏡が解き明かす、銀河中心ブラックホールの活動

2013年10月27日 | 宇宙 space
3000万年前と110億年前の銀河の中心あるブラックホール。

これらのブラックホールから噴き出すジェットを、
アルマ望遠鏡で観測し、サブミリ波で詳しく調べることで、
ブラックホールの活動が銀河の進化に与える影響が分かってきたんですねー


時代で変わるブラックホールの活動

ほぼ全ての銀河の中心には、
太陽の数十億倍にもなる超大質量ブラックホールが存在します。

非常に遠方にある、つまり宇宙の歴史においてはるか昔の銀河では、
こうしたブラックホールは周囲の物質を大量に吸い込むと同時に、
大きなエネルギーを放ちます。

高温に熱せられたガスが明るく輝き、
一部のガスがジェットとして激しく噴き出すなど、
とても活発な活動を見せるんですねー

でも、現在に近くなるにつれ、
こうしたブラックホールがガスを吸い込むペースは落ちていき、
昔ほどの活発さは無くなってしまいます。


穏やかなブラックホールと小さなジェット

とけい座の方向およそ3000万光年彼方に棒渦巻銀河“NGC 1433”があります。

この銀河の中心ブラックホールは比較的穏やかで、
アルマ望遠鏡で観測したところ、
ブラックホールに物質が流れ込むようすを示す分子ガスの渦巻構造や、
わずか150光年の長さのジェットが見つかりました。


“NGC 1433”と、その中心部で渦巻く分子ガス
(青:ハッブル宇宙望遠鏡、赤・黄:アルマ望遠鏡)

銀河中心ブラックホールで、
これほど小さい分子ガスジェットが見つかったのは、初めてのことなんですねー

星の材料となる分子ガスがジェットとして銀河中心から放出されると、
その周辺では星が作られにくくなります。

なので今回、“NGC 1433”中心にあるような穏やかなブラックホールにも、
分子ガスのジェットが見つかったことで、
ブラックホールが銀河の進化に与える影響の一端が明らかになったということです。


遠方の激しいブラックホール

アルマ望遠鏡を用いた銀河中心ブラックホールの研究発表はもうひとつあり、
こちらは、とても遠くの銀河で激しい活動を見せるブラックホールです。

いて座の方向110億光年もの彼方にある、
銀河“PKS 1830-211”の中心ブラックホールの観測では、
ジェットの根元に大量の物質が流入して、
ジェットが瞬間的に激しくなるようすがとらえられました。

銀河“PKS 1830-211”のブラックホール周囲を電波で見た明るさ。
重力レンズ効果によりジェットで明るい部分が2つの像として見えている。

アルマ望遠鏡で見えるのは、サブミリ波(電波の一種)での明るさなので、
ガンマ線観測衛星“フェルミ”のデータでも調べたところ、
ガンマ線でもはっきりとした変化の兆候がとらえられたんですねー

ブラックホールジェットから発せられるガンマ線とサブミリ波で、
これほどはっきりと連動的な変化が見られたのは初めてのことでした。

今回取り上げた研究結果は、
「近傍」と「遠方」の超巨大ブラックホールから噴き出すジェットの観測研究において、
アルマ望遠鏡が、確かな一歩を踏み出したということの表れなんですねー