宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

地球近傍天体の発見数が1万個に到達

2013年07月29日 | 宇宙 space
“地球近傍天体(NEO)”とは、地球の公転軌道に4500万キロ以内まで近づく軌道を持つ天体のことです。
数メートルクラスのものから、最大では幅41キロの小惑星“Ganymed”まで、そのサイズはさまざまあります。

また、軌道を計算してみると、将来地球に衝突し危害を及ぼす可能性を排除しきれていない“NEO”は、
特に“潜在的に危険な小惑星(PHA)”とも呼ばれています。

こうした“NEO”の通算発見数が、いよいよ新たな桁に突入したんですねー

記念となる1万個目の天体は、ハワイでの自動小天体サーベイ“パンスターズ計画”により6月18日に見つかった、“小惑星2013 MZ5”です。
幅はおよそ300メートルで、将来地球に衝突する危険性は無いことが分かっています。









パンスターズ1望遠鏡で発見された
“小惑星2013 MZ5”(赤い矢印)





ただ、地球にダメージを与えうる天体を、全て探しつくしたと言えるには、これまでの発見の少なくとも10倍の数が必要だとか…

また、発見された1万個の天体のうち、
地球全体にダメージを与えうる1キロ以上のサイズのものは、およそ1割です。
この1割の中には、今のところ衝突の危険性があるものは含まれておらず、このサイズで未発見のものは数十個程度だと考えられています。

さらに小さい140メートルサイズのものは1万5000個あると推測されていて、
そのうち30%近くが発見済みだそうです。
そして、人間の居住地域に甚大な被害を及ぼす、30メートルサイズのものは百万個以上と考えられ、
こちらはほとんどが未発見のままなんですねー

1898年に“NEO”が最初に発見されたからの100年間は、たった500個ほどしか発見されていませんでした。
でも、その数が飛躍的に増加したきっかけがNASA地球近傍天体プログラムの開始だったそうです。

NASAによる地球近傍天体プログラムは、
  マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所の“LINEAR(リニア)計画”
  ジェット推進研究所の“NEAT(ニート)計画”
  アリゾナ大学の“スペースウォッチ(現カタリナ・スカイ・サーベイ)”
  アリゾナ大学の“LONEOS(ロニオス)計画”(ローウェル天文台)
との連携支援で始まり、
各探査プログラムでの観測結果が、国際天文学連合の小惑星センターに報告され、天体の軌道計算と符号の付与が行われるという仕組みです。

立ち上げからの10年あまりで、
同プログラムは、「1キロ以上の“NEO”の90%を見つける」という目標を達成しています。

さらに2005年12月には、アメリカ連邦議会から140メートル以上の“NEO”の90%を発見し、カタログ化するよう要請されました。

これが達成されれば、前触れなしに天体衝突が起こる確率を、サーベイ計画実施以前のレベルの1%まで絞り込めるんですねー
衝突の危険性が事前に分かれば、最新の技術で対策を講じる余地があるので、人類へのリスクを減らすことになります。

20年程前は“NEO”の発見は、まだまれな出来事でした。
でも今では、1日に3個のペースで発見されています。

“NEO”以外の小惑星帯にあるものも含めて、月におよそ数十万個もの天体観測報告が小惑星センターに寄せられています。

そして、NASA中心のサーベイ以外にも、世界中の研究者・アマチュア天文家の活動が、“NEO”の発見追跡にひじょうに大きな貢献をもたらしているんですねー