地球のように生命に適した環境を持つ惑星を見つける方法はいくつも提案されていますが、そのほとんどが現状の技術では困難なものといえます。
そこで、今回の研究では、地球のような環境の惑星を見つける新たな指標として、大気中の“二酸化炭素の少なさ”と“オゾンの検出”を提案しています。
これらは惑星の表面に大量の液体の水、そして大気中に酸素が含まれていることを示す強力な証拠となるもの。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を駆使すれば観測可能だと、研究チームでは考えているようです。
地球と似たような環境を持つ惑星の探査
地球以外の天体に独自の生命はいるのでしょうか?
私たちが今のところ知っている生命誕生の実例は地球のみです。
なので、科学者は主に地球と似たような環境を持つ惑星を見つけることに取り組んでいます。(※1)
液体の水と酸素は、特に大型の生命にとって必須の物質になります。
では、このような“第2の地球”ともいえる環境を持つ惑星があるとしたら、現在の技術でそれを見つけることはできるのでしょうか?
例えば、表面に存在する大量の水は、湖や海として陸地の一部を覆います。
水面は日光を反射しやすいので、惑星の自転に伴って瞬間的な反射のフラッシュが発生するはずです。
実は、このような光は土星の衛星タイタンでは観測に成功しています。(※2)
でも、地球から遠く離れた惑星からの反射光を観測することは、技術的に極めて困難なことといえます。
同様に、大気中の豊富な酸素を観測することも、技術的には困難なことが分かっています。
現在の技術でも観測可能な指標
今回の研究では、地球とよく似た惑星である金星や火星との違いを比較し、地球のような環境を持つ惑星について、現在の技術でも観測可能な指標を探しています。
まず、研究チームが注目したのは、大気中の二酸化炭素の少なさでした。
地球大気中の二酸化炭素は約0.04%に過ぎませんが、金星や火星はその9割以上が二酸化炭素で構成されています。
なぜ、これほどの違いがあるのでしょうか?
それは、地球には大量の二酸化炭素を吸収する活動があるからです。
地球で二酸化炭素を吸収するものと言えば、植物を思い浮かべますよね。
でも、海は全世界の植物よりもはるかに多くの二酸化炭素を吸収しています。
また、プレートテクトニクスによって海水が地下深くまで引き込まれるので、二酸化炭素は岩石の形で閉じ込められてしまいます。
このことも、死後の分解の過程で二酸化炭素を放出する植物とは異なる点です。
研究チームでは、地球の歴史を通じて海水が吸収してきた二酸化炭素の総量が、地球の90倍もの圧力がある現在の金星の二酸化炭素の総量に匹敵すると推定。
つまり、もし二酸化炭素が極端に少ない惑星が見つかった場合、その表面に膨大な液体の水が存在するだけでなく、地下から物質や熱を供給するプレートテクトニクスが存在する可能性もあるということになります。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測では、すでにいくつかの惑星の大気で二酸化炭素を見つけています。
これは、裏を返せば、二酸化炭素が見当たらない惑星も発見可能なことになります。
このことに加え研究チームが考えているのは、大気中にオゾンが検出されれば、惑星が地球に似た環境であることを示す別の証拠になるということ。
オゾンは酸素と紫外線の作用で生じる物質で、生命にとって有害な紫外線を遮断する能力があります。
加えて、オゾン分子は酸素分子と比べて、望遠鏡での観測によって発見しやすい特徴的なシグナルを示します。
つまり、オゾンは酸素に富んだ大気の間接的な証拠になる訳です。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測に期待
研究チームでは、二酸化炭素が少ない一方でオゾンを含む大気を持つ惑星が、地球と似たような環境を持つ惑星だと考えています。
特に両方が揃っている場合は、もしかすると光合成による二酸化炭素の吸収と酸素の放出があり、植物が存在することを示しているのかもしれません。
このため、以下の3段階に分けた太陽系外惑星の観測スケジュールがあれば、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、地球と似たような惑星を発見することが可能だと考えています。
1.約10回のトランジット(※3)の観測。
二酸化炭素はジェームズウェッブ宇宙望遠鏡にとって検出しやすいので、二酸化炭素が豊富な大気ならこの観測回数で検出が可能です。
2.二酸化炭素が少ない大気を持つ惑星を中心とした約40回のトランジットの観測。
無いことの証明は、有ることの証明よりも難しいので、より多くの観測データが必要になります。
3.オゾンの検出を目的とした約100回のトランジットの観測。
検出しやすいとはいえ、オゾンの濃度ははるかに低いので、この程度の観測回数が必要になります。
さらに、研究チームは“トラピスト1”の観測実績が、この検出方法のロードマップになると考えています。
“トラピスト1”は約40光年彼方に位置する惑星系で、いくつかの惑星で二酸化炭素が検出されています。
“トラピスト1”自体には地球と似た惑星はないのかもしれません。
でも、他の惑星と観測データを比較するためのちょうどよい指標になるはずです。
この観測スケジュールを用いれば、パラダイムシフトになるような何か大きな発見が、数年以内にあるのかもしれませんね。
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そこで、今回の研究では、地球のような環境の惑星を見つける新たな指標として、大気中の“二酸化炭素の少なさ”と“オゾンの検出”を提案しています。
これらは惑星の表面に大量の液体の水、そして大気中に酸素が含まれていることを示す強力な証拠となるもの。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を駆使すれば観測可能だと、研究チームでは考えているようです。
この研究は、バーミンガム大学のAmaury H. M. J. Triaudさんたちの研究チームが進めています。
図1.“トラピスト1”惑星系のイラスト。惑星の表面に液体の水が存在するかどうかは、一般的に恒星からの距離に依存する。ただ、実際に液体の水が存在することを証明するのは困難になる。(Credit: NASA & JPL-Caltech) |
地球と似たような環境を持つ惑星の探査
地球以外の天体に独自の生命はいるのでしょうか?
私たちが今のところ知っている生命誕生の実例は地球のみです。
なので、科学者は主に地球と似たような環境を持つ惑星を見つけることに取り組んでいます。(※1)
※1.深海や地中に微生物が見つかっているので、地球とかけ離れた環境の惑星でも、微生物ならば地球外生命がいるのかもしれません。でも、微生物より大型な、そして究極的には知性を持つ生命が地球とかけ離れた環境にいるかどうかは、現時点では科学というよりもSFの範疇になってしまうので、地球と似た環境の惑星を探すことに比べて、あまり真剣には検討されていません。
地球と似たような惑星といっても様々な指標がありますが、多くの科学者が探しているのは“惑星の表面に大量の液体の水あること”および“酸素に富む大気を持つこと”という条件を満たす惑星です。液体の水と酸素は、特に大型の生命にとって必須の物質になります。
では、このような“第2の地球”ともいえる環境を持つ惑星があるとしたら、現在の技術でそれを見つけることはできるのでしょうか?
例えば、表面に存在する大量の水は、湖や海として陸地の一部を覆います。
水面は日光を反射しやすいので、惑星の自転に伴って瞬間的な反射のフラッシュが発生するはずです。
実は、このような光は土星の衛星タイタンでは観測に成功しています。(※2)
でも、地球から遠く離れた惑星からの反射光を観測することは、技術的に極めて困難なことといえます。
同様に、大気中の豊富な酸素を観測することも、技術的には困難なことが分かっています。
※2.タイタンの表面に存在する液体は水ではなく低温で液化したメタンになる。
現在の技術でも観測可能な指標
今回の研究では、地球とよく似た惑星である金星や火星との違いを比較し、地球のような環境を持つ惑星について、現在の技術でも観測可能な指標を探しています。
まず、研究チームが注目したのは、大気中の二酸化炭素の少なさでした。
地球大気中の二酸化炭素は約0.04%に過ぎませんが、金星や火星はその9割以上が二酸化炭素で構成されています。
なぜ、これほどの違いがあるのでしょうか?
それは、地球には大量の二酸化炭素を吸収する活動があるからです。
地球で二酸化炭素を吸収するものと言えば、植物を思い浮かべますよね。
でも、海は全世界の植物よりもはるかに多くの二酸化炭素を吸収しています。
また、プレートテクトニクスによって海水が地下深くまで引き込まれるので、二酸化炭素は岩石の形で閉じ込められてしまいます。
このことも、死後の分解の過程で二酸化炭素を放出する植物とは異なる点です。
研究チームでは、地球の歴史を通じて海水が吸収してきた二酸化炭素の総量が、地球の90倍もの圧力がある現在の金星の二酸化炭素の総量に匹敵すると推定。
つまり、もし二酸化炭素が極端に少ない惑星が見つかった場合、その表面に膨大な液体の水が存在するだけでなく、地下から物質や熱を供給するプレートテクトニクスが存在する可能性もあるということになります。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測では、すでにいくつかの惑星の大気で二酸化炭素を見つけています。
これは、裏を返せば、二酸化炭素が見当たらない惑星も発見可能なことになります。
このことに加え研究チームが考えているのは、大気中にオゾンが検出されれば、惑星が地球に似た環境であることを示す別の証拠になるということ。
オゾンは酸素と紫外線の作用で生じる物質で、生命にとって有害な紫外線を遮断する能力があります。
加えて、オゾン分子は酸素分子と比べて、望遠鏡での観測によって発見しやすい特徴的なシグナルを示します。
つまり、オゾンは酸素に富んだ大気の間接的な証拠になる訳です。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測に期待
研究チームでは、二酸化炭素が少ない一方でオゾンを含む大気を持つ惑星が、地球と似たような環境を持つ惑星だと考えています。
特に両方が揃っている場合は、もしかすると光合成による二酸化炭素の吸収と酸素の放出があり、植物が存在することを示しているのかもしれません。
このため、以下の3段階に分けた太陽系外惑星の観測スケジュールがあれば、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、地球と似たような惑星を発見することが可能だと考えています。
1.約10回のトランジット(※3)の観測。
二酸化炭素はジェームズウェッブ宇宙望遠鏡にとって検出しやすいので、二酸化炭素が豊富な大気ならこの観測回数で検出が可能です。
※3.地球から見て系外惑星が主星(恒星)の手前を通過(トランジット)する現象。
2.二酸化炭素が少ない大気を持つ惑星を中心とした約40回のトランジットの観測。
無いことの証明は、有ることの証明よりも難しいので、より多くの観測データが必要になります。
3.オゾンの検出を目的とした約100回のトランジットの観測。
検出しやすいとはいえ、オゾンの濃度ははるかに低いので、この程度の観測回数が必要になります。
さらに、研究チームは“トラピスト1”の観測実績が、この検出方法のロードマップになると考えています。
“トラピスト1”は約40光年彼方に位置する惑星系で、いくつかの惑星で二酸化炭素が検出されています。
“トラピスト1”自体には地球と似た惑星はないのかもしれません。
でも、他の惑星と観測データを比較するためのちょうどよい指標になるはずです。
この観測スケジュールを用いれば、パラダイムシフトになるような何か大きな発見が、数年以内にあるのかもしれませんね。
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