薬屋のおやじのボヤキ

公的健康情報にはあまりにも嘘が多くて、それがためにストレスを抱え、ボヤキながら真の健康情報をつかみ取り、発信しています。

慢性胃炎:交感神経の高ぶりで胃への血流は2段構えで絞られます

2017年10月12日 | 胃の病

慢性胃炎:交感神経の高ぶりで胃への血流は2段構えで絞られます
(最新更新:2018.6.21)

 このブログで最近一番アクセスが多いのは2015.3.10投稿の「胃薬を飲めば飲むほど胃は悪くなる(付記:お茶も薬のうち)」です。あらためて慢性胃炎の方がいかに多いのかを感じています。コメントやメールでの相談もずっと続いています。その後、相談者の大半の方が心因性のものであると気付き、2016.9.24に少々きついですが、「胃の調子が少々おかしくてもヒーヒー言うんじゃない!」と題して記事にしました。これでもって、慢性胃炎は心因性のものであることがご理解いただけたのではないかと思っています。
 しかし、そうであるからこそ、つまり心因性であるからこそ、その治療はたいそう難しいものとなります。安易に心療内科にかかって向精神薬でも飲まされようものなら、慢性胃炎をかえって悪化させた上に、心まで蝕まれてしまう恐れさえ出かねません。

 じゃあ、どうすればいいか。
 容易にはこれといった解決法が出てきませんが、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」と申しますように「敵=慢性胃炎」とはどういうものか、「己=生活習慣・精神」はどんな状態にあるのか、まずはこれをしっかり捉えなければいけないでしょう。
 「己=生活習慣・精神」を知るについては、2016.9.24の記事「胃の調子が少々おかしくてもヒーヒー言うんじゃない!」で触れましたから、本稿では「敵=
慢性胃炎」について、別サイドから、どういうものなのかを探ってみることにします。

 慢性胃炎の症状は、説明するまでもないですが、むかつき、吐き気、げっぷ、痛み、膨満感など様々な胃(時には下腹部も)の不快感が、人によっては強弱を伴って全部であったり、一部であったりし、これが恒常的に続いています。
 そして、慢性胃炎は胃下垂(胃の入り口の位置は正常なのですが胃袋が引っ張られて下に伸びている状態をいいます)を伴うことが多いようです。
 胃下垂の原因は、胃での消化が悪くなり、それによって食物が長時間滞留することにより引き起こされるのが一般的で、慢性胃炎と同時並行で起きると言えましょう。

 健全な胃から分泌される胃液は、1日に約2リットルと言われています。
 胃液と一口に言いますが、主成分は次の3つです。
 ・食べ物を殺菌する胃酸(=塩酸)
 ・タンパク質を分解する消化酵素(=ペプシノーゲン:不活性な前駆体であり、これが分泌後に塩酸と反応して活性型のペプシンに変化する)
 ・胃粘膜を守る胃粘液
 胃粘膜は、強い酸性を示す胃酸によって炎症を起こしやすいですし、ペプシンによって胃粘膜も消化されます。よって、急性胃炎で胃袋に穴が空くということも起こります。
 それを防いでくれているのが胃粘液なのですが、食べ物を殺菌・消化するために胃は蠕動運動をしますから、健全な胃であっても不完全にしか防げません。
 よって、胃粘膜はどんどん作り替えられていて、3日もすれば新しい粘膜に入れ替わるようです。この作り替え(新陳代謝)は、夕食を胃で消化しきって胃が空っぽになった後の夜中に盛んに行われ、朝には概ね完了するようですが、十分なエイジング(慣らし、熟成)を必要とし、健全な胃の持ち主にあっても、できれば朝食を抜くと、十分な厚みのある、より健全な胃粘膜をキープすることができます。

 慢性胃炎の方は、胃液のこれら3成分の出が悪くなっていますし、かつ、胃の蠕動運動も弱々しいものになっています。なお、胃粘液の出方が胃酸や消化酵素に比べて相対的に少ないと、胃粘膜を荒らして痛みを強く感ずることになります。

 以上のことからして、慢性胃炎の方は胃全体の働きが極端に悪くなっているのでして、胃が“眠らされている”状態になっています。
 健康な人の場合、たっぷり食事を取ると、動きたくなくなり、眠くなります。これは血液が消化系(特に胃:蠕動運動のため)へ多く送り出され、手足の筋肉や脳への血流がすぼめられますから、特に、脳細胞が酸素不足になって、眠くなるのです。
 ここらあたりの調節をするのが自律神経です。神経は、大きく2分され、随意的な運動を支配する体性神経と不随意運動(意志に基づかない自動的に行われる運動)を担う自律神経があります。そして、自律神経は、交感神経と副交感神経という相反する働きを指示する神経系に分かれ、その絶妙なるバランスでもって正常な生命活動を続けることができるのです。

 さて、ここで全身に張り巡らされている血管と神経の働きを、その生い立ちから眺めてみることにしましょう。
 この地球上に動物が発生してから血管と神経は順次できてきました。動物の体は、その性質によって大きく2分されます。一つは内臓系で、腸管(吸収)・腎管(排出)・血管(循環)の3つで成り立っています。もう一つは体壁系で、外皮(感覚)・筋肉(運動)・神経(伝達)の3つで成り立っています。原始的な動物の場合、そうそう動き回らなくても餌は容易に得られましたから、最初に発達したのは内臓系で、体壁系の発達はどれほどのものもなく、主従関係は、内臓系が主で、体壁系が従でした。これはしごく当然なことで、生きていくためには内臓系をしっかりさせ、餌を獲得する体壁系の機能はどれだけも必要としないからです。
 動物も脊椎動物の発生そして哺乳類の誕生へと進んでくると、餌を得んとする体壁系の運動機能が必然的に発達します。それに伴い、内臓系に属していた血管なのですが、血管からの酸素と栄養を体壁系が求め、血管が内臓系から体壁系へ伸びていき、酸素と栄養が体壁系へも順次回されるようになります。これだけに止まらず、餌を獲得するための神経が発達するに伴って、神経は内臓系にも伸びていき、先ずは血管を支配し、より多くの酸素と栄養が体壁系に回されるよう操作するようになります。次に、腸管・腎管を神経が支配し、吸収・排出の働きをコントロールするようにもなったのです。
 こうして、主従関係が逆転したのですが、正常な生命活動を続けるためには、この状態は危うい力関係です。動物がすこやかに生きていくためには、やはり内臓系が健全なのが基礎になりますからね。哺乳類に至って、いつしか主従関係が逆転してしまった原因としては、餌が容易には得られない厳しい環境がきっと恒常化したからでしょうね。

 そもそもの起源が体壁系にあった神経ですが、今ではヒトに顕著ですが自律神経が体全体を支配し、様々な臓器、器官の働きをコントロールするようになってしまいました。
 神経は、本来、“餌を見つけた!筋肉を動かして捕りに行こう”とか“天敵が来た!筋肉を動かして逃げよう!”という体性神経だけで十分であったのですが、これだけでは発見が遅れるし、取り逃がしたり捕まってしまうからと、感覚を研ぎ澄ませ、俊敏な動きが可能となるよう、より濃密に酸素を外皮(感覚)・筋肉(運動)に供給するために、つまり、血管を操作して内臓系への血流を絞り込み、体壁系への血流を十分に確保する働きを担う自律神経わけても交感神経を発達させたと言えましょう。
 元々内臓系であった血管は、こうして自律神経わけても交感神経によって完全に支配されます。副交感神経が働くのは、獲物がたっぷり獲れたときや天敵から逃げおおせたとき、つまり満足感や安心感があるとき、リラックスして楽しいというとき、ということになります。そうしたときは、交感神経を高ぶらせる必要がないですからね。

 ここで、表題にしました「交感神経の高ぶりで胃への血流は2段構えで絞られます」について説明しましょう。
 心臓から送り出される動脈血は、先ずは体壁系3系統の大動脈に流された後、下行大動脈となって内臓へ向けて送り出されます。前者が体壁動脈であり、後者が内臓動脈です。この分岐点あたりで、どちらに多く血液を送るかが交感神経節によって調節されます。下行大動脈は順次枝分かれして各内臓に供給されるのですが、その中で胃袋へ行く腹腔動脈にあっては、その分岐点で血流の絞込みを強烈にする機構ができています。腹腔動脈入り口の左右に大きな塊=腹腔神経節があり、それが血流の絞込みを行うのです。なお、こうした神経節は、腹腔動脈に続いて枝分かれする上腸間膜動脈(主として小腸へ)、その下の下腸間膜動脈(大腸へ)、腎動脈(腎臓などへ)にも用意されていて、必要に応じて交感神経節が血流の絞込みを行っています。

 このように、胃への血流は2段構えで絞られますから、交感神経の高ぶりが延々と続くとなると、胃への血流は極端に絞られ続けることとなり、食べ物が胃に入ってきても消化はままならず、長時間滞留するしかなくなるのです。
 胃を健全にするには、まずもって胃への血流を大きくしてあげて、血液中にたっぷりある酸素でもって胃の機能を正常化させ、つまり、胃液の分泌を盛んにさせ、胃粘膜の新陳代謝を促進させねばなりません。
 そのためには、交感神経の高ぶりを鎮めないことには何ともならないのです。
 そして、胃の蠕動運動を盛んにしてあげる必要があるのですが、これには、胃への血流を大きくしてあげることのほかに、休みっぱなし、抑えられっぱなしの副交感神経をよく働くようにしてあげるしかありません。
 交感神経は「闘争と逃走の神経」とも呼ばれています。ストレス社会にあって仕事や家庭で大きな悩み事を抱え続けていると、日夜「闘争と逃走」の状態にあり、ずっと交感神経優位の状態になってしまい、眠っている時間帯でさえ熟睡できず、夢見も悪く、副交感神経は抑えられっぱなしになっています。

 どうしたらいいか。
 つまるところ、自分で心のケアをするしかない、ということになります。リラックスして楽しい気分になれば、交感神経は抑えられ、副交感神経が働き出すのですからね。
 なお、小腸や大腸への血流は、胃ほど強くは絞られないようですが、血流の絞り方は胃と同様に2段構えになっていますから、消化吸収が滞りますし、大腸の蠕動運動が不十分となって便秘がちになったりします。
 交感神経が高ぶりやすい方は性格によるところが大きいようで、ベテランの解剖学者、三木成夫氏(故人)は、「屍体解剖してみますと、交感神経系が非常によく発達している人と、あるかないかわらない人と、これくらい個人差の甚だしいものはありません。」 とおっしゃっておられます。
 でも、あきらめる必要はありません。心の持ち方は訓練次第でいくらでも変えることができ、副交感神経優位の生活を楽しむことも可能なのです。
 このブログのカテゴリー「心に安らぎを」「心に安らぎ・トイレ掃除」「心の病からの脱却」「笑い話&回文物語」をお暇な時間にお読みになってください。 

 

(2018.1.18 追記)
 慢性胃炎の方は胸やけを訴えられることが多いのですが、その真因は胃酸の逆流ではないことを知りましたので、そのことについて解説しました。
 → 胃酸の逆流で逆流性食道炎が起きるなんて大間違い !?
 

(2018.3.13追記)
 胸やけを解消する意外な方法があることを知りましたので、記事にしました。
  太田胃散が胸やけに効くわけは意外なところにあり

 

(2018.6.21追記)
(参考記事)本稿の中で、福田稔著『実践「免役革命」爪もみ療法』を一部引用しましたが、“爪もみ療法”は、交感神経を沈め、副交感神経を高めますから、慢性胃炎の方におすすめしたい治療法です。下記をご覧ください。
  実践「免疫革命」“爪もみ療法”のすすめ。いろんな病気が改善しますよ。

 


コメント    この記事についてブログを書く
« 首・腰タオル枕健康法(三宅... | トップ | 秋の夜長 夜ふかしのすすめ(... »

コメントを投稿

胃の病」カテゴリの最新記事