延命治療を受けないためのリビングウィル(死の間際にどんな治療を望むかをあらかじめ示した書)を書く
(最新更新 2018.12.4)
「1日で治る患者を1日で治す医者は病院を首になる。1日で治る患者を1年引き延ばせば院長になれる。」というブラック・ジョークがあります。医師の間では知られたことのようでして、これ、まんざらウソではなさそうです。
もう一つのジョーク、『「最近「予防医学」が全盛ですが、その実態は「“患者を呼ぼう”医学」。医者の“おいしい”お客様にならないよう気をつけましょう。』と言っておられるのは、小生と同い年(昭和23年生まれ)の近藤誠医師で、氏は慶応大学医学部“講師”の肩書きのままで、孤軍奮闘40年間頑張っておられますが、病院を首になっても仕方がない行動を取っておられます。
そして、氏曰く:医者を40年やってきた僕が、いちばん自信をもって言えるのは「病院によく行く人ほど、薬や治療で命を縮めやすい」ということです。…「信じる者は救われる」と言いますが、医者を簡単に信じてはいけない。
そして、「本書では、医療や薬を遠ざけ、元気に長生きする方法を解説していきます。」と、表紙の裏面で言っておられます。その本は、「医者に殺されない47の心得」(2012年12月 アスコム)です。
本書の内容については、このブログで、その一部を引用しながら、2013.5.6『「免疫力ではがんを防げない」とおっしゃる近藤医師、でも…』で記事にしましたので、興味がお有りな方はご覧ください。
その記事の中でも少し触れましたが、近藤誠医師は、本書を執筆するにあたって、巻末でご自身のリビングウィルを紹介なさっています。
その少し前の部分から引用しましょう。
どんな延命治療を希望しますか?
リビングウィルのことが、最近よく話題になります。自分の死のまぎわにどういう治療を受けたいかを、判断能力のあるうちに文書にしておくことです。
日本では、リビングウィルにはまだ法的な力はありませんが、書いておくことで、意識を失ったあとも、家族や医師に、延命治療についての自分の意思を伝えられます。
「鼻腔チューブ栄養のような、強制的な栄養補給は一切不要」「人工呼吸が1週間続いて意識が戻らなかったら装置をはずしてほしい」「植物状態になっても、できるだけ生き続けたい」など、自分で説明できなくなったときの「どう死にたいか」の希望を、なるべく具体的に書いて、身内の同意をもらい、毎年更新していきます。
よい機会なので、倒れて病院に連れ込まれたとき用のリビングウィルを書いてみました。家人や知人がわかるところに保管します。あなたも、書いてみませんか?
近藤誠のリビングウィル
いっさいの延命治療をしないでください。
私は今日まで、自由に生きてきました。
64歳まで、好きなことに打ち込んで、幸せな人生でした。
そして、自分らしく人生を終えたいと思っています。
今、私は意識を失っているか、呼びかけに少し反応するだけだと思います。
すでに自力では、呼吸もほとんどできないかもしれません。
このまま命が尽きても、何も思い残すことはありません。
だから、決して救急車を呼ばないでください。
すでに病院にいるなら、人工呼吸器をつけないでください。つけられているなら、はずしてください。
自分で飲んだり食べたりできないなら、無理に、口に入れないでください。
点滴も、チューブ栄養も、昇圧薬、輸血、人工透析なども含め、延命のための治療を何もしないでください。すでに行われているなら、すべてやめてください。
もし私が苦痛を感じているようなら、モルヒネなどの、痛みをやわらげるケアは、ありがたくお受けします。
今、私の命を延ばそうと力を尽くしてくださっている方に、心から感謝します。しかし、恐れ入りますが、私の願いを聞いてください。
私はこの文章を、冷静な意思のもとに書き、家族の了承を得ています。
いっさい延命治療をしないでほしい。
この最後の願いを、どうぞかなえてください。
決して後悔しないことを、ここに誓います。
2012年12月7日
住所
自筆署名 歳 印
証人署名
さて、小生と同い年の近藤氏がこのようなリビングウィルをお書きになったのですから、小生も誕生日が来て65歳の「老人」になった記念すべき日に、リビングウィルをしたため、女房に証人署名してもらい、その写しを娘と息子に渡しておくことにしました。
その文面をどうするかですが、基本的には近藤氏のそれを真似させていただき、次のとおりとしました。
(以下の書は長すぎるし、目に着かないとの指摘を受け、2018年版から表題に「一切の延命治療をお断りします」と書き加えることにしました。)
三宅和豊のリビングウィル「一切の延命治療をお断りします」
今、私は意識を失っているか、呼びかけに少し反応するだけだと思います。
既に自力では、呼吸もほとんどできないかもしれません。
でも、このまま命が尽きても、何も思い残すことはありません。
だから、決して救急車を呼ばないでください。
1時間程度様子を見て、何とか反応したら、私の言うことを聞いてやってください。
無意識、無反応が続くようでしたら、近所のお医者さんに往診に来てもらってください。
くれぐれもお願いしますが、決して病院へは搬送しないでください。
いかなる延命治療も、一切受けたくないのです。
既に病院に搬送されているなら、お医者さん方にお願いがあります。
一切の延命治療をしないでください。
人工呼吸器を付けないでください。付けられているなら、外してください。
点滴、昇圧薬、輸血、人工透析なども含め、延命のための治療は、一切何もしないで
ください。既に行われているなら、全て止めてください。
そして、栄養点滴、チューブ栄養など、一切の栄養補給を行わないでください。
ただし、もし私が苦痛を感じているようでしたら、モルヒネなどの痛みをやわらげるケア
は、是非お願いします。
今、私の命を救おうと懸命に頑張っておられる方々に心から感謝します。
しかし、恐れ入りますが、私の最後の願いを聞いてください。
「延命治療につながることは一切しないでください。」
私はこのリビングウィルを、年に1回、冷静な意思のもとに書き改め、家族そして私の
子供たちの了承を得てきています。
私は還暦過ぎから今日まで、いつこの世からおさらばしても良いように生きてきました。
それから10年、70歳まで好きなことに打ち込むことができ、実に幸せな人生でした。
そして、できることなら、このままピンピンコロリと人生を終えたいと願っています。
関係する皆様方に対し、私を延命治療しないがために、私が早々にあの世に逝くこと
になっても、私の臨終に家族や子供たちが立ち会うことができなくても、決して私は後悔
していないことをここに誓います。
2018年9月10日
住所 岐阜県羽島郡岐南町三宅5-246
(電話 本人*** 妻***)
自筆署名 (70歳) 印
証人署名 妻 印
写し配布先:住所氏名 娘 東京都杉並区***
****
息子 埼玉県川口市***
****
これを今日の誕生日にしたためたところですが、この文面ですと、近藤氏も同様ですが、毎年書き改める必要があります。少々面倒ではありますが、何年も前に書いたリビングウィルでは効力が弱まりましょうから、誕生日には、これまで生かされてきたことに感謝しつつ、リビングウィルを作成し直すことを年中行事にしていくつもりです。
(2018.9.10 追記)
もう5年もこれを毎年更新し、女房もこの記事を書いた翌年からリビングウィルを作成してきています。少々面倒になってきましたが、やはり毎年更新せにゃいかんでしょう。
なお、女房の分は病名「慢性心不全」を冒頭に入れ、より分かりやすくしました。
そうしないと、医者、家族に強引に治療開始を押し切られるかもしれないと不安視していました。近いうちに、意思表示を決定せねばと思っていました。
この投稿は大変参考になります。自分なりに慎重に考えたいと思います。
小生、無駄な延命行為はまっぴらですし、命根性もそれほど汚いとは思っていませんが、まだ書き記すまでには至っていません。
しかし、先祖は水飲み百姓で、親父が専業農家から薬屋を興し、小生が途中で脱サラし2代目。この道はまだ20年の若造です。
慶応大学はアカデミックな大学のようで、近藤医師がご自身の著で書いておられましたが、その良き環境があるから置いてもらえるとのこと。京都大学原子力研究所の小出裕彰助教と同様でしょうね。でも、ご両人とも出世はできませんでした。2人とも「悪い子」過ぎたようです。