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酸っぱいもの、苦いものを食べない食生活は健康を害します

2017年12月14日 | 漢方栄養学

酸っぱいもの、苦いものを食べない食生活は健康を害します

 中医学(漢方)は何もかも5分類する“五行論”の世界です。よって、漢方に登場する味は、「酸味、苦味、甘味、辛味、塩味(正しくは鹹(かん)」の5つの味だけです。
 読んで字の如しの味ですが、その定義は通常の感覚とは若干違いがあります。「甘味」は、砂糖などの甘さのほか、よく噛んで甘さが生ずる御飯や旨味を持つ肉も一般的に「甘味食」品になります。また、「鹹味」は、塩気のほか“にがり”で代表される“えぐみ”も含まれます。
 この五味をバランスよく摂取すると体にいいということになりますが、季節によって強弱を付けるのがミソとなり、強調すべきものは「春は酸味、夏は苦味、土用(四季の変わり目)は甘味、秋は辛味、冬は塩味」です。
 また、五味はそれぞれの臓器を潤すこととなり、臓器も季節との関わり(臓器が特に働く時期がある)があり、それを含めて表示すると次のようになります。

 春=肝=酸味、夏=心=苦味、土用=脾=甘味、秋=肺=辛味、冬=腎=塩味

 ここに掲げた五臓は、読んで字の如しの部分もありますが、脾と腎はだいぶ違いがありますので、それを説明しておきましょう。
 脾は、脾臓を指すのではなく、消化吸収の要という意味になり、臓器としては胃と膵臓と考えていいです。土用は農作業が忙しく、力仕事をせねばならないから御飯をたくさん食べ、胃と膵臓に十分働いてもらう、ということになります。
 腎は、腎臓だけではなく、周辺臓器の生殖器も含み、腎精と言って、命の源という意味になります。

 さて、現在の食生活を五味の観点から見てみると、大きな偏りが生じています。
 とにかく「甘味」が断然に多いことです。ご飯に麺やパンといった穀類、芋類、肉や魚、これら全部が「甘味」食品です。加えて、砂糖が入った菓子や食後に食べる甘いデザート。さらには、果物さえ酸っぱさがなくなって、甘さが強いものに品種改良されてしまっています。
 ひどい場合、毎日、こうした「甘味」食品しか食べないという方もみえます。
 次に、“塩分は摂りすぎです。減塩しなさい。”と、やかましく言われ、「塩味」が抑えられすぎる傾向にあります。例えば、家庭料理においては味噌汁を全く作らなかったり、梅干や漬物を食卓に置かなかったりしています。これでは“命の源”が脆弱となり、元気が出なくなります。(ただし、加工食品や外食産業は、保存性の向上と素材の悪さを隠すために「塩味」をきつくしていることがけっこうあり、こうしたものに偏食すると塩分の過剰摂取となる傾向にありますが。)
 3つ目の「辛味」については、子供は抑えすぎの感がします。「辛味」は覚醒作用があり、活動的にしてくれますから、子供が元気よく動き回るには必須のものです。でも、大人となると両極端となり、激辛を好む人が出てきますが、これは味覚感覚がマヒしてしまっているからでしょう。これでは興奮しすぎとなってしまいますし、肝臓にさわります。もっとも、古来より子供の頃から激辛に馴染んでいる民族であば生体反応がそれに適合しており、さほど問題にはならないでしょうが。

 残りの2つ、「酸味」と「苦味」は近年どんどん味わうことが減ってきています。
 幼い子供は必然的にこれを嫌います。というのは、基本的に、「酸味」は“腐ったもの”の味であり、「苦味」は“毒のあるもの”の味ですから、動物は皆そうですが、この2味は直感的に避けるのです。幼い子供にも、この直観力は備わっています。
 ヒトは、文明化社会になってから、それが進めば進むほどに本来のヒトの食性からどんどん離れた食事をするようになり、五行論(五味もその一つ)が完成した2千年前の中国においてさえ、すでにそうした食事になっていました。
 こうした食生活においては、ヒトの消化器官では食べ物を完全消化することは難しく、まずは「酸味」が求められることになります。つまり“発酵食品”です。ヒトが食べても安全であるばかりでなく、腸内細菌の働きによって消化吸収の助けをしてくれる、発酵によって酸っぱさが生じたもの、これが重要なものとなったのです。
 また、酢の物を食すようになったのですが、これはミネラル不足を解消する効果があることから取り入れられたもので、食品中の不溶性のミネラルを酸が溶かし出し、吸収しやすくすることによります。ミネラルの存在を知り得たのは、まだ最近のことですが、その昔、酢の物にすれば、味わい深くなっておいしくなる(ミネラルの味をそう感じた)とともに元気になること(ミネラルの充足)を体が知ったからでしょう。

 最後の5つ目の味、「苦味」は、毒であるとともに薬になります。ヒト本来の食性から離れた食事と、文明化によりヒト本来の原始的な生活を取り得なくなったことによって、ヒトは皆、体のあちこちで不具合が生じてきたのです。2千年前の中国においてさえ、すでにそうなってしまっていたのです。
 臓器のどこかに無理が掛かって、頻繁に特定の臓器に機能亢進(高ぶり)を起こしたり、体のあちこちで炎症を起こしたりすることが、子供には少ないものの大人になれば必然的に多くなります。年を食えば、特に炎症が高じてきます。
 ここで、薬が必要となり、機能亢進を抑え、炎症を鎮める「苦味」が求められるようになったのです。「苦味」があれば、こうした不具合に薬として効くのです。そして、「苦味」は弱った胃には逆に健胃薬として働いてくれます。
 ときに子供も体調不良をきたすことがあり、昔は、そうしたときには子供にも「苦味」を味わせ、それでもって体調を改善させ、「苦味」に慣らさせてきました。また、幼少から、体にいいからと、フキノトウなり魚のはらわたを少しは食わせて、将来的に必要となる「苦味」に慣らさせていったのです。

 以上の五味は、科学的根拠なしで長年の経験でもって培われてきた食の基本であるのですが、自然科学が急発展した今日、次々と理にかなったものとして認知されてきています。その一部はここまでの説明で併記したとおりです。

  “肝心な”味、「酸味」と「苦味」の不足は、「酸味=肝」「苦味=心」ですから、肝臓と心臓の働きに大きな支障を及ぼすことにもなります。
 まず「酸味」ですが、漬物、特に梅干には酸っぱさの成分としてクエン酸が多く含まれていますし、酸っぱく感じる果物はほとんどがクエン酸によるものです。また、お酢の主成分は酢酸ですが、体内でクエン酸に変換されます。
 肝臓はエネルギー消費が最も多い臓器で、つまり、エネルギー産生を盛んに行っており、それに不可欠なものがクエン酸です。よって、酸っぱいものを摂ると肝臓の働きが円滑になり、疲労感も取れてくるのです。
 これでもって「酸味は肝臓を潤す」という理にかなった説明ができましょう。
 次に「苦味」ですが、「苦味が心臓を潤す」という直接的な科学的根拠は残念ながら乏しいのですが、前述した「機能亢進を抑え、炎症を鎮める」作用があることは確かで、夏は日が長く、その昔は活発に動き回りましたから、オーバーワークになりがちで心臓に大きな負担がかかったことでしょうから、そうした作用が求められたがゆえに「苦味=心」とされたものと思料されます。

 いまや飽食時代。加えて高度文明社会になって科学技術の大発展により、あまりにも体を動かさなくなってしまいました。
 これからは、一部の例外を除いてほとんどが「甘味」食品である三大栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)の摂取を大幅に減じ、“肝心な”味、「酸味」と「苦味」をうんと摂らないことには、栄養(五味)バランスが崩れ、生体恒常性の維持も難しくなってきます。
 市場に出回る食品、野菜や果物でさえそうですが、「酸味」と「苦味」を減じたものになってきていますし、なによりも子供の食のしつけができておらず、子供が好むものしかあたえないという風潮になっていますから、その子供たちが大きくなっても、その偏食傾向から、味わったことのない「酸味」や「苦味」はまず口にしなくなります。
 こうして、これからますますこれが顕著となっていき、栄養(五味)バランスが完全に崩れ、将来のヒトは、ますます虚弱、病弱な体となり、元気さを失っていくことでしょう。
 その表れとして、一昔前までは子宝を授かるには「腎=塩味」の充実で済んでいたものが、いまや、その前に“肝心な”味、「酸味」と「苦味」を充実させないことには子宝は授からないと言われるようになりました。
 ここで、ご注意。「酸味はヨーグルト」とばかり、ヨーグルトを毎日食すと大変なことになります。古来からの食文化の大きな違いにより、日本人には全く合わないのが牛乳であり乳製品なのですから。
 参照過去記事:ヨーグルトは体にいいのか悪いのか、その答えは明らかです

 では、どんな食事をすればいいでしょうか。それは、日本人なら日本の古来からの食事であり、一言で言えば“おふくろの味”です。分かりやすく語呂合わせすると、“おかあさんだいすき”という料理になります。
 「おふくろの味」の語呂合わせ料理
  お   おから料理
  か   かぼちゃの煮付け
  あ   和え物
  さん  サンマの塩焼き
  だ   大根の煮物
  い   芋の煮っころがし
  す   酢の物
  き   きんぴら

 詳しくは、次の過去記事をご覧ください。
 
復権!「おふくろの味」 語呂合わせ“おかあさんだいすき” 孫の嫁入り支度に

 この料理を作るに当たっては、食材として「酸味」と「苦味」を意識されるといいでしょう。次の語呂合わせも参考になります。
 オサカナスキヤネ(お魚好きやね)
 オ  お茶
 サ  魚
 カ  海藻
 ナ  納豆
 ス  酢
 キ  きのこ
 ヤ  野菜
 ネ  ねぎ・たまねぎ

 参考までに、「老けすぎ 顔 あれていた」という食事ではいけません。このブログでも紹介しましたが、それはどんな食事か? 発案者の原典ブログをご覧になってください。
 食育講師の高田恭代のブログ

 


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