薬屋のおやじのボヤキ

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立冬から冬、何を食しますか。まずは塩味が重要です。

2024年11月06日 | 漢方五季の食養

立冬から冬、何を食しますか。まずは塩味が重要です。

 11月7日頃(2024年は11月7日)に立冬を迎え、暦の上ではこれより冬に入ります。そして、1月16日頃に冬は終わり、1月17日頃から大寒(1月20日頃)を挟んで2月5日頃の立春の前日までが冬の土用です。
 漢方の世界では、正確に言うと以上のようになり、広くとらえても、冬は11月7日頃から2月4日頃までと、通常の感覚より1か月前倒しされています。
 外気温からすると、“これはおかしい”となりますが、通常の植物は、これがぴったり当てはまります。草は種を残し、木は葉を枯らして立春の頃まで冬眠するのです。
 植物を食べる動物も、この時期は食べられるものが少なくなりますから、生体は休眠状態になり、あまり体を動かさなくなって、クマのように冬眠するものまででてきます。
 人もそうです。紀元前の初期古代ローマの暦がそれを物語っています。1年は3月から始まり、12月で終わってしまい、暦のない期間(1月、2月)が61日間もあったのです。
 その間は、人(農民)は何もせず、地中海性気候特有の曇天が続く時期でもありますから、じっと家の中にこもっていたことでしょう。
 その当時、中国には、既に丸1年の暦がありましたが、人(農民)の活動は古代ローマとどれだけも違いがなかったと思われます。冬は、格別にせねばならない農作業はなく、冬晴れが続く地域では、日向ぼっこでもしていたことでしょう。
 ところが、現代社会は、小売・サービス業の就労者が増え、12月は師走と言われるように、1年で一番忙しく走り回らねばならないですし、1月は初売りセールで忙しく、2月は年度末の決算を控え、目標達成のために売上確保に躍起となります。
 これでは、生体の生理現象と逆行し、動物の生き方としては決して望ましいことではなく、心身にどうしても無理がかかります。この無理が年々積み重なって、野生動物は基本的に病気しないのに対して、人だけがやたらと病気する動物になってしまった大きな要因になっていると思われてしかたありません。
 今日の西欧では、夏季に長期間のバカンスを取りますが、日本人であれば、“心身のオーバーホール”のため、冬の時期に長期間のバカンスを取って温泉に行き、“湯治”するのが一番良いのですが、こうした風習は滅多にみられません。
 冬季の湯治が一番!
 そう思っている鼠年生まれの小生ですが、1年365日、こま鼠のように(後期高齢者となった今はノソノソと)動き回っており、“心身のオーバーホール”は、残念ながら1泊2日の湯治旅行を冬の期間に2、3回するだけでして、これでは“烏の行水”であって何の効果も得られません。でも、1年間に知らず知らず溜まった精神的ストレスを抜くにはどれだけか効果的でして、これは欠かさないようにしています。

 冬は、本来は何もかも休めてあげる時期ですから、これに逆らった生活はできるだけ避けねばなりません。一番簡単な方法は早く寝て遅く起きることです。お日様にお付き合いなさってください。つまり、冬は毎日睡眠時間を十分に取り、体を休めるに限ります。
 そして、天気がいい日には「ひなたぼっこ」がおすすめです。ビタミンDは紫外線を浴びることによって容易に生成されます。ビタミンDは骨作りだけでなく、免疫力増強と免疫の適正化(免疫暴走の抑制)に欠かせません。特に冬の後半にはビタミンDが欠乏がちとなり、それによってインフルエンザや風邪に罹りやすくもなりますから、ばかにできません。
  参照 → 冬はお日様に当たって健康づくり 
 次に、冬の寒さにどれだけかは耐える生活が望まれます。本来は、“子供は風の子”と言われるように、これは何も子供に限ったことでなく大人も、薄着して暖房を控え、寒さストレスに生体をさらして、初めて健康が得られるのです。
 現代人には、この真似はできませんが、体調を崩さない程度にどれだけかは寒さを我慢したいものです。もっとも、そうなると寒さストレスが溜まってきますから、毎日1回、何らかの方法で寒さストレスから開放してあげねばなりません。
 その方法は、家でできる“湯治”です。ゆっくり、温めの湯に長く浸かることです。できれば十分換気して露天風呂と同様の状態にし、かつ半身浴で。最初は寒いでしょうが、20分浸かれば、体の芯が温まり、寒さストレスが抜け切ってホッとした気分になれます。
 熱い湯は、皮膚が直ぐに寒さストレスから開放されて快感を生ずるのですが、生体反応は、体温を急上昇させてはならぬとして、血流を体表面だけ良くするように絞り込みますから、内蔵への血流が悪くなって体の芯は冷えたままですし、逆に、頭皮への血流は盛んになりますから、長湯すると、のぼせてしまいます。
 なお、湯上りに冷水シャワーを浴びると皮膚が締まり、湯冷めしません。(今の時期からいきなり始めるのは危険性がありますから、手足の先だけから順次慣らしながら進めてください。→ …始めましょう、冷水シャワー。万病に効果あり。… )

 さて、本題の冬の食事です。冬は腎の季節です。腎臓、膀胱そして生殖器や副腎が1年で1番働きを高める季節です。その腎を養生してあげねばなりません。
 漢方の世界では、五味に注目します。酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の5つです。
 冬は塩味で腎に対応します。つまり、冬は腎が塩気を求めています。
 日本人は塩分の摂りすぎで、これが高血圧の元になり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす危険があるからと、減塩が声高に叫ばれていますが、年中、塩っ辛いものを食べるのは問題ですが、冬場は気にする必要はないです。
(参照)→塩を摂りすぎると高血圧になる?心配ご無用!でも、食塩感受性が高い人は注意すべきでしょう
 なお、寒い地方ほど塩分過多となる最大の理由は、塩は体を温める最右翼の食品だからです。塩っ気の強い物を食べると体が温まるから、ついそうしてしまうのです。
 冬は腎のために
塩味がメインとなりますが、度が過ぎると心臓にダメージを与えます。塩分の摂り過ぎで即発的に血圧が上がる方がけっこういらっしゃることからも明らかです。そこで、心臓を守る苦味を足す必要があります。それに酸味を加えるとベストです。

 <主・塩味、従・苦味、添・酸味>この三味の組み合わせを知っておいてください。
 その代表的なものが、冬場の保存食である漬物です。
 当然に塩味が利いていますし、発酵して酸味があります。足りないのが苦味ですが、カブは苦味食品ですから、その昔はカブラ漬が漬物の主流であったと思われます。
 ところが、今日では、カブも品種改良されて苦味がほとんどなくなりましたし、また、今も昔も、カブ以外の野菜も漬物に利用しています。
 そこで、捨ててしまう苦味食材を上手に使うのです。それは、柑橘類の皮です。ミカンの皮でも良いですが、ユズやスダチの皮がベスト。なお、カブの葉っぱは、品種改良されたものも苦味がありますから、なるべく多く使いたいものです。
 こうして、三味を調えると、大変美味しくなるのが漬物でして、冬の食品として理想的なものになるのです。毎日、どれだけかは食べたいものです。
 唐辛子で、4つ目の味である辛味を少し付けるのも良いでしょう。

 ところで、今日、漬物の主流になっているタクワンは、その歴史は新しく、白米を食べるようになった江戸時代途中からのもので、米から取り除かれた糠を少しでも利用しようとした生活の知恵から出たものです。
 なお、
大根は甘味、物により辛味の食品になりますが、中には苦味を感ずるものがあります。苦味を感ずる大根は、化成肥料の撒き過ぎで、窒素肥料が肥料のままで残留しているからです。ついでに申しておきますが、ホウレンソウが五味食品表で苦味に掲げられている場合がありますが、本来は甘味食品でしょう。うちで自家栽培しているホウレンソウは甘味があり、決して苦くありません。ところが、ホウレンソウは、たいていハウスで促成栽培され、残留窒素肥料が多く、これによって苦味を感じるのです。その昔、全国的にこれが問題になり、施肥量を減らすよう指導がありましたから、たぶん今はそのようなことはないと思いますが、果たしてどうか。露地ものなら大丈夫でしょうね、きっと。

 もう一つの保存食が味噌です。
 これを少し加工した「ユズ味噌」が冬の三味のベストな組み合わせになります。
 味噌は塩味、ユズの皮が苦味、ユズの汁が酸味ですからね。なお、ユズの皮と汁の量は好みで加減して入れればよいです。ただし、通常「ユズ味噌」には、かなりの砂糖を入れますが、冬は甘味を避けなければならないですから、極力控えたいものです。
 さて、冬の料理と言えば、鍋物です。漢方養生法からすると、味噌鍋が一番です。味噌は体を温める食品でもあるからです。
 味噌鍋に合う冬の食品はゴボウです。ゴボウは苦味食品ですからね。そして春菊。この二つは味噌鍋に付き物です。
(注:場合によって、ゴボウは「辛味」「酸味」、春菊は「辛味」「甘味」に分類されることもあります。)
 あとは酸味です。ユズやスダチの絞り汁を好みに合わせてかけたいものです。地方によっては、何にでもこれをかけるところがありますが、冬場は大いに利用したいものです。

 さて、冬に避けねばならない甘味です。ご飯も肉も甘味食品です。よく噛めば甘味が感じられるもの全てが甘味食品です。冬は、閉じ篭りがちになりますから、カロリー消費が落ち、少食にせねばいけないのは当然のことにもなります。
 冬に体重が増えるのは考え物で、一般的に
メタボが心配になりますが、何よりも腎臓に大きなダメージを与えていると考えてください。
 そう言う小生、毎年、冬に体重が増加します。還暦を過ぎてから、冬場は年々、だんだん小便の出が悪くなってきました。今では医者から薬をもらって飲まねばならぬほどに。これは、食べる量を減らさないから、腎臓へのダメージが大きすぎて、そうなったと考えるべきでしょうね。前立腺肥大を齢のせいにしてはいかんでしょう。
 漢方栄養学を学んだからには、今冬は少食を実践!(できるかなあ?)

(追記)
 ところで、冬は長いです。そこで、「24節気」ごとの健康と食養について紹介しています。併せてお読みいただければ幸いです。
 24節気の健康と食養:立冬から小雪まで
 24節気の健康と食養:小雪から大雪まで
 24節気の健康と食養:大雪から冬至まで
 
24節気の健康と食養:冬至から小寒まで
 24節気の健康と食養:小寒から大寒まで

 24節気の健康と食養:大寒から節分まで(冬の土用)

五行配当表
(下図) 各ブロックの端に味が表記されています。
     
 「水」・「冬」のブロックの左端が味の「鹹」ですが、塩のことです。


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3 コメント

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自然 (あいね)
2017-11-12 19:48:40
寒さ厳しくなりますが お身体気をつけて下さい

いつも 納得いく話し 人間も自然の一部なのだとしみじみ思います
最近 味噌汁の美味しさと凄さを改めて感じるこの頃
味噌鍋にはまりましてなんでだろうと思っていたら この話しを読ませていただき内臓が疲れているのかしらと思います
身体が欲しているのだろうと思います

人間の身体は不思議ですねぇ

現代人は身体のこういう声が届かなくなり病気になるのだと思います

自然は命を育み育てる
自然と寄り添い共存することが幸せと健康を手にする早道だとしみじみ感じるこの頃です
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あいね様へ (薬屋のおやじ)
2017-11-13 08:35:50
お褒めのお言葉、そして労わりを頂戴し、有り難うございます。
おっしゃるとおり「自然は命を育み育てる」。大自然に感謝し、素直に従う心を持っておれば健康でいられましょう。
ところで、「内臓が疲れているのかしらと思います」とありますが、そうではなくて「内臓が健全に反応している」のでして、心配無用です。ただし、冬季は1年の疲れを取るために内臓も労わってあげねばなりませんがね。
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ご回答ありがとうございます (あいね)
2017-11-13 21:58:54
最近 しみじみ味噌汁やお出汁が 身体に染みるので 身体が自己回復の為に欲しているのかと思ってましたが 良かったです
内臓をいたわり 旬の元気なお野菜を取り入れる参考にこれからも楽しみにしています
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