薬屋のおやじのボヤキ

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冬はお日様に当たって健康づくり

2018年01月23日 | 風邪・インフルエンザ・コロナ

冬はお日様に当たって健康づくり
(2018.1.23投稿 2020.1.19表挿入 2023.6.6改定基準値を挿入)

 ヒトの体内で合成できるビタミンはビタミンDだけです。それも紫外線が皮膚に当たれば簡単にできてしまいますから、日本では軽視されてきました。加えて、ビタミンDの原料はヒトの体内でいくらでも作られるコレステロールですし、皮膚でできたビタミンDは肝細胞や脂肪細胞にどれだけかは蓄えられもしますから、なおさらです。
  “なんもせんでええ”ということになってしまいます。ビタミンD欠乏を心配せねばならないのは、お日様が弱い北欧ぐらいのもの。彼の地では丸裸になって甲羅干しせにゃならん。日本は逆に紫外線から身を守るために太陽光を極力避けなくてはいかん。こうしたことが、皮膚がんが騒がれた20数年前に盛んに言われていました。そんな頃に小生が聞いた皮膚科の先生の講演で次のように言われたのを今でも記憶しています。
 「ビタミンDは、
真夏であれば暗箱に入って指1本を天に向かって突き出し、直射日光に2分(時間はうろ覚え)かざせばそれで十分に合成される。紫外線ほど害のあるものはなく、これを知っている皮膚科の医師たちはゴルフをやらない。」
 “へえ、そんなもんか”と、小生、ますますビタミンDを無視するようになりました。しかし、今は亡きおふくろですが、他界する1年ほど前から外へほとんど出なくなり、冬場には“5分でいいから玄関でひなたぼっこしろよ”と外へ誘い出しました。お日様の当たりぐあいは北欧並み以下と思われたからです。

 さて、皮膚科医が言う「夏場の指1本2分(?)」、小生がおふくろに言った「ひなたぼっこを冬場に5分」は正しいのだろうか。このあたりのことは、どうも“ええかげん”な感がします。そこで、ネット検索して得た確かな情報は、平成25年に発表された国立環境研究所の研究報告で次のものです。
 
体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定
 それを概説すると次のようになります。
 両手
・顔を晴天日の太陽光に露出したと仮定した場合、紫外線の弱い冬の12月の正午では、那覇で8分、つくばでは22分の日光浴で必要量のビタミンDを生成することができるものの、緯度の高い札幌では、つくばの3倍以上の76分日光浴をしないと必要量のビタミンDを生成しないことが判りました。
 ただし、7月の正午となると、那覇で3分、つくばで4分、札幌で5分と、いずれもほんのわずかの時間で十分となります。

 こうしてみると、けっこうな時間、お日様に当たらないと必要量のビタミンDが体内合成できないということになります。日本の真ん中あたり(当地岐阜)では、両手・顔を晴天日に夏は4分、冬は20分お日様に当てないといけないということになりましょう。

 ところで、1日に摂取する必要量のビタミンDは5.5μg/日と食事摂取基準に定められている(2015年版、その後2020年版で8.5μg/日に改定)のですが、国民健康・栄養調査による摂取量は男女平均で8μg/日となっていて、十分に足りている計算になります。
 となれば、お日様に全然当たらなくても事足りる、となってしまいそうですが、実際にはそうではなさそうです。
 欧米の研究によると、潜水艦の乗組員での調査では10μg/日の摂取でも血中ビタミンD濃度を適切に維持できないとの報告があるようですし、米国では骨粗鬆症対策のため閉経後の女性は20μg/日を推奨しているようです。
 ということになると、お日様に当たらない場合は、日本人は今の摂取量8μg/日の少なくとも倍はビタミンDを摂取せねばなりません。
 じゃあ何を食べたらいいか。ビタミンDは魚肉にけっこう含まれており、
シラス干し、イワシの丸干しに特に多く、100gで50μg程度にもなりますから、これがお勧めです。また、この2つは骨ごと食べられますから、カルシウムとビタミンDが一緒に摂れ、つまり骨の原料補給と骨作り促進の両方ができて、一石二鳥です。小魚を食べていればカルシウムが不足することはないし、骨も丈夫になると言われる所以(ゆえん)がここにあります。
 もう少し具体的にビタミンDが多い食品を紹介すると次のようになります。
   イワシ丸干し 1匹  (30g)  15μg
   シラス干し 大さじ2杯(10g)   6μg
   サケ     1切れ (80g)  26μg
   カレイ    1匹  (100g)  13μg
   ブリ      1切れ (80g)   6μg
  ---------------------------
  <参考 鶏卵  1個  (60g)   2μg >
   肉にはビタミンDがほとんど含まれておらず、欧米ではビタミンDを添加した
  牛乳が出回っているほどです。
 (本表は2020.12.19挿入)

 口から補給する話はこれくらいにして、ことビタミンDに関しては、何と言ってもお日様に当たることでしょう。米国の閉経後の女性の推奨量20μg/日からすると、国立環境研究所の値は5.5μg/日(2015年版)を元にしていますから、口からの補給量を差っ引くと、大ざつぱに言って、日本の真ん中あたりでは、両手・顔を晴天日のお昼に、夏は10分、冬は1時間お日様に当たるとよいということになります。
 これはけっこうな時間になりますが、最近の研究では、やはりこの程度の量のビタミンDを必要とするようです。次に、
それを紹介しましょう。
 出典:全薬ジャーナルNo.283(2018年1月)新春特別寄稿
 「ビタミンDの役割と健康への寄与」(東京慈恵会医科大学教授:浦島充佳)
<要約>
 ビタミンDの健康への寄与を調査研究するに当たっては、まず血中ビタミンD濃度を3段階に分けて、十分、不足、欠乏に区分します。その閾値は諸説ありますが、病気発症との関係をみて一部自分なりに設定し直しました。
 まず妊娠後期の妊婦ですが、600人の調査をしたところ、およそ半数がビタミンD不足、1割が欠乏していました。そして、外で過ごす時間と血中ビタミンD濃度は比例していました。
 我々が実施した臨床研究の第一は、急性気道感染症と喘息についてです。近年、ビタミンDは過剰な免疫反応を抑制しつつ必要な免疫機能は促進する免疫調整の働きがあることが判ってきました。
 血中ビタミンD濃度が下がると免疫細胞の分泌する抗菌、抗ウイルス蛋白質が減り、結核やインフルエンザその他の特に気道感染症に罹患しやすくなることが想定されます。
 実際冬季には血中ビタミンD濃度が下がるので、その間インフルエンザ等の急性気道感染症が増えるのは理にかなっています。しかし、ビタミンDサプリメントにより血中ビタミンD濃度を上げてやればインフルエンザ等の冬に流行する感染症を減らすことができるかについてはまだ誰も研究していませんでした。
 そこで我々研究チームは、ビタミンDがインフルエンザの発症を抑制するか否かを二重盲検ランダム化プラセボ比較試験で行いました。その結果、ビタミンD群(30μg/日)167人中18人、プラセボ群(にせ薬でビタミンDゼロ)167人中31人がインフルエンザに罹患しました。ビタミンDサプリメントによって4割程度発症を予防できたことになります。
 その後、この比較試験を国際共同研究に発展させ、1万人以上について比較試験し、これらのデータを統合してメタ解析した結果、ビタミンDサプリメントによって急性気道感染症の20%を抑制することが判りました。さらにビタミンD欠乏の人にビタミンDサプリメントを内服してもらうと70%の急性気道感染症予防効果があることが確認されました。

 次に、喘息児を対象に同様な比較試験を行ったところ、ビタミンD群とプラセボ群に明らかな喘息発作の差異が生じ、これもインフルエンザと同様に千人強についてメタ解析を行ったところ、ビタミンDサプリメントを内服してもらうと喘息重症化に対する治療頻度を26%抑制することが判り、特にビタミンD欠乏の人にビタミンDサプリメントを内服してもらうと66%も抑制することが判りました。

 パーキンソン病について、同様な比較試験を1年間行ったところ、ビタミンD群55人中16人が改善、プラセボ群57人中7人が改善という結果が出ました。このことからパーキンソン病の患者さんはビタミンDサプリメントを内服したほうがよいと思われます。

 認知症については、アメリカにおいて血中ビタミンD濃度を測定しつつ長期追跡調査した結果、ビタミンDが十分な人に比べて欠乏している人は2.25倍認知症になりやすいという結果が出ていますが、この研究は観察研究であり、認知機能が落ちてきたことにより自宅にこもり気味になり日光に当たる機会が減り、その結果、血中ビタミンD濃度が低下した可能性もあり、ビタミンDが認知症発症予防に有効であるか否かは判りません。

 がんについてもビタミンDとの関連が数多く報告されています。血中ビタミンD濃度が高いとがんになりにくく、低いとがんになりやすいというものですが、いずれも観察研究の域を出ないもので、ビタミンDが影響しているか否かは判りません。そこで、我々は2010年より食道がん、胃がん、大腸がんの患者さんをランダムにビタミンD群(50μg/日)とプラセボ群に振り分け、再発・死亡の頻度を比較する研究を継続しており、数年以内に結果を公表する予定です。

 以上が、新春特別寄稿「ビタミンDの役割と健康への寄与」の要約です。
 なお、浦島教授は、序で「サプリメント大国アメリカでは、一番の売れ筋はマルチビタミンですが、ビタミンDが二番目に売れています。」とおっしゃっています。また、まとめで「体内のビタミンDは、陽にあたることで作られるため、無料の予防薬、治療薬になりえます。」と結んでおられます。
 さあ皆さん、冬は1時間屋外で活動しましょう。それができない方は、毎日ご飯にシラス干しを振りかけて食べるなり丸干しイワシを1週間に1匹は食べたいものです。両方やれば鬼に金棒です。ビタミンDサプリメントは最後の手段としたいものです。

(追記)
 ビタミンDは、本稿で紹介したもののほか、
糖尿病予防、筋肉の強度を高める効果などがあるとも言われています。ただし、科学的エビデンスが確かかどうか分かりませんが。
 また、お日様に当たるご利益は他にもあります。
 セロトニンは、精神面に大きな影響与え、心の安定や心の安らぎなどに関与することから「幸せホルモン」と呼ばれます。午前中に太陽の光を浴びると、それが刺激となってセロトニンの分泌が活性化します。特に朝日を浴びるのがポイントのようで、浴びる時間は30分が理想のようです。冬季の日射量が少ない北欧では、「冬季うつ病」の発症が知られています。これは、日射量が少ないことによってセロトニンの量が不足するためと言われています。日本でも、冬季は日射量が減るため、セロトニンが不足しがちになりますから、意識してお日様に当たりたいものです。

(2018.1.27追記)
 ガラス越しでも畳が焼けたりするから、窓を閉め切ってガラス越しで日光浴してもいいのではないかと思われましょうが、畳が焼けるのはガラスを通過してしまうUVA(長波長紫外線)によるもので、これはビタミンDの合成にほとんど関与しないようです。ビタミンDの合成に役立つのはUVB(中波長紫外線)で、これはほとんどガラスを通過できませんから、室内でビタミンD合成をしようと思ったら、窓を開けるしかないです。
 なお、セロトニンの合成は可視光線による視神経への刺激で促されますから、窓のカーテンを開ければOKです。ただし、お日様を直に見ては網膜をやられますから、そのようなことは絶対しないでください。

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