『残された者 北の極地』(原題:Arctic)
監督:ジョー・ペナ
出演:マッツ・ミケルセン,マリア・テルマ他
どうしても劇場で観たくて、ない時間を無理やり作り、梅田ブルク7へ。
この後ランチした後輩に、映画観て阪急の催し物にも寄って来たと言ったら驚かれました(笑)。
アイスランド作品なのですけれども、
主演はすでにハリウッド映画でもおなじみ、デンマーク出身の俳優マッツ・ミケルセン。
監督は本作が長編デビューとなるブラジル出身のジョー・ペナ。
どういう理由でアイスランド、デンマーク、ブラジルなのか、それだけでそそられます。
雪山が舞台という設定に私は昔から強く惹かれます。
本でもそうですが、想像力を駆使しなくても視覚に訴えてくる映画ならなおさら惹かれる。
これはまったく駄作じゃない、凄い作品でした。
パイロットのオボァガードは奇跡的に軽傷で生存しているが、
見渡すかぎりの雪原で、どうしようもない。
壊れた機体を利用して、生活する場所は確保。
救難信号を発信しながら、氷に穴を空けて釣った魚を保存して食糧に。
毎日同じ時間にアラームをセットして起きては
自ら定めたルーチンワークをこなし、救助が来るのを辛抱強く待つ。
幾日かが過ぎ去り、ついにやって来た救助ヘリコプターに喜ぶが、
強風に煽られて目の前でそのヘリコプターが墜落。
乗員のうち男性のほうは即死、女性のほうも大怪我を負っている。
なんとか女性をヘリコプターから救出し、自分が住まう機体へと連れて行くと、
ほぼ意識のない彼女の傷の手当てをして寝かせる。
水を与え、少しずつ食糧を口へと運ぶが、良くなる兆しはない。
このまま待っていても救助は来ないだろう。
そう考えたオボァガードはヘリコプターに積まれていた地図を見て建物の存在を知る。
彼女を橇に乗せて引っ張って行くのは楽ではないが、
それでも何日か歩けばその建物にたどり着けるはず。
オボァガードは装備を調えると意を決して出発するのだが……。
登場人物は最初から死んでいる男性を省くとこのふたりのみ。
しかも女性は台詞ゼロに等しく、オボァガードもほとんど喋りません。
ただ雪原を歩いて行くだけでこんなにスリリングな作品がありましょうか。
冷静沈着で、生に対してそんなに執着があるとも思えない。
でも彼は絶対にあきらめない。
自分ひとりで歩いて行けば、目標の建物にもさっさと着けそう。
地図どおりの地形ではなくて直進できず、迂回せざるを得なくなっても彼女を見捨てない。
シビレましたね。
登場人物が少なくても、台詞がほとんどなくても、雪山だけでも、
こんな凄みのある映画が撮れる。
やっぱり雪山映画、やめられん。