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『ひとよ』

2019年11月27日 | 映画(は行)
『ひとよ』
監督:白石和彌
出演:佐藤健,鈴木亮平,松岡茉優,音尾琢真,筒井真理子,浅利陽介,
   韓英恵,MEGUMI,大悟,佐々木蔵之介,田中裕子他
 
シネマート心斎橋で『国家が破産する日』を観た翌日だった日曜日、
昼から母とコンサートを聴きに行くので、映画は1本しか観る時間なし。
どれを観るって、そりゃもう公開されたばかりの白石和彌監督。
TOHOシネマズ梅田にて。
 
衝撃的なオープニングシーンだった『孤狼の血』(2017)。
だって豚の肛門大写しの脱糞シーンからスタートですよ。
でも数年前からいちばん注目している監督には変わりありません。
 
タクシー会社を営む稲村こはる(田中裕子)。
飲んだくれては子どもたちに暴力をふるう夫にたまりかね、
ある雨の夜、泥酔した夫を轢き殺す。
会社と子どもたちの世話を甥の丸井進(音尾琢真)に任せて自首。
15年後に必ず帰ってくると約束して。
 
子どもたちは成人、まもなく15年が経過しようという頃。
 
長男・大樹(鈴木亮平)は地元の電器店の娘・二三子(MEGUMI)と結婚するが、
夫婦仲は上手く行っておらず、現在別居中。
小説家志望の次男・雄二(佐藤健)は上京してエロ雑誌のコラム記事を執筆。
長女・園子(松岡茉優)は美容師の夢を諦め、地元に残って寂れたスナックに勤務。
こはるが起こした殺人事件のせいで運命を狂わされた結果がこれ。
 
そんな3人の気持ちを知ってか知らずか、こはるが約束どおりに帰ってくるのだが……。
 
心に傷を負っているのにそれを口に出せずに来た家族が、
自分たちのことを見つめ直す。
こんな話の場合、たいていは泣く方向へ煽られるものだし、
そのほうが万人受けするでしょう。
でも、白石監督は煽らない。説教臭くもならない。
 
台詞は多すぎないから、役者の演技力が物を言う。
『マチネの終わりに』みたいに全部しゃべったりはしません(笑)。
田中裕子が素晴らしいのはもちろん、佐藤健を見直しました。
演技とは関係のないことですが、佐藤健ってもっと華奢だと思っていたら、
二の腕を見てビックリ。めちゃくちゃ太いやん。
 
泣かせにかかっていないのに、人の温かさにホロリと来てしまう。
面倒なことを押しつけられたわけなのに、
逃げも隠れもせずに子どもたちを預かったこはるの甥。
その役を演じた音尾琢真がめちゃめちゃよかった。
悪役も多い彼ですが、「家族だったら巻き込まれてやれよ」にジワ~ン。
 
同様にタクシー会社を支える柴田弓役の筒井真理子や、
雄二の幼なじみでタクシー運転手の牛久真貴役の韓英恵
訳ありでこの会社に就職してきた堂下道生役の佐々木蔵之介
とにかく脇役まで揃いもそろってよかった。
あ、そうそう、ヤクザ役で出ていた千鳥の大悟まで上手いから驚いた!
 
沁みました。

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