散歩
小学生
堀口 大学
先生
植物学はうそですね
樹木もやはり笑うもの
梅が一輪咲きました
小学生の純真な眼は 梅が笑うのをはっきりみました。
そのおどろきの顔が見えるようです。
事実 梅は笑うのです。
それまでに蓄積していた精いっぱいの力を枝頭に集め
こまかな花弁に托して
天地の恵みと期待に いまこそ応えようと
はじめて ・・・ ニッコリ笑ったのです。
時が熟したということは
その時を ・・・ 今日か 明日かと待ちつづけてきたものにとって
・・・ どんなにうれしいことでしょう。
思わずほほえまずにはいられませんね。
人間は いや 私たちは生きています。
草や木も 生きています。
生きているもの同志の間には命と命の呼び合いが
輝かしい命のサインが交わされるはずです。
梅が笑ったと感じるところに 感じたこちらが生きているのです。
鶯(うぐいす)を春告鳥と呼んだ心は
長い冬の間
雪の下に悩んだものの希望とよろこびではなかったでしょうか。
山笑う ということばもありますが
命ある人間は 山が笑い 梅が笑う世界にこそ 実は生きているのです。
昔は 日も 月も 山も 川も ・・・ 生きていました。