井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

蝶が岳から上高地へ・08’9月

2008-09-29 23:12:47 | 北アルプスの山
8月12日、5時に目を覚まし窓の外を見ると、青空が広がっています。
今日もいい天気のようです。

朝食後、6時に横尾山荘を出発します。
蝶が岳の登山口は、横尾山荘の左手、槍沢を少し登ったところにあります。
今日、この道を登る人はほとんどいないようです。

登山道はいきなりの急登が続きます。
つづら折りの登山道をゆっくり登っていきます。
2時間ほど登ったところでやっと槍ヶ岳の穂先が見えてきます。
   

   登っても登っても深い森が続きます。
  その森もやっとハイ松が現れる頃には眺望が一気に開けます。

 9:10分、やっと稜線に着きます。
目の前には穂高連峰から槍ヶ岳までが一望できます。
この光景を目にしたとたん、思わず、ため息が出ました。
  
  前穂高岳から奥穂高岳、北穂高岳から大切戸の写真です。

  そして槍が岳まで続きます。
  
  私達が2日間を費やして歩いた稜線が、今、目の前に広がります。
 何度も、何度も、左から右へと目を動かします。
 その度に苦しかった岩だらけの登りが脳裏に浮かんできます。
 でも、この景色を目の当たりにするとそんな感情も吹っ飛んでしまいます。

 綺麗だ!この言葉しか頭に浮かんでこないのです。
本当にいい山に登らせていただきました。

 穂高から左に目をやると乗鞍岳から、さらに、御岳が見えています。
 
 そして、さらに、左手を見るとうっすらと富士山も見えています。
     

 槍ヶ岳の姿をもう一度目に焼き付けます。
この場所からは東鎌尾根の向こうに北鎌尾根が見えています。
北鎌尾根は、「孤高の人」で有名な加藤文太郎氏がその命を絶った尾根です。
この尾根の姿を目にして、いつか私も登ってみたいと思いました。
   
   それが叶う日は来るでしょうか?

9:40分、蝶が岳ヒュッテで一休みです。

 外のベンチでゆっくりと昼食を取ります。

 ここからは徳沢へ降ります。
この下りが長かった。
降っても降ってもなかなか下に着きません。
もうウンザリするぐらい降って、やっと徳沢に着きました。
13:40分、徳沢園のベンチで一休みです。
  
  なかなか趣のある建物です。
 駐車場に乗用車が停まっています。
 ここまで、車が入れるようです。

 しかし、登山者は遊歩道を歩いていかなければなりません。
ゆっくり休んで、明神へ向かった歩きます。
遊歩道は木陰があり、強い日差しを遮ってくれるので
気持ちよく歩けます。

でも、身体の方がいうことを聞いてくれません。
かなり疲れが溜まってみているようです。

14:45分、明神に着きます。
明神は穂高神社の奥宮のようで立派な柱が立っています。
 

 穂高神社は明神(穂高岳)を祀っているのです。
  
  そのご神体がくっきりとその姿を現しています。
 
15:45分、やっと河童橋に着きます。

バスターミナルに着くと16時発松本行きのバスがあるといいます。
すぐにチケットを買って、あわただしくバスに乗り込みます。

5日前にこのターミナルから西穂高岳を目指して歩き出し、
やっとここまで戻ってくることが出来ました。

最初は本当に登れるか心配だったのです。
でも、無事に帰ってくることが出来ました。

最高の登山でした!
さまざまな苦しみも、この瞬間喜びに変わります。

ありがとう穂高岳!
そして槍ヶ岳!



槍ヶ岳を降りる! ・ 08’9月

2008-09-28 21:13:39 | 北アルプスの山
8月11日、槍ヶ岳を降りる日です。

日の出を見ていると浅間山の左手からゆっくりと昇ってきます。
  
   今日もいい天気です。
  穂高岳山荘から見た日の出は浅間山の右手から昇っていましたが、
  槍ヶ岳山荘から見る日の出は、浅間山の左手から昇ってきます。
  これだけのことですが、昨日一日に歩いた距離が反映されています。

 槍ヶ岳山荘はかなり大きな規模の山小屋です。
5百人は泊まれるかという建物です。
   
   実は宿泊の申し込みをしたときに2人分の番号を割り振って
  いただきましたが、実際に部屋へ行ってみると2人分のスペースは
  身体を横にしたほどのスペースしかない有様です。
  2人分でやっと上を向いて寝れるほどのスペースでしょうか。

  でも、昨晩の宿泊者は百人足らずのようでしたので
 6人分を2人で使う、ゆったりとしたスペースです。

 これからの行程をO氏と昨晩相談しました。
その結果、今日明日も天気がいいようなので、
このまま横尾山荘まで降り、そこで1泊して
あしたは、梓川の対岸にある蝶が岳まで登ることにしました。

蝶が岳からは穂高連峰から槍ヶ岳までを一望できると聞いたからです。
私達が上高地から3日間掛けて歩いた峰々をもう一度見たいと思ったからです。

6:30分、槍ヶ岳山荘から槍沢のカールを降ります。
   
   朝の槍ヶ岳山荘前です。
  
   
   今日も槍ヶ岳の穂先がくっきりと見えています。
  下山しながらついつい後ろを振り返ってしまいます。

   
   ここが播隆上人が修行をしたといわれている岩屋です。
  播隆上人は槍ヶ岳を開山した人です。
  槍ヶ岳山荘の食堂にこの播隆上人を祀った祭壇がありました。
  そうです、槍ヶ岳は山岳宗教にとっても大事な場所なのです。

  さらに降ると天狗原への分岐点があります。
  
  ここまで降ってくると緑がいっぱいです。
 雪解け水が豊富にある証拠でしょうか。
 
8:45分、水俣分岐に到着です。
  
   槍沢の大曲を過ぎましたので、この辺りからは
  穂先を見ることが出来ません。

さらに降るとババ沢のキャンプ場があります。
 
 この辺りまで来ると梓川の水量も豊富ですので
沢音もゴウゴウと賑やかです。

9:45分、槍沢ロッジに着きます。
ここでゆっくり休みます。
槍沢ロッジの広場に望遠鏡が据えられています。
何かと思ってのぞいてみると槍の穂先が見えています。

案内板を読むと「山崩れにより槍の穂先が見えるようになった。」とあります。
  
  こんな感じです。

 槍沢ロッジの電話を借りて松本市内のビジネスホテルの宿泊を
キャンセルします。

 あんまりダラダラしていても仕方がないので横尾山荘まで
行くことにして降ります。

11:30分、横尾山荘に到着です
 宿泊の予約をしようと思いましたが、受付は14時からといわれ
まずは食堂で昼食を取ります。
  
   横尾山荘は昨年から新築工事をして、今年度にやっと完成したようです。
  どおりでピッカピッカな建物です。

 食堂でラーメンを頼みます。
7百円と手頃な値段です。

 食事の後は、付近を散策します。
横尾山荘の隣には、立派なトイレと避難小屋があります。
そして涸沢方面に行くため梓川に架かっているのが横尾大橋です。
  
  この橋の上から見た梓川です。
  
   槍ヶ岳に端を発した梓川が信濃川となって日本海にそそぎます。
  日本一の大河の始まりが梓川だと知ったのはバスの観光案内でした。
  知りませんでした!
  
 14時に宿の人から受付を始めますと声が掛かったので
受付を済ませた部屋へ入ります。
1人づつ区切られた2段ベットです。
お風呂は16時からと案内があります。
ここまで降りてくると豊富な水がありますのでお風呂があります。
4日振りのお風呂です。
お風呂に入って、今晩はゆっくり休めそうです。  

いよいよ槍ヶ岳(3,180m)へ ・ 08’9月

2008-09-27 22:43:10 | 北アルプスの山
南岳小屋でゆっくり休んだのですが、
暑さのため身体が思うように動かなくなってきているようです。
それでも何とか3時間で槍ヶ岳山荘へ着くように頑張ります。

13:20分、南岳の山頂です。
  
  ここは素通りします。

 天狗原への分岐を過ぎて次のピークへ20分ほどで着きます。
ここも素通りして中岳を目指します。
   
   中岳、大喰岳の向こうに槍の穂先が見えます。
  しかし、なかなかこの距離が縮まりません。
  ただひたすら穂先を目標に足を動かします。

左手、飛騨側から雲が湧き上がってきます。
槍の穂先が隠れそうになってきます。
このまま雲が流れてくると、せっかく槍ヶ岳についても
眺望が台無しになってしまいます。
   

14:35分、やっと中岳に到着です。
雲の方は槍の穂先を隠すことなく、上空で消えていきます。
強い日差しが雲に遮られて少し歩きやすくなっています。
しかし、小さな登り返しがあるので一つ越え、
その先の登りを見る度にため息が出てきます。

15:25分、大喰い岳に着きます。
  
  飛騨乗越の向こうに槍ヶ岳山荘が見えています。

 いよいよ、この下りが最後の下りです。
岩場の急な下りです。
慎重に降ります。
   
15:50分、飛騨乗越です。
あと15分ほど頑張れば槍ヶ岳山荘です。

最後の登りですので、給水をして一息いれます。
テントサイトが見えてきます。
その先に山荘の赤い屋根が見えてきます。
16:10分、やっと、槍ヶ岳山荘に到着です。

 目の前には槍の穂先が落ちかけの日差しの中で輝いています。
   
   槍ヶ岳山荘で宿泊の申し込みを済ませると、
  夕食は5時からといわれましたが、山頂に向かうことを告げると
  多少は遅くなっても構わないと言われる。
  ザックを玄関脇において中からサブザックを取り出し、
  水と非常食を入れて山頂を目指します。

  山頂へは、小屋の右手を詰めます。
  いきなり岩場になり鎖と梯子が続きます。

 長い梯子の2本目を慎重に登るとそこが山頂でした。
細長い山頂の北側の奥に小さな祠が見えます。
16:37分、とうとう槍ヶ岳の山頂に来ることが出来ました。
  
  まずは、祠に手を合わせここまで無事に着くことが出来た
 感謝の祈りを捧げます。
 そして、記念写真を撮ります。
 後ろには立山が黒く見えます。

 ウーン、言葉が出てきません。
この1か月ほど、この山頂に立つことを夢見ながら計画を立て、
航空券などの予約をしてきましたが、これほど天気に恵まれた
登山が出来るとは正直思っていませんでした。
そのことを思うと、言葉が出てこないのです。

 初めての本州の山、それもあこがれの穂高連峰から槍ヶ岳!
こんなに素敵な登山をプレゼントしてくれた神に感謝です。
本当に幸運としか言いようがありません。
 
前方には穂高連峰が見えるはずなのですが飛騨側から湧いている
雲に隠されて見ることが出来ません。

左手を見ると大天井岳の山腹に槍の穂先が大きな三角形の
影を落としています。
  
  今いる場所がこの三角形の陰の一番先端にいるのだと思うと
 嬉しくなります。

 山頂は風もなく飛騨側の雲が静かに山腹を湧き上がってきます。
しかし、長野側に流れることなく、天空へ消えていきます。
  

それを、ジーッと見ていると、少しずつ長野側から風が吹き出し
岐阜側の雲を押しのけていきます。
穂高連峰の山頂部が少しずつ顔を出してくれます。

 もう少し、もう少しと願っていると奥穂高岳から北穂高岳などの
姿が見えてきます。
とうとう穂高連峰が顔を出してくれました。
   
   前穂高岳からジャンダルムも見えています。
  雲が晴れて穂高連峰の姿も見ることが出来るという幸運にも
 恵まれたので、満足して山を下ります。

20分ほどで槍ヶ岳山荘へ戻ってきます。
長かった今日一日の登山もこれで終わりです。

 部屋に荷物を移し食堂へ急ぎます。
食堂は閑散としておりほとんどに人が食事を終えています。
入り口近くのテーブルに用意された食事を食べます。

盛岡のおじさんがワインを買ってきて振る舞ってくれます。
3人で登頂記念の乾杯をします。
今日一日の辛さが吹き飛ぶような山頂でした。

話に花が咲き、ついつい話し込んでしまいました。
小屋の人からそろそろ片づけてもいいですかと言われ
テーブルから腰を上げます。

ワインの酔いもあり、とても幸せな気分で一杯です。

大切戸(キレット)越え ・ 08’9月

2008-09-26 20:24:34 | 北アルプスの山
北穂高岳の山頂でゆっくり休んだのでキレットを目指して降ります。
さて、キレットに向かうコースはと思い山頂を見渡します。
どうやら北穂高小屋に向かって降りるようです。

地図の上では北穂高岳の山頂と北穂高小屋は離れているようですが
実際には北穂高岳山頂のすぐ下に北穂高小屋があり、
小屋のテラスを通ってキレットへ降ることになっています。

小屋のテラスが登山道とはちょっと意外なコースでしたが、
ここから遙か彼方の下まで降らなければなりません。
浮き石も多いコースでので慎重に降ります。

日の当たる東側の斜面から一転して暗い西側の斜面に登山道が
伸びています。
どうやらここからが「飛騨泣き」でしょうか?
この浮き石だらけの登山道の横には滝谷の岩がその姿を見せています。

この岩に圧倒されながら降ると長い鎖場があります。
ちょうど登ってくる人が数組いるのでお互いに声をかけながら
どちらが先に鎖場を通るか決めます。
核心部の鎖場を無事に降りるとA沢のコルも間近です。

この辺りまで来ると長谷川ピークを登っている人の姿がハッキリと見えます。
    
    かなりの人数が長谷川ピークを越えてくるようです。

10:15分、北穂から降り終えたA沢のコルに着きました。
7~8人の人達が昼食を取っています。
私達もここで昼食とすることにします。

先に来ている人達に話を聞くと、南岳の小屋から来たと話してくれます。
目の前に見える長谷川ピークは大きな一枚岩のように見えます。
   
   この左端のピークが長谷川ピークです。
  ここからナイフリッジの先端部を飛騨側に身を乗り出して
  越えるところが核心部です。
  
  ちょっと怖いのですが、足場がしっかりしていることと、
  鎖があるので思ったより簡単に越えられます。
  実際に降って来た人が、長谷川ピークってどこですか?
  などと言っている人がいたくらいです。

 昼食でお腹も満たされたところで、私達も長谷川ピークへ向かいます。
最初の一歩は、ちょっとオーバーハング気味の岩の下を越えなければ
ならないのですが、そこは、足場にしっかりとした木製の橋が
出来ているので造作なくクリアします。

そこからはナイフリッジのような岩尾根を鎖に掴まったりしながら
ナイフリッジを右に行ったり左に行ったりしますが、
岩肌は滑らないし、ホールドも沢山ありますので
難なく高度を稼ぎます。

  
  後ろを振り返ると北穂から降ってきた岩場が見えます。
  あらためてみると、よく降りてきたものだと思います。

南岳方面から来る人と交差するときだけお互いに声を掛けて
先に行かせてもらったり待ったりして進みます。
長谷川ピークを越えると目の前には南岳の登りが遠くに見えます。
   
   尾根の先に聳える岩場を越えなければ南岳へ行くことが出来ません。
  まずは、岩場の下を目指して歩きます。

 岩場の下について上を見ると梯子が2つ見えます。
かなりの急斜面ですが、ここまで歩きを考えると
それほど難しいものではありません。

ただただ慎重に登るだけです。
はしごを登り終えると細かな岩くずが堆積している足場の悪い
沢状の所があります。
岩くずが落ちないように丸太で木組みがされています。
ここを登り終えると南岳の小屋の赤い屋根が見えます。
難場を終えてホット一息です。

12:40分、南岳小屋に到着です。
     
     小屋の陰で一休みします。
    暑さのためノドが渇いてきたので水分を十分に補給します。
    北穂からここまではちょっと時間が掛かりすぎたようです。
  
 これから槍ヶ岳山荘までは、岩場ではなく普通の登山道となりますが、
まだまだ先が遠いです。
何とか、4時頃には着きたいと思い疲れた身体に鞭を打って歩きます。
   

北穂高岳(3,106m)に向かって ・ 08’9月

2008-09-24 21:06:49 | 北アルプスの山
穂高岳山荘の前からヘリポートに向かって登ります。
ヘリポート下がテントサイトになっており5~6張りのテントが
張られています。
その横を登っていきますが、涸沢岳への登りは普通の登山道で
難しいところはありません。

   後ろを見ると奥穂高岳が朝日に輝いています。
   
   山頂へ向かって登っている人が小さく見えます。

   奥穂高岳の右手にはジャンダルムも朝日に輝いて
  その岩肌が光り輝いています。
   

  左手を見ると笠ケ岳に穂高連峰の峰々が陰となって写っています。
   
  今日も一日天気が良さそうですので気持ちよく歩けます。

6:10分、涸沢岳の山頂です。
体が温まってきたのでヤッケを脱いで身支度を整えます。
ここから北穂高岳に向かってまずは降らなければなりませんが
下を見るとウンザリするほど降らなければならないようです。
   
   ヘルメットを被って気を引き締めて降ります。

   
   涸沢岳からは今日歩く道が一望できます。
  北穂高岳の向こうにはキレットが見えています。
  そして、その奥には槍ヶ岳がくっきりとした姿を見せてくれています。

   
   この下り道も浮き石が多いので昨日と同様に慎重に降ります。
  時々登山道が分からなくなりますが、そんなときは、
  落ち着いて振り返ると踏み跡が見つかります。

  注意深く降ります。

   
   涸沢岳の山頂を見るのに首が痛くなるほど上を向かなければ
  ならなくなってきたとき、やっとコルに到着です。
  7:10分ですので約1時間下り続けたことになります。

   
   降ればまた登りが目の前にあります。
  今度はひたすら登らなければなりません。

    突然、すぐ近くで人の叫ぶ声が聞こえます。
   はっと思って目を凝らすと滝谷の岩を登っている人がいるようです。
   
   すぐ横の岩場に上に男の人が一人立っています。
  トップの人がセルフビレイして後続にかけた声のようです。

 私は本格的な岩登りはまったく経験がありません。
縦走主体の登山の経験だけですので、このようなロッククライミングを
している人にあこがれを感じています。

   
   右手に広がる涸沢カールを見ながら歩いていくとやっと
  涸沢から登ってくる登山道との分岐につきます。
  
  ここまで来ると北穂高岳の山頂も間近に見えます。
   

8:37分、北穂高岳の山頂に到着です。

ここまで約3時間ほど掛かっています。

ここからは、次の難関大キレット越えです。
山頂からのぞき込むと遙か下の方まで降らなければ行けません。

長い下りに備え、ゆっくりと休憩します。

穂高岳山荘の朝 ・ 08’9月

2008-09-23 21:22:26 | 北アルプスの山
9月10日(水曜日)山には入って2日目の朝を迎えました。
奥穂高山荘は標高3千メートルはありますので、
小屋のテラスから朝日を見ることが出来ます。
5時過ぎになると東の空が明るくなり日の出を迎えます。
   
    浅間山の右手から日が上がるようです。
   浅間山の噴煙が右の方に流れています。

   
    すでに出発の準備をしている人がいます。

 実は朝食が5時15分からですので、朝食を食べながら日の出の
瞬間を待っていました。
外で歓声が上がったので、すぐに駆けつけて写真を撮ります。
    
    今日の朝日に向かって、無事に歩けるように祈ります。

 朝食で感心したことがあります。
実は生卵が食卓に出ていたことです。
この場所にどうやって生卵を運ぶのか?
毎日運ぶとしたらそれだけでも大変なことです。
朝食だけでなく、夕食も野菜が添えられ、なかなか充実した内容です。
これだけの内容を毎日出すのは大変なことです。

 生鮮食品をこの山小屋まで運ぶのは人出によるかヘリコプターを
使うしかありません。
これらのことを考えると1泊2食で9千円の料金は
決して高いとは思いません。

昨晩、この小屋の歴史をまとめたビデオを見せてもらいました。
そこには、小屋を維持していくための苦労が写されていました。
水の確保、電力の確保、トイレの問題などに先駆的に取り組んでいる
様子が紹介されていました。

水は涸沢岳の下にある雪渓を水源として引き込み、4度ほどの水を
温度を上げるために水槽を循環さるなど工夫しています。
このモーターの電力をソーラーパネルによる発電を利用しているようです。
電力は、このほかに風力発電を行っています。

トイレは水洗となっています。
これも驚きでした。
水を浄化する必要もあるからです。

この場所で環境に配慮した小屋の運営を行っている点は
評価しなければなりません。
そのために利用力金が高くなるなら、それは我慢しなければなりません。

 実は、昨日、テラスで涸沢を眺めながらビールを飲んでいるときに
小屋の経営者である今田さんの話を聞くことが出来ました。
その時にも水の話、トイレの話、ソーラー発電の話などを
聞きました。
さらに、この小屋を運営する従業員は25人ほどいるということ。
そのうち5人ほどが交代で1週間ほどの休暇を取っていること。
などいろいろと小屋を経営する上での苦労話を聞くことが出来ました。
それは、私が想像している以上に大変な苦労が伴う話でした。
ここ3千メートルを超える標高であるが故の苦労です。

北海道の山小屋といえば、無人の小屋がほとんどです。
山頂付近にある山小屋で有人で管理している小屋といえば
黒岳石室、羊蹄山の小屋ぐらいでしょうか。
でも、この小屋でも食事を出す小屋はありません。

それに比べると本州の山小屋は食事に布団付きと町の旅館並みの
設備で登山客を迎えてくれます。

それを利用することによって日帰り装備程度の軽装備で
3千メートル級の山を縦走することが出来るのです。
このことに感謝しなければなりません。

5:45分、いよいよ槍ヶ岳に向けて出発します。


奥穂高岳(3,190m)を目指して・その3 ・ 08’9月

2008-09-22 22:26:35 | 北アルプスの山
さあ、もう一息ですのでジャンダルムを降ります。
裏側の浮き石だらけの登山道を慎重に降ります。
さらに、馬の背のコルまで降ります。
    
    
    この岩の裏側から右側を回り込むように歩いてきます。

目の前には馬の背が見えてきます。
    
    この岩峰が馬の背です。
   奥に見えるのが奥穂高岳の山頂です。
   
   左手の下に白いペンキで「ウマノセ」と書かれています。
   ここから右上のピークまで登らなければなりません。
   
    取り付きは、この岩の裂け目を登ります。 
   そして細く鋭い岩の峰を登りますが、救いはホールドが
   沢山あるということです。
   目で見るほど困難ではなく、順調に登ります。
  
 緊張したのは、この馬の背を登り終えたところです。
両手いっぱいあるかないかの幅で、平坦な岩が7~8メートル続きます。
この岩の上にはホールドがありません。
両側は鋭く切れ落ちています。
高度感タップリの岩尾根です。
四つんばえになるわけにもいかず、中腰で渡りきります。
このコースで、唯一、怖いと思った場所です。 
この平坦な岩尾根を渡りホッとして後ろを見ると
今までとは違ったジャンダルムがその姿を見せてくれます。
   
   空を突き上げるような岩、存在感一杯です。
  どおりで、この上に立つことを憧れる人が多いわけです。

    
    やっと奥穂高岳の山頂が見えてきました。
   今日のゴールが間近となりました。

14:10分、奥穂高岳の山頂にやっと着きました。
西穂高山荘を出発して約10時間、やっと歩き終えることが出来ました。

   
   この標識を見るとここが奥穂高の山頂であるということが
  実感できます。

   
   山頂には小さな祠があります。
  まずは無事にここまで歩けたお礼のお祈りをします。

   
 北側に目を向けると槍ヶ岳が早く来いといっています。
まずは辺りの景色を十分に楽しみます。
北側には槍ヶ岳の向こうに表銀座の大天井岳、裏銀座の双六岳などが
見えています。
左手には笠ヶ岳、右手には常念岳、後ろを見ると
うっすらと富士山まで見えます。
これらの山々を盛岡のおじさんが説明してくれます。

それを聞きながら、一つ一つの山々を目に焼き付けます。

 結局、西穂高岳から奥穂高岳へ向かって歩いた人は14~15人、
逆コースの人が4~5人、合計で20人ほどが歩いています。
それだけ困難なコースといえるのでしょう。

いつまでも山頂からの景観を見ていたいのですが、
そろそろ穂高岳山荘へ行かなければなりません。

山頂から北に向かって降ります。
私はこの道を軽視していました。
急な登山道ではあると思っていましたが、まさか梯子があるとは
思いもしませんでした。

     少し降ると山荘の赤い屋根が見えてきます。
     

   これが奥穂高山荘の全景です。
   
   山小屋の前にあるテラスで休んでいる人達の姿が見えます。
  でも、ここからが肝心です。
  疲れもあるのでさらに気持ちを引き締めて慎重に降ります。

15:15分、穂高岳山荘に到着です。
先に降りていた私は缶ビールを買ってO氏を迎えます。
まずはビールで乾杯です。
長かった一日ですが、無事に歩き通せたのは幸運です。
天気に恵まれ、最高の一日です。

山荘に宿泊の申し込みをして、部屋に荷物を置いてしまえば
もうやることはありません。

テラスで飲み物を飲みながら目の前に広がる涸沢をボンヤリと眺めます。
少しづつ前穂高岳の峰々に影が差していきます。
  
  至福の時間を楽しみます。
 今日一日のご褒美です。

 小屋の裏からジャンダルムが見えるよと教えてもらいましたので
見に行ってみます。
    
    そこには、堂々と聳えるジャンダルムは夕日に輝いていました。
   この上に立ったことは本当にいい思い出です。
   
  

奥穂高岳(3,190m)を目指して・その2 ・ 08’9月

2008-09-21 21:33:44 | 北アルプスの山
天狗岳からいったん降り、天狗のコルを目指します。

 天狗のコルには昔あった避難小屋の跡があります。
小屋の石組みが残っています。
   
   この場所がmこのコース唯一のビバーク地点だと思います。
  この平らな場所であれば、ツエルトがあればビバークできます。
  そして、ここから岳沢に向かって避難路があるのです。

 このコルからジャンダルムを目指してまた登ります。
   
   パーティのO氏が慎重に歩いています。

   
   このような岩場が続いてるのですが、さすがに、慣れてきました。
  あまり恐怖感を持たずに冷静に岩の中からコースを
  見つけることが出来るようになっています。

 コースを見つけるには注意深く見ることに尽きるのですが、
岩角が丸くなっていたり、岩の色が白っぽくなっているところ
たまにある○印と×印、これらを見つけながら進んでいきます。

 この辺で、私達はいつの間にか3人のパーティーとなっています。
先行する私の後をO氏ともう一人60代の男性が一緒に歩いています。
盛岡から来た男性で今晩の宿は奥穂高山荘、明日は槍ヶ岳山荘と
ほぼ同じコースを辿ります。

 先週から天気が回復するのを待って昨日盛岡から来るまで駆けつけ
最終のロープウェイで西穂高山荘までやってきたと話してくれました。
3人でジャンダルムを目指します。

   
   振り返った光景です。
  左下に見える独標からピラミッド峰、西穂高岳も見えています。
  今まで歩いた来た登山道が一望できます。

  
  前方には前穂高岳が大きく見えています。
 奥穂高岳から続く吊尾根が間近に見えます。
 登山路がよく見えます。

   
   累々と積み重なった岩を登ります。
  ちょっとコースを外れると浮き石が多いため身長に足場を
  固めて歩きます。

 やっとジャンダルムが見えてきました。
  
  大きな岩がドーンと鎮座しているといった光景です。
 どこから登るのか想像がつきませんでしたが、
 ジャンダルムの下をトラバースしてから登ります。

 12:05分、ジャンダルムに登りました。
やっとここまで来ました。
   

   前方には奥穂高岳が見えています。
   
   まだまだ先に見えますが、でも、ここまで来た!
  というのが正直な気持ちです。
   この先には馬の背という難所が待ちかまえています。
  まだまだ、気を引き締めて行かなければなりません。

 このジャンダルムを奥穂高岳から見ると巨大な岩が尾根から
突き上げるような高さに見え、堂々たる岩なのです。
そして、このジャンダルムの上に立ちたいと思っている人が
沢山いるのです。
 そのことが、奥穂高山荘に行って他の人と話をしていると
良く分かりました。
この、西穂高岳から奥穂高岳を歩き、ジャンダルムの上に立つということは
ある種のステータスとなっているようです。

 私達は、みなさんが憧れているジャンダルムに登り
さらに今日の目標である奥穂高岳を目指します。  

奥穂高岳(3,190m)を目指して・その1 ・ 08’9月

2008-09-20 19:15:15 | 北アルプスの山
西穂高岳から初めて槍ヶ岳が見えました。
   
   初めて目にした槍ヶ岳です。
  穂先が朝日に輝いています。
  この穂先が今回の縦走の目的です。
  目標を目の当たりにして闘志が湧いてきます。

ここから先は間の岳、天狗岳、ジャンダルム(前衛峰)、馬の背、
を乗り越えなければなりません。

まずは間の岳を目指して西穂高岳を下ります。
ここからは、息子にプレゼントしてもらったヘルメットを被ります。

   
   逆光で見づらいのですが、この峰を歩きます。

 呼吸を整えて西穂高岳を下ります。
足場が悪く、落石に注意しながら下ります。
登山道は所々に丸印が付いているので注意深くそれを
捜しながら下ります。

岩場ですので、時々、標識を見逃します。
そんなときは落ち着いて後ろを振り返ると
すぐに、正しい道が見つかります。

頭は冷静に、身体は柔軟にが大切ですね。

   
   後ろを振り返ると西穂高岳の山頂が見えます。

 いくつかの小さなピークを登って、降りてを繰り返します。
自分がどこを歩いているか分からなくなってきます。
地図を見てもあまり役立ちません。
一つ一つのピークを丹念に潰していきます。

   
   少しずつ、間の岳のピークに近づいているようです。

   
   鎖場をトラバースしているところです。

   
   こんな岩場を下ります。

   
   前を見ていてもどのくらい進んだか分かりませんが、
  後ろを見ると西穂高岳が遠ざかっていくので、
  それを励みに前を目指して歩きます。
   
8:35分、やっと間の岳に到着です。
岩に白ペンキで「間の岳」と書かれただけの山頂です。
ここからは天狗岳を目指します。
  
  いったん下って、コルのすぐ上に難所の一つである「逆層スラブ」を
 越えると天狗岳です。

逆層スラブの手前ではこんなところを歩きます。
   
   上の岩から下ります。

   
   ここで奥穂高岳から下ってきた人とすれ違いました。
  私達は美美のように見える岩の間から下ってきます。
 
9:05分、逆層スラブです。
 
逆層スラブというのは写真のように岩がブロック状になり
下側に突き出た所です。
長い鎖が下がっていますが、傾斜自体は45度くらいでしょうか。

 鎖だけに頼らず、手がかりを岩に求めていくと
それほどの苦労もなく登ることが出来ます。

 逆層スラブを越えて上り詰めたところが天狗岳です。
9:25分、天狗岳に到着です。
    
   天狗岳からの槍です。
  いつも槍ヶ岳が進行方向に見えており、「ここまで来るのだ!」と
  勇気づけてくれます。

 後ろを振り返ると間の岳からの下りが一望できます。
今更ながら、よく降ってきたものです。
  
  ここで奥穂高岳までの約半分を歩いたことになります。

これから先も気の抜けない場所が続きます。
   
   また降って、さらに目の前のピークを目指します。

 右手に前穂高岳が見えてきました。
  
  急峻な尾根です。
 今回は、この前穂高岳には登りません。

 さて、ここまで西穂高岳を出発してから
約2時間15分ほど掛かっています。
まあまあのペースでしょうか。

まずは西穂高岳・その3 ・ 08’9月

2008-09-18 21:35:06 | 北アルプスの山
8月9日、3:30分に目を覚まし起きます。
空を見ると満点の星空です。
どうやら今日はいい天気が望めそうです。

朝食は尾西のアルファー米(五目ご飯)と卵スープです。
前日、お湯をテルモスに買っておきましたので
それを使って準備をします。

食堂に荷物を運び出発の準備をします。
すでに、準備を終え出発していく人が沢山います。
日の出を独標で迎えるためでしょうか?

私達も朝食を終え、4時30分に西穂高山荘を出発します。
ヘッドライトを付けて山道を歩くのは何十年振りでしょうか?
登山道はハッキリしていますので道に迷う心配はありません。

丸山の上の方を見るときらきらとヘッドライトの灯りが
見えています。
それを目標に、ゆっくりと歩いていきます。

30分ほど歩くと辺りが明るくなってきました。
ヘッドライトを消して歩いていきます。

登山道が岩場にになりちょっと急になったかと思うと
前方に標柱が見えます。
5:30分、1時間ほどで独標に到着です。
後ろを振り返ると焼岳が見えています。

前方には、次の目標ピラミッド峰が見えています。
    
    奥に見えてるのが西穂高岳でしょうか?
   ここから見ると、随分距離があるように見えます。
   そして、登山道が一気に岩尾根となっています。

独標から一変した登山道を慎重に登っていきます。
思ったより登山道がしっかりしているのでゆっくりゆっくりを
自分に言い聞かせて登っていきます。

後ろを振り返ると独標がかなり下の方に見えています。
  
 
6:04分、ピラミッド峰に到着です。
まずは順調に歩けています。
ここからは、尾根が痩せ尾根状になり険しさを増してきます。

     
    小さなコブ状のピークを幾つも越えていきます。

     後ろを振り返ると独標、ピラミッド峰、が随分下の方に見えるように
    なってきました。
    さらに向こうには焼岳も見えています。
    

小刻みに休みを入れて歩いていきます。
岩場ばかりが続きますので慎重な歩きを続けていきます。
私達の前に数人が歩いています。

すぐ前にはザイルで繋がれた男の人がいます。
どうやらザイルを持っているのはガイドのようです。
その男性の前を女性が歩いています。
3人が私達のすぐ前を先行して歩いています。

6:55分、やっと西穂高岳に到着しました。
約2時間半で登ったことになります。
3時間の予定でしたので思っていたより早く着いてしまいました。

寒かったこともあり、休み時間を短くしていたことが
時間短縮となったようです。
ここからはさらに難しい道となりますので
ゆっくり休むことにします。
   
  
  まずは記念写真を1枚。(左がO氏、右が私、)

すぐ後ろには笠ヶ岳が大きな山容を見せ、朝日に輝いています。

ここまで歩いてみた印象は、ゆっくり慎重に歩けば大丈夫!
といった印象です。
ここまで、危なげなく登ってきましたのでこの先のルートに対しても
自信が持てるようになりました。