井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

北日高・神威岳をベースに戸蔦別岳→エサオマントツタベツ岳を歩く・その3

2013-02-25 21:51:49 | 日高山系の山
 2月14日(木)
 昨夜は、寝たのが早かったのですが、顔が冷たくて目を覚ましてしまいました。
前の晩はそんなことはなかったのですが、冷え込みが厳しかったのでしょうか?
シュラフカバーをかぶって寝ていました。

 全員で寝坊してしまいました。
4時起床が目を覚ましたのは30分も過ぎていました。
急いで準備をします。
テントは雪洞の中に張りっぱなしにして出発です。

 6時半、雪洞を雪のブロックで塞いで出発します。
昨日と同じようにトレースの消えた急な斜面を登ります。
足の裏でトレースを探しながら登っていきます。
膝が隠れるほどの雪の深さですが、軽い雪ですのでラッセルはそれほど負担にはなりません。

 20分ほどで主稜線に出ると風がゴー、ゴーと音を立てて吹いています。
昨日とは風に強さが明らかに違います。
   
    札内岳の山頂左手に太陽がぼんやりと見えています。

 この稜線を下っていきます。
相変わらず雪庇の根元には亀裂が入っているので右側の灌木沿いを降ります。
風は右手から吹いてきます。
   

 前方に巨大な雪庇が張り出しています。
   
    この雪庇の根元も大きな亀裂が入っています。
慎重にルートを選びます。

 しかし、日が射すと雪の白さが一際美しく息を飲むばかりです。
   

 最低コルが見えてきました。
   

 8:20分、最低コルを通過します。
ここから山頂までは、登るだけです。
しかし、風がどんどん強くなってきます。

   
    最低コルを振り返ると雪庇が太陽の光を受けて輝いています。

 慎重な登が続きます。
   
    登るにつれて風が強くなり身体のバランスに気を付けて登ります。
アイゼンの歯が半分ほどしか刺さらなくなってきます。
堅い雪の表面が氷のようになっています。
ここでバランスを失うと大変です。

 ストックをしっかり雪面に食い込ませて一歩一歩慎重に足を運びます。
   

 北カールがうっすらと見えているものの北東カールはまだその姿を見せてはくれません。
もう少し登らねば、北東カールを見ることはできないと思い風に負けないように身体を小さくして登ります。
前方に稜線から左手に張り出した尾根があります。
その尾根に風を避けるように回り込みます。
ここからやっと北東カールが見えるようです。
とはいっても、カールの上部は雲の中です。

 ここで相談します。
この上はいっそう風が強くなってきます。
おまけに斜面はカリカリです。
相談の結果、今回はここ1650mを最終到達地点として下山することにします。

 そうと決まれば、後は降るだけです。
トレースを踏み外さないように降ります。

休憩を取ったときにOn氏の睫毛が凍っていました。
   
    睫毛に白いものが着いていますが、見えますか?
 苦闘の後が忍ばれます。

  
   ここまで歩いてきて雪洞のある稜線が見えたときには、本当にホッとしました。
しかし、ここから支稜線に降りる降り口までが辛かった。
なかなか着かないのです。
一歩、一歩、あえぐようにして登ります。

 降り口からは、転がるようにして雪洞に向かいます。
雪洞に着いたときは、ちょっと放心状態でした。

 雪洞の中でテントを畳みまずはお湯を沸かして温かい飲み物を作ります。
このとき、ミルクティーが好評でした。
小1時間ほど休んで体力を回復させての下山です。

 しかし、この下山も新しく降った雪が40センチほどあり、トレースが消えており難儀しました。
雪庇の根元にある亀裂を探しながら歩くので神経を使います。
スキーをデポしたところまでと思い降るのですが、なかなか着きません。

 やっと、スキーデポ地点に着きました。
ここでアイゼンからスキーに履き替えて、いざ、滑るぞ!と思いましたが、いかんせん、荷物が重すぎます。
兼用靴と違ってプラブーツは足首がグラグラ、辛抱のスキーが続きます。

 それでも、斜滑降とキックターンを組み合わせて慎重に降ります。
スキーで転ぶ方が怪我をする確率が高いからです。
斜滑降とキックターンを続ける辛抱のスキーの果てにやっと林道、林道に出たときには本当に身体の力が抜けるようでした。

 すでに夕暮れが間近に迫っており先を急がねばなりません。

 7号堰堤の工事現場からは除雪された林道を歩きます。
車を止めていたゲート前に着いたときはすっかり暗くなっていました。
この3日間の山行を振り返る余裕もなくバタバタと荷物をまとめ車に乗り込みます。

 そのまま、中札内で給油して嵐山のお風呂目掛けて車を走らせます。
嵐山荘の浴槽は天国でした!!


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 帰ってきてから麓の上札内の気温を調べてみました。
  12日 最低気温 -20.5度 最高気温 -6.5度
  13日  〃   -16.3度  〃   -4.7度
  14日  〃   -18.9度  〃   -3.6度

 一般的に標高差100mで0.6度気温が下がるといわれています。
すると雪洞を作った稜線ですと確実に5~6度はこの気温より低いはずです。
身体が芯から冷えたのもうなずけることです。  

北日高・神威岳をベースに戸蔦別岳→エサオマントツタベツ岳を歩く・その2

2013-02-21 20:38:24 | 日高山系の山
 2月13日(水)

 雪洞の中は暗いので寝過ごしてしまいました。
4時起床が30分ほど過ぎています。
あわてて寝袋をしまい朝食の準備をします。

 朝食はお湯を沸かすだけです。
昨夜、水はたっぷり作ってあるのでヤカンでお湯を沸かします。
朝食は、いつも雑炊です。
昨夜作っておいたご飯にお茶漬けの元をかけてお湯を入れるだけです。
後はみそ汁に漬け物、サラダなどをさらっと掻き込みます。

 ポットにミルクティーを作って持っていきます。

 6:15分、雪洞の入り口にブロックを積んで閉じます。
さあ、いよいよ戸蔦別岳に向かって出発です。
   
   
 いきなりの急登です。
膝から太股くらいの深雪をラッセルします。
深い雪ですが、思ったより軽いのでラッセルもそれほど苦にはなりません。
何度か交代でラッセすると20分ほどで主稜線に到着です。
   
   南にはうっすらとエサオマンが見えています。

 ここから北に向かって歩きます。
目の前には神威岳が見えています。
   
   後ろには札内岳が見えています。

 7:10分、神威岳の山頂に到着です。
   
    山頂標識もないただのコブです。
とりあえず、一番高いところで記念写真を写します。

   
    前方はいくつかのコブがあり、登り返しを考えるとどれだけ時間がかかるか心配です。

 7時を回ってくると上空が明るくなり、青空が顔を出してきます。
風がほとんど吹いていないので快調に歩きます。というか、この稜線もほとんど雪庇の根本に亀裂が入っています。
慎重に足を運ぶ必要があります。

   
   登っては降るを繰り返します。

 前方に日高幌尻岳の姿がうっすらと見えてきます。
そのうっすらとした姿が、どんどん青空が広がりはっきり見えてきます。
   
   これが、日高幌尻岳です。
カールをいくつも抱いた雄大な姿を見たときは思わず「オーッ!」と声が出てしまいました。
幌尻岳の右手に見えるピラミッドのような山が今日の目標である戸蔦別岳です。
 
   

 しかし、この光景を楽しんでいる余裕はありませんでした。
目の前にはナイフリッジが続いています。
   
    このナイフリッジには気を遣いました。
と言うのは、根元に入っている亀裂をストックで探しながらルートを探さなければなりません。
所々、膝ほどに深雪がつもっています。

 なかなか進みません。
   
 でもきれいです。
太陽を受けた雪庇の雪が真っ白に輝いています。
時間はどんどん過ぎていきます。

   
   戸蔦別岳が大分近くなってきました。

 1803mコブの手前で時計をみると10:20分になっています。
ここまで4時間ほど歩いてきました。
戸蔦別岳が近くはなってきたのですが、まだ1時間半はかかりそうです。
   
 帰りのことを考えるとこの辺でどうするか相談します。
ここから戸蔦別岳までまだ1時間半はかかるでしょう。
ひょっとすると2時間かかるかもしれません。
3人の意見は引き返すことで一致しました。
   
    1803mのコブです。

 このコブまでいくか相談しましたが、それもあきらめることにしました。
すべては、この次の宿題としました。

   
   ここまで歩けたことでそれなりに満足した私達です。

帰り道も決して楽な道ではありません。
いくつもの登り返しが待ちかまえています。
   
   

   
    斜面に大きな破断面が見えています。
    でも、雪崩れたような跡が見あたりません。
    この破断も地震が起こしたものなのでしょうか?

   
   やっと、神威岳が見えてきました。
 この辺りまで帰ってきましたが、登りは足が動かなくなっています。
あえぎあえぎ、最後の斜面を登ります。

結局,BCに着いたのは14時を少し回っていました。
前日の疲れもあり足の動かない一日でした。

 でも、きれいに晴れた幌尻岳や戸蔦別岳を見ることができたのは幸いでした。

北日高・神威岳をベースに戸蔦別岳→エサオマントツタベツ岳を歩く・その1

2013-02-19 21:32:37 | 日高山系の山
 日高の主稜線歩きは、主な部分でいうと戸蔦別岳→エサオマントツタベツ岳とソエマツ岳→ペテガリ岳が残っています。
この戸蔦別岳→エサオマン間を歩くために2月12日から3日間頑張ってきました。

 今回も昨年膝を痛めたKm氏は参加できず3人での挑戦となりました。

 2月12日(火)

 早朝というか深夜の3時半に集合して4時前に札幌を発ちます。
目指すは中札内町です。
深夜の高速道路はほとんど車が走っていません。
おまけに路面が出ているので夏道に近い感覚で走れます。

 今回、戸蔦別岳からエサオマンを歩くことにしたのは理由があります。
それは、トツタベツ林道が除雪されているからです。
今年もトツタベツ川の上流部にある砂防ダムを工事するために夏に車で入れる最終地点となる6号堰提まで除雪されています。
このため、最終人家からの林道歩きが必要ないという好条件なのです。
この好条件のため2日は行程を詰めることが出来ます。

 7時半頃にゲートがある6号堰提で来ることが出来ました。
   
    懐かしいゲートが出迎えてくれます。

 よく見るとゲートの先も除雪されています。
私の情報ではこのゲートの直ぐ脇にある6号堰提が工事中だと思ったのですが、そんな気配はありません。

 まずは登山準備です。
冬は装備が多いので必然的に荷物が増えます。
今回は、スキーで登る予定です。
全員、ジルブレッタのスキーですのでプラブーツを履いて行きます。

 林道を歩いていると後ろから工事のために向かう車が追い越していきます。
どうやらまだまだ先の方で工事をしているようです。

   
    エサオマンの橋を越えたところです。

  エサオマンの橋を越えると神威岳に向かって延びている枝尾根に取り付きます。
ここから一気に急登を登ります。
林の中ですので木々が邪魔になって思うように進めません。
おまけにサラサラ雪でストックがドンドン刺さっていき支持力がありません。
   
    こんな条件の中、まずはコブ山を目指して辛抱が続きます。

 寝不足の身体には、荷物の重さと急登が堪えます。
それもやっと解放されて、尾根に登ることが出来ました。
   
    ここからは、尾根状の急斜面を登ります。

 高度が上がるにしたがって雪庇が張り出してきます。
おまけに雪面がクラストしてきます。
スキーのシールが利かなくなってきたのでデポします。
ここからはツボ足で登ります。
   
    この稜線歩きには地雷が仕掛けられていました。
それは、雪庇の根元に亀裂が入っているのです。
その亀裂の上に雪が降り積もっているので見えないのです。
私は、この亀裂に腰まで落ちてしまいました。

 約7時間かけて、やっと主稜線が見えてきました。
その主稜線には大きな雪庇は十勝側に張り出しています。
そこで、主稜線に雪洞を掘るのをあきらめて今登っている支尾根に掘ることにします。

 慎重に雪の深さを確認して場所を決めます。
ここに掘る雪洞を2泊使用するので慎重に場所を決めます。

 神威岳に向かったやや北向きの斜面に掘ります。
掘り出して直ぐ固い雪にぶつかります。
この固い雪を掘り出すのに苦労して約2時間の格闘です。

 ほとほと疲れ果てて、暗くなってきた5時過ぎに雪洞も完成!
やっとテントに入ることが出来ました。
   
    入口も閉じてしまいます。

 まずは、お酒で体を温めながら水作りに精を出します。
適当に飲んだり食べたりしていると緊張から身体が解きほぐされていくのが分かります。
明日は4時起きで戸蔦別岳までの稜線を歩く事にします。




 

雪洞宿泊訓練

2013-02-06 21:03:20 | 札幌近郊の山
 いつも一緒に山スキーを楽しんでいる仲間で雪洞に泊まったことがないという人がいます。
そこで、万が一山から下山できないことなどに備え雪洞で1泊の宿泊を体験しようということになりました。
私やSz氏は日高で何泊も雪洞に泊まっていますが、Sg氏やSd氏は雪の山に泊まったことがありません。

 場所はいつも山スキーを楽しんでいる朝里岳にしました。

 2月1日、修学旅行生のスキー学習で激込みのゴンドラに乗り込みまずは山頂駅を目指します。
山頂駅からは、いつものように朝里岳の山頂をかすめて朝里岳沢の源頭部へ向かいます。
   
   ゴンドラの駅から少し降るとほどなく急な斜面が目の前に現れます。
この斜面を登るとなだらかな斜面が続きます。
しかし、このなだらかな斜面が曲者なのです。
写真のように目の前を遮る物があまり無いので吹雪かれるとどちらへ進んでいるか分からなくなります。

 今日の天気は、曇りで風が強いのですが視界があるので予定の行動を取ります。

  
   うっすらとゴンドラの山頂駅が見えています。

  
   重い荷物を担いでスキーに乗るのは初めてのSd氏です。
彼は、フルマラソンを走りきる大量がある人なのですが重い荷物が肩に食い込み、ちょっと勝手が違うようです。

 さて、朝里岳の山頂下から斜面を横切るようにして進みます。
この辺りで視界が無くなりホワイトアウト気味なのですが、何度も来ている場所ですのでコースを間違わずに朝里岳沢の源頭にある尾根に到着です。

 今日はここにある雪庇を利用して雪洞を掘ります。
まずはゾンデを使って雪の深さを測ります。
先週来た時よりずっと雪が深くなっています。
これなら大丈夫です。

 雪庇をL字形に削ってステップを作ります。
そこから2個所、2mほど離して2人1組になって掘り進めます。
奥に向かって2mほど掘り進めながら天井を削ります。
しかし、今日は雪庇の下にしすぎたせいか雪が固くて思うように掘れません。

 固い雪と苦闘すること2時間、やっと、2人用テントが2張り張れる大きさの雪洞が完成です。
テントを張って大きさを確認します。
それから掘り進めた入口をブロック状の雪で塞ぎます。

  
  
   テントとテントの間で食事ができるスペースを作ったので5~6m×2mほどの広さでしょうか。

 今夜の食事は、Sd氏の希望により豚シャブを食べます。
たれは、ポン酢とゴマだれです。

  
   ガソリンストーブが真っ赤になって燃えます。
入口を閉じてしまったので外の音はほとんど聞こえません。
入口を閉じたブロックの隙間からゴーという風の音が聞こえてきます。
外は荒れ模様のようですが、雪洞の中は別天地です。

  
   ロウソクを2本立てます。
   実際にはこれほど暗くはありません。
  
   こんな感じです。

  
   豚シャブの宴会が始まります。
お酒もタップリあります。
男4人のおしゃべりはスキーの話からランニングと尽きません。

 締めのうどんも食べて、さあ、あとは寝るだけです。

 初めて雪洞に泊まる2人の感想は思ったより暖かいので寝られそうだといいます。

 いい夢を見ることができますか?