井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

エサオマントッタベツ岳・・・敗退

2010-09-09 21:26:06 | 日高山系の山
ヒグマにあったという事件にもかかわらず精神的な動揺もなかったので
引き続き沢登りを続けます。

順調に沢を登って最後のナメ滝の下に来ました。
エサオマントッタベツ岳の北東カール下には、標高差100m、長さ約300mに渡る
ナメ滝があるのです。

この滝の下には大きな雪渓が残っています。
丁度、回りの枝沢から雪崩が集まる場所のようで、2週間前には大きなデブリの
跡がありました。
このデブルリがまだまだ厚く沢を埋めています。

   
   高度を上げるにしたがって上の方は雲の中です。

この残雪の上から滝の左岸を軽く巻いてナメ滝の上にでます。
ここからは、慎重に歩きますが、ナメ滝の上は思ったより手掛かりが
多いので確実に登っていきます。

 ナメ滝を登り終えると沢が一気に細くなり、ほどなく吸い込まれるように
北東カールに到着です。
2週間前の北東カールは残雪が一面にありテントサイトも無いような有様でしたが
今回はその残雪も半分くらいに減っており、テントサイト適地もいくつかあります。

ここまで、駐車場から5時間半ほど掛かりました。
まずは順調な滑り出しです。
このカールで昼食を取ります。

そして、ここで水を4リットル汲み、沢靴から登山靴に履き替えて稜線を目指します。
ここで稜線に登るルンゼの選択を間違ってしまいました。

安全なルートは一番左側にある札内岳よりのルンゼなのですが、私達は正面に見える
ルンゼからやや左手にある草付きを登り、その奥に伸びるルンゼを選択してしまいました。

草付きを登り終えルンゼにはいるとドンドン傾斜が増していきます。
それでも登っていくと折れ曲がったストックが落ちています。
その先には手袋が落ちています。

ほとんど岩登りのようなルンゼを詰めていくと、泥のような急斜面になり
荷物の重さが負担になり足が滑り登れなくなってしまいました。

ここでやむなく、ザックを降ろし、岩角に縛り付け空身になって先行するS氏から
ザイルを受け取り、さらに10mほど登ったところで足場を確保して、
この地点までS氏がザックを持ち上げてきます。

私のザックとS氏のザックを何とか草付きの斜面に置いて私はさらに上に登ります。
10mほど登るとハイ松が現れます。
このハイ松にザイルの端を縛り付けて、S氏を確保しながらザックを持ち上げてもらいます。
ハイ松を越えると稜線でした。
わずか、30mほどを登るのに約1時間は掛かったでしょうか。

稜線はすでに雲中で視界が悪くなってます。
おまけに風が強く歩くのも大変です。
稜線で軽く休憩を取って気を取り直して先を急ぎます。

しかし、ここでまた間違いを犯してしまいます。
北東カールで昼食を取っていたときに天候も悪いのでエサオマントッタベツ岳の山頂には行かずにジャンクションピークからカクエクに続く主稜線を歩く様に相談していたのですが、
現在位置を十分に確認せずに何気なく下ってしまいました。

しばらく下っていて標高が落ちすぎていることに気がつきました。
回りが雲に覆われ視界が悪いこととジャンクションピークの辺りの地形が良く分かっていなかった事もありますが、エサオマンのコルに向かって下っているような気がしたのです。

S氏がGPSを確認して、私は地図と磁石で確認します。
やはりジャンクションピークからエサオマンに向かって歩いているようです。
そこで回れ右をして今来た道を登り返します。

20分ほどでジャンクションピークに着きます。
ここから、主稜線に続くルートを確認して右手(西側)から吹く風に煽られながら
標高をドンドン落ちしていきます。

今日のテントサイトはジャンクションピークから2時間ほど下った1760m峰の先にあるコルに張る予定です。
ジャンクションピークから先の登山道は下るにしたがってハイ松が濃くなり
行く手を阻みます。
十勝側の草付きに回り込むと笹が濃く登山道がハッキリしません。

笹に足を取られ何度も転んでしまいます。
急斜面ですので一転びすると基の高さまで登るのも容易ではありません。
やっとの思いで1760mのテントサイトに着きますが、ここは吹きさらしで風が強く
テントが吹き飛ばされそうです。

ここより条件の良さそうなコルにあるというテントサイトを目指しますが、草付きの斜面にはクマの掘り返しがあり登山道がハッキリ確認できません。

雲の中で視界が悪い上に辺りが少し暗くなってきます。
ここで、1760m峰の直ぐ下にある狭い場所にテントを張ることにします。
邪魔になる木を少し切って何とかテントを張ります。
テントを張り終えて時計を見ると6時になっています。
辺りはもう薄暗くなっています。

でも、テントを張ってその中へはいるとホッとしました。
尾根筋から十勝川に少し下った場所ですので風の影響は受けません。
でもゴウゴウと風が吹き、辺りの木々を揺らしています。


一晩中風が吹いていました。
テントから顔を出しても天気は昨日と変わらない状況です。
ラジオで天気予報を聞くと全道的に雨になると報じています。

これで、心が決まりました。
この天候が変わらなければ、この先、ハッキリしないルートを探して歩くのは困難であること。
おまけに雨が降ると報じられていることを考えると下山の時に沢が増水している恐れもあります。

相談の結果、ここからエサオマンの沢を下って下山することにしました。
そうなれば手早くテントを撤収です。
二人ともあまり食欲がないのでミニトマトを3個ほど食べただけで下山します。

昨日と同じ様な強風と視界の悪い中、ハイ松を手や身体で避けながらジャンクションピークを目指して登ります。
約2時間でジャンクションピークにたどり着きます。
このピークを札内岳側に少し下るとテント1張りが張れる場所があります。
ここは風も当たらずいい場所ですのでちょっと休憩して行動食を食べます。

この先を少し下ったところから北東カールへ下るルートがありました。
1時間ほど下るとやっと北東ーカールに戻ることができました。
カールの中は風も無く、下の方を見ると明るく青空も見えています。
ここで取り損ねた朝食を食べてゆっくり休んで下山に備えます。


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 こんな事で、今回計画したエサオマントッタベツ岳からカムイエクエチカウシ山まで
の縦走は敗退となってしまいました。
失敗の原因はいろいろありますが、まずは私の勘違いが原因で北東カールから主稜線
へのルートを間違い時間を食ってしまったことがその先の行動に大きな影響を及ぼして
しまったことがあげられます。

もう一つは、思いの外天気の崩れが早かったことです。
強風に加え雨となると登山意欲は一気に失ってしまいます。

でも、ヒグマにあった事にもめげずに取り敢えず1760m峰まで行けただけでも
めっけモンです。
この行動はきっと次に繋がるはずです。

再度、来年はこのコースを歩き通したいと思っています。