井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

ヌビナイ右股を遡上しソエマツ岳からピリカヌプリの稜線を歩く・その2

2012-09-29 22:19:21 | 日高山系の山
 9月13日(木)
昨夜は暖かくテントの入口は網だけを閉じていました。
そのため、入口に頭を向けていた私は星空を楽しみながら寝ていました。

 朝4時、まだ暗いのですが起きます。
今日はこのC1からソエマツ岳に登りピリカヌプリまでの稜線を歩かなければなりません。
予定では約11時間の行動を覚悟しなければなりません。

 いつものように朝食はサッサと雑炊を掻き込み出発の準備をします。
この辺の手際は何も言わなくても各自がてきぱきと済ませます。

 5:25分、いよいよソエマツ岳に向かった上二股の右股を登ります。
   

 出だしはまだ目が覚めていないのでゆっくりを心がけて岩を踏みしめます。
ドンドンと水量が細くなっていきます。
それと共に傾斜も増してきます。
   
   こんな滝が次々と現れ、最後は滝の連続となります。
   
   
   最初は濡れないように水流のそばを登っていましたが、この辺りではそういうわけにはいきません。
水流を跨ぐようにしてドンドン登ります。

 最初の940m二股は左に入ります。
今回はganさん(通称ganさん、北海道の沢に関する本の著者)の沢本を参考に登ることにしました。

   
    On氏も順調に登ってきます。

 1240m三俣はganさんの本では左股へ入ってから中俣へ乗り越したとありますが、中俣はそれほど難しいとは感じなかったので3人で協議した結果、中俣を登ることにします。
この辺りから高度感がありドンドン標高を稼いでいるのが実感出来ます。

   
    やがて、沢水が涸れて岩だけの沢形を登ります。
その手前で水を汲んでおきます。
沢形が不明瞭になって草付きの斜面が現れます。
この草付き斜面のいたるところにクマの掘り返しがあります。
どこが踏み跡か分からなくなってきます。

辺りがガスで真っ白です。
視界が無いので右手登るとハイ松に突き当たります。
そこでハイ松を回り込むように左へ回り込み草付き斜面を登りきると稜線に出ました。
稜線にはハッキリとした踏み分け道があります。

 8:00分、ちょうどソエマツ岳の山頂に到着です。
ソエマツ岳の山頂は何もないので視界もない中で本当に山頂か確認します。
On氏が山頂の先を確認すると踏み分け道が消えているといいます。
そして、倒れていた三角点の標石を見つけましたので、ここが間違いなくソエマツの山頂です。
   
 まずは予定時間より早くソエマツ岳の山頂に到着することが出来て一安心です。

 本来なら、このソエマツ岳の山頂から神威岳への稜線やこれから歩くピリカヌプリの稜線が見えるはずですが、今は真っ白なガスの中です。

 20分ほど休んでからいよいよピリカヌプリへ向かっての稜線歩きのスタートです。
今回の本当の目的はここからの稜線歩きなのです。

 ガスで視界のない中、時々消えるような踏み分け道を歩きます。
次々と小さなコブ山が現れます。
その中には岩峰となっている場所もあり慎重に一つ一つを越えていきます。

 12:20分、1529mのコブに達した時ガスがパーッと晴れました。
   
    これからある句稜線が見えました。
ピリカププリの山頂はガスの中です。

 ここから先は踏み分け道がハッキリしないとganさんの本には書いてありましたが、以外にも踏み分け道は続いています。
その踏み分け道の所々に1センチほどの黒く丸い分が落ちています。
この分は鹿の糞です。
さらにクマの糞もあり、踏み分け道はまさに獣道なのです。
そこを私達も歩かせてもらいます。
   
   
 天気は相変わらずですが視界が開けてくると俄然やる気が湧いてきます。
 これが最後の登りのようです。

 最後の登りを登っている時にトヨニ岳方面の稜線が見えてきました。
   
    この稜線を3月に歩いてピリカヌプリまで来たのです。

 ピリカヌプリ山頂手前にあるコブに到着。
ここからハッキリした踏み分け道を山頂へ向かいます。
この時に、ピリカヌプリからC1へ下る踏み分け道を探しながら歩きましたが、沢から稜線に向かって数本の踏み分け道があります。
そうこうしているうちにピリカヌプリの山頂へ到着しました。

 13:30分、ピリカヌプリの山頂に着きました。
これで3月にやり残した宿題を片づけることが出来ました。
   
    ピリカヌプリの山頂も三角点の標石があるだけです。
その三角点の標石を撫でてしまいました。
山頂には1張りテントが張れる草の平らな場所がありました。

   
    C1に向かっての沢です。
      右岸の下の方に雪崩れた様な跡が見えます。

 ここまで来ると暗くなるまでにC1へ下る目処が付きました。
ゆっくり休んでから下ります。

 山頂から少し戻っていよいよC1への降りです。
最初はガラガラの沢形を下ります。
急な斜面ですので浮き石に足を取られないように慎重に降ります。
1時間ほど下った三俣で水流が復活します。
1250mまで一気に下りました。

ここからは快適な沢降りです。
   
 疲れてはいるのですが、3人の足取りは快調です。

   
   雪崩れ斜面の下に来ると大量の流木があります。
沢靴でこの流木に乗ると滑ります。
慎重にルートを見極めて降ります。

 そして、最後に大きな滝が行く手を阻みます。
どこから降るのかと思っていると右岸にハッキリした巻き道がありました。
   
 ちょっと離れてみてもなかなか勇壮な滝です。
   
 最後はこの滝から右岸をへつるとテントが目に入ってきました。

 16:40分、テントサイトに到着です。
まずは、このために用意したサッポロクラッシクのビールで乾杯をします。
このビールはノドに沁みて美味しかった~ぁ!

 無事に稜線歩きを終えた余韻に浸りながら濡れた服を着替えたり焚き火を焚いたりして過ごします。
この時間は本当に幸せでした!    

ヌビナイ右股を遡上しソエマツ岳からピリカヌプリの稜線を歩く・その1

2012-09-23 20:36:27 | 日高山系の山
 日高の主稜線歩きは夏道のあるところを歩き終え、残雪期を使って残りを歩いています。
今年の2月にトヨニ岳からピリカヌプリ、さらにソエマツ岳まで歩く計画でしたが天候悪化のためピリカヌプリで引き返し、ソエマツ岳までの稜線を残しました。
 この時には、ソエマツ岳からピリカヌプリの稜線はヌビナイ右股を遡上して歩くことが出来るので夏に歩きましょうということで撤退しました。

 そして、8月上旬にヌビナイ右股を遡上してソエマツからピリカヌプリを計画して大樹町のコタンキャンプ場で前泊して入渓の予定でした。
しかし、天気に翻弄され雨のためこのキャンプ場に2泊して断念するという散々な結果で敗退しました。

 今回は、前回の轍を踏まないように1週間の余裕を持って計画しました。
当初の計画では9月11日から入渓の予定でしたが、天気予報では12日の方がいいようですので1日ずらして12日の早朝に札幌を発って入渓することにしました。

 9月12日(水)

 朝4時に集合して一路大樹町へ向かいます。
今回のメンバーは、Km氏が右膝を痛め参加を断念。
私にSz氏、On氏の3人で挑みます。
3人ともヌビナイ川は初めてです。

 前回の偵察で入渓地点までの道は迷う心配はありません。
7:30分、ヌビナイ川右岸の林道を進み車をデポする場所に到着。
途中、鹿鳴橋で水量と水の濁りをチェックしますが問題ありません。
綺麗な水は橋の上から川底が透けて見えています。

 車をデポする場所に着きましたが、その先の林道も綺麗に両側の草が刈り払われています。
もう少し先まで車で行けそうですが、私達はここに車をデポして林道を歩くことにします。
   

 10ほど歩いたところから入渓します。
この場所はヌビナイ川が直ぐ近くに見えていますので帰ってきた時にも直ぐ林道へ上がれると思ったからです。
入渓して直ぐ渡渉します。
   
 川幅は広くながれも穏やかです。
まずはしばらく振りの水の感触を楽しみます。

 左岸の川沿いを歩きます。
ヌビナイの川原にある岩は白く輝き川幅もあるので太陽の日差しも十分、明るい川です。
10分ほど歩くとクマの沢二股に到着です。
   

 ここから先も広い川原を右に左に適当に渡渉しながら歩きます。
沢水は温く天気は快晴、太陽の日差しを受け汗をかきながら歩きます。
   

 2時間ほど歩くと滝が見えてきます。
   
 さあ、ここからは慎重に歩かなければいけません。

   
 両岸の岩は滑らないので浮き石に気を付けながらドンドン先へ進みます。
ほどなく両岸が狭くなりゴルジュになっています。
   
   
 ここは右岸を高巻きます。
この巻き道がいやらしいのです。
草付きの斜面ですが、ルートがハッキリせず木の枝に掴まったりしながら慎重に越えます。
そして最後は固定ロープを使って川に降ります。

 降りたところはゴルジュの上です。
落ち口が滝になっており、ここから落ちると命が・・・否が応でも慎重にならざるを得ません。
   
 この落ち口を見て気が付きました。
ここで渡渉した人が流れに足を取られ滝に落ち、ビレイしていた両岸の男性が巻き込まれ3人が亡くなった事故の現場でした。
心の中で3人のご冥福を祈り、私達も渡渉します。

 膝下ほどの深さですが、水流があり靴底を川底から離さないように慎重に渡渉します。
川幅は3メートル足らずですが一番流れの速いところの1歩は慎重に足を運びます。
ここからはゴルジュ帯が続きます。

 次の高巻きが問題の高巻きです。
左岸を一段上がったところからゴルジュの上をトラバースします。
   
 目の下にはゴウゴウと滝が落ち、その水が渦を巻いてゴルジュを流れます。
   
 下流も白く泡だった水が流れていきます。
滝の落ちる様子から下流まで目に見える流れは迫力満点です。

 トラバースルートの手前でザックを置いてまずは空身で偵察します。
すると、リングボルトが2個所ほど打たれており、ザイルも渡してあります。
一度上流までトラバースしてみます。
確かに、岩に付いた土が剥げ足場の悪いところがあります。
岩の角が丸くなっておりステップの置き場がハッキリしません。
そして、目を下に転ずると白濁した流れが20mほど下を流れています。
足がすくみそうになるという感想も無理はありません。

 私達はこのルートを少しでも安全に渡れるようにボルトを打つつもりで用意してきました。
On氏がその場所を一番下流側の岩にステンレスのボルトを打つことにしました。
そうすれば、このボルトと残置されているリングボルト2本を使えばザイルがセット出来ます。

 というわけで、さっそくOn氏がドリルで岩に穴を開けます。
この作業は交代で約30分ほど掛かりました。
その間、Sz氏は残置されているロープを整理したり切れた細引きなどを外したりしています。

 約1時間ほど掛かってこれらの作業を終えました。
早速、持ってきたザイルをボルトに通して様子を見ます。
ピーンと張ったザイルにビレイを取って歩くと安心感が違います。
空身で何回も歩いていると恐怖心も薄らいできます。
ザックを背負ってのトラバースはサクサクと歩けます。
帰りのことを考えてザイルは残していきます。
   
 沢はドンドン狭くなってきます。
   
 でも、こんなところもありホット一息つきます。
 
 そうしているうちに再度右岸の高巻きに入ります。
この高巻きも足元がズルズル、ズブズブの泥だったり、ルートがハッキリしないので枝を掻き分け登ります。
そして目にしたのがこの光景です。
   
 前方にモヤがかかっています。
沢には大量の流木と、雪渓が残っています。
私の記憶では、この辺りから七つ釜の綺麗な景観が広がるはずなのですが・・・
目に見える沢は流木の山です。
   
 これでは沢に降りるわけにはいきません。
そのまま高巻きを続けます。
すると、50mほど先まで雪渓で沢が埋まっています。
シュルンドが口を開け雪渓の上に降りることも出来ません。
我慢して急な草津貴社面をトラバースしているとシュルンドのない場所があります。
私はそこから雪渓の上におります。

 雪渓の上は泥と流木がいっぱいあります。
しかし、雪渓は凍っており崩れる心配はないようです。
割れ目があるので覗いてみると5~6mの深さがあるようです。
On氏とSz氏に雪渓は大丈夫だと伝え、取り敢えず一番上流側で降りられる場所を探します。

 幸いに左岸の上流部の雪渓は厚さが1m50センチほどでシュルンドもなく横たわっている白樺の木を使うと上手く沢の岩に降りられそうです。
   
    この木を利用して雪渓から降りました。

 そして、雪渓の上流部を見ると七つ釜を飲み込むように雪渓が口を開けています。
   
 いや~あ、ここに飲み込まれたら命はないでしょう。

 ここから上流部は
3~4mほどの滝とお釜が続きます。
   

 最後の滝を越えると今日のキャンプ地となる上二股が近づいてきます。
   

   
 一番奥が上二股です。
しかし、ここからの登りが辛かったです。
やっと着いたという安心感からか足が進まないのです。

 15時、歩き出して7時間、やっと上二股に到着です。
Mocoさんに聞いていた一番奥に行くと、なるほど、小さな沢水が流れており平らなテントサイトがあります。

 今日の宿が決まってホット一息です。
   
 
 On氏が焚き火に挑戦です。
私は焚き火の焚き付け用に新聞紙を用意してきています。
少ししけった枝に何とか火を付け焚き火も完成!
まずは濡れた服を脱いで着替えます。

 あとはダラダラと食事の準備です。
今夜は麻婆茄子、沢山食べるぞ~!
   


 


表銀座から槍ヶ岳を経由して裏銀座へ・その5

2012-09-19 20:54:16 | 北アルプスの山
 8月22日(水)
 今日も良い天気です。
小屋の正面には昨日下ってきた三ッ岳方面の山が朝日に輝いています。
   
 今日はいよいよ高瀬ダムへ向かって降ります。
このコースはブナ立尾根と行って表銀座の合戦尾根と同じ北アルプス三大急登の一つなのです。

 5時少し前に朝食が出来たとの案内があります。
まずは朝食を食べて、それから私は烏帽子岳へ登らなければなりません。
今日はほとんどの人が高瀬ダムへ下るようです。

 私の頭の中には高瀬ダムから大町までの交通費が頭を離れません。
といいますのは、高瀬ダムから大町までタクシーで8千円ほどかかるのです。
これを相乗りすると幾分安くあがります。
そのためには、高瀬ダムに着いた時に相乗りしている人がいなければなりません。

 こんな事情で私は、烏帽子岳へ急いで登り、ブナ立尾根を下り、先に降っている人達に追いつかなければなりません。

 5:15分、朝食もそこそこに烏帽子岳へ向かいます。
小屋の人に聞くと往復1時間半ほどだといいます。
緩やかな坂を登り白い砂のような砂礫地を歩きます。
両側には高山植物を保護するために緑色のロープが張られています。

 ニセ烏帽子といわれているピークに着きます。
   
    ここから烏帽子岳の尖った山頂岩場が見えます。
この岩の上が山頂です。

 そしてその奥には、立山と剣岳が朝日に輝いています。
   
    今日は剱岳も見えています。

 途中に咲いていた花々です。
   

 烏帽子岳の山頂部は完全な岩場です。
鎖やボルトが打ってあります。
慎重に登ります。
5:50分、山頂に到着!

 山頂は狭く写真を写す場所もありません。
慎重に降って小屋へ戻ります。
1時間20分ほどで小屋へ戻ることが出来ました。

 さあ、ここから先に降った人達を追いかけます。
私の計算では3時間掛かるといわれている高瀬ダムまで2時間で降れる計算です。
急な登山道であればあるほど早く降れます。

 それは、日高のコイカクを下った時の時間が頭にあるからです。
この時は標高百メートルを約10分で下りました。
ですから千メートル下るとして1時間40分あれば降れる計算です。

 小屋の左手を少し登ってからいよいよ急な降りとなります。
最初からつづら折りの急坂が続きます。
つまずかないように慎重かつ素早く下ります。

 快調に下ります。
1時間ほど下りますがここで休むわけには行きません。
もう少しと思って頑張っていると人の話し声が聞こえてきます。
男性2人が下っています。
この人達をおいぬいてさらに下ります。
3分の2ほど下ったと思われる辺りで下から登ってくる人がポツポツ現れます。
それらの人に挨拶をして下っていると70歳過ぎのご姉妹に追いつきます。

 「お先に!」と行って下ると階段が見えてきます。
   
どうやらもう少しで川原にでるようです。

 1時間30分ほどで下ることが出来ました。
   
川原の向こうに高瀬ダムの緑色の水が見えています。

 ここから上流を見ると滝が見えています。
   
    なかなか立派な滝です。

 仮造りの橋を渡ります。
   

 そして、吊り橋を渡りトンネルを潜ります。
   
   



 トンネルを抜けたところが高瀬ダムの上でした。
ダムの上を歩いて右岸側に行くとタクシーが数台待っています。
運転手さんが、「乗りますか?」と聞くので、「あとから来る人と一緒に乗るので待ってください」とお願いします。

 10分ほど待っているとご姉妹が降りてきます。
そこで相乗りをお願いして大町まで行けることになりました。
一人当たり3千円弱で済みます。

 バタバタとタクシーに乗って大町へ向かいます。
これで私の縦走が終わりました。
初日の雷以外、天気に恵まれた表銀座から裏銀座への縦走でした。

 さあ、大町へ行ったらさっそく風呂に入って汗を流すぞ~!

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

  最後はバタバタしましたが4泊5日で表銀座から裏銀座へ抜けることが出来ました。
 ここまで歩いてくるとこの烏帽子岳からさらに北へ向かって歩きたくなってきました。
 ここから後ろ立山を歩き日本海まで歩くと北アルプスの全山を縦走出来ます。
 北アルプスの1回目は西穂高岳から槍ヶ岳でした。
 今回は槍ヶ岳から烏帽子岳までを歩きました。
 さらに北へ向かって歩くのが当然かなと思います。
 目指すは日本海・親不知の海岸です。

表銀座から槍ヶ岳を経由して裏銀座へ・その4

2012-09-06 20:59:34 | 北アルプスの山
 8月21日(火)

   
   三俣蓮華岳に朝日が差しています。
今日も良い天気です。
しかし、午後からは雲が出て雨の予報なのです。

 三俣蓮華岳は、双六岳を経由して槍ヶ岳方面、黒部五郎岳を経由して立山・剱岳方面、さらに、鷲羽岳を経由して白馬岳へと三方向の中心となっています。
そして、黒部川の源流部となる雲の平や高天原などの高層湿原が広がっています。

 5:20分、三ツ俣山荘を出発します。
今日は烏帽子小屋まで歩けたらと思っています。
コースタイムでは10時間を超すコースです。
午後から雨の予報では急がざるを得ません。
   
    三俣山荘です。

 まずは目の前に聳える鷲羽山の山頂を目指します。
鷲羽岳には1時間で登ることが出来ました。
まずは順調な滑り出しです。
   

 目の前には次の目標となる水晶岳が聳えています。
   
 そして遠くには富士山も見えています。
   

 いつも天に突き刺さっているような槍が岳です。
   

 ワリモ岳の山頂はよく分からないうちに通り過ぎてしまいました。
足の方は快調に動いています。
左手に広がる雲の平を見ながら機会があればぜひ足を踏み入れたいと思いました。
何といっても黒部川の源流部です。
とても魅力的な場所だと思います。

 7:40分、水晶小屋に到着です。
標準のコースタイムより早いので一安心です。
   
    小屋の前にあるベンチにザックを置いて水だけ持って水晶岳を往復します。
30分ほど歩いて水晶岳の山頂です。
途中1個所梯子場があります。
山頂部は岩だらけですので、十分に気を付けて登りました。
   
    山頂標識の右に見えるのが黒部五郎岳です。

 この山頂は360度の眺望が欲しいままに見ることができます。
正面に見えるのが赤牛岳です。
   

 左手の奥には立山や剱岳も見えています。
   
 後ろを振り返ると三俣蓮華岳や双六岳、一番奥には笠ヶ岳が見えています。
   

 山頂で休んでいる大学生らしいグループがいました。
   
    こちらを向いている女性がリーダーのようです。
「8時まで休憩するよ」などといってますが、メンバーの男性から「いま、8時10分です」と突っ込まれています。
あわてて「9時まで休憩!」と言い直しています。
とっても、微笑ましく、思わず横で笑ってしまいました。

 水晶岳の山頂で5分ほど休んで慌ただしく水晶小屋へ戻ります。
一度歩いた道は愛着があります。
   
    思わず後ろを振り返り、水晶岳の姿を目に焼き付けます。

   
    チシマギキョウが咲いていました。

 水晶小屋の手前に小さな石仏が安置してありました。
   
    思わず手を合わせて、これから下山までの無事を祈りました。

 8:40分、再度、水晶小屋に戻ってきました。
ここで少し休憩を取ります。
ここまでかなりのペースで歩いてきましたので軽食を取って休みます。
小屋で缶ジュース(3百円)を買います。

 目の前にはこれから歩いていく野口五郎岳らしい山が見えています。
目の前には赤茶けた岩肌の急な尾根がズーッと下まで見えています。
水晶小屋からはこの斜面を降らなければいけません。
そして、降った分だけまた登り返さなければ行けません。

15分ほど休んでこの急な細い尾根を降ります。
   
    登り返してから振り返ると、この赤茶けた斜面の一番上に水晶小屋が見えていました。

 9:25分、東沢乗越に到着です。
ここには若い女性が2人休んでいました。
お湯を沸かしてノンビリしています。
   
    お地蔵さんがいました。
私は挨拶をしただけで先へ進みます。

   
    ここから見た槍ヶ岳です。
    手前にある赤い地肌の山が硫黄岳でしょうか。

 ここから先は岩が累々と折り重なった道でした。
こういう道は大好きです。
ポンポン飛ぶようにして歩きます。
   

 9:55分、ちょっと疲れたので休む場所を探していました。
丁度いい日陰があったので岩陰で休みます。
素路と、「こんにちは!」と声が掛かります。
よく見ると、私が休もうと思った直ぐ横の岩陰で休んでいる男性がいます。
挨拶をしてちょっと話し込んでしまいました。

 私より少し年上の男性です。
烏帽子小屋から歩いてきたようです。
今日は三俣山荘まで歩くといいますので、ちょうど私とは反対のコースを歩くようです。
しかし、鷲羽岳は山頂へ行かずに岩苔乗越から鷲羽岳の山腹をトラバースするコースを使うといいます。
私は、初めてですのでできるだけ山頂部を繋いで歩いてきましたが、そういうルートもあるようです。

 さて、この男性とは10分ほど話して別れました。

 目の前に標柱が見えてきました。
   
    真砂岳分岐の標識でした。10:25分でした。

 ここからは野口五郎岳に向かって緩やかな登山道を歩きます。
   
    ザラザラな道をゆっくり登っていきます。
途中で、野口五郎岳の山頂へ向かう道とそのままトラバースして野口五郎小屋へ向かう分岐があります。
私は迷わず山頂へ向かう道を登ります。

 11:00分、野口五郎岳の山頂に到着です。
   
 ここまで来てホット一息つけました。
天気は今のところ崩れるような様子はありません。
この山頂から野口五郎小屋までは10分ほどでしょう。
すぐ目の下に小屋の青い屋根が見えています。

 今日も暑いので水をかなり消費しています。
野口五郎小屋で水を買おうと思い寄ります。
   
    小屋に向かって降る階段が綺麗に掃除されています。
小屋前の広場も刷毛目が綺麗に付けられています。

 11:10分、小屋を覗くと小屋の人達がちょうど昼食中でした。
水を1リットル買って、さらにコーラを1本もらいます。

 小屋の玄関先に座り込んで行動食を食べながらコーラを飲みます。
疲れてくるとコーラを飲みたくなるのは何故なのか?不思議ですね。

 野口五郎小屋から烏帽子小屋までは2時間30分の行程です。
天気は良いので20分ほど休みました。

 ここからは三ツ岳まで軽い登りがあります。
そこまで50分位で着くことができました。
あとは烏帽子小屋のある尾根に向かって降るだけです。
   

 目の下には高瀬ダム湖の緑色の水が光っています。
   

 立山が少し近くなってきました。
   
 
 ここから一気に尾根を降ります。
途中で団体のツァーが登ってきます。
この場所で会うということは野口五郎小屋泊まりでしょうか?
それにしてはノンビリと歩いています。
雲が出てきたので雨の心配があります。
私は、雨に当たりたくないので烏帽子小屋目指して飛ばします。

 下から走って登ってくる人がいます。
何も持たないで走ってきます。
私はツァー客が忘れ物をして烏帽子小屋に人が追いかけてきたのだと思いました。
(あとで聞いたところ、この人は毎日趣味で走っているといいます。)

 13:25分、やれやれ、烏帽子小屋に到着です。
   
    雨に当たらずこの小屋に来ることができました。
     ホット、一安心です!

 今日はあまり休まずに歩き通しました。
約8時間で三俣山荘から烏帽子小屋まで歩くことができました。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
 
   この夜に烏帽子小屋に泊まった人は16人~17人です。
  母親と娘さん、父親と息子さん、70歳を越えたご姉妹、
  舟窪小屋から歩いてきた男性が2人に女性が1人、
  同じテーブルに座っていろいろな話をしました。
  舟窪小屋から歩いてきた男性の一人は、きょう歩いたコースで
  北アルプス全山を縦走したといいます。
   また、70歳を越えた女性の姉は、高校生時代に山小屋でアルバイトを
  したことがあり、この経験が社会に出てからとても役に立ったと話してくれます。
  まったく初対面同士での話ですが、とてもいい時間を過ごすことができました。
  こういった時間を持つことができるのも、山の持っている魅力の一つですね。  

表銀座から槍ヶ岳を経由して裏銀座へ・その3

2012-09-02 20:34:24 | 北アルプスの山
 8月20日(月)

 今日も良い天気のようです。
   
    夜明け前の朝焼けです。

 そして槍ヶ岳の山頂で日の出を迎える人達は、すでにヘッデンを付けて登っています。
   

 私達はゆっくりと小屋の前で日の出を楽しみます。
私は、群青色の空が少しずつ茜色に輝いてくるこの時間が好きです。
沢山の人がカメラを構えて日の出を待っています。

 小屋の朝食は5時からです。
今時期はこの日の出の時間と朝食開始の時間がだぶっています。
私達は朝食を優先します。
   
    食堂に陽が射して播隆上人の像に陽が当たります。

 今日から私達は別行動となります。
みいちゃんはキレットを越えて北穂高岳から涸沢を目指します。
私はここから裏銀座の山々を歩きます。

 5:40分、みいちゃんは槍ヶ岳山荘の前からキャンプサイトの方へ降り大喰岳を目指します。
私は山草の前を右手に回り込み双六岳を目指します。
山荘の前で握手をしてお別れです。
   
   目の前に裏銀座の山々が朝日に輝いています。
この方面は初めてですのでどの山が何という名前かまだハッキリ分かっていません。
まずは急な西鎌尾根を降ります。

 正面の笠ヶ岳に槍ヶ岳が陰となって映っています。
大槍が鋭く尖っているのがよく見えています。
   

 戯れた登山道ですので慎重に降ります。
浮き石に足を取られると大変です。
ジグを切って降るのでドンドン高度が落ちていきます。
所々鎖場もありますが、難易度でいうと東鎌尾根より易しいかも知れません。

 6:15分、千丈乗越に到着です。
ここから新穂高温泉に向かって降るコースがあります。
この辺りで後ろを振り返ると岩ばかりの斜面の先に形を変えた大槍が見えています。
   

 そして、焼岳と乗鞍岳も見えています。
   
    手前の小さく見えるのが焼岳で後ろが乗鞍岳です。

 進行方向に見える裏銀座の山々です。 
   
 
 少し降っては後ろを振り返姿を変え遠くなってゆく槍ヶ岳の姿を楽しみます。
   

 何度かの休憩を挟んで8:20分、樅沢岳に到着です。
   
   すっかり遠くなった槍ヶ岳です。

 そしてまだまだアップダウンが続きます。
   
   この辺りまで来ると登ってくるグループとすれ違います。
中には大きなザックの大学生と思われるグループが幾組も登ってきます。
挨拶も元気な声が帰ってきて気持ちがいいです。

   
 一番奥のピークが笠ヶ岳です。

   
    後立山の山が遙か彼方の見えます。

 下の方に山小屋が見えてきました。
双六小屋です。
   
 ここからの降りがなかなかでした。
細かくジグを切った登山道ですのでなかなか小屋に着かないのです。

 8:40分、やっと双六小屋に到着です。
小屋の前にあるベンチで一休みします。

 小屋の前にはジャージ姿の子供達が沢山います。
   
 話を聞きますと、地元の中学2年生による学校登山の子供達でした。
ベンチに座った男子生徒に「楽しかったですか?」と聞くととても明るい声で「楽しかったです!」と返ってきます。

 まずは女子が出発のようです。
小屋前に整列して小屋の従業員の人達に元気な声で挨拶しています。
その姿がとても可愛かったです。

 引率する先生達は大変だと思いますが、このような学校登山を実施しているのはとてもいいことだと思います。
山小屋で1泊して双六岳に登ったようです。
とてもいい思い出となったことでしょう。

 可愛い子供達の姿を見て私も元気が出ました。
20分ほど休んだので双六岳に向かって出発します。
ここからは双六岳の山腹をトラバースして三俣山荘に向かうコースもあります。
でも、私はショートカットすることなく双六岳を目指します。

 急な登りを辛抱して登ります。
ちょっと岩が重なるような登山道ですが標識マークがしっかり付けられています。
30分ほど頑張ると平らな斜面に出てきました。
その先に人が沢山いるところがあります。
どうやらそこが山頂のようです。

15分ほど頑張ると双六岳の山頂でした。
9:45分、山頂に到着です。
   
   沢山の人が休んでいます。
   
    私も1枚写してもらいました。

 ここから三ツ俣蓮華岳へゆったりとした登山道を降ります。
正面の奥が水晶岳、右に見える山が鷲羽岳でしょうか。
   

 三ツ俣蓮華の手前でピッケルを大きなザックに取り付けたグループが登ってきます。
この場所でピッケルを持っている人達は初めて見ました。
男性3人、女性2人のグループですが、先頭を歩いている女性は真っ赤な顔から汗がしたたり落ちています。
おまけにハア、ハア、と荒い息をしています。
声を掛けるのが憚れるくらいです。

 どうやら剱岳から歩いてきた大学生のグループでしょうか?
そう考えるのは、以前読んだ本の中に大学生の夏の合宿は剱沢をベースに岩訓練をして、最後は上高地を目指してボッカ訓練を行うと書いてあったのを思いだしたからです。

 思わず、「頑張ってください!」と。声を掛けてしまいました。

 10:50分、三俣蓮華岳に到着です。 
   
 ここで、休んでいる男性に声を掛けて山の説明をお願いしました。
鷲羽岳、水晶岳、黒部五郎岳などなど、目の前に見える山の説明を聞く事が出来ました。
お陰で、山の形をしっかり目に焼き付けることができました。

 20分ほど休んでから三俣山荘へ向かって降ります。
ザレ場を降って、トラバースルートと合流します。
そこからは灌木の中を降ります。
   
    前方に赤い屋根が見えてきました。三俣山荘です。

 途中で登ってくる団体さんに遭遇しました。
   
    道を譲って通り過ぎるのを待ちます。
    ほとんどの人が私と同じか年上の人達でした。

   
    雪渓の横がテントサイトのようです。
このロケーションは最高ですね。
雪渓が融けた冷たい水を飲みましたが、暑さで火照った体には最高のご馳走でした。
コップで3杯も飲んでしまいました。

 11:50分、三俣山荘に到着です。
まだ時間が早いのですが、今日はこの小屋に泊まります。
この先にある水晶小屋は混雑しているので宿泊を遠慮して欲しいとの紙が貼られています。

 宿泊の受付をしてしまうと何もすることがありません。
小屋の前にあるベンチで槍ヶ岳を見て過ごします。

   
    夕方の槍ヶ岳です。

 談話スペースで備え付けの本など読んで過ごします。
そこに山賊の話を書いた本がありました。
この山荘の所有者である伊藤さんが書いた本です。
まだまだこの辺りの開発がなされていない時代にこの周辺に山賊といわれる人達がいたというお話です。
とても楽しく読んでしまいました。
山小屋の開設に至る苦労話なども満載です。

 夜、小屋の前で星空を見ました。
天の川が綺麗でした。
白く輝きミルキーウェイという言葉がピッタリです。
一緒に見ていた大阪から来た女性に知っている星座を説明します。
カシオペアに大熊座、夏の第三角、明るく輝く星空を見て、明日も晴天になると思いました。