3月7日(月曜日)
朝4時、狭いテントの中で目を覚まし山頂アタックの準備をします。
昨夜作った鍋の残り物を利用して雑炊を作り朝食とします。
6時15分、準備ができたのでいよいよ山頂へ向けて出発します。
天気は薄曇り、でも空は明るく風は弱いので天気はまあまあです。
今回はスキーを最大限に利用するつもりですのでスキーを履いて登ります。
ゆるく台地状の尾根の開けた斜面を登っていきます。
両側には沢がありますので地形的には非常に分かりやすいルートです。
斜度が増してくると針葉樹の林です。
一瞬雲が切れて前方の山肌が見えました。
正面に真っ白で浅い凹形の山肌が見えます。
そこは木が無く斜度もあるので雪崩の心配があります。
私達は左側に回り込むようにして国境稜線に近いところから
上に向かって細く雪の付いている斜面を利用することとしました。
2時間ほど急な斜面の登るといよいよ森林限界です。
ここから先はハイ松がところどころで顔を出し、表面がクラストした斜面となります。
スキーアイゼンを装着してアイゼンとシールの利きを利用しながらジグを切って登ります。
O氏が遅れだしてきます。
O氏のシールは私達のとは違って脱着式です。
おまけに金具がジルブレッタですのでスキーアイゼンが着けられません。
そのため固くクラストした雪面に対し私達と同じスピードで登ってくることができません。
O氏がスキーを脱ぎアイゼンを履いてスキーを紐で縛って引っ張る作戦にでます。
しかし、歩くスピードに差が出てきます。
森林限界を越えたあたりから遮るもののない斜面ですので西風が強く当たり
ジグを切っていても左に向くと冷たい風が顔を襲います。
ジャケットのフードをかぶりその風に耐えます。
9時30分、山肌の傾斜が緩くなってきます。
標高1700メートル辺りまで登ってきたようです。
どうやら通称大平山まで登ってきたようです。
O氏との距離が大分開いてしまったので休憩場所を探します。
この辺りは風が防げるような木が見つかりません。
ようやく前方に吹き付けた雪で2メートルほどモンスターになっている木が見えてきます。
私とS氏がこのモンスターの陰に避難して遅れているO氏を待つことにします。
私はザックからスコップを取り出し少しでも風を防ぐために雪の斜面を掘ります。
S氏はスキーからシールを外しデポの準備に入ります。
そして、遅れているO氏を迎えに行きます。
私はモンスターの風下川を少し掘り下げツエルトを出して避難場所を作ります。
ツエルトをザックで押さえ何とか風から身体を守るスペースができたときに
O氏とS氏がやってきます。
西風が強いのですが幸いに視界はまだあります。
3人で相談した結果、まだ3時間ほどしか歩いていないこと。
視界もあるのでもう少し頑張ってみることにしました。
ここからスキーをデポして全員アイゼンを装着します。
ハイ松に足を取られないように注意して登ります。
大平山は平坦な場所です。
視界が落ちてもルートを間違わないようにデポ旗を売って進みます。
大平山の平坦部を抜けるあたりから空の明るさが一段と増してきます。
上空の空に青空が見えてきます。
視界が開けるにしたがって進行方向に南陵が姿を見せてくれます。
後ろを振り返ると丸山が姿を見せてくれました。
しかし、その姿は丸山というイメージからはほど遠く急な稜線が山頂まで続いています。
いよいよ南陵の核心部に向かって進みます。
ここからは一歩一歩を確実に歩きます。
左側は急な雪の斜面が谷底へ続いています。
右側にはところどころ雪庇あるので近づけません。
慎重の上に慎重を重ね進みます。
ドンドン斜度が増してきて尾根が狭くナイフ状になってきます。
このナイフリッジを雪庇にも注意しながら進みます。
前方に岩尾根が見えてきます。
左側がスッパリと切れ落ち雪も付いていません。
どうやらこの辺りが竜の背のようです。
竜の背は右側の斜面に回り込みます。
右側の斜面は雪がほとんど付かず地表が出ています。
幸いなことにこの斜面は西風が当たらないので休憩することにします。
時計を見ると10時40分、大平山から1時間ほど歩いてきました。
ここで一息つけたのは大きいです。
精神的に余裕を取り戻しさらに斜度を増してくる尾根を進みます。
雪庇は真っ白な雪質なのでそれを目安にして足元に注意して歩きます。
足元には固く締まった少し茶色に見える雪があります。
この雪を目安に決して真っ白な雪に足を入れないように歩きます。
ピッケルの石づきが刺さらないほど固い雪面ではピックをたたき込み支点を作ります。
何度も偽ピークにだまされながら辛抱強く登ります。
今度も偽ピークかと思い乗り越したところ前方に水平な尾根が見えています。
どうやら山頂に続く肩に出たようです。
後ろから登ってくるS氏にそれを教えます。
あとは小さなコブを幾つか越えた100メートル先に山頂があるはずです。
気持ちも新たに歩き出した瞬間、私の右足の40センチほど右側の真っ白な雪が音もなく前後5メートルほどが落ちます。
雪庇が崩れたようです。
私は固くクラストした斜面から外れないように歩いていたので巻き込まれることはありませんでした。
後ろから歩いてくるS氏に「雪庇がくずれた!」と叫びます。
初めての経験でちょっとビックリしましたが精神的な動揺はありません。
さらに注意深く斜面を選んで歩きます。
前方の視界が開けてきます。
2つ3つあるコブの先にひときわ大きなコブが見えます。
どうやらこの一番奥に見えるコブが山頂のようです。
雪庇に足を入れないように注意しながら進みます。
11時55分、山頂に到達です。
三角点の標石が雪の中から30センチほど顔を出しています。
標石を囲み三人で握手をします。
山頂は風が強く長居はできません。
休憩時間を5分にします。
写真を撮ったりビデオカメラを回していると一瞬天狗平らに陽が差し明るく輝きます。
左が私で右がS氏です。
山頂でこの光景に出会えたのは最高の一瞬でした。
さあ、下山です。
再度、気を引き締めて降ります。
S氏、私、O氏の順で降ります。
天気はドンドン良くなり視界が開けてきます。
私とO氏が5メートルくらい離れて山頂から少し歩いたときです。
「ズゥン!」とお腹に響くような音と共に左足から1メートルくらい離れた雪庇が15メートルほどの長さで崩れました。
一瞬のことですが、お腹がキュンとなりました。
ここからの下りはさらに注意して降ります。
山頂手前の肩を降り終えたコルで一息つきます。
山頂部が顔を出してくれました。
今更ながらすごいところを歩いていたのだと思います。
あの雪庇と一緒に流されたらこの斜面を落ちることになります。
うーん、命はないですね!
竜の背まで降るとここで休憩を取ります。
まだまだ緊張を解くわけには生きません。
この辺りから太陽が顔を出し視界が一気に開けてきます。
南陵をバックに降る私です。
大平山へ向かって降るS氏です。
台地状の山が大平山です。その向こうにうっすらと見えるのが丸山です。
大平山から見た南陵です。
ここまで降りるとホット一息つけました。
南陵を降り終えスキーのデポ地点に来たとき天気はすっかり回復しています。
ここからは、アイゼンからスキーに履き替えます。
表面がさっと融けた滑りずらい雪質に苦労しながら滑ります。
私は右足の膝裏が吊りそうになります。
それをだましだましスキーを滑らせますが、何といってもスキーです。
14時15分、テントサイトに着きました。
ニペソツ山を登り終えた満足感でメンバーの心は一杯です。
さて、ここからテントを撤収して沢水が利用できるとこまで下るか話し合いましたが、
撤収する時間と再度テントを設営する時間を考えてもう1泊することにします。
そうと決まれば水を作ってあとは宴会です。
残っていたウィスキーでのどを潤します。
インスタントラーメンを作りお腹を満たすとそれだけで満足してしまいました。
どうやら続いている緊張から食欲もあまり湧いてこないようです。
ダラダラと時間を潰し早々に寝てしまう私達でした。
3月8日(火曜日)、
寒さで寝られなかった人もいましたが、ダラダラと寝袋で惰眠をむさぼり5時過ぎに起きます。
朝食はパンと飲み物で簡単に済ませ下山します。
今日は朝から太陽が顔を出しとてもいい天気です。
テントを撤収して残っているトレースを下ります。
下りはスキーですから早いです。
でも、何度か立木を交わすことができずに転んでしまいます。
青空の中、ウペペサンケ山が真っ白に輝いています。
千メートルの峠に登るとここからは下りの斜面が続きます。
快調に下って、11時に幌加ダムに停めた車のところに戻ります。
これで、私達のニペソツ山山行が終わります。
良い山行だった!
今年も良い山行ができました。
3人のチームワークも最高でした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
昨年のトムラウシ山に引き続き今年はニペソツ山に登ることができました。
S氏、O氏それに私の3人、私は密かにSOI(ソイ)トリオと呼んでいます。
チームワークは抜群、体力的にも申し分のない3人です。
今回の成功は何より天候に恵まれたことが第一ですが、チームワークが
優れていたことによるものです。
今年もこの3人で夏には日高に挑戦します。
最後に今回歩いたルートのログを落とした地図を添付します。
朝4時、狭いテントの中で目を覚まし山頂アタックの準備をします。
昨夜作った鍋の残り物を利用して雑炊を作り朝食とします。
6時15分、準備ができたのでいよいよ山頂へ向けて出発します。
天気は薄曇り、でも空は明るく風は弱いので天気はまあまあです。
今回はスキーを最大限に利用するつもりですのでスキーを履いて登ります。
ゆるく台地状の尾根の開けた斜面を登っていきます。
両側には沢がありますので地形的には非常に分かりやすいルートです。
斜度が増してくると針葉樹の林です。
一瞬雲が切れて前方の山肌が見えました。
正面に真っ白で浅い凹形の山肌が見えます。
そこは木が無く斜度もあるので雪崩の心配があります。
私達は左側に回り込むようにして国境稜線に近いところから
上に向かって細く雪の付いている斜面を利用することとしました。
2時間ほど急な斜面の登るといよいよ森林限界です。
ここから先はハイ松がところどころで顔を出し、表面がクラストした斜面となります。
スキーアイゼンを装着してアイゼンとシールの利きを利用しながらジグを切って登ります。
O氏が遅れだしてきます。
O氏のシールは私達のとは違って脱着式です。
おまけに金具がジルブレッタですのでスキーアイゼンが着けられません。
そのため固くクラストした雪面に対し私達と同じスピードで登ってくることができません。
O氏がスキーを脱ぎアイゼンを履いてスキーを紐で縛って引っ張る作戦にでます。
しかし、歩くスピードに差が出てきます。
森林限界を越えたあたりから遮るもののない斜面ですので西風が強く当たり
ジグを切っていても左に向くと冷たい風が顔を襲います。
ジャケットのフードをかぶりその風に耐えます。
9時30分、山肌の傾斜が緩くなってきます。
標高1700メートル辺りまで登ってきたようです。
どうやら通称大平山まで登ってきたようです。
O氏との距離が大分開いてしまったので休憩場所を探します。
この辺りは風が防げるような木が見つかりません。
ようやく前方に吹き付けた雪で2メートルほどモンスターになっている木が見えてきます。
私とS氏がこのモンスターの陰に避難して遅れているO氏を待つことにします。
私はザックからスコップを取り出し少しでも風を防ぐために雪の斜面を掘ります。
S氏はスキーからシールを外しデポの準備に入ります。
そして、遅れているO氏を迎えに行きます。
私はモンスターの風下川を少し掘り下げツエルトを出して避難場所を作ります。
ツエルトをザックで押さえ何とか風から身体を守るスペースができたときに
O氏とS氏がやってきます。
西風が強いのですが幸いに視界はまだあります。
3人で相談した結果、まだ3時間ほどしか歩いていないこと。
視界もあるのでもう少し頑張ってみることにしました。
ここからスキーをデポして全員アイゼンを装着します。
ハイ松に足を取られないように注意して登ります。
大平山は平坦な場所です。
視界が落ちてもルートを間違わないようにデポ旗を売って進みます。
大平山の平坦部を抜けるあたりから空の明るさが一段と増してきます。
上空の空に青空が見えてきます。
視界が開けるにしたがって進行方向に南陵が姿を見せてくれます。
後ろを振り返ると丸山が姿を見せてくれました。
しかし、その姿は丸山というイメージからはほど遠く急な稜線が山頂まで続いています。
いよいよ南陵の核心部に向かって進みます。
ここからは一歩一歩を確実に歩きます。
左側は急な雪の斜面が谷底へ続いています。
右側にはところどころ雪庇あるので近づけません。
慎重の上に慎重を重ね進みます。
ドンドン斜度が増してきて尾根が狭くナイフ状になってきます。
このナイフリッジを雪庇にも注意しながら進みます。
前方に岩尾根が見えてきます。
左側がスッパリと切れ落ち雪も付いていません。
どうやらこの辺りが竜の背のようです。
竜の背は右側の斜面に回り込みます。
右側の斜面は雪がほとんど付かず地表が出ています。
幸いなことにこの斜面は西風が当たらないので休憩することにします。
時計を見ると10時40分、大平山から1時間ほど歩いてきました。
ここで一息つけたのは大きいです。
精神的に余裕を取り戻しさらに斜度を増してくる尾根を進みます。
雪庇は真っ白な雪質なのでそれを目安にして足元に注意して歩きます。
足元には固く締まった少し茶色に見える雪があります。
この雪を目安に決して真っ白な雪に足を入れないように歩きます。
ピッケルの石づきが刺さらないほど固い雪面ではピックをたたき込み支点を作ります。
何度も偽ピークにだまされながら辛抱強く登ります。
今度も偽ピークかと思い乗り越したところ前方に水平な尾根が見えています。
どうやら山頂に続く肩に出たようです。
後ろから登ってくるS氏にそれを教えます。
あとは小さなコブを幾つか越えた100メートル先に山頂があるはずです。
気持ちも新たに歩き出した瞬間、私の右足の40センチほど右側の真っ白な雪が音もなく前後5メートルほどが落ちます。
雪庇が崩れたようです。
私は固くクラストした斜面から外れないように歩いていたので巻き込まれることはありませんでした。
後ろから歩いてくるS氏に「雪庇がくずれた!」と叫びます。
初めての経験でちょっとビックリしましたが精神的な動揺はありません。
さらに注意深く斜面を選んで歩きます。
前方の視界が開けてきます。
2つ3つあるコブの先にひときわ大きなコブが見えます。
どうやらこの一番奥に見えるコブが山頂のようです。
雪庇に足を入れないように注意しながら進みます。
11時55分、山頂に到達です。
三角点の標石が雪の中から30センチほど顔を出しています。
標石を囲み三人で握手をします。
山頂は風が強く長居はできません。
休憩時間を5分にします。
写真を撮ったりビデオカメラを回していると一瞬天狗平らに陽が差し明るく輝きます。
左が私で右がS氏です。
山頂でこの光景に出会えたのは最高の一瞬でした。
さあ、下山です。
再度、気を引き締めて降ります。
S氏、私、O氏の順で降ります。
天気はドンドン良くなり視界が開けてきます。
私とO氏が5メートルくらい離れて山頂から少し歩いたときです。
「ズゥン!」とお腹に響くような音と共に左足から1メートルくらい離れた雪庇が15メートルほどの長さで崩れました。
一瞬のことですが、お腹がキュンとなりました。
ここからの下りはさらに注意して降ります。
山頂手前の肩を降り終えたコルで一息つきます。
山頂部が顔を出してくれました。
今更ながらすごいところを歩いていたのだと思います。
あの雪庇と一緒に流されたらこの斜面を落ちることになります。
うーん、命はないですね!
竜の背まで降るとここで休憩を取ります。
まだまだ緊張を解くわけには生きません。
この辺りから太陽が顔を出し視界が一気に開けてきます。
南陵をバックに降る私です。
大平山へ向かって降るS氏です。
台地状の山が大平山です。その向こうにうっすらと見えるのが丸山です。
大平山から見た南陵です。
ここまで降りるとホット一息つけました。
南陵を降り終えスキーのデポ地点に来たとき天気はすっかり回復しています。
ここからは、アイゼンからスキーに履き替えます。
表面がさっと融けた滑りずらい雪質に苦労しながら滑ります。
私は右足の膝裏が吊りそうになります。
それをだましだましスキーを滑らせますが、何といってもスキーです。
14時15分、テントサイトに着きました。
ニペソツ山を登り終えた満足感でメンバーの心は一杯です。
さて、ここからテントを撤収して沢水が利用できるとこまで下るか話し合いましたが、
撤収する時間と再度テントを設営する時間を考えてもう1泊することにします。
そうと決まれば水を作ってあとは宴会です。
残っていたウィスキーでのどを潤します。
インスタントラーメンを作りお腹を満たすとそれだけで満足してしまいました。
どうやら続いている緊張から食欲もあまり湧いてこないようです。
ダラダラと時間を潰し早々に寝てしまう私達でした。
3月8日(火曜日)、
寒さで寝られなかった人もいましたが、ダラダラと寝袋で惰眠をむさぼり5時過ぎに起きます。
朝食はパンと飲み物で簡単に済ませ下山します。
今日は朝から太陽が顔を出しとてもいい天気です。
テントを撤収して残っているトレースを下ります。
下りはスキーですから早いです。
でも、何度か立木を交わすことができずに転んでしまいます。
青空の中、ウペペサンケ山が真っ白に輝いています。
千メートルの峠に登るとここからは下りの斜面が続きます。
快調に下って、11時に幌加ダムに停めた車のところに戻ります。
これで、私達のニペソツ山山行が終わります。
良い山行だった!
今年も良い山行ができました。
3人のチームワークも最高でした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
昨年のトムラウシ山に引き続き今年はニペソツ山に登ることができました。
S氏、O氏それに私の3人、私は密かにSOI(ソイ)トリオと呼んでいます。
チームワークは抜群、体力的にも申し分のない3人です。
今回の成功は何より天候に恵まれたことが第一ですが、チームワークが
優れていたことによるものです。
今年もこの3人で夏には日高に挑戦します。
最後に今回歩いたルートのログを落とした地図を添付します。