井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

三川台からトムラウシ山に登る・その2

2012-07-28 21:04:16 | 大雪山系の山
 7月21日(土)
 朝4時に泊まりのテントから声が掛かります。
「山頂へ行きますか?」という、みいちゃんの声です。
空気孔から外を見ると青空が見えます。
テントの入り口を開けて山頂を見ると青空に浮かんでいます。

 「山頂へ行くよ!」といってあわてて準備をします。
みいちゃん達の準備ができるのを待たず先に登ります。

 山陰から太陽が顔を出してきます。
今日も良い天気です。
ゆっくり登っているとピーッ!ピーッ!とナキウサギの声が直ぐ近くから聞こえます。
声のする方を注意深く見ると、何と直ぐ目の前にナキウサギがいます。
ゆっくりカメラを取り出して何枚か写しました。

 山頂へはみいちゃん達より一足先に着きました。
山頂には7~8人の人がいます。
話を聞いているとガイド付きの縦走で十勝岳の方から来たようです。
皆さん60代以上かと思われる人達です。
天気に恵まれいい縦走ができたようです。
このように年齢が高くなってもこのコースのような何泊も必要な縦走ができるのガイド登山のいいところでしょう。
しかし、信頼できるガイドを持つことが重要です。

   
   昨日はガスで見えなかった大雪山方面です。
一番左端が旭岳です。

 そして南側を見ると一面の雲海に十勝連峰が浮かんでいます。
   

 東側にニペソツが見えています。
   

 山頂で一人の女性に会いました。
昨日4時頃にキャンプ地に着いた単独の若い女性です。
カメラを持っていないとのことなので何枚か写してあげます。
彼女は富良野岳から旭岳を目指して縦走していると言います。
若い女性が単独でこの縦走をやり遂げようとしている姿に心を打たれました。
写した写真はメールで送ることを約束しました。

 山頂での至福の時間を終えてテントに戻ります。

 7:05分、南沼キャンプサイトとお別れです。

 南沼が昨日と打って変わった綺麗な姿を見せてくれます。
   
    何という色でしょう!
    コバルトブルーから群青へのグラデーションが何ともいえません。
   
    息を呑む美しさです!

 三川台へ向かって降ります。
途中で後ろを振り返ると昨日がガスで隠れていた山頂部が綺麗に見えています。
   

 8:48分、三川台に着きました。
天気が良いので急いで降る必要はありません。
ノンビリ景観を楽しみながら降ります。

 9:40分、ベベツ川の源流部で休んでいると人の声がします。
ほどなく4人のグループが来ます。
「ストックの先を見ませんでしたか?」と聞くと、直ぐ近くで見たと教えてくれます。
夜行虫さんのストックも誰かが見つけてくれていたようです。

 木の枝に挟んであるストックの先を発見。
これで気にしていた落とし物も見つかりました。

 11:00分、扇沼山に到着です。
ここのは沢山の人が休んでいます。
どうやら大学生でしょうか?
それにしては年齢の高い人もいますが・・・・?

 扇沼山でゆっくり時間を取って休みます。
この先の降りに入ると山を見ることができないので最後の風景を目に刻みます。

 この先が結構辛かったですね。
特に林道へ出てからが長かった。
13:25分、やっと登山口に着いた時はヘロヘロになっていました。

 しかし、今回のトムラウシは天気に恵まれ最高の登山でした!

三川台からトムラウシ山へ登る・その1

2012-07-26 20:39:58 | 大雪山系の山
 神戸に住んでいるみいちゃんから今年の夏はトムラウシ山に登りたいとのリクエストがありました。

 そこで、7月の20日に照準を当てて北海道へ来てもらうことにしました。
この時期だと天気も安定することと何といっても高山植物の花々が真っ盛りだからです。
当初予定していたルートは沼ノ原から五色岳経由でヒサゴ沼へ入ることを考えていました。
しかし、このルートは林道が一昨年秋の豪雨で林道に架かってる橋が損傷を受けて封鎖中。
今年も開通には至らないとのことで三川台から入山することにしたものです。

 三川台からのルートは、東大雪荘からのルートに較べるとなじみにない方が多いと思います。
しかし、このルートは登山口がすでに千メートルを超えているので急登が無く比較的やさしいコースといえます。
とは言ってもコースの全長が長いので侮ることはできません。

 7月19日の朝、友達の夜行虫さんと千歳に着いたみいちゃんをピックアップ。
まずは富良野観光をしてもらいます。
そして、上川中部森林管理署の美瑛事業所で林道の鍵を借ります。
事業所へ行くとドアに鍵が掛かっています。
どうやら職員の皆さんが出張中です。

 4時過ぎにもう一度行って事業所の前で待ちます。
ほどなく帰ってきた職員の人から手続きを行い鍵を借ります。
鍵は上川に10個、美瑛に10個用意してあるそうです。
美瑛で鍵を借りる場合には、事前に何時頃借りに来ればいいか確認した方がいいですね。

 美瑛では美馬牛にある「おかせん里」という民宿に泊まります。
この宿は昨年も泊まりましたが、とても気さくなご主人がいてアットホームな雰囲気です。
料理も美味しく低料金、心安らぐ宿です。


 7月20日(金)
 
 朝6時に宿を出発。
一路三川台の登山口を目指します。
俵真布の集落を過ぎて林道を走るとゲートがあります。
このゲートを借りてきた鍵で開けて登山口へ向かいます。

   
    登山口となる林道です。

 本来の登山口はこの先2キロほどの所にありますが、一昨年の豪雨により路面に一部が流されたので通行止めになっています。

 準備を終えて、6:55分出発です。
まずは林道歩きです。
幸いに天気は上々、すでに陽が射し暑くなってきます。

 林道から40分ほどで以前の登山口に着きます。
ここから先、雨が降ると登山道に水が流れる足場の悪いところを歩きます。
(先日偵察に来た時は川のようになっていました。)

 8:40分、岩がゴロゴロしている場所の少し下で休憩します。
ここに岳樺の幹に咲いているゴゼンタチバナを見つけました。
   

   
    大きな岩が累々と重なり合っています。
 
 ルートはピンクテープがしっかり付けられているので迷うことはありません。
この岩を登ると笹原をジグを切って登ります。
ハイ松がでてくると扇沼山が近いです。

 9:35分、扇沼山に到着です。
ここでやっと視界が開けます。
   
    目の前には旭岳の噴煙が見えています。

 南を見るとオプッテシケ山がドンと大きな山容を見せてくれます。
そして、目の下には青い水を湛えた硫黄沼が見えます。
   
 
 これから歩いていくトムラウシ方面の景観です。
   

 ここまで来ると軽いアップダウンはあるものの快適な稜線歩きとなります。

 ただし1個所だけベベツ川の源流部に掛けてのアップダウンがあります。
   
  
 11:00分、 ベベツ川の源流部へ降ったところで休憩します。
その時、事件が勃発、何と夜行虫さんがザックの横に付けていたストックの先の部分がありません。
どうやら藪漕ぎをしていて取れたようです。
これを探しに行く時間もありませんので帰りに探すことにします。

 ベベツ川の源流部に水は流れていませんでした。
涸沢となっていました。

 ここからの登りがきつかったです。
でも、目を楽しませてくれる花々に助けられて登ります。
   
 やっと源流部を登って稜線に出ます。
上の方に人影が見えます。
そこまで行くと何と犬を連れた女性が休んでいました。
   
 彼女は朝4時半に登山口を出発してトムラウシ山に登り帰る途中とのことでした。

    
    ベベツ川の源流部を振り返ると兜岩が大きく見えています。

 12:10分、三川台に到着です。
      
 この辺りは、右手が急な崖となっており一面のお花畑です。
 そしてその下には雪渓と沼が広がります。 
   
 こんな景色を楽しみながら歩きます。

 トムラウシ山へ近づくにしたがってガスが出てきます。
   
    登山道の両側一面にチングルマが咲いています。

 14:00分、やっと南沼に到着です。
   
    沼の半分は雪渓です。
その雪渓がコバルトブルーに光っています。
とても綺麗な色です。

 最後の斜面を登るとやっと南沼のキャンプ地です。
   
    ガスも晴れてきます。

 14:10分、テントサイトに到着です。

 すでに10張り近くテントが張られています。
私達のテントをどこに張るか少し上の方まで見に行ってみます。

すると雪渓から流れる水の直ぐ脇に砂地のテントサイトが開いています。
先に張っている人に断って私達もこの砂地にテントを張ることにします。

隣のテントは千葉から来た単独の女性です。
もう3ほどここにいるといっています。

 少しテントで休んでから空身で山頂へ出掛けます。
辺り一面お花畑です。
   
    イワブクロの大きな塊がありました。
こんな塊となって咲いているイワブクロは初めて見ました。

   
    山頂に登っている途中から見たテントサイトです。

   
    砂礫地のコマクサが咲いていました。
 
   
     山頂から見た南側です。

 北側はガスで視界がありません。
山頂で記念写真を取り合っていましたが、まだ時間があるので北側に降りることにしました。

 そして、北側に岩場を降っている時です。
とうとうナキウサギを見つけました。
   
    ピーッ、ピーッ、と甲高い声は何度も聞いていましたが、なかなか姿を見せてくれません。
やっとその姿を見ることができました。

   
    北沼です。

 そしてここでもナキウサギを見つけました。
   
    トムラウシ山の山頂部はほとんど岩場です。
ここには沢山のナキウサギがいます。

 そしてお花畑も規模が大きいです。
   
   
   
    アオノツガザクラとエゾツガザクラの混血種でしょうか?
    花の色が不思議でした。
    上の方はクリーム色ですが、下の方が赤くなっています。

 このテントサイトはまさに楽園です。
高山植物にナキウサギ、雪渓があり沼もある。
千葉の女性のように数日ここにいて散歩をするのは最高の贅沢かもしれません。
 
   
    雲がドンドン晴れてきました。
 明日の天気が期待できます。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

  この南沼キャンプ地から山頂部を見ていると本当に楽園のような場所です。
 ここで大量遭難死が発生したことが信じられません。
 逆に考えるとこの美しい景色の底に恐ろしい顔が潜んでいると言うことでしょう。
 そういったことをいつも考えながら山と対峙する必要があります。
 3年前の3月にこの山頂に立った時も快晴無風という最高の天気でした。
 天気一つで最高から最悪にいつでも変わりうることを心に刻みました。

宿願の知床夏山縦走・2日目

2012-07-16 20:51:01 | 知床山系・斜里岳・阿寒の山
 7月8日(日)
 朝、鳥の声で目を覚まして外を見ると真っ白です。
今日も天気はダメかと思い寝袋の中でダラダラしていました。
するとテントに陽が当たります。
何と雲が切れて青空がのぞいてきます。

 あわてて朝食を掻き込み登山準備をします。
   
    隣のテントです。まだ寝ている様ですのであまり音を立てないようにテントを畳みます。

   
    オッカバケに掛かっていた雲が無くなっていきます。

   
    ドンドン晴れてきます。

 さあ、今日は頑張って硫黄山を登り下山しなければなりません。

 4:55分、二つ沼のキャンプ地を出発します。
まずは沼に流れ込んでいる雪解け水が川のような登山道を登らなければなりません。
ハイ松に掴まりながら上の沼を目指します。

 上の沼はまだ雪渓の中です。
その雪渓から水が流れ出しており、一面に溜まっています。
雪渓の上に登りにはどうしてもこの水溜まりを越えなければなりません。
仕方がないので濡れるのを覚悟して飛びます。
何とか雪渓の上に上がることができました。

 ここからは、雪渓に上に向かって真っ直ぐ歩きます。
ハイ松に枝に赤い目印が付いています。
そこからはハイ松の登山道を歩きます。
今日は朝露に濡れた枝から服が濡れるのを防ぐために雨具を着ています。

 しかし、靴の中に水が入りグチャグチャになります。
これを気にしていたのでは歩けないので、濡れるに任せて登ります。
   
    やっと稜線に出ましたが、硫黄山方面は雲に隠れて見えません。

 後ろを振り返ると二つ沼のキャンプ地が見えています。
   

  
   イワキキョウが咲いていました。

 5:40分、南岳に到着です。
身体の方は快調です。
南岳を過ぎて少し行くと砂礫地があります。
   
    ここにシレトコスミレが1株ありました。
   
    今回ここにしかなかったスレトコスミレです。

   
    ガスがでてきました。
 登山ルートは白い杭などがあるので見失わないように歩きます。

   

 知円別分岐に到着です。
ここから先はルートが分かりづらいので注意しながら歩きます。
標識を左に曲がると急なガレガレの斜面をトラバースしなければなりません。
踏み跡が不明瞭になってきます。
私は少し知円別の山頂に向かって登りすぎたようなので慎重に斜面を降ります。
浮き石だらけの斜面ですので慎重に降ります。
5~6メートル降ると踏み跡がしっかり付いてます。

   
    こんな感じで視界が無くなっています。

 ここを歩いていると左下の方から人の声が聞こえてきます。
どうやら先日二つ沼に先行していた人達のようです。
するとここが第3火口のようです。

 ここから岩尾根の様なところを歩きます。
   
   
   高山植物の花々が緊張を和らげてくれます。

   

   
   ガスが少し晴れると硫黄山の火口が見えてきます。

 7:35分、やっと硫黄山山頂下に到着です。
   
    この火口壁を降ってきました。正面左側のガレ場です。
 
 急な斜面を登り左へ少しトラバースします。
そこからガレガレの岩場を登らなければなりません。
この岩場は浮き石だらけなので注意しながら登ります。
 
 7:45分、硫黄山の山頂に到着です。
   

 羅臼岳方面を見ますが厚い雲に覆われています。
   
 
 山頂のお花畑に咲いていた花です。
   
   
   

 山頂からの降りは慎重の上にも慎重にと自分に言い聞かせて降ります。
ガレ場を降り終えてホット一息つきます。

 山頂下にデポしておいたザックを背負い、ここからは昨年降った登山道ですので気持ちも軽くなります。

   
    硫黄沢の源頭部です。昨年はここにシレトコスミレの群落がありましたが・・・
今年はすでに咲き終えたようです。

   
     雪渓の上に厚く砂利が落ちています。
厚い砂利に足を取られないように歩きます。 

 やっと雪渓が顔を出してくれます。
今回この雪渓を歩くために軽アイゼンを用意してきましたが、表面が軽く融けているので使わずにドンドン降ります。

 下から登ってくる人が多くなってきます。
今日は日曜日ですので硫黄山だけに登ってくる人達です。

 雪渓の上で休んでいる人達がいます。
私に「アイゼンは付けないのですか?」と聞いてきます。
「この程度の斜面なら私は付けないでも大丈夫です。」といいましたが、話しかけた人に「持っているなら軽アイゼンを付けた方がいいですよ!」というと、あわてテザックを置きアイゼンを出しました。

 雪渓が切れそうな場所になりました。
ここは雪渓の踏み抜きに注意しなければなりません。
踏み抜いて足首を捻挫したりしたら大変です。

 9:00分、沢の出合いに到着です。
ここまで来ればあと少し登れば新噴火口です。
ちょっと休みます。

 30分ほど歩くと噴火口最上部の標識が見えました。
カムイワッカの沢に湯気を上げているところが見えます。
   

 岩尾根を降り硫黄の採掘場跡まで来ました。
   
   
 ここまで来ると硫黄山の登山口も間近です。

 白樺林の気持ちいい登山道を歩きます。
   
     この辺りは本当に気持ちよく歩けます。

 そして最後のジグを降りきると登山口です。
   
 10:45分、登山口に到着です。

 これで宿願だった知床の夏山縦走が終わりました。
天気に恵まれず眺望が悪かったのが残念です。
しかし、雨には降られずに歩けたのですから贅沢はいえません。

 ここから登山口までヒッチハイクで戻りました。
岩尾別まで車に乗せていただいたのは、神奈川から観光に来ていた若いご夫婦でした。
2歳くらいの可愛い女の子がいるご夫婦でした。

 そして、岩尾別からホテル地の涯まではバイクの後ろに乗せてもらいました。
和歌山から来ていた大型バイクのおじさんです。

 皆さんのお陰でそれほどの時間をかけずに登山口に置いた車まで戻ることができました。
この親切な皆さんに巡り会えただけでも成功といえる知床夏山縦走でした。
  

       
   

竹内洋岳さんの講演を聴く!

2012-07-15 12:24:02 | その他
 8千メートル峰14座を今年達成した竹内さんが講演のため札幌市に来ました。
   
    ケイタイの写真のためボケています。

 6月13日(金)午後7時30分から
 場所 エルプラザ
 道警主催の「夏山遭難を防止するためのシンポジウム」において14座目となるダウラギリ登山の様子を中心にお話がありました。

 気取らない語り口で臨場感タップリのお話でした。
約1時間がアッという間に過ぎていきます。

高度順応をアイランドピークで行ったと聞いて私が昨年登ったあのピークで1夜を過ごしたのかと思うと一層の親近感が湧いてきました。

ダウラギリもアンナプルナサーキットの後半はいつも目にしていた山です。

8千メートル峰最後のダウラギリも簡単には登らせてもらえなかったようです。
山頂を極めた後にテントもなしにビバーク、でも、本人にはちゃんと計算が立っていたようです。

下山して初めて登山が完結する。
それは山の高低に関係なく一番心に留め置かなければいけないことを教えてくれました。


 この日は、道警の山岳遭難救助隊救助対策官の西村さんによる最近の遭難事例を統計から説明がありました。

 次ぎに、大野病院で登山者外来を開設している大城和恵さんが、熱中症と低体温症について予防と対象方についての解説もありました。

 全体を通してなかなか参考になるお話が聞けて良かったです。

宿願の知床夏山縦走・1日目

2012-07-14 20:57:02 | 知床山系・斜里岳・阿寒の山
 私にとって夏山の知床縦走は長年果たせなかった縦走の一つでした。

 高校時代は山岳部に在籍していましたが、私の学校では夏山合宿を大雪山と知床の縦走を交互に行っていました。
 1年生の時の夏山合宿は大雪山の黒岳から入山してトムラウシ山までの縦走の予定でした。
しかし、悪天のため黒岳石室に2泊、旭岳と白雲岳のキャンプ地にそれぞれ1泊して赤岳へ下山するという散々な縦走でした。

 そこで2年生となった私達は夏山合宿の行き先を再度大雪山の縦走として知床縦走をあきらめることにしたのです。

 この時の大雪山縦走は入山口を愛山渓、下山口は天人峡としました。
しかし、この合宿でも後半部分が悪天のためトムラウシ山は山頂に立つことが出来ませんでした。でも、高根ヶ原から見たトムラウシの山容は大きく、大雪山を満喫できた満足のいく合宿だったのです。大雪山の大きさを肌で感じることのできた合宿でした。

 この後も羅臼岳と硫黄山に登ったことがありますが、なぜか羅臼岳から硫黄山の縦走を行うことが出来ずにいました。

 昨年で日高の夏道をほぼ歩き終えました。
今年の夏は時間が出来たので今年こそ知床の縦走を何としても行いたいと考えていました。
いつものメンバーを誘ったのですがそれぞれの都合で参加が出来ず、今回は単独での縦走となりました。

 6月6日(金)の朝に札幌を発ち、午後3時には岩尾別にあるユースに到着。
今夜はこのユースで1泊します。

 夕方ユースの前を散歩していて戻ろうとしたときのことです。
ユースの横にある山の斜面でガサガサと音がします。
鹿が餌の草でも食べているのだともってそちらを見ると、何と熊ではありませんか。
私と熊との距離は約10メートル、熊は一心に草を食べています。
私は熊の方を見ないようにしてユースの玄関へ向かったそっと歩きます。
熊の方も私の存在に気が付かないように草を食べ続けています。
お互いの存在に気づきながら何事もないように別れます。

 玄関に入り、ユースの女性にすぐ横に熊がいたことを告げましたが、「最近よく出るのですよ!」と特段びっくりすることもありません。
 これが、知床で野生動物と接する感覚なのかと改めて考えさせられました。

 6月7日(土)

 朝4時に目を覚まし食堂でカップ麺とおにぎりで朝食とします。
ユースから4キロほど先の登山口となるホテル地の涯へ向かいます。

 ホテルの駐車場で沢山の登山客が体操をしています。
羅臼岳登山を行うツァー客の皆さんのようです。
その合間を縫ってホテルの横へ進みます。
木下小屋の前にある駐車場はすでに満杯なので邪魔にならないように幅を寄せて通路に車を駐車します。
   
   木下小屋です。この小屋には温泉があります。

 4:40分、準備が出来たので私も出発します。
天気はあまりよくありません。
雲の中なのか乳白色で視界もあまりありません。
しかし、空気がしっとりとしているので呼吸は楽です。

 しばらく振りに1泊装備を背負っての登山ですが、ピリカヌプリへ行ったときと比べるとザックが軽いので気持ちも軽くなります。

 寝不足気味の身体ですのでゆっくりゆっくりと言い聞かせて登ります。
程なく団体さんに追いついてしまいました。
   
 ラストを歩いているガイドさんに「先に行きますか?」といわれましたが、もうすぐ休憩すると思いましたので、「いいえ、気にしないでください」といって、後を歩きます。

しばらく後ろについて歩いていると団体さん土地が休憩に入ります。
この隙に追い抜きます。

 狭い登山道で団体を追い抜いたりすれ違うときには神経を使います。
気の利いたガイドなら自分の客を止めて通してくれたりするのですが、それがなければ我慢して休憩するまで後ろを歩かなければなりません。

 560m岩峰手前の標識です。
   
この標識を見ると知床へ来たんだな~ぁと思います。

   
   6:05分、弥佐吉の水場です。
 ここまで快調に歩いています。
ガスの中ですが、結構汗をかいています。
給水に気を付けて十分に弥佐吉の水を飲みます。

   
   6:55分、銀明水です。

   
  ここから羅臼平までは大沢の雪渓を歩きます。

 ガスで先が見えません。
それほどの傾斜でないので持ってきた軽アイゼンは使わずに登ります。

 7:40分、羅臼平に到着です。
   
相変わらずガスの中です。
ここからはザックを置いて空身で山頂を目指します。

 すでに咲いている高山植物の花々が目を楽しませてくれます。
 
 
 
 
 

     
  岩清水です。
岩から細い流れとなって水が落ちています。
この水は美味しかったですね。
この水で力をもらい最後の登りを頑張ります。

 
 

 最後の雪渓です。
   
    この雪渓の上からは岩が折り重なった岩場となります。
   
    山頂がうっすらと見えています。

 途中で見つけたイワヒゲの花です。
   
    私の好きな花です。

 最後の岩を越えると山頂です。
 8:50分、羅臼岳の山頂に着きました。
   
    一昨年のGWに南西ルンゼから登った以来の山頂です。
しかし、残念ながらガスの中です。
眺望はゼロです。
しかし、山頂は風もなく穏やかです。
20分ほど滞在して下山します。
   

 9:25分、羅臼平に戻りました。
さあ、ここから硫黄山に向かって縦走の始まりです。
まずは三峰に向かって樹木の覆い被さった登山道を登ります。
登るとほどなく灌木に付いている水滴で全身ずぶ濡れになります。
靴の中にも水が入りグチャグチャですが、気温は高く風もないのでそのまま歩きます。

 9:55分、ガスの中ですが三峰のキャンプ場に到着です。
    
 三峰のキャンプ場からサシルイに向かう登山道が分かりづらいです。
視界がないので何本かある枝道のうちサシルイに向かっていると思われる細い道を進みます。 

 10:25分、サシルイ手前で休憩します。
一人で歩いているとついつい休憩を取らずに歩いてしまいます。
今日のようにガスの中だと眺望もないので先を急いでしまいます。
こんな時には高山植物の花を写して歩を止めます。

   
    サシルイとオッカバケの中間にある沼です。

   

  11:25分、オッカバケ山頂付近で休憩します。
    
    

 サシルイの降りとオッカバケの降りに大きな雪渓があります。
この雪渓には神経を使いました。
というのは、雪渓を降っていると雪渓の下部にある登山道を見つけるのが難しいのです。
今日は、誰か歩いたトレースがあるのでそのトレースを上手く見つけながらルートを外さないようにします。

 11:50分、二つ沼のキャンプ地に到着です。
 
 二つ沼には先行者のグループが休んでいました。
男性3人、女性1人の4人グループです。

 前泊は三峰だといいます。
丁度、昼食を取っているところでした。

「今日はここでキャンプですか?」と聞きますと、「三峰からだからもう少し先まで歩きます。硫黄山の第3火口でキャンプの予定です」と教えてくれます。

 私の予定は、この二つ沼でのキャンプです。
時計を見るとまだ12時ですが、ここでキャンプすることにしました。
それは、このまま私も硫黄山のキャンプ地まで歩くことはできると思いましたが、そんなに先を急ぐ必要のないこと、明日は天気が回復するかもしれないと思ったためです。

 二つ沼から4人組のグループが立ちます。
しかし、ルートが見つけられないようでウロウロしています。
やっとルーツが見つかったようです。
それは、私の張ったテントの先にある上の方から川のように水が流れている場所がルートのようです。
鈴の音がドンドン小さくなっていきます。

 後は鳥の声が聞こえるだけです。

 私は、濡れた服を脱いで着替えてからテントの中で寝袋に足を入れてウトウトしていました。
ラジオを聞いたりして時間を潰します。
時々テントに陽が射してきます。
するとテントの中の気温が一気に上がります。
その暖かさを背中に受けて冷えた身体を暖めます。

ガスが晴れてきました。明日は晴れるかな?

 5時半過ぎに夕食を終えてテントの中でボーッとしていました。
すると、人の声が聞こえてきます。
最初は空耳かと思っていました。
もうすぐ日暮れをむかえる時間です。
こんな時間に来る人がいるはずがありません。

 しかし、声が大きくなってきます。
それも数人の声が聞こえます。
どうやら、硫黄山方面から二つ沼に降ってきているようです。
直ぐ近くでコースを見失っているようです。

 そこで、「こちらへ向かってきてください!」と声を掛けます。
水の流れているところを降ってきてくださいというとやっとルートが分かったようです。
半信半疑で川に沿って降ってきます。

男性3人、女性1人のグループでした。
朝8時過ぎに硫黄山の登山口から出発して来たようです。
知円別分岐で少し迷ったようなことを言っています。

 でも、日没間際に何とかこのキャンプサイトに到着できたのは良かったです。
日没になれば適当な場所を探してビバークせざるを得ないとこでした。

わたしも一人でこのサイトに1泊するのは熊のこともあり心細かったのでホット一息です。

これで、安心して寝られます。
明日の天気を期待しながら寝袋のジッパーを閉めます。

岩登り、デビュー!

2012-07-02 20:46:46 | 札幌近郊の山
 兼ねてから誘われていた小樽・赤岩でロッククライミング・デビューです。
「60の手習い」という言葉がありますが、まさか63歳になってから岩デビューするとは思いもしなかったことです。

 熱心に誘ってくれたKo氏に感謝です。
7月1日の日曜日、Ko氏とその岩仲間のNr氏、Sk氏の4人で赤岩の初級コースに連れて行ってもらいました。

 小樽・赤岩というのは、北海道における数少ない岩のゲレンデです。
春になると全道各地から岩を登に来る人が集まります。
沢屋さんもザイルワークの練習とか体慣らしを兼ねてこの赤岩に登りに来ます。

 私は初めてですので、見るもの全てが珍しくキョロキョロしてばかりいました。
   
   
    ここが駐車場です。ここにはトイレもあります。

 赤岩には遊歩道もありますが、昔から霊場として修行の場として使われた歴史もあるようです。
いたる所にお不動さんなどの石仏があります。

   
    トイレの横に赤岩の鳥瞰図があり各岩場の説明が書かれています。
この鳥瞰図を見ましたが、実際の岩場を目にしていませんので、どうもピンと来ません。
まあ、そのうち分かるようになるでしょう。

 このトイレを中心にして東と西に岩場が別れているようです。
今日は西の岩場で救助訓練が行われているとかで東の岩場に向かいます。

   
    赤岩霊場です。
    沢山の石仏の他、修行に使われるお寺の建物もあります。

 この前を通って坂道を登ります。
すると目の前に海岸に突き出た岩場が見えてきました。
   
    一番上にある岩場が東のチムニーです。

 近くに行くとこんな感じです。
   
    この岩が東のチムニーです。

 まずはこの岩の裏側から降りて岩ノ下へ行きます。
誰もいないので落ち着いていろいろと教えてもらいます。
まずは一番大事なセルフビレイです。
その次はザイルワークですが、人のやっているのを見ると簡単なのですが、いざやってみると上手くできません。

ザイルの結び目を確認してもらっています。
 あれ、変だな~あ! と首を傾げる場面ばかりです。
それでも何とか教えてもらったようにできたので、まずは登る岩をよく見ます。

   
    これが最初に登る岩です。

 真ん中に溝ができているので何とかなりそうです。
4人いますので2人づつ組んで登ります。
私は、Nr氏のセコンドに付きます。

 Nr氏は慣れているのスムーズに登っていきます。
その登る姿をよく見てホールドとかスタンスの場所を覚えます。

 ほどなく岩の向こうに姿が見えなくなってしまいました。
ビレーを解除して、今度は私の番です。
「ゆっくり足元を確かめながら登りなさい。」とKo氏からのアドバイスが飛びます。

 足場を確かめながらホールドを探します。
フリークライミングで少し練習しているので身体に使い方は何とかなります。
ゆっくりゆっくり3点確保で登ります。
1個所だけホールドに指の掛かりずらい所がありましたが、何とかクリアしました。
   
     
 初めてのロッククライミングとしてはまあまあの出来です。
上についたら、メインロープとスリングを使ってそれぞれセルフビレイを取って・・・などと忙しいです。
それらの手順とやり方を覚えるのに忙しく、景色を見る暇もありません。

 そして、懸垂下降です。
   
    これは、Sk氏の華麗な姿です。

    
    続いて私も降ります。

 この東のチムニーで2本登りました。
何とか登れています。

 そこで、場所を移動してテーブルリッジという3ピッチほどの岩を降ることになりました。
   
    一番上の岩がテーブルのように平になっています。
    その岩の上にお不動さんが鎮座しています。

 昼食後、横の方から海岸に向かって降ります。
急な坂道でところどころ梯子が据え付けられています。
岩登り用に造られた道かと思いましたが、ところどころに石仏があります。
   
    これらの石仏をお参りするための道のようです。

 かなり下がったところでストップします。
ここがテーブルリッジのスタート地点のようです。
狭い登山道で登坂準備をします。

 先ほどの復習をします。
ビレイを取って、メインザイルをハーネスに結び・・・エトセトラ、エトセトラ・・・
何とか準備を整えます。

 Nr氏がトップで登ります。
それを確保してザイルを出します。
これがなかなか難しいのです。
ザイルを張りすぎると登るのに支障をきたしますし、ゆるめ過ぎろと万が一滑落した場合に止めることができません。

 お互いの呼吸と慣れが必要です。
Nr氏が1ピッチ目を切ったので、次は私が登ります。
ホールドがしっかりしているので何とか登って行けます。
   

   
    最後の壁がこの左側の岩です。
    この岩の右面を登ります。
 Nr氏の助言を受けて何とか登りきることが出来ました。
途中で指係の悪いホールドだったのでかなりきつい登りでした。
でも、登りきった満足感は最高です。

   
    Ko氏が登ってきます。

   
   
    そして、Sk氏です。

 2ピッチ目も何とか登ったのですが、3ピッチ目に難所が待ってました。
それは、ほんの2メートルほどなのですが、ちょっと岩が膨らんでおりホールドが小さいのです。
指の掛かりが悪く身体を上手く引き上げることができません。
何度かやり直して何とか登ることができました。
ちょっと冷や汗がでました。

 後は最後のテーブルに上がるところ(2メートルほどの岩)で難儀しましたが、最後の力を振り絞ってクリア、よかった~ぁ!

 こんな事で初クライミングは、東のチムニーをシングルピッチで2本、テーブルリッジはピッチを3つに区切って1本、これが精一杯の私でした。
 
 私をやさしくサポートしていただいたNr氏、Sk氏、連れて行っていただいたKo氏に感謝します。