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井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

ペンケヌーシ岳(北日高)に登る

2013-07-16 21:46:53 | 日高山系の山
 神威岳から1週間、太股の筋肉痛も癒えたのでちょっと軽めの山へ行きたいと思いペンケヌーシ岳に行くことにしました。
今日もSz氏と一緒に登ります。

 7月8日

 早朝に札幌を発ち日帰りの予定で出発します。
ペンケヌーシ岳に行くには日高町から日勝峠に向かって走り、国道を右折してペンケヌーシ林道を走ります。
途中にはチロロ岳の登山口もあります。

 ペンケヌーシ林道は7月5日に通れるようになったばかりでした。
国道から20分ほど走ると登山口となる駐車場に到着です。
札幌からは3時間ほどかかるでしょうか。
   
    駐車場には2台の車が止まっていました。

 早速、身支度を整えてスタートです。
歩き出すとすぐ目の前には堂々とした滝が轟音をたてて流れ落ちています。
   

 この滝を登るのは無理!
と思ったら右手の左岸に林道が延びています。
この林道を登っていきます。
   

 林道に架かる橋らしい残骸があるところに来ます。
   
   この先は林道に沢水が流れ込み林道だか沢だか分からない路となりますが、沢水の量がそれほど多くはないのでそのまま歩いていきます。
(この流された橋の地点が一つのポイントでした。)
ここから沢に沿って歩く方が距離的には短いのです。

 私達は林道をドンドン詰めていきます。
   
    林道が二股に分かれますが、直進する方には赤いテープが貼られています。
ここは左へ曲がります。

   
   笹の密集した林道となります。

 そしてその先に沢へはいる入口がありました。
   
   ここからは沢登りになります。
といっても、小さな沢です。
夏靴で充分歩けますが、沢水が多いので長靴でも良いかもしれません。

 沢に沿って登っていくと3人の男性が歩いています。
この人達を抜いていくと行く手に雪渓が見えてきます。
第1花苑の辺りでしょうか?
   
   この雪渓をやや左寄りに登ります。

するとその先のもっと大きな雪渓がありました。
   
   この雪渓が第2花苑の辺りでしょうか?
ここは右手に進んでいくと稜線にある登山道に出ます。

 そこで休憩を取っていると、上の方から長靴を履いた男性が降りてきます。
「道を間違わなかったか?」と聞いてきます。
聞くとこの男性はこの雪渓から左手に山頂があると思い登山道を探したと言います。
地図を持っていないのかと聞くと持っていないと言います。

 単独で歩くなら地図くらい用意しておかなければ遭難の危険性があると思いますが、そんなことには頓着していないようです。

 さて、追い抜いた3人組もやってきました。
話を聞くと九州から来ているようです。
この時期、本州は梅雨の季節です。
梅雨が無く天気のいい北海道の山を楽しみに来ているようです。
しかし、そんな人たちがこのペンケヌーシ岳に来るとは渋い選択だと思いました。

   
    山頂が見えています。

   
    登山口から2時間半ほどで山頂に着きました。

   
   目の前にはチロロ岳、その奥には1967m峰の姿も見えます。

 山頂で気持ちいい風に吹かれながら北日高の眺望を楽しみます。
風が涼しく本当に気持ちのいい山頂でした。

 この日の札幌は、何と33度まで気温が上がったそうです。
 気持ちのいい山頂からは考えられない気温でした。
  

神威岳(南日高)に登る

2013-07-09 06:28:18 | 日高山系の山
 除染作業を終えて自宅に帰ってからは、すっかり気が緩んだのか昼寝の連続を繰り返す生活をしていました。
この怠惰な生活から抜け出すために今夏山シーズン初めて山へ登りました。

 初めての夏山に選んだのは神威岳(南日高・1,600m)です。
この山を選んだ理由は、日高主稜線歩きで残された難関部分ペテガリ岳→ソエマツ岳間にある山だからです。
神威岳は夏道が付いているのでこの山頂からソエマツ岳までの稜線を歩くことができないかの調査をかねたものです。

 いつもの仲間、Sz氏と2人で出かけました。
神威岳の麓には神威山荘という立派な小屋があるのですが、林道情報を見るとこの子や手前900mに崩落している箇所があり通行止めになっているということです。

 6月30日、前泊するために札幌を午後3時に出発。
夕方7時前に現地に到着、早速崩落現場を見に行くとこんな状態でした。
   
 
   
   林道の路肩が、右下の沢に向かって崩れています。
 沢の下までは20~30mはあるでしょうか?
これでは通行止めにするのは仕方がないところです。

 仕方がないので100mほど手前に駐車してテントを張ることにしました。
先客の車が1台止まっていたのでその横へ止めます。
   


 7月1日

 朝4時に起きて出発準備をします。
前日に買っておいたお弁当を食べてからテントも畳んでしまいます。

 4:45分、駐車している場所から山へ向かいます。
15分ほどで神威山荘に到着です。
   
    晴れていれば前方に見えるニシュオマナ山の山頂部は雲の中です。

 最初の渡渉点です。
   
    ここは右手の岩を跳んで渡ります。
 沢水の水量は少ないのですが、今回は沢靴をはいて登りました。
ニシュオマナイ川の右岸にある林道跡を使って上流へ向かいます。
30分ほど歩くと二股に到着、ここでやっと沢に降りますが、左股を越えて笹原を歩き右股へ向かいます。

 ここからは槇道などを使いドンドン上流へ向かいます。
   
    沢は明るく、水量も少ないのでこれなら夏靴でも大丈夫です。

 気持ちよく沢歩きを楽しみます。
   

 6:40分、上二股に到着です。
   
    ここは右股へ進みます。

 ほどなく沢の真ん中に矢印が書かれた岩を発見、ここから尾根に取り付かなければなりません。
   

 ここからが苦しい急登となります。
笹原に切られた登山道が急なのです。
今シーズン初めての山道ですので身体が悲鳴を上げます。
それを騙し騙し登ります。

 路が狭い尾根になり見晴らしが利くようになってくると山頂はもうすぐです。
8:40分、場違いなところに標識があります。
   
    この標識から右手に登山道はないのですが、ここから右に進むと主稜線でニシュオマナイ山へ行くことができます。

 ハイ松を越えると藪が薄くなってきます。
左手に山頂がうっすらと見えてきます。

 9:00分、山頂に到着です。
残念ながら山頂は雲に覆われ眺望はゼロです。
   

 山頂で少し休み汗が引いてきたところでソエマツ岳へ続く稜線を降ってみます。
そこはうっすらとした踏み跡があります。
ハイ松の枝に赤いテープが巻き付けられていたり枝が鋸で切られた跡もあります。

  
   灌木の間にある草に付けられた踏み分け路です。
ここには鹿の糞が落ちていました。
  

 10分から15分ほど降ってみましたが、薄いながらも稜線上には踏分路があるようです。
この様子ならソエマツ岳に向かって歩けるのかもしれません。
そんな期待を持ちながら、しかし、残雪期の稜線歩きの方が楽かな~あ、と思いながら登り返します。

   

 9:50分、山頂をあとにして下山します。

 この下山が大変でした。
太股の筋肉が急な降り坂に悲鳴を上げます。
両側にある笹や灌木を掴みながら降らなければ登山道を転がり落ちる羽目になりそうです。
両手で笹を掴み、滑る土を踏ん張りながら降ります。

 このお陰で自宅に帰ってきてからも筋肉痛が4~5日続きました。

 眺望には恵まれなかったのですが、今シーズン初めての夏山は満足いくものでした。

 



1,840mのコブから戸蔦別岳を歩く・その2

2013-04-12 21:29:10 | 日高山系の山
 3月29日

 昨夜は暖かく寝ることができました。
雪洞の入り口はブロックで閉じています。
とはいっても、ブロックには隙間があるので酸欠するようなことはありません。
テントの中は狭いので4人が足と頭を交互にして並んで寝ます。
寝返りが自由に打てるわけではありませんが、風の音一つしない雪洞の中は静かで暖かく、テントに比べると天国みたいなものです。

 さすがに2月の厳冬期とは違い気温が高くなってきているので顔が冷たくなるようなことはありません。
私の-18度対応の寝袋でもさすがに暑くなってきました。
ダウンジャケットを脱いで寝ました。

 朝4時に起きます。
雪洞の中は真っ暗です。
外の様子は入り口に積んだブロックに遮られていますが、かすかに風の吹く音が聞こえます。
天気予報では10mを超える風が吹くとの予測です。

 まずは、出発の準備をしなければなりません。
狭いテントの中ですので順番に寝袋を畳んでいきます。
昨夜、作っておいたアルファー米をお茶漬けにして簡単な朝食を食べます。

 テントは雪洞に中に張ったままにして荷物を整理していよいよ出発です。
雪洞の入り口に積んだブロックを外へ押し出します。
入り口の穴から見える外は、小雪がチラチラしており風も吹いています。

 6:00分、予定通りに出発できました。
   

 私のザックに取り付けたピッケルが落ちそうとのことでSz氏が直してくれます。
その間にOn氏がトップとなりmocoさんが続きます。

 私が歩き出して彼らに追いつこうとしていましたが、彼らの姿が見えないのです。
時間にして数分のことです。
姿が見えないのはおかしいと思っていたときです。
前方に大きな穴が見えるのです。
   
 近づいてみると穴の中にOn氏の姿が見えます。
びっくりして「大丈夫か~あ!」と声をかけます。
どうやら怪我はしていないようです。
mocoさんの姿が見えないので穴に近づこうとすると「来ないで!!」「落ちるよ!!」といわれます。

 その時、片足がズボット雪面を踏み抜きました。
mocoさんは、On氏よりずっと手前にいるようです。
二人の姿は確認できたのですが、mocoさんは脇腹を痛めたようです。

 On氏が3mほど、mocoさんはさらに2mほど落ちたようです。
雪庇の根元にできた大きなクレバスに落ちたようです。
この救出劇は、On氏が動画にまとめましたので見てください。

  2013トッタベツ恐怖クレバス落下

 無事に2人を救出しました。
幸いなことに怪我はしていません。

ここで、私とSz氏がトップを歩くことにしてトレースを作ります。
1時間ほどで1.840mのコブに到着です。
さあ、ここから今回の主稜線歩きがスタートします。

 主稜線に出ると西側から強い風が吹き付けてきます。
リーダーであるSz氏が「とりあえず1時間歩いてみよう」と声をかけてきます。
私は、これ以上風が強くなると視界もあまりない状態では難しいかなと感じていたのでその意見に賛成して1,803mのコブに向かって降ります。
    

 風は時折強くなるものの歩けないほどではありません。
視界も思ったよりあります。
   

 約束の1時間が過ぎましたが誰も帰ろうとはいいません。
黙々と前へ向かって歩きます。
   
 1.803mからの降りは硬い氷の斜面がありちょっといやらしかったのですが、幸いなことに尾根が広いためさほど恐怖を感じることなく順調に歩けます。

  
 1,763mに向かう尾根は、尾根というよりは広い斜面なので帰りのことを考えてこまめにデポを打っていきます。

 ここからダラダラとした尾根を戸蔦別岳に向かって歩きますが、右手はトツタベツ沢のAカール、左手には幌尻岳の七つ沼カールが見えるはずなのですが、小雪のため視界は20~30mほどでは、それも見えません。

 この地点には40年ほど前の夏にトツタベツ沢から七つ沼カ-ルへ抜けたことがあります。
その地点がどこかなどと考えながら歩いたのですが、風に吹かれて落ち着いて見回すことはできませんでした。

 そうこうしているうちに斜面の傾斜が増してきます。
いよいよ戸蔦別岳に山頂に向かう最後の斜面に取り付いたのです。
この斜面は急な上に凍り付いた斜面となっています。
左手から吹く強い風に飛ばされないように慎重に登ります。

 急勾配の斜面の先に大きさが1mほどの岩が見えています。
この岩陰ではわずかに風が弱くなっているので全員が揃うのを待ちます。
そして歩き出しますが、傾斜が緩く感じます。

 5分ほど歩くと平らな場所になりました。
私は山頂だと思い雪面を見回しました。
すると板のようなものが見えましたのでピッケルで掘り出すとこの板が山頂標識でした。

「ここに山頂標識があるよ」といって全員が集まり握手です。
   
 9:25分、戸蔦別岳の山頂に到着です。
視界はほとんどありません。
でも、間違いなくここは山頂です。
今回の大きな目標が達成された瞬間です。

 さあ、山頂を踏んだら長居は無用です。
数分いただけで直ちに下山します。

 この下山でまたしても事故発生です。
それは私が起こしたものなのですが、何と滑落してしまいました。
それも2回半です。

 2回半というのには訳があります。
1回目は、氷の斜面を降っていたときに右足のアイゼンの歯が滑り滑落しました。
この時は、足が滑って身体が斜面に付いたときにはピッケルのピックを雪面に刺していました。
それなのにズルズルと滑り落ちたのでピックに体重をかけると止まりました。
この時は10mほど落ちたでしょうか?

 みんなが心配して声を掛けてくれたのですが、幸いなことに怪我はありません。
慎重に降っていたのですが、さらにアイゼンの歯を滑らせ滑落してしまいました。
この2回目も身体が斜面についたときにはピッケルのピックを雪面に刺していたのですが、刺した位置が肩より上だったために体重がかかっておらず止まらなかったのです。
そこで、ピッケルを身体の下に引き寄せ体重を掛け直すとようやく止まりました。
この時は15mほど落ちたでしょうか?

そして半回というのは、風に飛ばされたオーバー手袋を取るために2mほど横に飛んで滑り落ちながら取ったときのことです。

 普段、滑落停止の練習などはやったことがありません。
それでも、2回半も何とかやれたのは偶然かもしれません。
疲れのため注意力が散漫になっていたかもしれません。
怪我がなかったのが幸いでした。

   
ここから先は我慢の歩きが続きます。
 
   
 登り返しにうんざりしながら我慢して歩きます。
そして、1.840mのコブに帰ってきたときは正直ホッとしました。

   
   雪洞に向かって歩きながら主稜線を見ると風によって雪が舞いあげられています。

   
   この先に雪洞があります。

 帰りは思ったより早く雪洞に戻ることができました。
往路より1時間は早く帰ってきたでしょうか。

 12:00分、雪洞に到着です。
ここでテントを畳みパッキングをするのですが、その前にお湯を沸かしゆっくりと休憩を取ります。
なんせ、ここまで約6時間、ほとんど休んでいないのです。
軽く食事を取って下山に備えます。

 13:00分、いよいよ下山です。
   

 急な尾根をドンドン降ります。
   
こんな急斜面を登ってきたのかと思いながら降りましたが、降りは楽です。
足を前に出すだけで良いのです。
あとは重力の力を借りて歩けます。

 最後に急斜面を降りてスキーをデポしたトツタベツ沢に降りきったときは、本当に終わったと思いました。
   
   思わず万歳したくらいです。
14:40分、到着です。

 しかし、ここから6号堰堤までが遠かった。
疲れた足でのスキーは本当に辛かったです。
でも、陽は長くなっているし暗くなるまでには着くだろうととにかく足を動かすことに専念して歩きました。

 そして、17:00分、みんなに遅れること10分~15分、やっと駐車場へ着きました。

 思わず身体の力が抜けるような感覚に襲われました。
とにかく、目的の1,840コブから戸蔦別岳を繋ぐことができたのです。
万々歳の結果を残すことができました。

1,840mのコブから戸蔦別岳を歩く・その1

2013-04-09 21:16:42 | 日高山系の山
 前回歩き残した1,840mのコブ山から戸蔦別岳は何としてもこのシーズンに歩きたいと思っていました。
それは、去年に続き7号堰堤の工事により6号堰堤にある最終ゲートまで除雪されていることが大きな理由です。
トツタベツ林道は、最終人家まで普段でも除雪されていますが、ここからラッセルをしながら林道を歩いても取り付きまで1日はかかってしまいます。
それが、最終ゲートまで車で入れるということは、往復で2日分の行程が短縮されるのです。

 そういったことで、3月も末になりましたがメンバーの休みが合ったので27日から29日にこの区間を歩くことにしました。
いつも一緒に登ってるKo氏は腰の不調により残念ながら参加できません。
その代わりというわけではないのですが、北見山岳会のmocoさんが初日高として参加することになりました。
今回は、私にSz氏、On氏、紅一点のmocoさん、4人での挑戦となります。

 当初は、26日から出かける予定でしたが、27日の天気予報は雨のため1日ずらして札幌を出発することにしました。

 3月27日

午後3時に集合して一路十勝を目指します。
今日は、剣山にある小屋で前泊の予定です。
この剣小屋は剣山の麓にありなかなか便利な場所にある小屋です。

 剣小屋に着くと前着者が1人いました。
長野から来られている男性のご老人でした。
本人曰く、「カリスマ失業者」という方でもう数年前に仕事を辞めて山登りに専念しているようでした。

 この方に、明日は早出するので少し騒がしいかもしれないがよろしくと挨拶をしておきます。


3月28日

 4時に目を覚まし出発の準備をします。
前日買い置きしておいたお弁当などで簡単に食事を済ませます。
5時過ぎに剣山小屋を出発してトツタベツ林道を目指します。

 林道へ入ると路面が凍ってツルツルです。
慎重に運転して最終ゲートに到着。
さあ、ここから今回の登山が始まります。

 6:30分、凍った路面のため私はスキーを担ぐことにしました。
On氏はスキーを履いていきます。
それぞれの方法で進みます。
   

 7号堰堤までは除雪されている路面がツルツルでした。
それでも25分ほどで到着です。
   
 前回来たときにあった作業用の詰め所などはきれいに片づけられています。
ここからは、除雪されていない林道歩きですのでスキーを履きます。

 8号堰堤までは林道がしっかりしています。
しかし、この先は廃道となっているようです。
8号堰堤の横(右岸)は急な崖となっており、そこから雪が流れ落ちて急斜面を作っています。
急斜面の下は遮るものがない状態で砂防ダムに堰き止められた湖面となっています。

 私とSz氏はスキーのままその急斜面をトラバースします。
クラストした斜面のトラバースですので滑り落ちると湖面にまっしぐらです。
緊張しながらスキーのエッジを雪面に食い込ませながら何とかトラバースを終えます。
On氏とmocoさんはスキーを脱いでトラバースしてきます。

 ここから先は、地図には林道の表示があるのですが現場でははっきりしません。
しかし、時々避難所の道路標識があるので林道であることは間違いありません。
そんな道を歩いていると大きな足跡が山の上の方から沢に向かってありました。
   
 何と、熊さんの足跡です。
足跡の輪郭が融けているので数日前の足跡のようです。
3月も末ですので、すでに熊さんも冬眠からお目覚めのようです。

 林道の跡がはっきりしないので川原へ降ります。
すると、右岸の奥から雪崩れたデブリが川原まで達しています。
   

 川原が狭くなったところで右岸から大きな沢が入り込んできています。
どうやら八の沢のようです。
ここまで約3時間かかりました。

 八の沢の出会いを回り込んでから尾根に取り付きます。
しかし、早朝のためクラストしたままの急な斜面ではスキーのエッジが利きません。
やむなく、スキーをデポしてツボ足で登ることにします。
幸いなことにツボ足でもクラストした斜面なので何とか歩けます。
   

 しかし、斜面の傾斜は半端ない急斜面です。
おまけに所々クラストした斜面を踏み抜くと腰くらいまで埋まってしまうのです。
だましだまし登りますが息が切れてきます。

 Sz氏が斜面を踏み抜き転がり落ちます。
2回転したところで窪んだところに助けられ止まります。
怪我がないようでしたので一同ホッとしました。

 登っても登っても急な斜面が続きます。
   

 1,200mを越えたところで少し傾斜が緩くなります。
しかしこの先にはさらなる急斜面が待っています。

   
 登るに従って神威岳の方が見えてきます。
この景色を励みに登ります。
今日の目標は1,500m辺りまで登ることです。

 尾根を登っていくと細い尾根が見えてきます。
この細い尾根の先は降らなければならないようです。
このコブ尾根を降るのが大変でした。
腰ほどまで埋まってしまうのです。
1歩1歩を腰くらいまで埋まりながらラッセルして何とかコルに到着です。

 この先はまたまた急な斜面が続きます。
その斜面を登りきるとやっと主稜線が見えてきました。
   
 大きな雪庇が続きます。
前回歩いたときにあった雪庇の根元のクラックが頭をよぎります。
雪庇の根元に注意しながら歩きますが、どうやらクラックはないようです。
雪面も堅く締まっています。

   
 前方に見えるコブの頭を目標に登ります。

 13:50分、今日の雪洞ポイントに到着です。
この場所は雪庇が顕著ではなく大きな雪が貯まっています。
尾根の前後を見ても雪庇が大きく雪庇の下に回り込むのが難しいのです。
それに比べるとこの場所は簡単に雪庇の下に回り込むことができます。

 On氏がゾンデで雪の深さを測ります。
上からと横から深さを測りますが雪洞を掘るには十分な量であることが確認できました。

 早速いつものように2穴を同時に掘り進めます。
   
 今回の雪洞はできるだけ雪面に近い場所に掘り進めます。
それは、雪が深くなると堅くなっているからです。
上部から1mほど下が天井になるように掘り進めます。

 雪洞堀りの途中で外を見ると空が晴れています。
   
 沢の向こうには前回登った神威岳からの稜線がクッキリと見えています。

 約2時間で完成しました。
   
 雪洞の中にテントを張ってやっと一息付けます。

 荷物を整理したら水作りです。
前室もあるのでそれぞれの場所に陣取りお酒を飲んだり会話を楽しんだりとホッとする時間を楽しみます。

 テントの中で小事件が発生しました。
Sz氏がホットウイスキーを作るためにガスストーブでウィスキーを温めているときです。
蒸発したアルコールに火が付きカップから炎が上がります。
まさにフランベした状態です。
一瞬テントを燃やしてしまうのではないか緊張が走りましたが、幸いなことにウィスキーの量が少量だったため大事には至りませんでした。

 テント内での火の扱いには十分な注意が必要ですね!!











 

北日高・神威岳をベースに戸蔦別岳→エサオマントツタベツ岳を歩く・その3

2013-02-25 21:51:49 | 日高山系の山
 2月14日(木)
 昨夜は、寝たのが早かったのですが、顔が冷たくて目を覚ましてしまいました。
前の晩はそんなことはなかったのですが、冷え込みが厳しかったのでしょうか?
シュラフカバーをかぶって寝ていました。

 全員で寝坊してしまいました。
4時起床が目を覚ましたのは30分も過ぎていました。
急いで準備をします。
テントは雪洞の中に張りっぱなしにして出発です。

 6時半、雪洞を雪のブロックで塞いで出発します。
昨日と同じようにトレースの消えた急な斜面を登ります。
足の裏でトレースを探しながら登っていきます。
膝が隠れるほどの雪の深さですが、軽い雪ですのでラッセルはそれほど負担にはなりません。

 20分ほどで主稜線に出ると風がゴー、ゴーと音を立てて吹いています。
昨日とは風に強さが明らかに違います。
   
    札内岳の山頂左手に太陽がぼんやりと見えています。

 この稜線を下っていきます。
相変わらず雪庇の根元には亀裂が入っているので右側の灌木沿いを降ります。
風は右手から吹いてきます。
   

 前方に巨大な雪庇が張り出しています。
   
    この雪庇の根元も大きな亀裂が入っています。
慎重にルートを選びます。

 しかし、日が射すと雪の白さが一際美しく息を飲むばかりです。
   

 最低コルが見えてきました。
   

 8:20分、最低コルを通過します。
ここから山頂までは、登るだけです。
しかし、風がどんどん強くなってきます。

   
    最低コルを振り返ると雪庇が太陽の光を受けて輝いています。

 慎重な登が続きます。
   
    登るにつれて風が強くなり身体のバランスに気を付けて登ります。
アイゼンの歯が半分ほどしか刺さらなくなってきます。
堅い雪の表面が氷のようになっています。
ここでバランスを失うと大変です。

 ストックをしっかり雪面に食い込ませて一歩一歩慎重に足を運びます。
   

 北カールがうっすらと見えているものの北東カールはまだその姿を見せてはくれません。
もう少し登らねば、北東カールを見ることはできないと思い風に負けないように身体を小さくして登ります。
前方に稜線から左手に張り出した尾根があります。
その尾根に風を避けるように回り込みます。
ここからやっと北東カールが見えるようです。
とはいっても、カールの上部は雲の中です。

 ここで相談します。
この上はいっそう風が強くなってきます。
おまけに斜面はカリカリです。
相談の結果、今回はここ1650mを最終到達地点として下山することにします。

 そうと決まれば、後は降るだけです。
トレースを踏み外さないように降ります。

休憩を取ったときにOn氏の睫毛が凍っていました。
   
    睫毛に白いものが着いていますが、見えますか?
 苦闘の後が忍ばれます。

  
   ここまで歩いてきて雪洞のある稜線が見えたときには、本当にホッとしました。
しかし、ここから支稜線に降りる降り口までが辛かった。
なかなか着かないのです。
一歩、一歩、あえぐようにして登ります。

 降り口からは、転がるようにして雪洞に向かいます。
雪洞に着いたときは、ちょっと放心状態でした。

 雪洞の中でテントを畳みまずはお湯を沸かして温かい飲み物を作ります。
このとき、ミルクティーが好評でした。
小1時間ほど休んで体力を回復させての下山です。

 しかし、この下山も新しく降った雪が40センチほどあり、トレースが消えており難儀しました。
雪庇の根元にある亀裂を探しながら歩くので神経を使います。
スキーをデポしたところまでと思い降るのですが、なかなか着きません。

 やっと、スキーデポ地点に着きました。
ここでアイゼンからスキーに履き替えて、いざ、滑るぞ!と思いましたが、いかんせん、荷物が重すぎます。
兼用靴と違ってプラブーツは足首がグラグラ、辛抱のスキーが続きます。

 それでも、斜滑降とキックターンを組み合わせて慎重に降ります。
スキーで転ぶ方が怪我をする確率が高いからです。
斜滑降とキックターンを続ける辛抱のスキーの果てにやっと林道、林道に出たときには本当に身体の力が抜けるようでした。

 すでに夕暮れが間近に迫っており先を急がねばなりません。

 7号堰堤の工事現場からは除雪された林道を歩きます。
車を止めていたゲート前に着いたときはすっかり暗くなっていました。
この3日間の山行を振り返る余裕もなくバタバタと荷物をまとめ車に乗り込みます。

 そのまま、中札内で給油して嵐山のお風呂目掛けて車を走らせます。
嵐山荘の浴槽は天国でした!!


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 帰ってきてから麓の上札内の気温を調べてみました。
  12日 最低気温 -20.5度 最高気温 -6.5度
  13日  〃   -16.3度  〃   -4.7度
  14日  〃   -18.9度  〃   -3.6度

 一般的に標高差100mで0.6度気温が下がるといわれています。
すると雪洞を作った稜線ですと確実に5~6度はこの気温より低いはずです。
身体が芯から冷えたのもうなずけることです。  

北日高・神威岳をベースに戸蔦別岳→エサオマントツタベツ岳を歩く・その2

2013-02-21 20:38:24 | 日高山系の山
 2月13日(水)

 雪洞の中は暗いので寝過ごしてしまいました。
4時起床が30分ほど過ぎています。
あわてて寝袋をしまい朝食の準備をします。

 朝食はお湯を沸かすだけです。
昨夜、水はたっぷり作ってあるのでヤカンでお湯を沸かします。
朝食は、いつも雑炊です。
昨夜作っておいたご飯にお茶漬けの元をかけてお湯を入れるだけです。
後はみそ汁に漬け物、サラダなどをさらっと掻き込みます。

 ポットにミルクティーを作って持っていきます。

 6:15分、雪洞の入り口にブロックを積んで閉じます。
さあ、いよいよ戸蔦別岳に向かって出発です。
   
   
 いきなりの急登です。
膝から太股くらいの深雪をラッセルします。
深い雪ですが、思ったより軽いのでラッセルもそれほど苦にはなりません。
何度か交代でラッセすると20分ほどで主稜線に到着です。
   
   南にはうっすらとエサオマンが見えています。

 ここから北に向かって歩きます。
目の前には神威岳が見えています。
   
   後ろには札内岳が見えています。

 7:10分、神威岳の山頂に到着です。
   
    山頂標識もないただのコブです。
とりあえず、一番高いところで記念写真を写します。

   
    前方はいくつかのコブがあり、登り返しを考えるとどれだけ時間がかかるか心配です。

 7時を回ってくると上空が明るくなり、青空が顔を出してきます。
風がほとんど吹いていないので快調に歩きます。というか、この稜線もほとんど雪庇の根本に亀裂が入っています。
慎重に足を運ぶ必要があります。

   
   登っては降るを繰り返します。

 前方に日高幌尻岳の姿がうっすらと見えてきます。
そのうっすらとした姿が、どんどん青空が広がりはっきり見えてきます。
   
   これが、日高幌尻岳です。
カールをいくつも抱いた雄大な姿を見たときは思わず「オーッ!」と声が出てしまいました。
幌尻岳の右手に見えるピラミッドのような山が今日の目標である戸蔦別岳です。
 
   

 しかし、この光景を楽しんでいる余裕はありませんでした。
目の前にはナイフリッジが続いています。
   
    このナイフリッジには気を遣いました。
と言うのは、根元に入っている亀裂をストックで探しながらルートを探さなければなりません。
所々、膝ほどに深雪がつもっています。

 なかなか進みません。
   
 でもきれいです。
太陽を受けた雪庇の雪が真っ白に輝いています。
時間はどんどん過ぎていきます。

   
   戸蔦別岳が大分近くなってきました。

 1803mコブの手前で時計をみると10:20分になっています。
ここまで4時間ほど歩いてきました。
戸蔦別岳が近くはなってきたのですが、まだ1時間半はかかりそうです。
   
 帰りのことを考えるとこの辺でどうするか相談します。
ここから戸蔦別岳までまだ1時間半はかかるでしょう。
ひょっとすると2時間かかるかもしれません。
3人の意見は引き返すことで一致しました。
   
    1803mのコブです。

 このコブまでいくか相談しましたが、それもあきらめることにしました。
すべては、この次の宿題としました。

   
   ここまで歩けたことでそれなりに満足した私達です。

帰り道も決して楽な道ではありません。
いくつもの登り返しが待ちかまえています。
   
   

   
    斜面に大きな破断面が見えています。
    でも、雪崩れたような跡が見あたりません。
    この破断も地震が起こしたものなのでしょうか?

   
   やっと、神威岳が見えてきました。
 この辺りまで帰ってきましたが、登りは足が動かなくなっています。
あえぎあえぎ、最後の斜面を登ります。

結局,BCに着いたのは14時を少し回っていました。
前日の疲れもあり足の動かない一日でした。

 でも、きれいに晴れた幌尻岳や戸蔦別岳を見ることができたのは幸いでした。

北日高・神威岳をベースに戸蔦別岳→エサオマントツタベツ岳を歩く・その1

2013-02-19 21:32:37 | 日高山系の山
 日高の主稜線歩きは、主な部分でいうと戸蔦別岳→エサオマントツタベツ岳とソエマツ岳→ペテガリ岳が残っています。
この戸蔦別岳→エサオマン間を歩くために2月12日から3日間頑張ってきました。

 今回も昨年膝を痛めたKm氏は参加できず3人での挑戦となりました。

 2月12日(火)

 早朝というか深夜の3時半に集合して4時前に札幌を発ちます。
目指すは中札内町です。
深夜の高速道路はほとんど車が走っていません。
おまけに路面が出ているので夏道に近い感覚で走れます。

 今回、戸蔦別岳からエサオマンを歩くことにしたのは理由があります。
それは、トツタベツ林道が除雪されているからです。
今年もトツタベツ川の上流部にある砂防ダムを工事するために夏に車で入れる最終地点となる6号堰提まで除雪されています。
このため、最終人家からの林道歩きが必要ないという好条件なのです。
この好条件のため2日は行程を詰めることが出来ます。

 7時半頃にゲートがある6号堰提で来ることが出来ました。
   
    懐かしいゲートが出迎えてくれます。

 よく見るとゲートの先も除雪されています。
私の情報ではこのゲートの直ぐ脇にある6号堰提が工事中だと思ったのですが、そんな気配はありません。

 まずは登山準備です。
冬は装備が多いので必然的に荷物が増えます。
今回は、スキーで登る予定です。
全員、ジルブレッタのスキーですのでプラブーツを履いて行きます。

 林道を歩いていると後ろから工事のために向かう車が追い越していきます。
どうやらまだまだ先の方で工事をしているようです。

   
    エサオマンの橋を越えたところです。

  エサオマンの橋を越えると神威岳に向かって延びている枝尾根に取り付きます。
ここから一気に急登を登ります。
林の中ですので木々が邪魔になって思うように進めません。
おまけにサラサラ雪でストックがドンドン刺さっていき支持力がありません。
   
    こんな条件の中、まずはコブ山を目指して辛抱が続きます。

 寝不足の身体には、荷物の重さと急登が堪えます。
それもやっと解放されて、尾根に登ることが出来ました。
   
    ここからは、尾根状の急斜面を登ります。

 高度が上がるにしたがって雪庇が張り出してきます。
おまけに雪面がクラストしてきます。
スキーのシールが利かなくなってきたのでデポします。
ここからはツボ足で登ります。
   
    この稜線歩きには地雷が仕掛けられていました。
それは、雪庇の根元に亀裂が入っているのです。
その亀裂の上に雪が降り積もっているので見えないのです。
私は、この亀裂に腰まで落ちてしまいました。

 約7時間かけて、やっと主稜線が見えてきました。
その主稜線には大きな雪庇は十勝側に張り出しています。
そこで、主稜線に雪洞を掘るのをあきらめて今登っている支尾根に掘ることにします。

 慎重に雪の深さを確認して場所を決めます。
ここに掘る雪洞を2泊使用するので慎重に場所を決めます。

 神威岳に向かったやや北向きの斜面に掘ります。
掘り出して直ぐ固い雪にぶつかります。
この固い雪を掘り出すのに苦労して約2時間の格闘です。

 ほとほと疲れ果てて、暗くなってきた5時過ぎに雪洞も完成!
やっとテントに入ることが出来ました。
   
    入口も閉じてしまいます。

 まずは、お酒で体を温めながら水作りに精を出します。
適当に飲んだり食べたりしていると緊張から身体が解きほぐされていくのが分かります。
明日は4時起きで戸蔦別岳までの稜線を歩く事にします。




 

十勝岳(南日高)を目指していたつもりが楽古岳!

2012-10-20 13:46:42 | 日高山系の山
 10月も中旬になるとさすがに暖かい今年でも晩秋の色が濃くなってきました。
そんなところへSz氏から南日高にある十勝岳(1,456m)に登らないかという話が来ました。
十勝岳は登山道がないので沢登りになります。
この時期になると沢水が冷たいのではないかとあまり気分が乗らなかったのですが、天気予報ではまあまあなので家でグズグズしているよりは、と思い行くことにしました。
私もSz氏もコイボクシュメナシュンベツ川を登るのは初めてです。

 10月15日(月)

 朝5時に札幌を出発します。
秋になるとこの時間は真っ暗です。
まずは浦河町を目指して高速に入ります。
高速は日高門別まで少し延びていました。

 浦河町から天馬街道へ進み上杵臼から右折して林道へ入ります。
10キロ弱で登山口となる楽古山荘に到着です。
   
    中を見ましたが綺麗に整理された立派な小屋です。
この次はここに泊まって楽古岳に登ろうなどと話しながら登山準備をします。

 7:40分、さあ出発です。
   
    まずはコイボクシュメナシュンベツ川の左岸にある林道を歩きます。
今日は時間がないので出来るだけ林道を詰めてから入渓することにします。
20分ほど林道を歩き、いよいよ入渓です。
   
    最初はビビリながら沢水に足を入れましたが水が思ったより冷たくありません。
   ちょっとだけ気持ちが軽くなりました。

   
    沢の途中で綺麗に苔むした場所があります。
   フカフカとした苔の緑色がとても綺麗でした。

 8:35分、二股と思われる場所に来ました。
高度計を見ると515mです。
二股は550mにあると聞いていましたのでもう少し先へ右股を進みました。
   
    左股です。(本来はこの左股へ進めば十勝岳でした。)
 
   
    この右沢を登ると楽古岳へ行くのですが、私達はまだ先に二股があると
    思っていました。

   
    こんな滝もあり楽しく登っていきます。

 まもなく滝などが現れ快調に登っていくと右手から沢が入ってきます。
高度計を見ると550mちょうどです。
ここが二股だと思い右股へ入ります。
この右股へ入ったのは、私は550m二股は右股へ入ると間違って記憶していたからです。 

 しかし、この右股は狭い谷となっており直ぐ先に小さな滝があります。
この滝を越えようとしましたが上手く越えられません。
その先の様子を見ましたが沢が狭まりどうやら枝沢ではないかと思い引き返します。

 戻ったところで先ほどの二股ではないかと話し合った場所までさらに降れば良かったのですが、
私達は左股に入ったつもりでそのまま登っていきます。

   
    この滝は正面の岩から登りました。

 高巻きをするところにピンクテープを見つけたりしたので十勝岳へ向かって登っているつもりでした。
   
    沢が広くなり、枝沢から滝となっての流れ込みがあり目を楽しませてくれます。
   

 そして、一旦、伏流します。
   

 ドンドン沢を詰めていくと正面が切り立った崖となりそこに一筋の滝が落ちています。
   
    50m以上はありそうな滝です。
「あの滝は登れないね~ぇ。」などと話しながら
滝の下へ向かっていくと手前の右股は登れそうです。
10:30分、上二股に到着、標高は770m辺りでした。

   
 この右股の滝を登ることにしました。
ここからが凄かったです。
登っても登っても滝が続きます。
滝とナメの連続なのです。
標高差で150m~200mは滝が続いたでしょうか?

 その滝の一つを高巻いている時です。
私は滝の近くを高巻こうとして滑る岩を登っている時です。
足元がずるっと滑ってアッという間もなく岩肌を滑り落ちてしまいました。
高さは3mほどでしょうか。

 右の太腿の外側を岩に打ち付けましたが、沢の中へ立ったまま落ちたので足首や膝を痛めなかったのが幸いです。

 沢水が細くなり涸れてくると標高で千メートルは超えてます。
   
    沢越しに大きな山が見えています。
    (私はこの山が楽古岳だと思っていました。)

 沢というより岩だけの細い沢筋を登ります。
やがてその沢筋もハッキリしなくなりハイ松が出てきます。
ハイ松の向こうに稜線が見えてきます。
この辺りは身体を隠すものがないので冷たい風が吹き付けてきます。

 ウインドブレイカーを着てハイ松を漕いで登ります。
斜面が急でなかなか進みません。
高度計は1400mを超えています。

 あと15分から20分もあれば山頂に到着出来そうです。
しかし、時計を見ると12時20分を回っています。
出発する前に一応12時を目処に考えようということで登っていました。

 Sz氏と相談した結果、ここから降ることにします。
この山はお互いに初めてのこともあり、しかも、登ってきた沢を降るとしたら何時間かかるか分かりません。
今回は、ここまでとして降ります。

 さて、降るルートを相談します。
登ってきた沢を降るのはかなり危険に感じましたので、目の前に広がる1本隣の沢に向かって降るのはどうか相談しました。
目の前に見える沢の方が傾斜が緩く、沢の下までゴルジュはないように見えます。

 相談がまとまったので、目の前の沢を降ります。
初めて降る沢ですので、沢身に直ぐはいらず尾根状の地形を繋いで降ります。
強烈な藪漕ぎの連続です。
笹を歩く時は沢靴が滑るので後ろ向きになって降りました。

 途中で休憩を取ります。
Sz氏が持ってきてくれた牛乳を湧かして飲みます。
冷え切った身体に熱い牛乳がしみ込んでいきます。
お腹が熱くなると力が湧いてきます。

   
   目の下に見えた最後の滝です。
この滝を降ると、どうやら登ってきた沢に合流出来そうです。
慎重に左岸の草付きを降ります。

   
    登ってきた見た崩落した岩です。

 14:30分、ここまで来てホット一息つけました。
ここから先は登ってきたルートですので安心して降れます。

 晩秋の陽の落ちるのは早いです。
すでに3時近くなっているので先を急ぎます。
ここからは休み無しでドンドン降ります。

 16:20分、楽古山荘へ戻ってきました。
向かいの山に夕日が当たり紅葉の山を照らしています。 
   
    
 いや~!
今日はポカの連続でしたが、楽しい1日でした。
770mからの滝登りは緊張しましたが、楽しく登れました。
この次はこの楽古山荘へ1泊して、十勝岳と楽古岳に登るのもいいかと思いました。

 ☆☆★★☆☆★★☆☆★★☆☆★★☆☆★★☆☆★★☆☆★★☆☆★★
  
  今回は目指した山に登れず隣の山に登るという大きなミスを犯してしまいました。
 その原因は、私の記憶違いが原因でした。
 二股できちんと地図を出しコンパスで進行方向を確認すれば防げたミスです。
 今一つ気持ちが乗らない事はありましたが、そんな言い訳は通じません。

  幸いに太腿も打ち身だけで歩くことに支障がなかったのは幸いでした。
 この迷い山行のお陰でこの辺りの沢の様子も分かりました。
 来年は、きちんと十勝岳に登り、さらに楽古岳も登りたいと思います。


 最後に、ログを落とした地図を貼り付けておきます。
   
 

ヌビナイ右股を遡上しソエマツ岳からピリカヌプリの稜線を歩く・その3

2012-10-02 21:43:55 | 日高山系の山
 9月14日(金)

 昨夜は、念願のソエマツ岳からピリカヌプリの稜線歩きを終えた満足感でグッスリ寝られました。昨夜と同じ寝袋の中から星空を眺めながらの一夜でした。

 朝4時頃にSz氏が起きます。
今日は下山するだけですので起床時間は5時でいいかと話していたのですが、目が覚めたようです。
「コーヒーでも湧かすかな?」と言ってくれたのですが、私とOn氏が「もうすぐ明るくなるからそれからにしたら」と言って寝袋の中で惰眠をむさぼります。

 5時近くなると空が明るくなってきます。
私とOn氏も寝袋から出ましたが、昨日の疲れもあり目が覚めてきません。
それでも、Sz氏が作ってくれたコーヒーを飲んで朝食を食べる頃には頭も働いてきます。

 まずはパッキンをしなければなりません。
Sz氏とOn氏の荷物を外に出して私はテントの中を片づけます。
炊事用具などを持っているとどうしてもパッキングは最後になってしまいます。

   
    テントを畳み、2夜の宿となった場所に感謝です。
 このテントサイトは近くに水場があり焚き火が出来た最高の場所でした。

 6:10分、いよいよ下山です。
   
    最初はゴロゴロの岩を慎重に降ります。
 
 40分ほど降るといよいよ雪渓の上を渡らなければなりません。
雪渓に上がる場所は左岸の流木を使います。
そして、雪渓の上を降り、左岸の高巻きから雪渓の上に渡った場所の立木に付けたテープを探して
雪渓を降ります。
巻き道はハッキリしませんが、登ってきた道ですので何とか降ります。
   

 七つ釜の展望台となる辺りから沢を望むと雪渓に陽が当たって輝いています。
   

 ここで記念写真を写します。
   
    左がOn氏、右がSz氏です。
   
    私です。
 
 さらに20分ほど降ると左岸の高巻き地点です。
ここで、残されていた固定ザイルに私達が持ってきたサブザイルを足して固定ザイルを補強しました。
   
    補強作業中のOn氏とSz氏です。

 この固定ザイルの補強により左岸のトラバースはかなり安全度が増しました。
しかし、この固定ザイルの強度が何年持つか分かりません。
残置されているリングボルトと今回新たに取り付けたステンレスボルトを利用して自分達のザイルを使いトラバースすることをお勧めします。
残置されているものの安全度は自分で確認してください。

 このトラバースを終えて川床に降りるところも登る時には気が付きませんでしたが、降る時には嫌らしい場所です。
よく見ると白樺の木の幹にスリングが数本残っています。
皆さん考えることは同じようです。
私達もこの白樺の木を支点にしてザイルを出して下降しました。

 この下降地点で川床へ戻りました。
そのまま左岸を歩いていきます。
次のゴルジュも左岸に踏み分け道が付いているのでそのまま歩いて行きましたが、どうも様子が変です。
直ぐ先は岩壁になっているのです。
この岩壁を越えるのにかなり高いところまで登らなければなりません。
おかしいと思い引き返します。

 On氏が対岸に垂れ下がっているテープを見つけました。
ここで一度渡渉して右岸へ渡ります。
右岸に渡ると固定ザイルが崖に取り付けられています。
この崖を登りさあトラバースをと思ったのですが、踏み分け道がハッキリしません。
私達は地形を読みながら草付きの急斜面をトラバースします。

 やっと、高巻きを終えました。
これから先はそれほど危険な場所はありません。
天気が良くなって暑いので沢の中を歩いたり日陰の巻き道を歩いたりします。

巻き道は登る時には気が付かなかったのですが、中州などにはほとんど巻き道があるようです。
何度か休んで歩いているとクマの沢の二股に到着です。
ここまで来ると、直ぐ先が林道からの入渓地点です。

 右岸に林道にある待避所の標識を見つけたので笹を漕いで林道へ出ます。
ここから10分ほど歩くと駐車していた車が見えてきます。

 ちょうど12時、駐車している車に戻りました。
そこから、後ろを振り返るとソエマツ岳が見えています。
   
    一番奥のうっすらとした山陰がソエマツ岳です。

 これで私にとって冬からの宿題だったソエマツ岳からピリカヌプリの稜線歩きが終わりました。
それにしても、北海道有数の渓谷美を誇っているはずの七つ釜が流木と雪渓でズタズタにされていました。
この場所が、もとの景観を取り戻すのに何年かかるのでしょうか?
数年後に再訪して、ぜひとも綺麗な七つ釜を見てみたいものです。

ヌビナイ右股を遡上しソエマツ岳からピリカヌプリの稜線を歩く・その2

2012-09-29 22:19:21 | 日高山系の山
 9月13日(木)
昨夜は暖かくテントの入口は網だけを閉じていました。
そのため、入口に頭を向けていた私は星空を楽しみながら寝ていました。

 朝4時、まだ暗いのですが起きます。
今日はこのC1からソエマツ岳に登りピリカヌプリまでの稜線を歩かなければなりません。
予定では約11時間の行動を覚悟しなければなりません。

 いつものように朝食はサッサと雑炊を掻き込み出発の準備をします。
この辺の手際は何も言わなくても各自がてきぱきと済ませます。

 5:25分、いよいよソエマツ岳に向かった上二股の右股を登ります。
   

 出だしはまだ目が覚めていないのでゆっくりを心がけて岩を踏みしめます。
ドンドンと水量が細くなっていきます。
それと共に傾斜も増してきます。
   
   こんな滝が次々と現れ、最後は滝の連続となります。
   
   
   最初は濡れないように水流のそばを登っていましたが、この辺りではそういうわけにはいきません。
水流を跨ぐようにしてドンドン登ります。

 最初の940m二股は左に入ります。
今回はganさん(通称ganさん、北海道の沢に関する本の著者)の沢本を参考に登ることにしました。

   
    On氏も順調に登ってきます。

 1240m三俣はganさんの本では左股へ入ってから中俣へ乗り越したとありますが、中俣はそれほど難しいとは感じなかったので3人で協議した結果、中俣を登ることにします。
この辺りから高度感がありドンドン標高を稼いでいるのが実感出来ます。

   
    やがて、沢水が涸れて岩だけの沢形を登ります。
その手前で水を汲んでおきます。
沢形が不明瞭になって草付きの斜面が現れます。
この草付き斜面のいたるところにクマの掘り返しがあります。
どこが踏み跡か分からなくなってきます。

辺りがガスで真っ白です。
視界が無いので右手登るとハイ松に突き当たります。
そこでハイ松を回り込むように左へ回り込み草付き斜面を登りきると稜線に出ました。
稜線にはハッキリとした踏み分け道があります。

 8:00分、ちょうどソエマツ岳の山頂に到着です。
ソエマツ岳の山頂は何もないので視界もない中で本当に山頂か確認します。
On氏が山頂の先を確認すると踏み分け道が消えているといいます。
そして、倒れていた三角点の標石を見つけましたので、ここが間違いなくソエマツの山頂です。
   
 まずは予定時間より早くソエマツ岳の山頂に到着することが出来て一安心です。

 本来なら、このソエマツ岳の山頂から神威岳への稜線やこれから歩くピリカヌプリの稜線が見えるはずですが、今は真っ白なガスの中です。

 20分ほど休んでからいよいよピリカヌプリへ向かっての稜線歩きのスタートです。
今回の本当の目的はここからの稜線歩きなのです。

 ガスで視界のない中、時々消えるような踏み分け道を歩きます。
次々と小さなコブ山が現れます。
その中には岩峰となっている場所もあり慎重に一つ一つを越えていきます。

 12:20分、1529mのコブに達した時ガスがパーッと晴れました。
   
    これからある句稜線が見えました。
ピリカププリの山頂はガスの中です。

 ここから先は踏み分け道がハッキリしないとganさんの本には書いてありましたが、以外にも踏み分け道は続いています。
その踏み分け道の所々に1センチほどの黒く丸い分が落ちています。
この分は鹿の糞です。
さらにクマの糞もあり、踏み分け道はまさに獣道なのです。
そこを私達も歩かせてもらいます。
   
   
 天気は相変わらずですが視界が開けてくると俄然やる気が湧いてきます。
 これが最後の登りのようです。

 最後の登りを登っている時にトヨニ岳方面の稜線が見えてきました。
   
    この稜線を3月に歩いてピリカヌプリまで来たのです。

 ピリカヌプリ山頂手前にあるコブに到着。
ここからハッキリした踏み分け道を山頂へ向かいます。
この時に、ピリカヌプリからC1へ下る踏み分け道を探しながら歩きましたが、沢から稜線に向かって数本の踏み分け道があります。
そうこうしているうちにピリカヌプリの山頂へ到着しました。

 13:30分、ピリカヌプリの山頂に着きました。
これで3月にやり残した宿題を片づけることが出来ました。
   
    ピリカヌプリの山頂も三角点の標石があるだけです。
その三角点の標石を撫でてしまいました。
山頂には1張りテントが張れる草の平らな場所がありました。

   
    C1に向かっての沢です。
      右岸の下の方に雪崩れた様な跡が見えます。

 ここまで来ると暗くなるまでにC1へ下る目処が付きました。
ゆっくり休んでから下ります。

 山頂から少し戻っていよいよC1への降りです。
最初はガラガラの沢形を下ります。
急な斜面ですので浮き石に足を取られないように慎重に降ります。
1時間ほど下った三俣で水流が復活します。
1250mまで一気に下りました。

ここからは快適な沢降りです。
   
 疲れてはいるのですが、3人の足取りは快調です。

   
   雪崩れ斜面の下に来ると大量の流木があります。
沢靴でこの流木に乗ると滑ります。
慎重にルートを見極めて降ります。

 そして、最後に大きな滝が行く手を阻みます。
どこから降るのかと思っていると右岸にハッキリした巻き道がありました。
   
 ちょっと離れてみてもなかなか勇壮な滝です。
   
 最後はこの滝から右岸をへつるとテントが目に入ってきました。

 16:40分、テントサイトに到着です。
まずは、このために用意したサッポロクラッシクのビールで乾杯をします。
このビールはノドに沁みて美味しかった~ぁ!

 無事に稜線歩きを終えた余韻に浸りながら濡れた服を着替えたり焚き火を焚いたりして過ごします。
この時間は本当に幸せでした!