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井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

ヌビナイ右股を遡上しソエマツ岳からピリカヌプリの稜線を歩く・その1

2012-09-23 20:36:27 | 日高山系の山
 日高の主稜線歩きは夏道のあるところを歩き終え、残雪期を使って残りを歩いています。
今年の2月にトヨニ岳からピリカヌプリ、さらにソエマツ岳まで歩く計画でしたが天候悪化のためピリカヌプリで引き返し、ソエマツ岳までの稜線を残しました。
 この時には、ソエマツ岳からピリカヌプリの稜線はヌビナイ右股を遡上して歩くことが出来るので夏に歩きましょうということで撤退しました。

 そして、8月上旬にヌビナイ右股を遡上してソエマツからピリカヌプリを計画して大樹町のコタンキャンプ場で前泊して入渓の予定でした。
しかし、天気に翻弄され雨のためこのキャンプ場に2泊して断念するという散々な結果で敗退しました。

 今回は、前回の轍を踏まないように1週間の余裕を持って計画しました。
当初の計画では9月11日から入渓の予定でしたが、天気予報では12日の方がいいようですので1日ずらして12日の早朝に札幌を発って入渓することにしました。

 9月12日(水)

 朝4時に集合して一路大樹町へ向かいます。
今回のメンバーは、Km氏が右膝を痛め参加を断念。
私にSz氏、On氏の3人で挑みます。
3人ともヌビナイ川は初めてです。

 前回の偵察で入渓地点までの道は迷う心配はありません。
7:30分、ヌビナイ川右岸の林道を進み車をデポする場所に到着。
途中、鹿鳴橋で水量と水の濁りをチェックしますが問題ありません。
綺麗な水は橋の上から川底が透けて見えています。

 車をデポする場所に着きましたが、その先の林道も綺麗に両側の草が刈り払われています。
もう少し先まで車で行けそうですが、私達はここに車をデポして林道を歩くことにします。
   

 10ほど歩いたところから入渓します。
この場所はヌビナイ川が直ぐ近くに見えていますので帰ってきた時にも直ぐ林道へ上がれると思ったからです。
入渓して直ぐ渡渉します。
   
 川幅は広くながれも穏やかです。
まずはしばらく振りの水の感触を楽しみます。

 左岸の川沿いを歩きます。
ヌビナイの川原にある岩は白く輝き川幅もあるので太陽の日差しも十分、明るい川です。
10分ほど歩くとクマの沢二股に到着です。
   

 ここから先も広い川原を右に左に適当に渡渉しながら歩きます。
沢水は温く天気は快晴、太陽の日差しを受け汗をかきながら歩きます。
   

 2時間ほど歩くと滝が見えてきます。
   
 さあ、ここからは慎重に歩かなければいけません。

   
 両岸の岩は滑らないので浮き石に気を付けながらドンドン先へ進みます。
ほどなく両岸が狭くなりゴルジュになっています。
   
   
 ここは右岸を高巻きます。
この巻き道がいやらしいのです。
草付きの斜面ですが、ルートがハッキリせず木の枝に掴まったりしながら慎重に越えます。
そして最後は固定ロープを使って川に降ります。

 降りたところはゴルジュの上です。
落ち口が滝になっており、ここから落ちると命が・・・否が応でも慎重にならざるを得ません。
   
 この落ち口を見て気が付きました。
ここで渡渉した人が流れに足を取られ滝に落ち、ビレイしていた両岸の男性が巻き込まれ3人が亡くなった事故の現場でした。
心の中で3人のご冥福を祈り、私達も渡渉します。

 膝下ほどの深さですが、水流があり靴底を川底から離さないように慎重に渡渉します。
川幅は3メートル足らずですが一番流れの速いところの1歩は慎重に足を運びます。
ここからはゴルジュ帯が続きます。

 次の高巻きが問題の高巻きです。
左岸を一段上がったところからゴルジュの上をトラバースします。
   
 目の下にはゴウゴウと滝が落ち、その水が渦を巻いてゴルジュを流れます。
   
 下流も白く泡だった水が流れていきます。
滝の落ちる様子から下流まで目に見える流れは迫力満点です。

 トラバースルートの手前でザックを置いてまずは空身で偵察します。
すると、リングボルトが2個所ほど打たれており、ザイルも渡してあります。
一度上流までトラバースしてみます。
確かに、岩に付いた土が剥げ足場の悪いところがあります。
岩の角が丸くなっておりステップの置き場がハッキリしません。
そして、目を下に転ずると白濁した流れが20mほど下を流れています。
足がすくみそうになるという感想も無理はありません。

 私達はこのルートを少しでも安全に渡れるようにボルトを打つつもりで用意してきました。
On氏がその場所を一番下流側の岩にステンレスのボルトを打つことにしました。
そうすれば、このボルトと残置されているリングボルト2本を使えばザイルがセット出来ます。

 というわけで、さっそくOn氏がドリルで岩に穴を開けます。
この作業は交代で約30分ほど掛かりました。
その間、Sz氏は残置されているロープを整理したり切れた細引きなどを外したりしています。

 約1時間ほど掛かってこれらの作業を終えました。
早速、持ってきたザイルをボルトに通して様子を見ます。
ピーンと張ったザイルにビレイを取って歩くと安心感が違います。
空身で何回も歩いていると恐怖心も薄らいできます。
ザックを背負ってのトラバースはサクサクと歩けます。
帰りのことを考えてザイルは残していきます。
   
 沢はドンドン狭くなってきます。
   
 でも、こんなところもありホット一息つきます。
 
 そうしているうちに再度右岸の高巻きに入ります。
この高巻きも足元がズルズル、ズブズブの泥だったり、ルートがハッキリしないので枝を掻き分け登ります。
そして目にしたのがこの光景です。
   
 前方にモヤがかかっています。
沢には大量の流木と、雪渓が残っています。
私の記憶では、この辺りから七つ釜の綺麗な景観が広がるはずなのですが・・・
目に見える沢は流木の山です。
   
 これでは沢に降りるわけにはいきません。
そのまま高巻きを続けます。
すると、50mほど先まで雪渓で沢が埋まっています。
シュルンドが口を開け雪渓の上に降りることも出来ません。
我慢して急な草津貴社面をトラバースしているとシュルンドのない場所があります。
私はそこから雪渓の上におります。

 雪渓の上は泥と流木がいっぱいあります。
しかし、雪渓は凍っており崩れる心配はないようです。
割れ目があるので覗いてみると5~6mの深さがあるようです。
On氏とSz氏に雪渓は大丈夫だと伝え、取り敢えず一番上流側で降りられる場所を探します。

 幸いに左岸の上流部の雪渓は厚さが1m50センチほどでシュルンドもなく横たわっている白樺の木を使うと上手く沢の岩に降りられそうです。
   
    この木を利用して雪渓から降りました。

 そして、雪渓の上流部を見ると七つ釜を飲み込むように雪渓が口を開けています。
   
 いや~あ、ここに飲み込まれたら命はないでしょう。

 ここから上流部は
3~4mほどの滝とお釜が続きます。
   

 最後の滝を越えると今日のキャンプ地となる上二股が近づいてきます。
   

   
 一番奥が上二股です。
しかし、ここからの登りが辛かったです。
やっと着いたという安心感からか足が進まないのです。

 15時、歩き出して7時間、やっと上二股に到着です。
Mocoさんに聞いていた一番奥に行くと、なるほど、小さな沢水が流れており平らなテントサイトがあります。

 今日の宿が決まってホット一息です。
   
 
 On氏が焚き火に挑戦です。
私は焚き火の焚き付け用に新聞紙を用意してきています。
少ししけった枝に何とか火を付け焚き火も完成!
まずは濡れた服を脱いで着替えます。

 あとはダラダラと食事の準備です。
今夜は麻婆茄子、沢山食べるぞ~!
   


 


ヌビナイ川、敗退!

2012-08-09 05:54:43 | 日高山系の山
 今年の3月にトヨニ岳からソエマツ岳を目指しピリカヌプリで敗退。
ピリカヌプリとソエマツ岳の間は今夏にヌビナイ沢を遡上しての稜線歩きを計画しました。
ヌビナイは日高屈指の美沢!
7つ釜というエメラルドグリーンの滝壺を持つ沢です。

 しかし、その7つ釜へ達するには嫌な草付き斜面をトラバースしなければいけません。
それと、この沢は雨が降るとアッという間に増水する恐ろしい顔を持っています。

 8月5日(日)に札幌を出発して大樹町で前泊。
6日に入渓予定でしたが、あいにくの雨。
天気予報では今日一日も降ったり晴れたりの天気だといいます。
しかし、6日からはお天気マークが並びます。

 そんなことで入渓を1日延期します。
余った時間を使って花畑牧場、六花の森などを見学、すっかり観光客に早変わりです。


 6日に夕方には雨が上がるという天気予報でしたが、グズグズと降ったり止んだりです。
キャンプ場の横を流れる歴船川を見ると増水しています。
取り敢えず出発準備を整えて登山口を目指します。
ヌビナイ川の左岸林道は入口から3キロほど入ったところに倒木があり車はここにデポするしかありません。
その先の林道も結構しっかりしています。

 雨の様子が相変わらずです。
雲も厚く、グズグズと雨が降ってます。
ここで、今日の入渓もあきらめることにしました。

 ついでですので右岸林道の確認をすることにします。
この右岸林道は入口から直ぐ先に倒木があり道をふさいでいるという情報を得ていました。
しかし、この倒木が処理されています。
林道も左岸林道よりは走りやすいです。
ドンドン先へ入っていくと地図上の林道よりもう少し先まで入ることができました。
明日はこの右岸林道を使って入渓することにしました。

 
 7日の朝もグズグズと雨が降っています。
6時まで待って天気予報を確認すると何ということでしょう。
昨日は今日から晴れマークが並んでいたのですが、今日は雨の予報となっています。
帯広測候所へ電話で確認しても今日1日は秋雨前線の影響で雨が降りやすい天気が続くといわれます。

 これには参ってしまいました。
メンバーの休暇のことを考えると今日入渓できなければ今回はあきらめるしかありません。
降り続く雨を見ながらみんなで話し合います。
その結果、今回は中止することとしました。

 ヌビナイ川に足を1歩入れることなく敗退です。
う~ん、残念!

 札幌への帰り道、占冠を過ぎるとドンドン青空が広がってきます。
札幌は良い天気です。
そこで、8日は札幌近郊の沢へ行くことにしました。

 

届かなかった!ソエマツ岳 その3

2012-03-12 20:36:20 | 日高山系の山
 3月5日

 昨夜はとても暖かく寝ることが出来ました。
雪洞の入り口をしっかり閉じたせいか寝袋の中が暖かく、時々、腕を寝袋の外へ出したくらいです。

 3時半に起きましたが、何せ雪洞の中は真っ暗です。
みんなの話を聞くと誰もが十分な睡眠を取ったようです。
さっそく寝袋をしまって食事の準備をします。
今日の出発準備は、今夜もこの雪洞で寝る予定ですのでソエマツ岳へのアタックに必要のない物は
雪洞の中へ置いていきます。

 順調に準備が進み、さあいよいよ雪洞の入り口を開けます。
天気はどうでしょうか?
ちょっとドキドキする瞬間です。

 入り口のブロックを崩した途端に明るい光が雪洞を満たします。
明るい空がポッカリ開いた入り口から見えています。
さあ、今日は頑張らなければなりません。

 外へ出るとピリカヌプリの山頂に雲が掛かっています。
風の強さも昨日とあまり変わりません。
6時少し前にソエマツ岳に向かって出発です。

 歩くにしたがってピリカヌプリの山頂に張り付いていた雲が動きます。
そして、ピリカヌプリがその綺麗な姿を見せてくれました。 
   
    ほんのりと朝日に輝くピリカヌプリです。

 十分な睡眠が取れたメンバーの意気も上がります。
   
 今日のルートは大きな雪庇がないものの所々尾根が狭いところもあり注意が必要です。

 後ろを振り返ると太陽の光が雲の合間から射しており、赤く輝くサンピラーが見えています。
   

 ピリカヌプリのコルに向かって歩いていると狭い尾根があります。
十勝側に雪庇があり十分に注意をして歩いていました。
丁度、私がトップを歩いている時です。

 私の刺したストックの右手50センチ位のところから「ズン!」という低い音と共に幅1メートル、長さ7~8メートルの雪庇が崩れました。
でも、私の歩いていたところは固い雪の斜面なので、この足元から崩れることはないと思って歩いていました。
ですから、雪庇が崩れても何の動揺もありません。
ドンドン先へ向かって歩きます。

 私達は交代でトップを変わります。
4人とも誰がトップに出ても良いだけの力量を持っています。
ですから、安心して歩くことが出来ます。

   
   晴れていた天気が微妙に曇ってきます。

 浦河側(西側)からは始終強い風が吹き付けています。
その強い風により顔の左頬が冷たくなってきます。
凍傷にならないようにジャケットのフードを深く被ります。

 いよいよピリカヌプリへの登りになります。
   
 シュカブラで固くなった雪面に苦労しますが、この辺りは広い尾根ですのでストックを使って登ります。

   
    登るに従って視界が悪くなってきます。

 いよいよ山頂下かと思うところでストックからピッケルに換えて登ります。
滑落した場合に備えたのですが、シュカブラした急な雪面はそれほど長くはありませんでした。

 8時、雪洞を出発してから約2時間で山頂へ到着です。
   
   ピリカヌプリの山頂は、On氏を除いて初めてのメンバーです。
あたりはすっかり視界が50mほどに落ちています。
風も強くなっています。

 ここで、ソエマツ岳へ進むかどうか話し合います。
この先の稜線は視界がないと歩くのが大変です。
天気予報より早く天気が崩れているようです。
停滞するとしたら、しっかりと作った雪洞があります。
食料も燃料も2~3日は十分に耐えられるだけの量があります。
しかも、時間はまだ8時なのです。

 もう少し先まで歩いてみるかという意見もありました。
でも、話し合った結果、ここから下山することにしました。
停滞するとしても、何日になるか分かりません。

 ここを冒険する必要はありません。
さあ、下山すると決めたらグズグズしている時間はありません。
直ちに下山開始です。

   
    こんな稜線を歩いてたのです。

   
 トヨニ岳は雲の中です。

 雪洞へ戻ると荷物をまとめてパッキングをします。
稜線の風は強くなってきます。
ここからは、まず、1512mまでの急斜面を登らなければなりません。
我慢の時間が続きます。

 途中で2度ほど休憩を取りましたが、稜線を十勝側に2~3m外れると風がまったく吹いていません。
風が当たらなければ暖かいくらいなのです。
気温は-3~4度でしょうか。

 午後2時過ぎにトヨニ岳の南峰下に作った雪洞に到着です。
この雪洞で休憩を取り、軽く行動食を食べて少なくなった水を作っておきます。
1人当たり500ccの水を作ります。

 ここで私とKm氏がスノーシューを付けて歩きます。
リーダーのSz氏とOn氏はアイゼンを付けたままで歩きます。
しかし、南東尾根は急な斜面です。
スノーシューを付けたまま滑ってしまいます。
それを騙し騙し降るのですが、何度か転んでしまいます。

 Sz氏達のアイゼン組は、登ってきた時のトレースを上手く使って降ります。
トレースは固くなっているのであまり沈まないのです。
スノーシュー組の方が分が悪く遅れがちになります。
とうとう我慢できなくなってKm氏がスノーシューを外してしまいます。
でも、私は頑張ってスノーシューで降ることにしました。

 2時間以上掛かってやっと南東尾根の取付点まで降りました。
時計を見ると5時近くなっています。
もうすぐ日が暮れてしまいます。

 ここからも登った時のトレースがしっかり残っています。
暗くなってくるのと競争で歩きます。

 前方に天馬街道の街路灯が見えてきます。
最後の渡渉点を超えるとここからは緩い上り坂です。
疲れた身体にこの緩い坂道が堪えます。
それを頑張って、やっと、野塚トンネルの駐車場へ着きました。
時間は午後6時になっていました。

 何と、今日の行動時間は12時間となっていました。
小雪がちらつく駐車場で車の中へザックを詰め込み、一路、「AERUの湯」を目指します。

 今回はソエマツ岳を目指しての縦走を計画していましたが、途中のピリカヌプリまでとなってしまいました。
でも、心の中に厳冬期にピリカヌプリの頂を踏めたのは評価できるかという気持ちも湧いています。

 ソエマツ岳からピリカヌプリの稜線は、夏にヌビナイから沢を登って歩くことを考えています。
それまで、この間の稜線はお預けとなります。

 最後に私達が歩いたログを貼っておきます。
    

届かなかった!ソエマツ岳 その2

2012-03-08 20:07:14 | 日高山系の山
 天井に穴の空いた雪洞は少し寒かったです。
テントの外に置いた温度計は-3~4度を示しています。
寝ている時、時折、穴を塞いでいたツエルトが風に煽られている音が聞こえていました。

 3月4日 

 今日はピリカヌプリへ向かって歩きます。
雪洞の中は暗いので時間感覚が狂ってしまいます。
4時に起きだして寝袋を仕舞います。
それから食事を取って全ての装備をザックの中へ入れて、トイレを済ませてなどと雑用を一つ一つ片づけていくと思ったより時間が掛かってしまいました。
スノーシューはこの雪洞の中にデポして、ここからはアイゼンを付けてツボ足で歩きます。

 6時過ぎに雪洞の入り口を塞いでいた雪のブロックを崩します。
何と真っ青な空が見えました。
今日は良い天気のようです。
   
    朝日に輝く主稜線です。
    この主稜線は前回歩いた稜線です。

 時折強い風が吹き抜けていきます。
   
    雪煙が巻き上がります。

 6:40分、いよいよトヨニ岳の本峰へ向かって歩きます。
といっても、本峰は直ぐそこに見えています。
   
    約10分で本峰に到着です。

 ここからまずは北峰へ向かいます。
トヨニ岳は三角点のある本峰より北峰の方が高いのです。
   
    手前のピークが北峰で中央の奥に見えるのがピリカヌプリです。
    ピリカヌプリがたおやかに翼を広げたような尾根を見せてくれます。
 
   
    雪庇に気を付けながらドンドン歩きます。

 約1時間で北峰に到着です。
   
    振り返るとトヨニ岳の本峰が遠くに見えています。

 ここから広い尾根をドンドン歩きます。
   
    この景に包まれるように歩くのは本当に幸せなことです。
そして、この光景を楽しんでいるのは私達4人だけです。
贅沢な瞬間です!

   

   

   
 
 今日は本当に良い天気です。
でも、さすがに稜線は強い風が吹いています。
この風の影響で左の頬や鼻の頭が痺れてきます。
これは凍傷の恐れがあるのでジャケットのフードを深めに被って風を防ぎます。

 1,512mのコブからはピリカヌプリが本当に大きく見えます。
でも、私の目は今夜の宿泊場所となる雪洞に適した場所を探しています。
私の目には、この1,512mの下にあるコルしかないと思っています。

 この先の稜線は細いので大きな雪庇が出来ていないようです。
急な斜面を降ってコルに達します。
ここで雪洞ポイントを探しますが、強い風が吹き抜けているためもう少し先にあるコブへ登ります。

 そこに丁度良い斜面を見つけました。
風下に回るにも雪庇が小さく雪の量も十分のようです。
(上の写真でコルから少し先にあるコブの手前が雪洞を掘った場所です。右手に灌木のある場所です。)
 
 時間はまだ11時です。
でも、この先に適当な場所はないと思います。
4人で話し合い、今日の雪洞をここに掘ることにします。
On氏がゾンデで雪の深さを測りながら最適地を探します。

 最適地が決まった後はいつものように2人一組になって掘ります。
まずはL字にステップを切り出します。
それから横穴を掘りますが、雪質は思ったほど固くないので作業はドンドン進みます。
約2時間弱でとても立派な雪洞が完成です。
   

 今日の天気を考えるとここで雪洞を掘ってしまうのはもったいないのですが、明日の天気に期待をしてゆっくり過ごすことにします。

   
   ピリカヌプリが本当に端正な姿を見せてくれています。
   この光景を十分に楽しむという贅沢な時間が過ぎていきます。

 明日は、ここからソエマツ岳に向かってラッシュ・アタックをする予定です。
今夜は十分に休養を取って明日に備えます。
 
    

届かなかった!ソエマツ岳 その1

2012-03-07 20:47:37 | 日高山系の山
 10日前の準備山行を終えていよいよソエマツ岳を目指しての縦走となりました。
今回はトヨニ岳までの行程を換えることにしました。
それは、主稜線を使っての下山は雪庇のことなどもあり荒天時には使えないこと。
それに比較するとトヨニ岳の本峰に直接登れる南東尾根を使えば荒天時でも広い尾根となっている安全なルートが確保されること。
さらに、今回はスノーシューを使って登り1泊目となるトヨニ岳にデポすることにしました。
このような理由から南東尾根を使うことにしたわけです。


 3月2日、 午後3時に札幌を出発して前回と同じ天馬街道の上杵臼にある道路情報ターミナルに1泊します。(このような利用を考えていない施設を無断で使わせてもらっています。)

 3月3日 午前4時に起床して直ちに出発準備をします。
あたりはまだ暗く今日の天気がどうなるか心配なのですが、幸いに風はあまり吹いていません。
まずは野塚トンネルの広尾側の出口を目指します。

 5:50分、野塚トンネルの広尾側の駐車場に車を止めて出発です。
今日の天気予報では晴れが期待されるのですが、空はどんより鉛色で小雪が降っています。
でも、風がそれほど吹いていないのが幸いです。

 まずは、直ぐ横を流れる沢に沿って降ります。
同じように沢に沿って降るトレースを発見。
このトレースを使わせてもらって順調に降ります。
20分ほど降ると沢を渡渉しなければなりませんが、トレースも渡渉しており先に続いています。

 結局このトレースはトヨニ岳の南東尾根まで続いていました。
南東尾根の取付点まで約1時間で歩けました。

 さあ、ここからはいきなりの急登が続きます。
今回使っているスノーシューはMSRのものです。
   

 荷物の重さに喘ぎながらも快調な登行が続きます。
林の中を抜けると細い尾根となります。
回りの木々には雪が枝の先まで付いて綺麗です。
   

 スキーで降ることを考えるとヨダレが出そうな斜面が続きます。
    

 森林限界を越えると雪庇のある斜面に出ます。
ここはスノーシューの限界に近い斜度があり、騙し騙しジグを切って登ります。
時々クラストした雪の下がザクザクの雪で足元が定まらず苦労しますが、そこは今までの経験を生かして何とか登ります。

 やっと傾斜の緩い尾根に出たと思ったら十勝側には雪庇が張り出し、細い尾根となっています。
ここは本峰に続く吊り尾根でした。
この吊り尾根の雪庇を使って雪洞を掘る予定です。

 本峰から200mほど下の雪庇の雪洞を掘ることにします。
ここまで約6時間の行程でした。

 2時間かかって雪洞を掘ります。
固い雪の層もあり手こずりましたが、何とか3人用のテントが張れるほど大きな雪洞が完成します。

 安心してザックの中を整理しようとしていると何とSz氏が雪洞の上を踏み抜いてしまいました。
この修理に約1時間かかり3時過ぎにやっとテントの中にはいることが出来ました。

 いつの間にか雪が止み青空が広がっています。

   
    夕日に染まる雪の稜線は本当に綺麗です。
この稜線を見ていると今までの疲れが吹き飛びます。

   
    前回歩いた主稜線が目の前に見えています。
この稜線を雪庇の崩壊に気を付けながら歩いたのです。

 今夜はお酒を飲んで早めに寝ます。
明日はトヨニ岳を越えてピリカヌプリへ向かいます。
良い雪洞ポイントを探さなければなりません。
天気が晴れることを祈りながら雪洞の入り口を塞ぎます。

厳冬期のトヨニ岳(南日高)へ! その2

2012-02-27 20:42:08 | 日高山系の山
 昨夜はちょっと寒かったです。
というのは、私が一番入り口近くに寝ていたせいです。
入り口は雪のブロックを積んで塞いでいたのですが、空気取りのために一番上に少し隙間を開けておきました。
この隙間から外の冷気が入ってくるのです。
それでも、雪洞内の気温は-2~3度といったところでしょうか。

 4時に起きるはずが、雪洞内の静けさと暗さのために1時間ほど寝坊してしまいました。
あわてて朝食の準備をします。
朝食は餅入りの雑炊です。
卵スープに佐藤のご飯を入れて軽く煮立てます。
塩を足して味を調整したら一煮立ちで柔らかくなる餅と水菜を入れます。
簡単ですがこれで完成です。

 朝食を済ませて出発の準備をします。
寝袋などの不要品は雪洞内に置いていきます。

 6:50分、さあ、出発です・
外は曇り空ですが風もなく最高の天気です。
   
    南を見ると十勝側は雲海に沈んでいます。

 ここから2つコブを越えると南峰です。
細い稜線など緊張させられる場面もありますが、風がないのが幸いしてます。
1歩1歩慎重にステップを切って登ります。
    

 7:35分、南峰に到着です。
目の前には本峰、北峯、そして一番奥にうっすらと赤く輝くピリカヌプリも見えます。
南峰を降り、目の前に見える本峰を目指します。
    
    右手には雪庇が張り出しています。
その中間部の雪庇が小さいのです。
このポイントは絶好の雪洞ポイントになります。
それらを確認しながら少し登るとトヨニ岳の本峰です。
7:50分、雪洞から登りだして丁度1時間で着きました。

    
     素晴らしい仲間との記念写真です。

    
    目の前には本峰より少し高い北峯が聳えています。

 本峰から右手に少し回り込むと風の影響が少なくなります。
ここで、これから北に広がる重々たる山容を目に焼き付けます。
遙か彼方にピリカヌプリが見えています。
この次には、このピリカヌプリのさらに先まで歩かなければいけないのです。
ちょっと気の遠くなる距離です。

 稜線は風が強いので直ぐに戻ります。
    
 南峰が目の前に大きく聳えています。
この峰を登り、ナイフリッジを慎重に降ります。
一度登っている稜線の歩き返しは何となくの安心感があります。

 8:40分、雪洞へ戻ってきました。
ここで残していた荷物をザックに積み込みます。
忘れ物がないかを確認して雪洞の入り口を閉じます。
雪洞入口の目印としてデポ旗を立てておきます。

 さあ、ここから下山ですが雪庇の尾根を歩かなければなりません。
慎重に行きましょうと声を掛け合って進みます。
   
    前方に雪庇の尾根が見えてきます。

 ここからはお互いの間隔をあけて慎重に歩きます。
昨日のトレースからさらに右側を歩き雪庇を刺激しないようにします。

   
    昨日の雪庇が崩れた現場です。

 崩れた斜面を見るとハイ松と笹がむき出しとなっています。
このハイ松と笹の斜面では雪の重さを支えることは出来ません。
10mほど下には大きな雪のブロックがゴロゴロしています。
このブロックに挟まれたり下敷きになるとケガをします。
そんなことにならなくて良かったです。

 この尾根を慎重に登って、10:30分、やっと下降点に到着です。
しかし、昨年野塚岳から降ってきた時の尾根はもう少し先にあります。
そこまで登らなければ主稜線歩きの線が繋がりません。
20分ほど歩いてコブを越えたところが昨年の下降点です。

 稜線は風だけでなくて小雪もちらついてきました。
稜線を少し下ったところでスノーシューを付けます。

 ここから真っ直ぐに降って1時間ほどで野塚トンネルの駐車場へ着いてしまいました。

これで、今回の準備山行も無事に終わりました。
さあ、次はソエマツ岳まで挑戦します。
今回の反省を活かして何とか歩きたいものです。

最後に今回のログを落とした地図を貼り付けておきます。
   

厳冬期のトヨニ岳(南日高)へ! その1

2012-02-26 19:45:37 | 日高山系の山
 昨年は、日高主稜線縦走を順調に終えることが出来ました。
主稜線に刻まれている縦走路を踏破してしまい残されたのは道のない尾根ばかりです。
そこで、残った主稜線は残雪期に歩くことにしていました。

 いつもの仲間の日程を調整していると何と厳冬期である3月にしか長期の休みが取れないことが分かりました。
厳冬期の日高と聞くと足がすくむ想いばかりなのですが、勇気を振り絞って挑戦することになりました。
まずは、3月初旬にトヨニ岳から北に向かって歩き何とかソエマツ岳までに焦点を絞って往復する計画を立てました。
今回はその準備山行としてトヨニ岳(1493m)まで歩いてみようということになりました。
トヨニ岳の良いところは、アプローチが容易だということです。
天馬街道にある野塚トンネル(このトンネルの上が主稜線です)の出口が出発点となります。


 2月21日の午後札幌を発ちます。
そして約5時間ほど掛かって日高にある浦河町から十勝の広尾町を繋ぐ「天馬街道」に入ります。
野塚トンネルの手前にある除雪センターとトイレのある場所で1泊します。
夜は風が強く明日の天気がどうなるか不安の1夜を過ごします。

 2月22日、心配した風も治まり良い天気です。
さっそく出発の準備をして野塚トンネルの広尾側にある駐車場へ向かいます。
この駐車場に車を駐車して登山準備を行います。
   

 登山コースは、この駐車場横から沢を渡り直ぐ横にある尾根に取り付きます。
この尾根は取り付きが急斜面なのですが、主稜線へ上がるには一番斜度が緩く感じる尾根なのです。

 7:05分、スノーシューを付けた3人と幅広の短いスキーにシールが貼り付けられたスキーを履いたOn氏の4人で登ります。
今回On氏が使っているスキーは札幌にある登山用品店「秀岳荘」オリジナルのスキーなのです。
このスキーをテストするためにOn氏が使ってみることにしました。

 スノーシュー組も初体験者2名を含みあまり慣れていないのでいきなりの急斜面に手こずります。雪の状態も悪く、表面が薄くクラストしており、これを踏み抜くと中はザクザクのザラメ雪です。
このザラメ雪には参りました。
スノーシューを支えてくれないのです。
まるで砂のように下へ崩れてしまいます。
足を上に伸ばすのですが、力を入れると元に位置へ戻ってしまいます。
これをストックで支えながら騙し騙し何とか登ります。

 On氏も苦戦しています。
シール貼り付けのスキーもこの急斜面では上手く登れないようです。
それぞれが苦労を重ねやっと尾根の上までたどり着きます。
   
 
 天気がいいのが救いです。
風もほとんど吹いていなので暑いくらいです。

 ここからは忠実に尾根を辿って登ります。
2度ほどの休みを挟んで10:15分、主稜線に到着です。

 目の前に真っ白なトヨニ岳が飛び込んできます。
後ろを振り向くとピラミダルな三角形の神威岳がこれも真っ白に輝いています。
これが日高の主稜線だ! と感慨にふけっている暇はありません。

 ここにスキーとスノーシューをデポしてツボ足にアイゼンを装着してトヨニ岳へ向かいます。
   
    心が洗われる思いがするくらい綺麗です。

 この主稜線では西風が強く左の頬が痛くなってきます。
凍傷の恐れもあるのでアウターのフードを被ります。
主稜線には東側(十勝側)に雪庇が張り出しているので気を抜いて歩くことは出来ません。
油断するとこの雪庇と共に崩れ落ちてしまいます。

 最初の難関が現れます。
狭く細い尾根に大きな雪庇が張り出しています。
ここはお互いに距離を取って20mほど間をあけて歩きます。

 トップを歩いているSz氏の直ぐ横から突然雪庇が崩れます。
ビックリしましたが、Sz氏が冷静に処理しています。
お互いの間隔をあけて歩いていたのも正解でした。

   
    雪庇の尾根を抜けたところで南側を写した写真です。

 風が吹き抜けて注意が必要といわれている1261mのポイントも無事に抜けました。
何カ所かある狭い稜線も順調に歩きます。
最初の予定では南峰と本峰の中間で雪洞を掘り1泊の予定でしたが、どうもこの調子では時間が足りないような気がしてきました。

 雪洞ポイントを探しながら南峰を目指して歩きます。
1322mを越えたところに雪洞ポイントがありました。

 13:45分、雪庇の状態を確認します。
ゾンデを差し込み雪の深さを確認しますが十分な深さの雪が溜まっています。
十勝側に少し下がって、まずはL字形にステップを作ります。
そこから雪庇の下に向かって横穴を掘ります。
   
 1mほど離れた場所で同時に横穴を2個所で掘ります。
横穴が3mほど掘ったところで横穴同士を連結します。
こうすると作業がはかどります。

今回は4人いますので2人一組になって、堀る人と掘りだした雪を谷に向かって投げる人に別れて作業します。
片方の堀口を塞ぎ、約1時間半ほどで4人が入れる雪洞が完成です。

 雪洞の中に銘々が棚を作ります。
こんな事が出来るのが雪洞の良いところです。
   
    天井の高さは、膝立ちが出来るくらいの高さです。
 
 雪洞の中は-2~3度でしょうか。
ストーブを焚いて食事の準備をするにも不自由はありません。

   
    こんな感じで寝ます。

 考えると1泊用の全装備を背負っての稜線歩き、さらに雪洞での宿泊などを行ったのは40年も前のことです。
この時には東三国岳から石狩岳までの縦走をした時、十石峠の雪庇に雪洞を掘り2泊しました。
遠い過去の出来事ですが、つい最近のように思い出しました。
あのころは若かった!!


コイカクからペテガリ縦走 その5 ・ 11年8月

2011-09-11 08:35:10 | 日高山系の山
 8月30日(火)

 昨夜は広い小屋でゆっくり寝られるはずが・・・・
身体が疲れきっているせいか寝袋の中で身体が痛く寝返りばかりして余りよく寝られませんでした。
2階にいる愛知のご夫婦が起き出してきたので、私も起きることにします。

 寝不足のせいか、疲れのせいか緩慢な動作で朝食の準備をします。
この食事が山での最後の食事になりますのでありったけの食材を投入します。
といっても、いつも食べているお茶漬けに魚の甘露煮です。

愛知のご夫婦、Tさんも用意が出来たといって先に出発します。
私達もようやく準備が整い6:35分、ペテカリ山荘を後にします。
その前にちょっと記念写真です。
    

 ペテカリ山荘前にある林道を左に曲がり歩きます。
20分ほど歩くとペテガリ沢を渡ります。
この上流を登るとペテガリ岳へ行けますが、私達の力では〃でしょうか?

 この林道に昨年なかった標識が整備されています。
    
      所々に付けられています。

 ペッピリガイ沢に沿った林道の終点から、いよいよ沢を登ります。
小さな沢ですが源頭部はなかなかの急傾斜です。
この源頭部は笹で覆われていますが、きっちりと笹が刈られているので道に迷う心配はありません。
源頭部の笹原を右手に曲がり20~30メートルほど行くと神威山荘へ向かって降る沢です。

 8:30分、乗り越しでゆっくり休みます。

 ここからは急な泥付きの斜面を一気に降ります。
両側の笹に掴まりながら降り終えると沢形の地形になります。
この先は小さな沢をドンドン降ります。
枝沢からの水が入ってくるので沢水が増えていきます。

 沢を降っていると倒木があちらこちらで行く手を塞いでいます。
どうやら昨年の豪雨の影響でしょうか。
去年に較べて沢が荒れています。

 1時間ほど降るとこの沢唯一の滝に着きます。
高度差10メートルほどの沢ですがなかなか良い滝です。
    

 この滝は右岸に巻き道があるのですが、この巻き道も土が崩れ荒れています。
FIXロープが必要ですね。
何度も渡渉を繰り返し(靴が濡れることはありません。)ドンドン降ります。
小さな沢ですが、この沢の佇まいが私は好きです。

 沢の先に林道が見えてくると私達の縦走もいよいよ終わりです。
林道を歩いて最後に沢を渡ります。
飛び石伝いに沢を渡ると愛知のご夫婦が靴を洗っています。

奥さんが「ほんの少しですが。」といって2個のオレンジをくれます。
お礼を言って神威山荘へ向かいます。

 10:25分、神威山荘に到着です。
私の車を見ましたが、変わりないようです。

 これで今回の縦走も無事に終わりました。
天気が良く暑く、(株)漕ぎに苦しめられた縦走ですが、終わってしまえば良い思い出です。
これで終わりかと思うと、帰るのが惜しい気持ちになります。
あれだけ苦しい山だったのに、不思議なものです。

 この神威山荘で向かえに来る友人を待つというTさんを乗せて「あえる」に向かいます。

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  今回のコイカクペテガリ縦走で日高の主稜線に付けられている登山道を
 歩き終えたことになります。
 エサオマントッタベツ岳からペテガリ岳までの縦走路を2年掛けて歩きましたが
 今回のコースが一番藪が深く困難なコースでした。
 それにしても、私達は強運です。
 このコースをエサオマン→カムエク、カムエク→コイカク、コイカク→ペテガリと
 3回に分けて歩きましたが、いずれも天気に恵まれ一発で終えることができました。

  これから後に残された主稜線は、北はエサオマントツタベツ岳から戸蔦別岳、
 南はペテガリ岳から楽古岳までです。
 これらの主稜線は残雪期に歩こうと思います。
 藪漕ぎは卒業ですが、足幅リッジといわれる難コースもありまだまだ気を抜けない
 山歩きが続きます。

  どこまで歩けるか・・・
 気力と体力、それよりも天気に恵まれることが大切です。
 神様に良く思われるように精進を重ねて・・・
 挑みたいと思います。

コイカクからペテガリ縦走 その4 ・11年8月

2011-09-07 21:30:15 | 日高山系の山
 8月29日(月)

 昨夜は疲れのせいもあり泥のように眠っていました。
それでも、何度か目を覚ましていました。
テントを張った場所に大きな岩があり、その岩がちょうど私の頭の方にあるため寝ている姿勢が制限され思うように寝返りが打てなかったのです。
そのせいか、何度も目を覚ましていましたが、身体の疲れは少し取れているようです。

 4時頃になると薄明るくなってきます。
自然とみんなが起き出したのでまずは水を汲みに行きます。

靴を履いてテントから出ると今日も良い天気です。
朝露で濡れるかもしれないので雨具を着ていきます。
カールの岩がゴロゴロしている所に何となくの踏み分け道らしいものがあります。
その道を降っていくと灌木にピンクテープが巻き付けられています。
この灌木の中を10分ほど降るとカラ沢になり、ほどなく岩の隙間からコンコンと流れる水に行き当たります。
    
     なかなかの流れです。

アッという間にボトルが一杯になります。
この水を飲みましたが、美味しかった~ぁ!
冷たくて身体にしみ込むようでした。

全員の行動水や朝食用に水として15~16リットルを汲んでテントへ戻ります。
その帰り道、もっと分かりやすくなるようにピンクテープを補強します。
    
     上の方を見るとカール壁の上に稜線が見えています。 
     稜線は首が痛くなるくらい高いところです。
この稜線を下ってきたのかと思うと、真っ暗な中、よく降ったものです。
昨夜、この降りでSu氏が足を取られて前に転がったようです。
私は一番ラストを歩いていたのでみていませんが、怪我がなかったのが幸いです。

    
     私達のテントの左手にあるのがTさんのテントです。

    
     カールの中で満開に咲いていた「うめばちそう」です。

 朝食は風もなく気持ちがいいので外で準備をします。
今日の朝食はインスタントラーメンにします。
この方がノドの通りが良いかと思って作ります。

 何故かノンビリと朝食を食べ、今日の下山はあきらめることで話がまとまります。
今日はペテガリ山荘で泊まることにします。
予備日を使って下山を1日遅らせることにします。
それでも、ここからペテガリ山荘までは9時間ほどを見なければなりません。
下山が遅れるとの連絡はペテガリ岳の山頂から行うことにします。
昨年ペテガリ岳に登ったときに山頂はメールも電話も使えることを確認しているからです。

 朝食を済ませパッキングを終えるといよいよ稜線へ向かって歩きます。
ここはTさんに先行してもらい、私達はTさんの後に続きます。
何故かというと、私達は昨夜真っ暗中を降ったので正しいルートがハッキリと分からないからです。
 
 Tさんが登るところを見ながら5分後に私達もCカールを後にします。
    その前にちょっと記念写真を写します。
    
 
 7:25分、Cカールとお別れです。
灌木の中を歩きながら昨日の反省をします。
7~8分歩いたところで私達がルートを外れた現場に来ます。
明らかに灌木に中へ踏み込んだ後が残っています。

稜線への最後の登りは45度はあろうかという急斜面です。
両側に生えている笹を掴みながら腕の力で身体を引き上げながら登ります。
途端に息が上がってきます。
腕の力を抜くと落ちてしまいそうです。
必死に全身の力を使って登ります。

ようやく、稜線に到着です。
時計を見るとカールから20分ほどで稜線へ上がっています。
でも、それ以上に長く感じた登りでした。

    
     後ろを振り返るとルベツネだけの稜線が見えます。

ここで、Tさんと話をすると、このGWに神威岳からペテガリ岳への縦走をしたといいます。
私が目を通しているHPに同じコースを歩いた記録があり、その話をするとTさんも一緒に歩いていたといいます。
Tさんは、今日ペテガリ岳まで歩くと日高の主稜線で残された部分は神威岳からソエマツ岳の間だけになると話してくれます。

 ここで十分休んでからペテガリ岳へ向かいます。
Su氏が先行し私達が後を追います。
    
     コブに立つSu氏、この先もいくつかのコブを越えなければなりません。

    
     ペテガリ岳の山頂標識が見えてきます。
     あと一息です。

 10:50分、ようやくペテガリ岳に到着です。
Ko氏はこのペテガリ岳は初登頂です。
記念にみんなで写真を写します。
     
      左から私、Su氏、初登頂のKo氏、風邪薬を飲みながら頑張ったOn氏、

    
     途中の稜線で写した花です。小さく可憐な花でした。

    
     山頂から南側に広がる山々です。
     中の岳、ニシュウオマナイ山、神威岳が重なっています。

 ここで、それぞれの家にメールや電話をして1日下山が遅れることを伝えます。
30分ほどゆっくり休んで英気を養います。

 Tさんは一足先に下山します。
でも、Tさんも今夜はペテガリ山荘泊まりなのであとで話をしましょうといって別れます。

 11:20分、下山開始です。
しかし、ペテガリ岳の下山も楽はさせてくれません。
何度も登り返しがあるのです。

そして山頂から一気に5百メートル以上の降りがあります。
この降りを一気に降ります。
その途中で登ってくるご夫婦に出会います。
私達より高齢のご夫婦です。
ご主人はザックを背をっていません。途中でデポしたようです。

 12:20分、1時間かかってコルに到着です。

ここから先が苦しかった!
何度もある登り返しの道が笹で覆われています。
笹の密度が去年より深くなっているような気がします。
小刻みに休憩を取るのですがKo氏の足取りに元気が無くなってきます。

Ko氏のザックからテントを出してもらい荷物を少し軽くします。
水もドンドン飲みます。
私は3.5リットルの水を持ってきたので、ドンドン飲みます。
その分ザックが軽くなっているはずですが、そんな気がしません。
私も相当疲れてきているようです。

最後の登り1050m手前で休んでいると山頂からの降りで会ったご夫婦が追いついてきます。
「水はありますか?」と聞いたところほとんど無くなったといいます。
そこで、私がもっていた水をあげることにします。
1リットルほどの水をあげます。
ご主人の峰は軽い脱水症状が出ているようでガブガブと水を飲みます。
ここで捨てようかと思った水が思わないところで役に立ちました。
話を聞くと愛知県から来ているとのことです。

1050mの最後の登りを終えると、急な降りが待っています。
この降りも長いので膝に疲れが溜まってきます。
それを騙し騙し、何とか沢まで降ってきました。
ここまで来ると山荘までは15分ほどでしょうか。
冷たい水で顔を洗ったりして気分を変えます。

沢沿いに降って、17:20分、ようやくペテガリ山荘に到着です。
今日もけっこう歩きました。

山荘に泊まっている人は、私達の他にはTさんと愛知のご夫婦だけです。

1階の半分に荷物を広げて、まずは身体を洗いに行きます。
久しぶりに身体の汗をふき取り着替えをすると気分が一新します。
今夜は気持ちよく寝られそうです。

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 しかし、昨年と較べてペテガリ岳までの登山道の笹が濃くなっています。
登山道を完全に覆っているところが何カ所もあります。
1年でこの変化に気づくくらいですので、あと2~3年も経ったらどうなるのでしょうか。
何とか登山道を整備してほしいものです。
ペテガリ岳は二百名山の登山を目指して本州から沢山の登山客が入っています。
これらの人達は、このような笹に覆われた登山道には慣れていません。
思わないところで道迷いの遭難が発生するかもしれません。
森林管理署の皆さん、何とかしてください!

コイカクからペテガリ縦走 その3 ・ 11年8月

2011-09-06 08:44:37 | 日高山系の山
 8月28日(日)

 さあいよいよ核心部を歩く日がやってきました。
テントサイトから1839m峰が朝日に輝いているのが見えます。
    
 今日も良い天気です。
 
正面にはルベツネ岳が見えており、その左側に1600mピークも朝日に輝いています。
    
 テントサイトから見る稜線はサッシビチャリ沢の源頭部の稜線です。
一番左のピークが1600mのピークです。そこから右の稜線を歩くとルベツネです。
この稜線をぐるりと半円形状に歩くのが今日の行程です。
    
     北側を見るとカムエクも朝日に輝いています。

 朝食を済ませ、テントを畳みいよいよ核心部へ向けて出発です。
体調はまあまあです。
水をどの位い担ぐかみんなで検討しましたが、4リットルは必要でないかということになり、私は4.5リットルを持つことにします。

 5:15分、いよいよ長い稜線歩きに向かって出発です。
目標タイムは、1600mピークまで6時間、そこからルベツネまで4時間、さらにペテガリCカールまで2時間の合計12時間の長丁場を考えています。

 5分ほどでヤオロマップの山頂です。
そこから1569mピークを目指して降ります。
急な岩尾根を降ります。
ハイ松が順目なのでそれほど苦労はしませんが、このハイ松を逆目に登るのは相当苦労しそうです。
    
     朝一は頭と身体の働きが不十分ですので、慎重に降ります。

    
     30分ほど降って後ろを振り返るとヤオロマップの山頂が遠くなっています。

 体調は良いのですが、何しろ暑い!!
稜線歩きは直射を遮るものがないので暑いです。
おまけに標高が低くなると藪が濃くなってきます。
それでも、朝早くの元気がある身体ですからガンガン歩けます。

 7:30分、1569mピークに到着です。
ヤオロマップを出発してから2時間ほどで到達しました。
思ったより早いのでちょっと一息つけました。
このピークに1張り分のテントサイトがありました。
    
     草原に埋まってますが良いテントサイトです。

 次の目標は1600mピークです。
ここまで2時間、同じ様な距離ですので2時間で歩けると踏んだのですが・・・・
そうは問屋が降ろしてくれなかった・・・・

1569mピークから降るとさらに藪が濃くなってきます。
ルート自体は何とか分かるのですが横枝を張り出す樹木のせいでまったく進みません。
上空からは容赦なく太陽の光が照りつけます。
我慢、我慢の連続です。

それでも、10:50分、ようやく1600mピークに到着です。
    
 この辺りで私の体調が少しおかしくなってきました。
体の中に熱がこもり深い息が出来ないようになっています。
軽い熱中症でしょうか?
ノドが直ぐ渇いてしまいます。

それでも、気を取り直して進みます。
ここから一旦降って、1469mのコルから1688m間が一番藪の濃い場所です。
    
     いよいよ最核心部の藪漕ぎに突入です。

 この辺りは岳樺が太い幹を横に這わせています。
その様子がリンゴの木に似ていることから通称「りんご畑」と呼ばれているようです。
    
     このような岳樺が横に枝を張っています。

 このリンゴ畑では、何度もこの岳樺の枝を越えるのにかがんだり這ったりしてくぐり抜けました。
さらに、岳樺以外の小灌木も枝が伸び、その枝が横に伸びているので一本、一本の枝を両手で押さえながら前へ進みます。
小刻みに休憩を取らなければ息が続きません。
暑さのため水の消費がドンドン進みます。

 体調があまり良くないので、みんなが心配してくれます。
ファイントラックの下着を脱いで、プロポリスの飲み物をもらって、さらにキジを撃つと身体の熱が少し逃げていくような気がしました。

やっと登に入ります。
後ろを振り返ると1600mのピークが遠くなっています。
    

 15:00分、4時間ほど掛かって1688mに到着です。
イヤー、長かった!
ここまでの間は本当に苦しかったです。
休憩して歩き出すときにザックを担ぐ気持ちが湧いてきません。
本当に心が折れそうになりましたが、仲間に助けられて歩くことが出来ました。

 ここまで来ると藪は薄くハイ松が多くなります。
    
     正面にルベツネが大きく見えてきます。

左手にペテガリ岳が見えてきます。
さあ、もう一息だと自分に言い聞かせてザックを担ぎます。
    

1688mからは細い稜線歩きです。
左側はスッパリと切れた尾根ですが、ハイ松など掴まるものがあるのでそれほど怖くはありません。
ドンドン、ルベツネが大きく見えてきます。
さらに、今晩のテントサイトとなるCカールも見えてきます。
    

 Cカールに1張りのテントが見えます。
どうやら先客がいるようです。
夕暮れの時間が迫っているので急ごうとするのですが、この辺りでは全員疲労の色が濃くなり足が進みません。
尾根が狭く細いので慎重に歩きます。

    
     日高側から雲が湧いてきます。
     一番奥のピークがペテガリ岳です。

 いったい何時間あれば登れるかと思ったルベツネの登りも何とかこなして16:47分、ルベツネの山頂に到着です。
この山頂は思ったより広く、テント2張りを張れたでしょう。

 (ここで、1泊を考えても良かったかなとあとで反省しました。)

 さあ、Cカールまであと2時間、頑張り所です。
    
     ルベツネの山頂から肩に向かって歩きます。

    
     右のピークがルベツネの山頂、歩いてきた稜線を振り返ります。
     この両線も低いハイ松とはいえ、膝丈ですので思ったより歩きづらいのです。 
日暮れまであと1時間半ほどしかありません。
暗くなるまで出来るだけ先へ進まないといけません。
ルベツネの肩に向かって低いハイ松の上を歩きます。
右手は緩やかな斜面ですが、左手はカール壁ですのでスッパリと切れています。
登山道はこの切れ際に付けられています。

 注意して歩いているとKo氏が突然姿を消します。
ビックリして声を掛けるとこのカール壁へ足を踏み外したようです。
でも、ハイ松にしっかり掴まっていたので大事には至りませんでした。
自分で這い上がってきます。

全員が疲れてきているので声を掛け合いながら注意して歩きます。

    
 ドンドン陽が落ちてきます。
日高側は雲が掛かっているのでさらに日の落ちが早くなりそうです。

 18:05分、やっとルベツネの肩に到着です。
ここから急な岩尾根を降ります。
ここから100mほどの降りはハイ松の枝か背丈ほどあります。
幸いに降りは順目ですのでハイ松を両手で左右に分けるだけで降ることが出来ましたが、この斜面を登るとしたら相当苦労させられることは確実です。

足元が見えづらくなってきたので、トップをSu氏から替わって私が歩きます。
Su氏は薄暮の時間だと目が見えずらいのです。

30分ほど降ったところでヘッ電を使います。
陽が落ちて辺りが暗くなった頃、ようやくCカールの下降点辺りに着きます。
トップを歩いていた私は注意しながら歩いていたのですが、下降点を見つけることが出来ませんでした。
少し先にあるコブの向こうが大きく落ち込んでいるように見えたのでその先かと思い少し登りだしたときに後ろから「ここが下降点みたいだ。」と声が掛かります。

 戻ってみると確かに小さなピンクテープがハイ松に付けられ、ハイ松が少し切られています。
Su氏のGPSもこの地点が下降点だと指しています。

そこからSu氏、On氏、Ko氏、私の順に降ります。
いきなり急な降りです。
真っ逆様に落ちるような降りです。
両側の笹に掴まりながら少し濡れた土で滑るのを押さえながら降ります。
辺りは陽が落ちて真っ暗です。
目標となるものがありません。

そこで、笛を吹きCカールにテントを張っている人にヘッ電を付けてくれるように頼みます。
ヘッ電の灯りがつきました。
その電灯に向かって真っ直ぐに降ります。
途中でコースから外れたようですが、そのまま藪漕ぎをして降ります。

 19:05分、ようやく、Cカールのテン場に到着です。
疲れきった身体ですが直ぐにテントを張ります。

さて、水場へ水を汲みに行かなければいけませんが真っ暗な中では水場の位置が分かりません。
そこで、Ko氏から「今晩は、行動食を食べて寝て、明日の朝水汲みに行こう。」との提案がありました。

確かに水場の場所を正確に把握していないので、この暗さの中を水を汲みに行くのは危険です。
全員の水を集めると1リットルにもなりません。
そこで、On氏がテントを張っている人に水を分けてくれるように頼んでみます。
気持ちよく分けてくれた水でお湯を沸かしスープを作ります。
このスープとSu氏の持っているパンを食べて夕食にします。

時間は20時を過ぎています。
疲れた身体を寝袋に入れてまずは睡眠です。

 行動時間14時間、
 いやーぁ、今日は長い1日でした!