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竹内栖鳳 近代日本画の巨人

2013-10-06 21:30:00 | 美術
見てきました

東京国立近代美術館

会期は2013年9月3日から2013年10月14日。

今回は竹内栖鳳(1864-1942)の大回顧展。
『東の大観、西の栖鳳』
と称された日本画の巨匠。
その大観は横浜市美術館で10月5日より回顧展が始まります。
今年の秋は日本画ですね。
栖鳳は京都に生まれ四条派の幸野楳嶺に学び、のちに京都画壇の旗手となって後進に大きな影響を与えました。
積極的に他派の技法を取り入れ、画壇の古い習慣を打ち破ろうとします。
1900年のパリ万国博覧会の視察のための渡欧で西洋がに触れた栖鳳は、西洋の技法を取り入れつつ、西洋と肩を並べられるような美術を目指したそう。
今回は修行時代から晩年まで約100点の展示となっています。

《第1章 画家としての出発 1882-1891》
まずは画家としての最初のところから。
師の手本を繰り返し模写することからはじまったそうです。
写生帳などが展示されていました。

「芙蓉」
四条派の幸野楳嶺に入門してすぐの17歳と9か月のときに描かれた作品。
墨で描かれた芙蓉の花。
ちょっとぎこちない気もするけど、濃淡などの表現はさすがです。

《第2章 京都から世界へ 1892-1908》
1892年、栖鳳は京都美術工芸品展に「猫児負喧」という作品(現存せず)を出品。
それは、円山派・四条派・狩野派といった様々な流派の筆遣いを1つの作品の中で使ったもの。
が、当時の画壇は「鵺派(ぬえ)」(色々な動物の部位を持つ妖怪)と非難し、受け入れなかったそう。
このころから西洋画を意識した作品は増えていきます。
1900年にはパリ万国博覧会の視察で渡欧。
多くの西洋画に触れ、帰国後はヨーロッパの風景を西洋絵画的な写実性を帯びた表現で描きます。
渡欧を通じて最も重視するようになったのは西洋の長所の実物に基づく写生に、日本の伝統絵画が得意とする写意(対象の本質を描くこと)を融合させることにあったそう。
ここからは従来の日本画とはちょっと違った世界です。

「獅子」
金地の屏風。
そこにライオンが2匹。
セピア調の色彩でまとめられ、濃淡の表現で細かなところまで描き出しています。
たてがみの柔らかそうな感じもすごい。
これが日本画!?とびっくりします。

「象図」
幅の広い筆で描いた線が皮膚のたるみやでこぼこまで表現していました。
あの線を生み出すのはどういった感覚なんだろう。。
さっと描いたように見えるけど本当はかなり考えられているんだろうな、と。

「雨霽」
雨やどりしているのかな、羽を休める鷺の姿。
靡く柳の葉と飛び去る鷺が動きを与えていました。

「ベニスの月(四代 飯田新七作、竹内栖鳳原画)」
日本画のように見えるけど、ビロードの友禅。
栖鳳の原画を元に作られました。
原画は10月8日から14日までの展示ということで見れませんでしたが。。
月明かりに照らされた幻想的なヴェネチアの夜。
西洋画のようでもあり、日本画のようでもあり。
友禅の職人技にも驚きです

またこのあたりには資料として、手紙などもありました。
おもしろかったのは出勤簿。
栖鳳は1889年2月から翌年4月まで高島屋意匠部に勤務していたそう。

《第3章 新たなる試みの時代 1909-1926》
栖鳳は美術学校の教諭、画塾「竹杖会」の主、文部省美術展覧会(文展)の審査員、、、
などで、画壇での地位を確立していきます。
そうした立場になっても新たな表現を求めたそうで、
動物画では個々の性質を捉え一瞬の動きを表そうとし、風景画では伝統的でも西洋的でもない作品を生み出したしたそう。
また2度の中国滞在は、主題・色彩感覚ともに風景画に深みをもたらします。
このころは人物画も研究したそう。
それらの取り組みと作品が慣れんでいました。

「喜雀図」
金地の屏風です。
右隻には3羽の雀。
連なって飛んでいる様子はまるで連続写真かのよう。
左隻は地面で遊ぶ雀。
可愛らしい。

「雨」
墨の濃淡で上手に表現された雨。
しっとりとした様子が伝わってきます。
細やかな筆遣いも美しい。

「城址」
ぼかし加減が絶妙です。
生い茂る草木がなんとなく寂しさを醸し出しています。
"夏草や兵どもが夢の跡"
芭蕉の句を思い出しました。

「宿鴨宿鴉」
ぼんやりとした空気佇む森の中、
枝にとまる一羽のカラス。
池には鴨。
墨で空気の感じやハイライトをとてもよく表現されています。
見た瞬間に"コロー!?"と思った作品。
空気の表現が似ているなーと思う作品があったなかで、これは本当に直感できた。
後に調べたところ、栖鳳はコローに感銘を受けた、とのことだったので、栖鳳の目指す絵画、
そして西洋画の影響を見て取れます。

「絵になる最初」
絵のモデルになる女性が初めて裸体をさらけ出す恥じらいを描いた作品。
着物で体を隠しつつ、左手では顔を隠し。
視線は横に逸らしています。
若々しく優美。
栖鳳の人物画はかなり少ないそうです。
背後の障子の胡粉の盛り上がりもとても手が込んでいて見とれてしまいます。

「羅馬古城図」
描かれているのはサンタンジェロ城かな。
テヴェレ川に影を落とす古城が墨で描かれています。
先程、コローと書いたけど。
コローもサン・タンジェロ城を描いています。
それに似ているかも。。。

「和蘭春光・伊太利秋色」
金地の屏風。
左隻にはイタリアが、右隻にはオランダが描かれています。
全体的にセピア調。
イタリアは史跡が描かれていますが、どことなくユベール・ロベールの作品を思い出しました。
オランダは風車。
ここで風車を見るのもなんだか不思議な感じがしますが。
西欧絵画の空気感と日本画の技法がうまく混ざっているな~と感じた作品。

《第4章 新天地を求めて 1927-1942》
こちらで最後。
晩年の栖鳳はしばしば体調を崩していたようで、療養のために湯河原へ行きます。
回復後も京都で仕事をしていたそうですが、湯河原が気に入ったらしく、京都と湯河原を往復する生活だったそうです。
このころは洗練を増した筆致で対象を素早く的確に表現するようになっていたそうです。
若い頃のように細密に写生するより、対象の動きと量感をスピード感のある線で大掴みに捉えたものが多いとか。
晩年も実験的な作品を生み出し続け、制作そして新しい表現への気持ちが衰えることはなかったようです。

「おぼろ月」
淡い色彩で描かれた作品。
まんまるでおぼろな金色の月。
原っぱにいるきつねは近くを舞う蝶を見ているのか、月を見ているのか。
"ごんぎつね"の世界ってこんな感じかな、って思いました。
ストーリー性のある作品。

「驟雨一過」
雨上がりに古木に止まる2羽のカラス。
カラスの羽は、しっとりと濡れたよう。
柳は細かく描かれていました。

「瀑布」
68歳のときの作品。
轟々と落ちる水。
でも、どことなく静かな気も。

屏風のような大きな作品も多数あり、見ごたえあります。
これだけの作品が集まる機会もそうそうないかな。
竹内栖鳳を知る人も知らない人も、より理解を深められる展示かと思います。



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