RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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休日に全力で生きるOLの日記(笑)

貴婦人と一角獣

2013-05-14 21:30:00 | 美術
見てきました

国立新美術館

会期は2013年4月27日から2013年7月24日。

今年の注目展示です!!
「え、お前、今年の注目何個あるのさっ!!」って意見はさておき。
間違いなく"注目ランキング"上位の展示です。
フランス国立クリュニー美術館から「貴婦人と一角獣」が来日します。
この作品、タピスリー作品の中では最高傑作、といわれております。
以前にも「楽しみ~」と書きましたが、やっとや~っと行ってきました!!

「貴婦人と一角獣」
今までにフランス国外に出たことはメトロポリタン美術館での展示だけ。
それほどまでに大切にされてきた至宝です。
タピスリー自体の美しさはもちろんのこと、謎多き作品でもあり、人々を魅了してきました。

6枚からなる連作で、制作年や場所は不明。
パリで下絵が描かれ、15世紀末に織られたものと見られています。
下絵を担当したのは「アンヌ・ド・ブルターニュのいとも小さき時祷書の画家」と呼ばれる芸術家と推定されるようです。
この画家はその名の由来となった「アンヌ・ド・ブルターニュのいとも小さき時祷書」をはじめとし、優れた彩色写本を手がけていたらしく、1490~1508年にパリで活躍。 
一方、製織をした場所は特定されていませんが、フランスからフランドルにかけての地域か、パリと考えられているそう。

タピスリーの注文時期と注文主については、現在では1500年ごろと推定されています。
根拠として草花に散りばめられた千花文様(ミル・フルール)と呼ばれる背地が、15世紀末から16世紀初頭のタピスリーに顕著な様式であることが挙げられるようです。
また、画中の貴婦人の衣装や装身具も1500年頃の流行と合致すると考えられているようです。 
注文主はタピスリーの中に描かれた旗や、ユニコーンや獅子が身につけている盾に、ジャン・ル・ヴィスト(Jean Le Viste)の紋章【三つの三日月】があることから、ル・ヴィスト家と考えられ、1500年に道同家の当主となったアントワーヌ2世・ル・ヴィストがこのタピスリーを作らせた人物ではないかと見られています。
彼はフランス王シャルル7世の宮廷の有力者でル・ヴィスト家は司法官として活躍した名家のよう。
ジャン・ル・ヴィストはリヨン出身。
獅子の「lion」はリヨン「Lyon」から。
一角獣は、足が速いためフランス語で「viste」(すばやい)とル・ヴィスト(Le Viste)の一致。
これらのことからル・ヴィスト家のものだろうと。

このタピスリー。
テーマはそれぞれに感覚を示したものとされています。
《触覚》、《味覚》、《嗅覚》、《聴覚》、《視覚》、そして《我が唯一の望み》
今回、1枚ずつ詳細と感想を書いていきます。
最後の《我が唯一の望み》だけ感覚じゃなくね!??ってことも含めて(笑)

6つのタピスリーに共通していることは、若い貴婦人が一角獣とともにいること。
獅子やサル、ウサギなどの小動物と植物が描かれていること。
背景は千花模様(ミル・フルール)が描かれていること。

展示は入ると大きなスクリーンで紹介がありました。
そこを抜けて展示室に入ると思わず「わ~」と声をあげたくなる。
大きな大きなタピスリーが1つの部屋に配置されています。

《触覚》
貴婦人は背筋を伸ばした堂々とした姿勢です。
右手で旗竿を持ちながら、左手で一角獣の角に軽く触れています。
一角獣の左には獅子が座っています。
一角獣、獅子ともに三日月の紋章入りのケープを身に付けています。
一角獣は貴婦人の掲げる旗を見上げています。
6面あるうち、動物が旗竿を支えていないのはこの場面だけです。
貴婦人の手前には猿がいて首輪を触っています。
これが触覚の寓意だそうです。
とにかく色鮮やかです。
花々がとても美しい。

《味覚》
大きさとしては2番目に大きいもの。
貴婦人は侍女から差し出される皿からお菓子を手に取り、左手に止まっている鳥に与えています。
貴婦人を挟むように両脇に居る獅子と一角獣は、後脚で立ち上がり、旗を掲げています。
前景にいる猿も何かを口に入れようとしています。
これが味覚の寓意と考えられるようです。

《嗅覚》
貴婦人は花冠を編んでいます。
侍女は花が入った籠を貴婦人に向かってささげ持っています。
獅子と一角獣は先程の《味覚》と同じように貴婦人の両側で旗を掲げています。
猿はここでも登場。
花の香りを嗅いでいます。
これが嗅覚の寓意。

《聴覚》
6面のうち、もっとも縦に長いタピスリー。
豪華な織物を掛けたテーブルの上に小さなパイプオルガンがのっていて、貴婦人が演奏しています。
織物はアジアンチックな感じです。
獅子と一角獣じゃ貴婦人の両隣で旗を掲げていますが、振り返るような体制で、オルガンの音に耳を傾けているようなかんじもします。
全体的にリラックスしたような雰囲気がありました。
オルガンの上には獅子と一角獣の装飾がついていて、細かいところまで可愛らしいです。

《視覚》
草地の上に腰を下ろす貴婦人。
右手に綺麗な細工の鏡をもち、左手で一角獣をなでています。
一角獣は前脚を貴婦人のひざに乗せ、鏡に映る自らの姿に見入っています。
鏡に映る姿と貴婦人のひざにいる姿でちょっと表情違う気が……(笑)
貴婦人、一角獣、獅子で三角形になる構図となっていて、他のものと比べ、全体的にスッキリとした印象です。

《我が唯一の望み》
6面の中でもっとも大きなタピスリー。
他と決定的に違うのは貴婦人の背景に青いテントがあること。
「我が唯一の望み」(A Mon Seul D・sir)は画面中央の背後に配された大きな青いテントの銘文から。
その言葉は「A」と「I」に挟まれて書かれているようで、注文主の妻のイニシャルではないか、とのことでした。
貴婦人は侍女が捧げ持つ小箱から、宝石を選んで身につけようとしているようにも、また、逆に箱に宝石を戻しているようにも見えます。
手にしているネックレスはこれまでの5枚では首につけていたもの。
外したのか、これからつけるのか。
この画面が何を意味しているかについては、様々に論じられています。
五感を統べる第六の感覚である、とか、心、知性、精神であるとか。
銘文からは、愛や結婚といった意味が導き出されています。
イニシャルとか考えても愛が題材かな~と素人は単純に考えてしまいましたが。
最後の1枚に大きな謎がある。
これも人々を惹きつけるところなのかもしれません。

目玉が一番最初に来て圧倒されてしまいましたが。
展示はもう少しあります。

「一角獣の形をした水差し」
ブロンズでつくられたもの。
お世辞にも早そうとはいえない見た目ですが。
しっぽなどいろいろ気になる作品。

一角獣の起源などについても紹介がありました。
紀元前400年のギリシャの歴史家クテシアスの「インド史」に記載されているそうで、「インドには馬に似た白いロバが生息していて、額に1本のツノを持ちそれには毒消しの効果がある。また、いかなる動物よりも足が早い。」
こうやって創生された一角獣は他の言語に翻訳されるたびにいろいろと変化し伝わり。。。
驚くことに西洋では16世紀までは実在すると考えられていたとか。
誰も見たことがないものが存在するということに疑問を抱かないのか、と疑問(笑)

その後も説明のコーナーは続きます。
つぎは「貴婦人と一角獣」に描かれた動物達の紹介でした。
ウサギが多かった。
繁殖力の高さが多産や肉体的な愛を表現しているそうです。
つぶらな瞳で可愛らしい。
また、描かれた植物の写真もあり、約40種類もの植物が登場しているとのことでした。

続いて「貴婦人と一角獣」が制作された頃の服装と装身具について、また同年代のタピスリーなどがありました。

「鉄の小箱」
これがとにかく惹かれるのです。
「我が唯一の望み」で侍女が持っていた小箱とそっくりの鉄製の箱。
ゴシック風の装飾で部屋に飾ったら……ますますおかしな部屋になる(笑)
錠前が巧みに隠されているそうで、確かにじっくり見てもどこに鍵穴があるのか分からない。。
未だにどこに鍵穴があるのか気になっている作品。

「運命の女神たち」
4人の女性が描かれたタピスリーの断片。
服装がかなり特徴的でしたが、一部は創作なのでは、とのこと。

「放蕩息子の出発」
キリストの有名な喩え話をテーマにしたタピスリー。
かなり大きいです。
そしてかなりたくさんの人が登場します。
こんなにも細かく表現できるのか、と感心。
製織技術の高さを見せ付けられたような気もします。

「領主の生活のタピスリー:恋愛の情景」
こちらも登場人物多めですが、すごいのは描かれた植物。
ぎっしりです。
そしてそこで舞い遊ぶ鳥たち。
あ、今まで描かれているって描いているけど、タピスリーなので正確には"織られている"です。
こんなにも細かいことが可能なのだな~と。
色も鮮やかで美しいです。

今回はメインが「貴婦人と一角獣」ということで展示数は約40点とかなり少なめ。
それでも十分なほど楽しく鑑賞できました。
一つの作品をじっくり見てじっくり解説する展示ってなかなかないのでそこもよかった。
最後にもう一度じっくり見るとまた納得して違った景色が見えてきます。
中世ヨーロッパ美術の最高傑作とも言われる「貴婦人と一角獣」
こんな貴重な機会もそうそうない。
すっごくおすすめです



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