3月25日 読売新聞「編集手帳」
ニュースには真実、
ほぼ真実、
うその三つの種類しかない。
例示をしてくれませんか。
時報、
これは紛れもなく真実だな。
ほぼ真実は?
天気予報だ。
では三つ目は?
その他すべてさ。
政府が情報を意のままに管理した旧ソ連で生まれた小話である。
国名を「中国」に換えて古い小話が息を吹き返すようでは、
世界のリーダーを志す国にとって名誉なことではないだろう。
香港紙が伝えた。
中国政府が新型ウイルスの検査で、
陽性を示しながら発熱などの症状がなかった4万3000人以上を統計から除外していたという。
事実とすれば、
約8万人とされている感染者数は、
拡散状況を分析する研究では役に立たない統計になりかねない。
新型ウイルスは「沈黙の肺炎」とも称される。
症状の自覚のない感染者が拡散させている可能性が指摘されるなか、
独断が過ぎよう。
東京大学の卒業式で、
卒業生総代として中国・武漢出身の鄭翌さん(医学部健康総合科学科)が答辞を読んだ。
「国や地域を隔てて医療を論じることは不可能。
一人一人に託された使命を精いっぱい果たします」。
真実の価値を訴える声だろう。