4月1日 NHK「おはよう日本」
多くの観光地を抱える古都 奈良だが
明治時代の文豪 志賀直哉が奈良県を
“うまいものが無いところだ”と随筆に記したことから
“奈良にうまいものが無し”と言われることがあるという。
こうした汚名を返上し観光客により満足してもらえるようにしようと
新たな取り組みが始まっている。
奈良の山里にぽつんと立つ建物。
“うまいものなし”の汚名を返上しようと奈良県が4年前に建てた料理学校である。
校長には料理界のビッグネームを招聘。
東京やパリなどでレストランを展開する平松博利さん。
授業が行われるキッチンには高価な機材を導入。
オーブンや大型ミキサーなど
一流レストランで使用されるものである。
(生徒)
「ここは環境もいいですし
すごくありがたいです。」
学費は年90万円と安くない。
豪華な料理学校を税金で作る必要があるのか。
当初 批判も高まった。
荒井知事は批判を受けとめつつ理解を求めている。
(奈良県 荒井知事)
「新しい試みはいつも難儀がある面があります。
“奈良にうまいものなし”を逆手にとって
チャンスだと思って。」
奈良県がリスクを取ったのには訳があった。
いつも観光客でにぎわい潤っているはずの奈良。
しかしその実態は悲惨なものだった。
外国人旅行客が使うお金は1人あたり6,727円。
ダントツの全国最下位である。
奈良を訪れる多くの旅行客が
近くの大阪や京都で泊まったり食事をしたりしているとみられている。
奈良県は
うまいものが増えれば旅行客の滞在時間が増えお金を落としてもらえると
考えている。
奈良にうまいものはあるのか。
その答えを探す1人 芝田さん。
料理学校の1期生である。
去年 奈良市から1時間以上離れた曽爾村に泊まれるレストラン
オーベルジュを開業した。
(芝田さん)
「お店をやりたいって思ったときにやるんであれば
自分が生まれ育った曽爾村でやりたいと思いました。」
売りは奈良の食材にこだわったフランス料理。
1泊3万6千円~だが
早くも人気である。
芝田さんが大切にしているのが地元農家との情報交換である。
この日出合ったのが大和完熟ほうれん草。
県内でも20件ほどしか栽培していない奈良の伝統野菜である。
さらに新メニューに向け貴重なヒントももらった。
「軸よりも根の方がもっと甘いですね。
根の方が糖度が高い。」
キッチンに戻った芝田さん。
日替わりスープに仕入れたばかりのほうれん草を使う。
“甘い”と教えたもらった根をどう調理するかが腕の見せ所である。
そしてメインは奈良のブランド 大和牛。
この日の客は松阪牛が自慢の三重県からだったが
自信を持って勝負した。
(ディナー客)
「松阪牛より脂っぽくはなくて食べやすい印象がありました。
“奈良はうまいものなし”って
そうなんですか。
全然そんな感じないくらい。」
(芝田さん)
「おいしいものは奈良にあるということを発信していけたらと思います。
末永くお客さんに愛されて
地元からも応援される店でありたいと思います。」
“うまいものなし”の汚名を返上へ。
奈良の挑戦は続く。