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光が迎えに来るはずだ

2020-04-07 07:00:00 | 編集手帳

3月14日 読売新聞「編集手帳」


詩人の杉山平一さんは東日本大震災の翌年に他界した。
享年97。
亡くなる直前に出した詩集の表題作「希望」は、
つらい思いをした人に心を寄せている。

<不幸や悲しみの
 事件は
 列車や電車の
 トンネルのように
 とつぜん不意に
 自分たちを
 闇のなかに放り込んでしまうが…>。
物理の法則とは逆に、
トンネルのほうから動いて人々を闇に包むかのように書いている。

東京五輪の聖火がギリシャで灯(とも)された。
日本で聖火リレーがスタートするのは被災地の福島である。
走者がトーチで掲げる明かりはトンネルを遠くに追いやる力となろう。

残念ながら笑顔の満ちるはずの出発式は無観客となり、
沿道での観覧自粛も呼びかけられている。
ただ、
心のうちは明るくして復興の火が全国を巡る日々を見守りたい。
わが街をランナーが駆けているのに、
飛び出て行きたい気持ちを抑えるのはなかなか大変なことだろう。

杉山さんの「希望」はこう結ばれる。
<我慢していればよいのだ
 一点
 小さな銀貨のような光が
 みるみるぐんぐん
 拡(ひろ)がって迎えにくる筈(はず)だ
 負けるな>。
ウイルス禍のトンネルも同じだろう。

 

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