9月15日 キャッチ!
今年26回目を迎えた香港の大規模な本の見本市。
1週間の期間中の来場者はのべ100万人以上。
「1国2制度」のもと出版の自由が認められた香港では中国共産党に批判的な本も数多く出版されてきた。
そんな香港の出版業界に去年 衝撃が走った。
習近平国家主席の政治手法について書かれた本。
独裁で対外拡張路線を歩んでいると辛らつに批判する内容だが
この本を出版しようとした香港の出版社の代表が中国本土で拘束され
去年5月 懲役10年を言い渡されたのである。
出版社代表 姚文田(とうぶんでん)さん(74)。
その罪は出版とは関係なく
違法な化学物質を中国本土に運び込もうとしたということだった。
アメリカに住む息子は
中国当局が出版を中止させるため姚さんにありもしない罪をかぶせたと主張する。
(息子)
「父は不審なメールや電話、尾行もされていました。
すべては偽りで裁判は笑い話です。
出版の自由をどこまで容認するかで中国政府の方針の変更がわかります。」
こうした中国の指導部に批判的な本は他にもあり
主に小さな書店で販売されている。
このような店は中国本土からやってきた客がひそかに中国本土に持ち運ぼうと
多くの本を購入していくことで経営が成り立っていた。
しかし近年 中国本土に入る際の荷物検査が厳しくなったことで本土からの客が大幅に減り
こうした書店の経営が厳しくなっているという。
(書店店主)
「2回目の持ち込み違反で罰金
3回目で拘束されます。
中国本土からの個人旅行者が減ったうえに家賃も高いので打撃を受けています。」
出版業界をめぐる変化は見本市に出展した小規模な出版社にも起きていた。
来場者の人気を集めていたのは
「雨傘革命」とも呼ばれた去年の学生などによる大規模な抗議活動を記録した本や写真集。
ところが大手書店がこうした書籍について仕入れる部数を制限したり
取り扱いを拒否したりするケースが相次いでいるというのである。
香港の出版業界は中国本土の企業が株主の大手出版グループが強い影響力を持ち
市場の7割以上を占めるとも言われる。
グループは香港で大型の書店を約50店舗展開しているが
取材に対し出版社への扱いに対し政治的な扱いは無いと話した。
(おおて出版社広報担当)
「話題のジャンルの出版は増え
関心が冷めれば減ります。
当然のことです。」
大型の書店から書籍の取り扱いを拒否されたと言う出版社経営 劉細良(りゅうさいりょう)さん。
小さな出版社を営んでいる。
きっかけと考えられるのが政府に抗議するため香港中心部での座り込みを呼びかけた学者らの論文集。
学生たちに読まれ
去年の抗議活動に影響を与えたと言われる本である。
劉さんが出版した書籍で政治的なテーマを扱ったものは全体の2割ほどだが
それ以外の書籍も取り扱いを拒まれるようになったと言う。
(劉細良さん)
「『自分が何をしたのか分かっているはずだ』と卸売業者に言われました。」
劉さんはいま独自の方法で読者に本を紹介しようとしている。
ソーシャルメディア上で頻繁に書評を公表し
月に2回 自分の事務所で読書会を開いている。
自身が出版した本のほか大手書店には並びにくい特色ある本を伝えるようにしている。
(参加者)
「ここには自己啓発してくれる本があります。
オーナーの知識の多さも魅力です。」
劉さんはインターネットなどを上手く使いながら
人々の関心を呼び起こす本を世に出し続けることが大切だと考えている。
(劉細良さん)
「新しいメディアでの宣伝を増やして議論を起こそうと思います。
そうすれば人々の関心が集まり本を探してくれるでしょう。
単なる利益追求ではなく 地元の発展を追求することが非常に大切なのです。」