9月4日 編集手帳
いまごろの季節だろう。
寺山修司に一句がある。
〈秋風やひとさし指は 誰の墓〉。
澄みわたった青空を指して立つ指が目に浮かぶ。
この指とまれ。
遊び仲間を誘った子供の昔が懐かしい。
無邪気な鬼ごっこならばともかく、
「“いじ め”ごっこするもの、この指とまれ」と呼びかけても、
良識ある国は耳を貸さない。
式典の性格が友好的でないとして欧米の主要国が首脳の参加を見送ったのは当然だろう。
中国政府が軍事力を誇示するとともに反日宣伝の舞台として用いた「抗日戦争勝利70年」の記念行事と軍事パレードである。
近隣諸国で評判の悪 い腕ずくの外交を習近平政権が改める可能性。
潘基文事務総長の出席によって傷ついた国連の中立性…。
ひとさし指の墓に埋葬されたものはいろいろありそうで ある。
寺山で思い出した詩の一節がある。
〈ふりむくな/ふりむくな/後ろには夢がない〉(『さらばハイセイコー』)。
かつて日本が中国を侵略した過去を思うとき、
「ふりむくな」と言うつもりは断じてない。
ないが、
悪意をこめて後ろ“ばかり”を振り向くのはまた話が別だろう。
あまりにも夢がない。