8月29日 経済フロントライン
ビジネスマンの客が多い東京中央区の大型書店。
いま大人向けの学習本が売れている。
数学・物理・理科・社会
むかし習った教科をもう一度学び直したいというニーズに応えたものである。
なかでも人気は歴史。
「もう一度読む教科書」シリーズは今年4月に累計販売部数は100万部を突破した。
(八重洲ブックセンター 事業推進課 高杉信二さん)
「大人になってからも旅行に行ったり時代劇を見るときに必要な知識だったりする。
そういうところで“学び直し”に挑まれる方が多い。」
都内の飲食店では教科書を使った勉強会まで開かれている。
「大人になってみると
そういえば教科書に載っていたなということが多かった。
そうしたらもう1回やり始めても面白いかなと思った。」
大人向けの教科書を出した出版社。
教科書の市場が少子化で縮小するなか大人向けに編集し直し発売した。
学生向けではカラーページを多く使っているが
大人向けでは文字が読みやすいようにモノクロにしている。
また試験勉強に必要な太字のキーワードもなくしコラムを増やした。
大人の読み物として工夫したところ予想外のヒットとなったのである。
(山川出版社 編集部 山岸美智子さん)
「社会に出ていろいろな経験を積まれた方たちが
こういうことってどうだったんだろうと考えてもらう素材として有効。」
おもちゃ業界も大人の学び市場に参入している。
子どもに人気のレゴブロック。
より高度なテクニックを学びたいという大人のファンの声に応え18歳以上限定の教室が開かれるようになった。
教えるのはブロック製作が専門のプロの講師。
形だけでも2400種類以上のパーツがあるレゴブロック。
どうすればイメージ道理の作品がつくれるのか
選び方から配色までプロのテクニックを丁寧に教える。
月に1回開かれるこの教室は授業料3千円。
講義を受けたあと生徒の多くは商品を購入していくと言う。
(大人向けの教室を主催 マーリン・エンターテインメンツ・ジャパン 遠藤利明さん)
「私どものショップで買っていただいて自宅で遊ぶ人が最近増えてきている。
大人のための機会創出は非常に意味のあることだと思っている。」
全国に家庭教師を派遣している会社も大人向けのビジネスに参入している。
始めたのが「大人も家庭教師」。
語学や資格取得だけでなく音楽やスポーツといった趣味の分野まで講座数は50にのぼる。
夜11時 フットサルのレッスン中のIT企業に勤める高沢知史さん(30)。
友人とフットサルチームを起ち上げたものの周りにのレベルについていけず家庭教師を頼んだ。
(高沢知史さん)
「いい大人がみんなの前で練習するのもちょっと恥ずかしいなというのがあった。
マンツーマンで教えてもらうのも上達が早いかなと思った。」
料金は1時間2900円~だが
先生が元プロなどの場合 数万円にのぼる場合もあるという。
(トライグループ 広報担当 物部晃之さん)
「大人の方が学びたいというのがどこにあるのかとらまえながら
それに合わせたサービスを提供していくことによって
この事業は無限の可能性を秘めている。」
大人が学ぶためのスペースを貸し出す不動産会社も登場している。
閉鎖したトランクボックスを改装して去年10月にオープンしたこの施設。
俳句講座など様々な学びのスペースを提供している。
さらに「部室」と呼ばれるスペースを設け
月5万円~11万円で貸し出している。
レコード部は
30人いる部員がそれぞれ持ち寄ったコレクションを共有したり情報交換したりする場として使っている。
(レコード部部長 橋本真吾さん)
「聴かず嫌いだった音楽にも出会えてすごく価値感が広がった。」
これまで本屋研究部やコーヒー部など15以上の部活に貸し出している。
(不動産会社リビタ 川島史さん)
「利用者の方たち発信でいろんなイベントが日々起こっているような場所にしていきたい。」
大人も学ぶという新たなマーケット。
今後も拡大が期待できると専門家は指摘する。
(博報堂 新しい大人文化研究所 坂本節郎さん)
「会社だけ仕事だけではなくて自分のプライベートを充実させたいとか
どうやって充実させるかというときに
“学び”というのが出てきている。
“学び”というのはマーケットを深化・拡大させるそういった力を持っていると思う。」