絵里の家は、海がよく見える高台にあった。
勝部と智美は、歩いて、彼女の家に向かった。
「ちょっと変わってるというか、感受性が強い子だと聞いてるがね」
「17歳ですよね? 私もそうでしたよ」
「へえ……そうかい?」
「難しいお年頃、ですから」
家に着くと、絵里の母親の喜美子が迎えに出た。
「善さん、よくおいでくださいました。それと、こちらはお孫さんでしたね」
「絵里ちゃんは……いるのかい?」
「ええ」
智美が、
「私が話してみても、いいですか?」
「はい……お願いします」
智美は、絵里の部屋へと向かった。
勝部と、喜美子は、リビングで話していた。
「今日でもう1か月、学校に行ってないんですよ」
「そうかい。でもなあ、行きたくないものを無理強いするのも、どうかと思うがね」
「いじめられているのかと思って、先生とも相談したんですが、そういう事実はない、と……」
「先生もアテにならんからなあ、今は」
絵里の部屋から、突然、大きな笑い声が聞こえてきた。
喜美子は眼を丸くして、
「あの子が笑うなんて……久しぶりです」
勝部は、
「やはり、若い者どうし、なんていうか……フィーリングが合ったようだね」
やがて、絵里と智美が下りてきた。
絵里は、引きこもっている、というわりには、身なりも髪型もきちんとして、さっぱりした印象を受けた。
ウェーブがかかった肩までの髪、それと智美よりは、ややふっくらした体型だった。
「協力してくれるそうです」
智美が言った。
「学校より、面白そうだから……あたしでよかったら、よろしくお願いします」
絵里はそう言うと、頭を下げた。
(なんだ、べつに問題ないじゃないか)
もっと自意識過剰で、神経質そうな女の子を、想像していたのだが。
勝部、智美、絵里の3人は、砂浜をゆっくりと歩いていた。
「どう? 今、何か感じる?」
智美が訊いた。
「今は、なにも。もしかしたら寝てるのかも」
「その、アーノンってやつが、いったい何なのか、わからんものかな?」
勝部が訊いた。
「わかんない。でも、喜んだり、悲しんだりするのは、同じみたい」
「その……話せばわかるやつかい?」
「さあ。でも、怒ったことは一度もないよ」
「ふーん……」
智美は、歩きながら、なにか考え込んでいるようすだったが、
「おじいちゃん、絵里ちゃん、お願いがあるの」
勝部と絵里は、きょとんとして、立ち止まった。
「明日、私の職場に、いっしょに来てくれる?」
「智ちゃんの……職場?」
そう言えば、智美がどういう仕事をしているのかは、聞いていなかった。
「会ってほしい人がいるの」
智美が言った。
「そりゃ、かまわんよ……なあ、絵里ちゃん?」
「うん」
智美は、少し困ったように笑うと、
「ちょっとクセのある人だけどね……」
まさか、彼氏とか……?
(つづく)
勝部と智美は、歩いて、彼女の家に向かった。
「ちょっと変わってるというか、感受性が強い子だと聞いてるがね」
「17歳ですよね? 私もそうでしたよ」
「へえ……そうかい?」
「難しいお年頃、ですから」
家に着くと、絵里の母親の喜美子が迎えに出た。
「善さん、よくおいでくださいました。それと、こちらはお孫さんでしたね」
「絵里ちゃんは……いるのかい?」
「ええ」
智美が、
「私が話してみても、いいですか?」
「はい……お願いします」
智美は、絵里の部屋へと向かった。
勝部と、喜美子は、リビングで話していた。
「今日でもう1か月、学校に行ってないんですよ」
「そうかい。でもなあ、行きたくないものを無理強いするのも、どうかと思うがね」
「いじめられているのかと思って、先生とも相談したんですが、そういう事実はない、と……」
「先生もアテにならんからなあ、今は」
絵里の部屋から、突然、大きな笑い声が聞こえてきた。
喜美子は眼を丸くして、
「あの子が笑うなんて……久しぶりです」
勝部は、
「やはり、若い者どうし、なんていうか……フィーリングが合ったようだね」
やがて、絵里と智美が下りてきた。
絵里は、引きこもっている、というわりには、身なりも髪型もきちんとして、さっぱりした印象を受けた。
ウェーブがかかった肩までの髪、それと智美よりは、ややふっくらした体型だった。
「協力してくれるそうです」
智美が言った。
「学校より、面白そうだから……あたしでよかったら、よろしくお願いします」
絵里はそう言うと、頭を下げた。
(なんだ、べつに問題ないじゃないか)
もっと自意識過剰で、神経質そうな女の子を、想像していたのだが。
勝部、智美、絵里の3人は、砂浜をゆっくりと歩いていた。
「どう? 今、何か感じる?」
智美が訊いた。
「今は、なにも。もしかしたら寝てるのかも」
「その、アーノンってやつが、いったい何なのか、わからんものかな?」
勝部が訊いた。
「わかんない。でも、喜んだり、悲しんだりするのは、同じみたい」
「その……話せばわかるやつかい?」
「さあ。でも、怒ったことは一度もないよ」
「ふーん……」
智美は、歩きながら、なにか考え込んでいるようすだったが、
「おじいちゃん、絵里ちゃん、お願いがあるの」
勝部と絵里は、きょとんとして、立ち止まった。
「明日、私の職場に、いっしょに来てくれる?」
「智ちゃんの……職場?」
そう言えば、智美がどういう仕事をしているのかは、聞いていなかった。
「会ってほしい人がいるの」
智美が言った。
「そりゃ、かまわんよ……なあ、絵里ちゃん?」
「うん」
智美は、少し困ったように笑うと、
「ちょっとクセのある人だけどね……」
まさか、彼氏とか……?
(つづく)