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トロのエンジョイ! チャレンジライフ

「音楽はやめられない。あと300年は続けたいね」マイルス·デイビス

「影武者徳川家康」隆慶一郎

2022-05-16 05:45:29 | 読書

ずいぶん昔に読んだのですが、今回、再読しました。

といっても、完全に熟読玩味したわけではないですが、

隆慶一郎先生の作品の素晴らしさは、じゅうぶん感じることが出来ました。

 

他にも、「吉原御免状」「一無庵風流記」「花と火の帝」(絶作)など、

先生が遺した作品はいずれも面白く、ほぼ読みこぼしはないつもりです。

伝奇小説というのでしょうか、歴史に独自の解釈を加えたり、

SFやファンタジーの要素を加えたりしたものが多いです。

 

今回ご紹介する「影武者徳川家康」は、

「徳川家康は関ヶ原の合戦で死んでおり、その後はすべて影武者が替え玉として演技した」

という、突拍子もないものです。

 

この「家康替え玉説」は、確かな根拠があるわけではない…のかな?

しかし、ここまで深く掘り下げて書かれているのは、この作品だけだと思います。

隆慶一郎先生の非凡な才能を感じさせるものです。

 

出来れば、あなたの作品をもっと読みたかったです、先生。


「未来は決まっており、自分の意志など存在しない」妹尾武治

2021-09-15 06:40:29 | 読書

要するにこれは、心理学的決定論の本ですね。

「過去を変えることはできないが、未来は変えられる」とか、

そういうものは幻想にすぎない、というわけです。

 

つまり僕らが自分の意志だと思い込んでいるものは、存在しない、

過去も未来も、すべては決められた筋道にそって動いている…(と、思い込んでいる)

なんかずいぶんつまらん考え方のようですけど、

心理学って突き詰めていくと結局、そういうところに行き着くんですよね。

 

でも、これは、自分の都合のいいように考えたらいい、と思います。

なにか良いことがあったら、これはきっと運命だったのだと思い、

悪いことがあったら、これは本来の僕の人生ではない、きっと変えられると思う。

みんな、そうやって生きているのですから。

 

でも、ひとつ興味深いことがありました。

「宇宙は5分前に始まった」という命題ですが、

誰もこれを論理的に否定できない、というのですね。

常識で考えたら、そんなことあるわけがない、となりますけど、

どんな高度な理論を使っても、間違っていると証明できないのです。

 

これをお読みのあなたはどのようにお考えになりますか?

あんまり真剣に考えすぎると、人生無駄にするかもしれませんが(笑)

 


「存在しない時間の中で」山田宗樹

2021-08-22 05:12:40 | 読書

久しぶりの読書記事です。

この小説の大きなテーマは、

「神は実在するということが、物理的に証明されてしまったらどうなるか」

ということなんです。

 

ぎえー重苦しい、と思われますか?

多くの人にとって、神様というのは自分の心の中に存在するもので、

それを「信仰心」と言ったりするのでしょうけど、

神様が実体あるものとして本当に「いる」としたら、

これはとんでもないことだと思います。

 

しかもこの物語に登場する「神」は、たいそう気まぐれで無慈悲な存在のようです。

ある課題を人類がクリア出来なければ、宇宙を終わらせる、この世界を消してしまう、というのです。

 

山田宗樹さんは、このような途方もない「もし…だったら」というテーマを書くのが得意な作家さんです。

例えば、「百年法」という作品では、

「誰もが年老いることがないが、百歳で必ず死ななければならない世界」というものを書いています。

 

さて、「神」を目の当たりにした人類は、どうするでしょう?

どうしようもない、と絶望する者、

「神」の課題に果敢に挑もうとする者、

さまざまな人間模様が描かれます。

果たして本当に、宇宙は消えてしまう運命なのでしょうか?

 

それは、「読んでのお楽しみ」ということになります。

久しぶりに夢中になって小説を読みました。

期待を裏切らない(裏切る?)作品だと思いました。

 


「坊っちゃん」夏目漱石

2021-05-11 03:32:54 | 読書

言わずと知れた名作です。急に読みたくなり、購入しました。

 

これは漱石の代表作ですが、文章が平易で読みやすいので、まるで児童書のように扱われていますねー。

僕がこれを初めて読んだのも、小学生のときでしたが、

この作品に込められた深い意味を、当時の僕がよく理解することは困難でした。

読み通すだけなら、それこそ小学生でも可能なんですけどね。

 

無鉄砲で、直情的で、曲がったことが大嫌いな、「おれ」こと、坊っちゃん。

東京生まれの「おれ」は、教師として松山の中学に赴任するのですが、

権力に媚びて甘い汁を吸おうとする人間の醜さ、単純な自分が笑われる世の中の空しさ、

そういったものを見せつけられ、それでも自分を曲げず、ついには…

 

まあ主人公の「おれ」も必ずしも正しいわけではありません。

しかし、これは作者の漱石の分身であると同時に、

こんなふうに自分も生きられたら、という願望でもあるのではないでしょうか。

漱石は心の病に苦しめられたことがあるらしいですが、

世の中とうまく立ち回れない自分に、憤りを感じていたのかもしれません。

 

僕としては、唯一、「おれ」に慈愛をもって接してくれた女性である「清(きよ)」の存在が、

この物語を美しく彩っていると思うのです。

 

ひさしぶりの再読でしたが、またまた物語の世界に、惚れ込んでしまったという感じです。

末永く、愛読していきたいと思います。

 

 

 

 

 


「夜と霧」ヴィクトール・E・フランクル

2021-04-19 06:02:36 | 読書

これは、心理学者である著者が、ナチスの強制収容所での体験を語った本です。

といっても、収容所の状況を、心理学的に分析したものではありません。

著者はあくまで「普通の人」として収監され、そこで生き延びたのです。

 

地獄のような環境で、著者はどのように過ごしていたのか。

そこに描かれているのは、良くも悪くも、「人間」ではないかと思いました。

 

同じ収容者どうし、だまし合い、足を引っ張り合う人間の愚かさ。

あるいは、ガス室に送られても、毅然として祈りの言葉を唱える人間の気高さ。

 

ヒットラーは、異次元からやってきた怪物ではなく、人間であり、

彼の為した所業でさえ、人間の一面である、ということです。

 

これからお読みになるという方は、そういう本だということを留意された方がよろしいかと思います。

よく、「日本人は平和ボケしている」なんて言われますが、

僕は、平和ボケって素晴らしいことだと思うんです。

世界中が一人残らず平和ボケしてしまえば、それは、ある意味で理想の世界ではないでしょうか。

 

しかし、現実には、世界のあちこちで、不毛な殺戮が行われています。

ミャンマーでは、国民に銃口を向ける殺人政権が、国を牛耳っています。

僕らは、戦争ほど愚かしいことはないということを、何度でも学ぶ必要があると思います。

この本を読むか読まないか、それは自由ですけどね。

 

いずれにせよ、たくさんの言葉が溢れ出すような、あるいは言葉に詰まってしまうような、

最近では忘れられたような読書体験でした。