名馬電機社長の事業報告という名の日記

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するりと滑り落ちたArcの頂

2012年10月13日 | 競馬
正直に言うと私はオルフェーヴルの力を過小評価していた。

今回大外枠からの発走が決まった時、勝つにはこれまで教えこんできた折り合いを捨て、今後レースでの制御が効かなくなるリスクを犯してでも先行するしか手はないと思っていた。いくら高いスピード能力と、血統に裏打ちされた豊富なスタミナを持っていてもロンシャンの道悪を後方待機から大外周って差し切れるほど相手は弱くないし、かと言って密集する馬群をインをこじ開けて来られるかというとそもれもまた難しいと思ったからだ。また大外枠で中途半端に中団につければ馬群の外外を回らされるロスが大きいし、なによりオルフェーヴルの折り合い、暴走癖がいつ顔をのぞかせるかわからない。

こう考えていたのでレースがはじまり、オルフェーヴルが後方に控えたのを見た時、だめだな、と思った。なのでフォルスストレートを抜け、最後の直線に向いた時、馬群の大外で絶好の手応えのままでいるオルフェーヴルを見た時には驚いたと同時に全力で土下座したい気分になった。

鞍上スミヨンのゴーサインに鋭く反応し一気に加速したオルフェーヴルは完全に他馬を圧倒していたし、これまで日本馬が突き崩せなかった壁を完全に突き破ったと思った。
しかし「やった!」と声をあげようとした刹那、完全に手にしていたはずの栄光は手元から滑り落ちた。ゴールが近づくにつれオルフェーヴルが馬場の中央から内埒へ大きくヨレて減速、その間にフランスの牝馬ソレミアが一歩ずつ差を詰め、ゴール線上ではきっちりと交わしきってしまった。

これまでエルコンドルパサー、ナカヤマフェスタで凱旋門賞2着を経験した時は「これ以上悔しくて惜しい2着はないだろう」と思った。しかしそれと全く同じ気持ちを三度味わうこととなってしまった。しかも前2回よりもその気持は大きい。エルコンドルパサーもナカヤマフェスタもゴール前から勝ち馬との叩き合いの末の2着でありゴールまで「勝てるかもしれない!」という気持ちで見ていたのに対し、今回は完全に抜け出し「勝った!」と思ったところから逆転されたのだから当然といえば当然である。

勝ったソレミアの鞍上はオリビエ・ペリエ。短期免許で来日し、日本でもおなじみの騎手であり、凱旋門賞は過去にエリシオ、パントルセレブル、サガミックスと3連覇したこともある。そして管理するラフォンパリアス調教師はかつてディープインパクトが凱旋門賞に遠征した際、受け入れ厩舎となったという経緯があり、そんなコンビが日本馬の凱旋門賞制覇を阻んだのかと思うとなんとも複雑な気分になってしまう。しかしそつなくインをキープして、有力各馬が力を出し切れない中、直線きっちりとオルフェーヴルを差しきったその競馬は評価しなければならないし、おめでとうと言いたい。

一方のオルフェーヴル。斤量や馬場、もしくは早じかけによるスタミナ切れで失速したという見解も見かけたが、私自身はスタミナ切れというよりもオルフェーヴルの「癖」が最後の最後で出てしまったからではないかと思う。映像を見ていても懸命に右ステッキを入れ走りを矯正しようとするスミヨンに対して、オルフェーヴルは頑なに右によれている。「鞍上の指示を全く聞かずあらぬ方向に走っていく姿」はまさに阪神大賞典で見せた逸走と同じ類のものだと感じる。ペリエの「オルフェーヴルが全力で走るのをやめた」というコメントもそれを物語っている。

結果論として言えば確かに仕掛けを遅らせていればそれだけ先頭に立つのも遅くなり、ヨレることもなかったかもしれないが、前哨戦で陣営が思っていたほど切れなかったことを考えると、あれ以上待つと今度は差し損ねが怖い。それにあそこまでの斜行を想定に入れて走るのも難しいように感じる。なので陣営は完璧に力を発揮させたしオルフェーヴルもその全能力を出しきったが、最後の最後で「いらぬ悪癖」まで出してしまったがために勝てなかったものだと思っているので勝負の世界には常に存在する「勝てなかったことへの結果責任」はあってもそれは責められる類のものではないと思う。

またアヴェンティーノが無駄に出走したというような記述も見かけて血管ブチ切れそうになったので書き加えておくが今回の遠征はアヴェンティーノの存在なくしてはありえなかった。滞在中、オルフェーヴルの調教パートナーを努め、常にオルフェーヴルの精神面を支え続けたしー、パドックから本馬場入場の際など、アヴェンティーノが近くにいることでオルフェーヴルが大人しくスムースに返し馬など行えていた。また今回のレースにおいてもスタート後、クラストゥスが盛んに後ろのオルフェーヴルの位置を確認しながら馬群の内側から外へ外へアヴェンティーノを誘導し、オルフェーヴルの視界に入る位置にポジションを取りオルフェーヴルを落ち着かせ、馬群の外にいても阪神大賞典のように暴走しないように努めていた。確かにラビット役の馬は逃げて速いペースを作ることが重要な役割を果たすケースはい多いが、今回の場合エイダン・オブライエン陣営が2頭のラビットを用意していたしアヴェンティーノの役割は必ずしもペースを上げることではなくオルフェーヴルを落ち着かせることに主眼が置かれていたのだから、褒められることはあっても非難される云われは全くない(ペースが遅くてオルフェーヴルが脚を余す格好で負けたのなら別だが見ての通りそんな競馬ではなかった)。オルフェーヴルはもちろんアヴェンティーノに対しても私は最大級の感謝をしたい。

悔しいし、惜しいが2012年の凱旋門賞は勝てなかった。しかしその準備段階からレースまできっちりと調整し、最大級の夢を見せてくれた関係者と馬にありがとう、お疲れ様と心から思うのである。

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