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ロンドンから徒然に

ミス・ポター

2007-09-29 | 映画・演劇
 10年以上前のことですが、『ピーター・ラビット』に関する仕事で出版元のフレデリック・ウォーン社と仕事をしました。その縁で、ある時作者のビアトリクス・ポターの作品を多く所蔵していることで有名なヴィクトリア・アルバート美術館に連れていってもらい、館内の展示物はもちろんのこと、関係者以外立ち入り禁止の所蔵品の倉庫で、貴重な絵本の原画を見せてもらいました。
 見慣れた主人公達の原画の美しさに大変感動したのですが、さらにその時に驚いたのは博物学に長けた彼女の、動物や鳥や昆虫達を描いた絵の細密さです。部分部分まで細やかに伝わるリアリスティックな絵を見て、あの『ピーターラビット』の仲間達が、例え人間のように服を着ていても不自然でない動きが感じられる理由が分かった気がしました。

 そのビアトリクス・ポターを主人公にした映画『ミス・ポター』を観て来ました。おそらく一般の人にはあまり知られていないと思われる彼女の実像や、悲劇に終わった恋が描かれています。
 それにしても、1900年頃のイギリスの、それも上流階級の保守的な環境の中で、女性が自立して作家になることはなんと困難だったことでしょう。親の認めた相手と結婚して、おとなしく夫に従っていくのが当たり前と考えられていたのですから。
 と言っても、このことを当たり前と考えていたのは、日本でも実はつい最近までのことではないでしょうか。女性の自立や男女平等という考え方が本当に浸透しているのはまだまだ若い人達の間だけなのかもしれません。

 映画の中でも後半に描かれていますが、ポターは著作の大ヒットによる印税で湖水地方の土地を買占め、無用な開発から自然を守ったことでも有名です。環境保全の観念が早くから実践されていたのですね。
 湖水地方を最初に訪ねた時の僕の印象は、前以て『ピーター・ラビット』の絵本から想像していたようなある種の可愛らしさとかではなく、自然の荒々しさや広大さみたいなものでした。人間の手で生半可な開発なんてできないような強さをもともと持っていたのかもしれません。

 いつまでも“うさぎ達”が飛びまわれる環境が残されるよう祈っています。

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