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ロンドンから徒然に

『Sound of 2006』の新人

2010-07-18 | 音楽
 芥川賞はともかく、いつも直木賞の受賞者を知る度に疑問に思うことがあります。文学界で“新人”というのはどういう定義なんでしょうか?
 今回受賞の中島京子さんにしても、ずっと素晴らしい個性ある作品(個人的には『ツアー1989』が印象に残っています)を書かれていて、常に書評に取り上げられるくらいの方なので、“新人”というのもどうかと思うのですが、もっと驚いたのはこれが初のノミネートなんですね。

 どうも直木賞の場合、これから期待できる“新人”というより、既に実績がある人がいつも選ばれているような気がして、変な言い方ですが賞の権威のリスク回避のような気がしないでもありません。

 あ、いや、今日は別に文学のこと書こうと思ったわけじゃなく、音楽でも“新人賞”みたいなものをあげる時はどんな基準で選んで、それは実際期待通りの活躍に結びついているのかな、なんてことをふと思ったんです。

 で、イギリスの場合、『Sound of ...』(...の部分には毎年の年号が入ります)という面白い賞があります。
 BBCが主催で、毎年たくさんの(昨年は130人もの)批評家や音楽編集者の投票によって決めるんですが、活躍しそうな新人ミュージシャンをその年の1月に発表するんです。

 2007年にはMIKAが選ばれているし、2008年にはAdeleとDuffyが1位、2位になっているので、その点では当たっていると言えます。
 ただ、2009年は Little Bootsが1位なんですが、これが外れというより、同じ年にノミネートされたFlorence and the Machine(3位)や Lady Gaga(5位)の活躍がそれに勝ってしまった感があります。

 さてさて、今日は前置きだけで終わってしまいそうですが、実は2006年に受賞しているのがコリーヌ・ベイリー・レイCorinne Bailey Raeなんです。
 昨晩彼女のコンサートに行ってきました。




 夏の野外イベント目白押しのロンドンでも、ちょっと特異な場所になるんですが、Somerset Houseの中庭を使ったライヴです。
 時計台の9時の鐘に合わせるかのように登場し、その音を聴きながら「オン・タイムね」とのMCで始まりました。

 最初こそちょっと発声も不安定で、バンドのリズムも息が合っていない感じがして、PAのバランスも悪かったのですが、徐々に持ち直して、日が暮れる頃には情緒たっぷりの空気感に包み込んでくれました。
 新しいアルバムからの曲も多く、バラエティに富んでいたのですが、野外ということもあってか、僕にはアップテンポの曲の方が気持ち良く響きました。

 ご主人の突然の死から立ち直れるのだろうかという心配も一時期はされていましたが、この後もずっとライヴは続くようで、月末にはフジ・ロックにも出演するみたいですね。

 BBCも『Sound of 2006』の新人がその後順調に活躍してくれていて嬉しいことでしょう。