HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

贋作展覧会

2010-07-12 | アート
 以前プリムローズ・ヒルにあるパブの壁に、グラフィティ・アーティストのバンクシーの作品かと思われる絵が描かれたという話を書きました(6月12日)
 ところが、パブのオーナーの願いも空しく、その後バンクシーのスポークス・ウーマンから、あれは偽物だとの発表がありました。本物ならば一躍大金持ち(と言っても壁だから売れないか)になったところなんですが、残念でした。

 それにしても、本人からのお墨付きがあるとなしで変わってくるとしたら、アートの価値って一体何なんだろうと考えてしまいます。
 
 今、ナショナル・ギャラリーの別館で面白い展覧会が開かれています。
 《Close Examination : Fakes, Mistakes and Discoveries》と名付けられたこの展覧会、名前の通り、贋作を中心に展示されている、ちょっと変わった催しなのです。



 これまで色んなところで贋作の話題には事欠きませんが、実際に目の前で見てみると、経年変化によるクラックとかまで実に巧妙に描き込まれていて驚いてしまいます。
 ただ、これを見破る科学的技術の進歩にもめざましいものがあって、贋作と判断した理由とかをよく読んでみるとなるほどと、こちらにも感心します。

 飾られているのは厳密に言うと贋作(fakes)のみではなく、逆にこれまで贋作と思われていたものが、丁寧にクリーニングしてみたら下から異なる色が出現して、実は本物だった(discoveries)なんて作品もあります。
 もちろんその逆に本物だと思っていたのが実は偽物だった(mistakes)ってこともあるわけですが。
 ( )の中が今回の展覧会のタイトルになっているわけです。

 ここまで精密に本物に迫ることのできる技術を持つ画家が大成しなかったことを思うとちょっと悲しい気もします。
 そう言えば、ミュージシャンだって完璧な技術を持っている人が必ずしも人を感動させるわけでもありませんね。要はオリジナリティとハートかな。