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ロンドンから徒然に

山口小夜子

2007-08-20 | 日常
 今でこそ色んな分野で国際的に活躍する日本人は珍しくなくなっていますが、これが70年代ともなると、ごくごく限られた人ばかりで、それも固い学問やアートなど、一般の人からは少し離れた世界での話でした。
 しかもこれらはいわば人間の内面の分野であって、体格や外見などで手足の長い欧米人に太刀打ちできるなどとは本気で思っていなかったはずです。したがってスポーツにしろ、映画俳優にしろ、モデルにしろ、世界進出なんておそらく夢のまた夢でした。

 そこにひょこんと(!)現れたのが山口小夜子さんでした。それこそ欧米人に比べても引けを取らない身長(確か170cm?当時としては高いのでは)に、個性的なあの黒髪のおかっぱ頭。この東洋の神秘的なミューズにインスパイアされたのか、殆どの有名デザイナーが、パリ・コレクションやニューヨーク・コレクションで彼女をモデルとして採用しました。
 77年には米ニューズウィーク誌で『世界の6人のトップモデル』に選出され、有名なロンドン・アデルー社製作の“SAYOKOマネキン”が世界のショー・ウィンドウを飾ったほどです。

 その後も寺山修司の舞台に出演したり、勅使河原三郎や磨赤児とのコラボでコンテンポラリー・ダンスの世界に進出したり、フランス・リヨン国立歌劇場でのオペラ『三人姉妹』では衣装デザインまで手がけたり、と多方面で活躍しました(ちなみにこの作品は98年度フランス批評家協会最優秀作品を受賞しています)
 このようにずっと、変に力の入ることなく自然に、僕のイメージで言うと“飄々と”日本のカルチャーに関わって来た感があります。

 その山口小夜子さんが14日に急性肺炎で亡くなったとの記事を、さっき夕刊で見つけました。まだ57歳でした。もっともっと色んな分野での颯爽とした姿を見たかったです。