植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

安物買いでも なかにはお宝がある

2023年12月02日 | 篆刻
安物買いの銭失い、と言います。例えば100均などで買ったものは、あまり役に立たないかすぐ壊れてしまう、という印象があって、多少高くてもちゃんとして長持ちする方が、結局はお買い得になる、といった意味になりましょうか。

ワタシは、印材集めを初めて4年になります。ほぼ100%がヤフオクで落札したもので、その半数近くは使用済み中古品(刻あり)であります。中でも10点以上まとめて出品されるのは、書道家さんや篆刻家さんが実際に落款用などに使用していて、物故された後遺族が処分する、そのために骨董品などの買い取り業者さんやヤフオクに出品するというパターンではなかろうかと思います。他にも廃業した書道店・骨董品コレクターさんなどからも出てくるようですが。

石印材の場合は腐ったり風化するのは心配ない、印面などを彫ったものでもサンドペーパーで磨り潰せば、新品同様に使えます。練習用あるいは人様に彫って差し上げるのもそんな中古品で十分間に合うのです。つまり、印材集めは「消費」するのではなく、篆刻用の材料・在庫として実用に使えるので、捨て金にならない、更に言えばワタシが「やーめた」と思ってヤフオクに出せば、うまくすれば元値以上に売却できることもあるのです。

また、そうした十把ひとからげの中に、たまに素晴らしい逸品が紛れ込むことが経験的にわかっているのであります。ワタシのように、資金面では極めて制約が多い(早い話、趣味に使うお小遣いが乏しい)人間にとっては、1点物で数万円もするような銘品・希少石には手が出ないのです。そうした素晴らしい石が、3万円5万円といった値段で落札されるのを指をくわえて横眼で眺めながら、「まとめていくら」という出品物に入札が偏ることになります。

そこで、昨日届いたお宝(落札品)が2個届きました。
一つは昔の篆刻用の字典3冊であります。これの落札価格はなんとたったの千円!!。
1冊は書道篆刻をやってる人間ならだれでも知っている「伏見沖敬」先生編纂の「呉昌碩 篆刻字典」です。昭和60年発刊で定価3,200円とありました。中国篆刻界では1,2を争うような呉先生の使った篆書体を中心に集字したもので、大変有用な書籍であります。

緑色の本は上巻下巻のセットで、「古籀彙編(こちゅういへん)」、 甲骨文字・石鼓文などの古代文字を3万字以上掲載しているそうです。 中華民国63年(臺八版)、版は中華民国22年となっています。中国で「中華民国」が成立したのが1912年、初版は1934年であります。するとこの本は1975年に出版されていますから、台湾に中華民国が移ってから、台湾で印刷されたという事になります。(中華人民共和国は1949年に建国)定価360元と書かれているので、現台湾ドルで換算すると@4.7円として1692円になりますね。
古書販売価格は2千円位のようです。一般の人にはなんの用もない中国台湾の中国語本ですからそんなものでしょうが、ワタシのような篆刻家を目指すものにしたら大変貴重な資料となりえるのです。

そしてもう一つの落札品が「石印材まとめて46個」であります。出品者はその道の専門家で目利きの「天香楼」さんで、ワタシの数少ないフォロー先です。落札額は10,500円これに送料900円です。1個あたり248円なので、どう考えてもお買い得の取引でありました。
手前の7本には印面に彫があり「湖山」という作款があります。実は湖山という雅号は多いのです。だから姓がわからないと誰のものかは判然としません。一応篆刻家の端くれとしてみて、印影を見てその腕前はせいぜいワタシレベル(笑)かちょっと下。つまりコレクションとして保存するほどのものには見えません。

で、まとめた中で気になった印材がこれです。

基本的には寿山系の石だと思いますが、少なくとも1本千円以上するようないい石なのです。そして特に気になったのがこの二本の印材であります。
透明度が高い「半透明」ないし「半亜透明」の凍石であります。一目で「水晶凍」ではないか、と思いました。色合いがやや暗い、紐や薄意が施されていない、全体的に良く磨かれておらずスレや小さな傷もある、といったことから一級品とは見做されなかったのでしょう。しかし、子細に眺めれば右の方には「環凍」らしき白っぽい輪があります。これも水晶凍独特の斑紋で、これがはっきりして複数個あると5万円や10万円おかしくないほど珍重されるのです。

人間も石も同じですが、才能や素地が素晴らしく磨き甲斐のあるのと、そうでないものとがありますな。この石は、丁寧に丁寧に磨いてやれば、ほれぼれするような「水晶凍」として大変な価値が出るのでは、と密かに思う寒い朝であります。

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