植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

マイナーな印泥も魅力がある 魯庵印泥と銭塘印泥

2022年11月05日 | 篆刻
昨日に続いて印泥のお話であります。(印泥に興味の無い方はどうぞ遠慮なくスルーしてください)

印泥の歴史は長いのでここでは省略しますが、現代流通する印泥のルーツはあの呉昌碩先生が初代社長となり、王禔 (王福庵)さんなど当時の一流の篆刻家が創設した研究機関「西泠印社」にあります。※「れい」は「にすい」ではなく「さんずい」 です。

昨日「魯庵印泥」が届きました。世にも珍しい印泥で、西泠印社の創始者のひとりである印泥大師と呼ばれた「張魯庵」さんが創製した、という珍品であります。その後に登場した潜泉印泥の三代目職人 「李耘萍(リーウンピン)」女史と、西泠印社の元名誉副会長 「高式熊(コウシキウ)」さんがプロデュースした式熊系・耘萍系の印泥に圧されて、出回ることが少なかったのでしょう。大量生産出来なかった、販路に乗らなかった証拠に、その印泥箱や印合に、ロゴとなる魯庵の文字は見当たりません。

写真の様な説明書きと、高級印泥に共通する、上蓋がドーム型で深い釉瓷の印合が特徴で、恐らく2種を製造したようです。

それが、黄色い種類と朱の強い2種が揃ったのであります。右のものは等分して別容器に移し替えた後の状態です。
到着した赤色が強い印泥(写真右)は1.5両装(45g)ありました。表面に金箔が乗っているのも高級品ならではであります(既に混ぜてしまいました)。早速、指に少量を採って印面に付着させ押捺しましたが、均質で微細な印泥で鮮明に写りました。本物で間違いなかろう、しかも未使用で状態が良い美しい印泥でした。ワタシはそのうち19gを他の印泥に移して残りを、依頼人の印泥蒐集家さんに送る約束です。

さて、これとは別に2週間ほど前に落札した印泥が二つあります。これも珍しい印泥であります。印泥は現在は大きくは「西泠印社印泥」「上海西泠印社」があり、これ以外に「潜泉印泥」「石泉印泥」などが追随しています。その幾つかに前述の耘萍女子が製造に加わっているので、印泥篆刻の世界の重鎮であった高式熊さんが高品質と認めたものには「高式熊・式熊」が印泥の名前になり、耘萍女子が製造に携わった(ノウハウを提供した)場合「耘萍」の文字が冠されているのです。いわばトップブランドの証しとなります。


ゲットした印泥の一つは箱のラベルに「銭塘印泥」と隷書体で書かれ、小さく式熊の字もあります。説明書きには「式熊老先生が顧問」と記されていますが、耘萍さんの名前が無いので、あくまで高先生が単独で開発に関与したものだろうと思います。
説明書きには10種の製品ラインナップが書かれ、入手したのはその7番目「上品金箔印泥1両装」でありました。これは、通常もっとも安い部類(実用品)のはずです。しかし、今は何処にも売られておらずネットでもその名前はヒットしません。ある意味幻の印泥であります。売値は不明ですが、5千円~8千円位だったかも知れません。一番上・先に表示されている「手工特制純硃砂」印泥が一番高価となりますので、恐らく1両で4.5万円するような超高級品になります。

もう一つは王福庵の名を冠した「西泠印泥」の古いタイプの箱に入った「超級朱磦」未使用品1両装で、日本では華東貿易さんが取り扱っているだけのようです。H31年時点での売値は6,380 円と表示されていますが、現在は 在庫が無いと聞きました。 

実は、この二つの印泥の他に、使用感がある正体不明の箱無し半両装の印泥とパンダの絵のシールがついた安っぽい朱肉、更に大小10個余りの印材込みで、「まとめて4,590円」で落札したので、何の不満もありません。何年も前に亡くなった中国の書道愛好家さんが、実用として所有していたものが「遺品処分で」流れ流れて日本に渡り、今ワタシの手元にあるのだろう、勝手に想像しております。特級品でなくても、あるいはお値打ち品でなくても珍しいものは珍しいので、ありがたく保存し利用させてもらおうと思います。

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