植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

まずまず高級な石印材ならば手に入る 

2022年09月20日 | 篆刻
3日続きで同じお題だと、ややマンネリとなるので、本日は、最近手に入れた印材を軽く紹介します。篆刻を始めるといずれぶつかる「これは何と言う石だろうか」であります。

印材に用いる石は、99%が「ヨウロウ石」(パイロフィライト )で、ケイ酸塩鉱物 に分類されるそうであります。数多ある色とりどり、超高級で数十万円を軽く超えるような中国三寶の石から、アフリカ産の粗悪な切り石に至るまで、その成分には大差無いのです。

種類は、主に採石・採掘された山や地域、および色などの外見的な特徴をMIXして呼ばれます。地域で言えば「寿山系」「パリン(巴林)石 」「青田石系」「昌化石」などに大別されます。更に、例えば寿山山系については、寿山郷を中心にして高山凍連江(黄)杜陵坑善伯洞 月尾石などのブランド石に細分化されるています。

これに加えて見た目の色、模様、印象や透明度から、古来より数百の種類や呼び名で分類されているのです。

こうした石は地続きですから当然お互いに似通っている特徴があり、得てして区別は紛らわしいものです。産地・採掘坑などは、一旦市場に出回れば証拠もなく曖昧模糊としてきます。どこかの「国産シジミ」と一緒であります。田黄石などは、純金と同じ値が付くといわれましたが、そのために、イミテーションが溢れ、新田黄、似た材質の石、人造石が紛れ込み、もはやその道のプロでなければわからないようであります。

さて、そんな高級希少な逸品には縁がないワタシではありますが、一般に流通する「準」高級材や、時代物の古材を見る目だけは養っております。最も重要なポイントは天然石であること、この一点に尽きます。授業料は随分払いました。ワタシの仕事場には、使い途のない人造石がたくさん転がっているのです。

そこで、見つけたのが、ヤフオクで、わたしにとっては信頼に値する書道関連大手の美術商「天香楼」の出品物です。刻有りと未刻印が合わせて6個まとめてで、幸い最低落札価格1万円で入手できました。案外、いくつかまとまったものは見落とされるようです。この印材は、種類が特定しやすく「良材」が揃っていると見えました。

まず刻ありのうち、一つが箱入りで「美意延年」と刻まれた大型の丸石(自然石形)です。

片面のみ、蓮に水鳥「蓮池水禽図」の薄意がありました。透明度が高い石で「黒・赤・茶・黄土色・灰色」の層が雲のように流れる美材であります。これは「三色昌化石」と断じてよかろうと思います。これで鮮血のような赤が多く走れば「昌化鶏血石」として非常に高値になるでしょう。実はこれだけでも1万円以上の価値があると思えるのです。

次のものは「藤〇」さんと彫られた獅子紐の印で、月尾紫に色が似ていて微透明なので、恐らく寿山系の良材であろうと思います。雑石といわれる最近の一般的な寿山石は、石質が固く砂礫が含まれ彫りにくく、見た目も透明感がありません。(下の写真左)


未刻は4本。まず目を引くのが頂部が茶色、その下が微白の凍石、そしてその下の大部分が赤い層と微細な赤い点が入る美しい艶やかな印材でした。(写真上の右)これは、見てるだけで楽しいものであります。古来から賞玩されるような1級品のように、趣や温潤さ奥深さなどはやや落ちるかもしれませんが、色合いから見て、銘石「美人紅」「桃花紅」に酷似し秀麗さを感じさせる「佳石」であります。表面にやや微細なひび割れ・擦過傷が見えますが触らないでおこうと思います。これは、数万円の値段がついてもおかしくない逸品としておきましょう。


素晴らしい黄緑がかった「青田石」、頭頂部が丸くなって磨かれております。大きな丸石から切り落としたものでしょうか。青田石は中国では国石と定め、その産出量は抜きんでています。しかし品質はピンキリで、乱掘のため古い彫やすい良材は少ないと聞きます。これは「封門青」と言われ、青田石の中の最高品位にランクされる「青田県の封門鉱区」で産出され るものであります。均質で透明感があり刻するにも最適と、多くの篆刻家から愛用される石で、5千円から数万円で販売されるものです。どうして封門で採れたのが分かるか?いえいえこの石の持つ青みがかった黄色の美しさや透明感は間違いようがありません。


次に、龍の紐がある乳白色の微透明の石です。(写真左)淡い黄土色と白色の模様が流れていて「パリン石」、あるいは遼寧丹凍石かもしれません。比較的新しい石で、見た目に清く美しい石であります。

そして最後が獅子紐が施された黄色味を帯びた半透明の石であります(上の写真右)。これにはうっすらと赤い線も含まれ奥深さを感じる秀麗な石でありました。光り過ぎない穏やかな艶がかかり、なかなかの逸品です。これは中国三寶の一つ「芙蓉石」そのうちの黄芙蓉の一種であろうと思います。さほど古い石ではなさそうですが、見るほどに美しさを覚えます。これは古材ではないとしても1万円以上はするものです。

これら6本は、全て自然石の良材・佳石で、ワタシの見立てでは合計で軽く10万円ほどの価値があろうと思います。往々にして、見込み違いでまがい物やカスを引いて歯がみするワタシではありますが、こういうのでカバーしてお釣りが来ます(笑)。

ついでに、別のオークションで5千円で入手した真っ黒な石「楚石」も紹介しておきます。
ヨウロウ石で、黒石は稀なのです。楚石は、厳密には濃い緑色がかっていますが、黒が強く透明度も低いので真っ黒に見えます。人造石や別の黒石と判別しにくいと言われます。一応少し削って白紙に置くと緑がかって見えるとかなめると塩気を感じると言われますが、目下のところ判然としません。黒石には吊耿(ちょうこう)という別種がありますがこちらは漆黒ではなく模様があるようです。(見たことがありません) 

蛇足ながら、ワタシは、こうしたものを安く仕入れ販売する「転売ヤー」ではありません。篆刻家を志す人間として、備えるべき石印材の知識について学び、知見を得るのが主目的、ついでに手に取って愛玩するのであります。

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