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ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

シンプルな調理には考え方と意志が必要だ。そう教えてくれた「湯豆腐」

2015-01-04 14:11:28 | Weblog
 年末、大晦日を通り抜け、新しい年の扉を開けたわけですが、「今年は何かある」「今年こそは何かが起きる」と年頭に思い、結局、何も起きない1年を過ごすことになるのを毎年経験してしまう今日この頃、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 当ブログをお読みの皆様、明けましておめでとうございます。2015年(平成27年)の本年も当店「フランス料理 マチルダベイ」をよろしくお願い申し上げます。ついでと言ったらなんですが、当ブログ「マチルダベイシェフのブログ ~言葉の錬金術~」も心の何処かに留めていただければ幸いです。
 皆様におかれましては素敵な年末年始をお過ごしになられたのではないか、と思いますが、世の中には嫁子供がいるのに毎年、年末年始を一人で過ごしている孤独な男が居ると漏れ聞きました。悲しい男ですな、まったく・・・うぅぅぅ・・・私の事でございます・・・
 年末は忙しいため、家には仮眠とシャワーをしに帰るからか、私以外の家族はクリスマスすぎには実家へ行ってしまう、という「置いてきぼりプレイ」を敢行されてしまいます。
 しかし、それが何年か続いたからでしょうか?年末年始はむしろ一人が心地良い、いや、一人になりたい、そんな気持ちすら芽生えてきたのです。孤独の美学ってやつですな・・・うぅぅぅ・・・言い訳に聞こえますか?・・・
 31日の大晦日、お節の引き渡しをして大掃除を終わらせると夕方の5時半前でした。マネージャーに今年1年のお礼を言って別れると、私は急いで買い物に走りました。
 「大晦日は早めに閉めるんで早く買い物してください!」と言わんばかりの店員さんの冷たい視線を感じながら足早に店内を回り、買い物かごに品物を入れようとするのですが、残り物には福がない状態の品揃えで何を買えというのですか!(突然キレ)
 早く片付けたくてウズウズしている店員さんを横目に店内を見渡すと、とりあえず大量に残っていたのは「豆腐」でありました。豆腐を買い物かごに入れると「という事は・・・今日は湯豆腐・・・か、な。」と今晩のメニューが決まります。
 そうなると方向性が定まり買い物にも切れが出る、というものでしょう。湯豆腐と言えば「鱈」ですが、そのお店に置いてあった「塩鱈(うす塩)」はお世辞にも「状態が良い」とは言えず、鱈は却下。他の豆腐に合わせる淡白な食材を考えることにしたのです。
 鮮魚コーナーには期待が持てないと判断した私は小声で「鮮魚コーナーから鮮の字を外してもらいたいものですな・・・」と呟きながら精肉コーナーに移動しました。すると、豆腐に合わせる、いや、湯豆腐に入れても遜色がない食材を発見したのです。
 「鶏胸肉」。これしかないでしょう。鶏もも肉ではダメです。湯豆腐にした際、味が出すぎてしまいますし、脂臭さも目立ってしまう、そう考えた私は完全に「鍋ファシスト」と化していたのです。(「鍋ファシスト」とは、鍋物すべてを独断で決めて取り仕切る、鍋奉行の上を行く鍋独裁者の事です)
 「ありがとうございました!来年もよろしくお願いします!」会計を済ませた私に「やっと閉めれる」といった安堵感からか勢いよく、且つ、満面の笑顔で挨拶してくれた店員さんに「こちらこそよろしくお願いします」と返した私はすぐさま、最近開店したワイン専門店に向かいました。
 「湯豆腐の最初は、ソーヴィニョンブラン、その次に、ゲヴェルツトラミネール・・・そんな気分だ・・・」そんな事を勝手に決めながら他に客のいないワイン専門店で買い物をしたのですが、人けの少ない大晦日の夕方、女性店員一人しかいないワイン専門店のセキュリティーは大丈夫なのかな?、と余計な事を思った後、「山形だから大丈夫か」と訳の分からない安心感も持ちました、山形サイコー!(バカ)
 自宅に帰るとすぐに台所に行き、アルミの鍋に水を張り、流水で洗い切り目を入れた昆布をその中に入れました。土鍋をチョイスしなかったのは微妙な温度調節に不向きであるからです。
 水に入れた昆布を約30分放置している間に、鶏胸肉は斜め2センチにスライス、白菜は葉と茎に分けて葉は5センチにカット、茎は斜めにスライス、豆腐(木綿)は横に半分、縦に4つの8等分に切り準備をしておきます。
 水と昆布を入れた鍋を火にかけ、沸騰したら一度火を止めて出汁パック(カツオやサバの節が袋に入っていて煮出すタイプ)を入れ蓋をして10分待ち、出汁パックを取り出し準備は完了です。
 卓上コンロに鍋を乗せて火を付け一度軽く沸騰させた後、火力調整を超微力にし、鍋の出汁の温度を90度に設定しますが、これは結構難しいです。やっている途中、店までデジタル温度計を取りに行こうか本気で考えたほどですから。
 そして、鍋の中に静かに豆腐ふた切れ、鶏肉ふた切れ、白菜少々を入れて待ちます。その時観ていたテレビはひかりTV(光回線放送)でやっていた「家政婦のミタ」でしたが、家族がいない家でひとり、家族愛を描くドラマを観るのはビミョーです。かと言って、お笑い物は湯豆腐に合いません。
 最初のソーヴィニョンブラン2杯目を次いだ頃、豆腐がちょうど温まった頃合いであります。日本酒を飲んでいれば、湯豆腐に「削り節と生醤油」となるのでしょうが、飲んでいる物がワインですから塩で軽めに味を付けたいところです。しかし、だからと言って「ゲランドの塩」や「マルドンの塩」というのはいけません、塩がうますぎるからです。普通の食塩が豆腐の風味を邪魔せず、且つ、ストレートな塩味を補ってくれるのでそれでいいのです。過ぎたるは何とかって言ういじゃないですか。
 90度のお湯でゆっくり温めた豆腐は大豆の香りが際立ち、中のふんわりとした触感と布漉しした表面のちょっと固い部分の食感のコントラストも楽しめます。
 豆腐をふた切れ食べ終わる頃には鶏胸肉には絶妙な具合に火が通っています。これも沸騰させると固くなってしまいますから、やはり豆腐同様、90度の温度管理が必要なのです。
 そして、白菜は火が通っているのにシャキシャキとした食感が残っている、という美味しさになっています。
 
 これを4回、つまり、豆腐一丁分食べるとだいぶお腹も満たされ、あとはワインだけ飲む、という飲み専状態に突入です。

 鍋に残った出し汁は捨ててはいけません。これをザルで濾して取り置いておきます。

 ワイン2本目の半分まで来た頃、もうすぐ深夜12時、つまり、年越しとなるのですが、「ゆく年くる年」を観て凛とした気持ちで再び台所に立ち、お湯を沸かしながら先ほどの鍋も沸騰させ醤油で味付けします。もうひとつの鍋のお湯に蕎麦(乾麺)を入れて茹で上げ、かけそばとして食べれば無駄なく活用できるんですな。

 ん~、この「鶏胸肉と白菜の低温湯豆腐」イケるな!と誰もいない自宅で喜んでいる私は、確実に寂しい男ナンバーワンでした・・・

 今年は何かある!今年こそは何かが起きる!

 そう思い続けるのは、誰にも迷惑かけませんよね・・・迷惑かけませんよね!(連呼が迷惑)














今年最後かもしれないブログ記事には今年気になった事を載せよう

2014-12-31 13:13:07 | Weblog
 雪の降らない大晦日はクリープのないコーヒーのようなのだろうか、雪の降らない大晦日は砂糖を入れ忘れたお菓子のようなのだろうか、雪の降らない大晦日はあんこのないたい焼きのようなのだろうか、雪の降らない大晦日は涙の出ない悲しみのようなのだろうか、雪の降らない大晦日は、雪の降らない大晦日は・・・そんな雪の降らない大晦日の今日、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 毎年、この時期に「マチルダベイ特製お節」を作製、販売しているのですが、先ほど、ようやくその作業がすべて終了いたしました。(お引き取りはまだですが)
 「ワインに合うお節」というのを掲げてはや数年、毎年作っておりましたが、昨年からお重の数を一段のみにさせていただいてからだいぶ労働条件的に楽になりました。スミマセン!もう歳なんですよ!
 今年の12月は有難い事にクリスマス以降も満席の日が続いたためお節の仕込みに暗雲が立ち込めたのですが、本人が疑問に思うほど仕込がスムーズに進み、そして、怖いくらいに計画的に、いや、それほど計画的でもなかったのに計画的チックに事が進んだため、作業が終わってから「ドッキリカメラ」のプラカードを持った男性を探してしまったくらいでありました。(大げさ)
 そんな事がありましたので、当ブログの更新頻度は低下する一方で、しかも、東京研修の記事は途中で止まったきりになっておりますが、来年あたり一気にアップしたいと考えております・・・かなり手遅れですけどね・・・
 まぁ、それはさておき(さておくのかよ)、今年も一年いろんな事がありました。ゴーストライターだったり、リケジョだったり、号泣だったり、増税だったり、東京研修だったり(しつこい)、選挙だったり・・・そんな中でも今年もっとも、いや、それじゃ大げさですな。最近、私が気になったのは「シラフ男子」というニューカマーであります。(今までの前振りは何だったのか)
 今までも「草食男子」「弁当男子」「料理男子」など「~男子」を取り上げてきた当ブログですから、この「シラフ男子」を素通りする事はできません。今までの「草食」「弁当」「料理」らよりも手ごわそうな印象さえあるからです。
 なぜならこの「シラフ男子」、調べてみると、本当はお酒を飲めるのに「飲まない」事を選択しているというではありませんか!オ~、マイ、ブッダ!(一応、日本ですから)、飲み会が減るのも頷けますぜ。
 飲まない事を選択している理由として「居酒屋で苦いお酒を無理して飲むより、好きなコーラを飲んでから揚げを食べていた方が幸せ」「ぶっちゃけ、お酒よりジュースの方が好きだから」「すぐに顔が赤くなってそれを指摘される。恥ずかしいから飲みたくない」(ガウマガジンより引用)なのだそうです。
 女性や平成生まれの人たちは「何となく判る。しかもカワイイ理由で好感が持てる」となるのでしょうが、昭和生まれ、又は、ボーン・トゥ・ビー・日本酒、な方は「ナニ~!それでも男か!」となってしまいます。
 冷静なお考えを持たれている方は「シラフ男子もどうかと思うがアル中男子はもっと嫌」(ガウマガジンより引用)、という意見も持たれているようであります・・・耳が痛いですな・・・
 しかし、私は敢えて「シラフ男子」に警告したい!確かに、酒は苦く、美味しいと思えない時期があるかもしれないし、あっても仕方がないだろう。でもよく考えてください、コーラやジュースは糖分摂取過多になりますし、決して食事に合うとは思えません。出来れば、お茶で・・・お願いします。(そんな警告かよ)
 本来ならば「シラフ男子」に直接お会いしてお話ししたいところなのですが、私の周りには「シラフ男子」がいませんし、会って話す可能性はゼロに近いでしょう。という事で、いつもの会話シュミレーションをしてみましょうかね。
 

「いや~、あなたが噂のシラフ男子さんですか。」

「なんか、その言いかた、うれしくないですね。」

「あれ?そうです?シラフ次郎さん。」

「誰ですか?それ。」

「いやね、白洲次郎と掛けたんですがね、オヤジギャグでしたかねぇ。すみません、私、オヤジ男子なんで。」

「なんですか、オヤジ男子って・・・どんな男子なんですか。」

「本題に入りますが、シラフ男子さんはお酒を飲めるのに、飲まない事を選択している、と聞きましたが・・・」

「はい。無理に飲みすぎて気持ち悪くなったり、大騒ぎするのイヤなんですよね。」

「仮に・・・そんな事になっている大人を見たらどう思いますか?」

「サイテーだと思います!」

「・・・。  それは言い過ぎかと・・・思いますけど、ねぇ。」

「そんな事ないですよ。理解できません!」

「いやぁ、人間、もっと寛容な心が必要だと思いますよ。ベロンベロンでも気持ちはピュアですから。」

「ベロンベロンな人のどの辺がピュアなんですか!」

「ん~・・・頭?」

「それ、記憶無くしてるだけしょう!」


 年末、飲む機会がだいぶありました。年始も飲む機会がある事が予想されます。

 年々歳々、飲める量が減ってきたように思いますが、今でも気が付くとワイン2本ほど飲んでしまう事があります。

 2015年は1本で我慢できるように、なりたいものですが・・・いや、このまま突き進みます!(やけくそ)

 そして、本年も当ブログをお読みいただきましてありがとうございました。

 更新頻度がかなり落ちてしまいましたが、来年も続けようと思っておりますので、何となく時間に余裕のある方にお読みいただければ幸いであります。

 そして、来年も当店「フランス料理 マチルダベイ」、頑張って営業いたしますのでよろしくお願い申し上げます。

 







 因みに、来年は1月2日より営業いたしております。


 マチルダベイ   藤原














「うっとり」するような恋愛よりも、「うっとり」させる仕事の方が好きだ。それはいけない事なのか

2014-12-16 23:44:56 | Weblog
 身を切る寒さ、という言葉が自然と頭の中に浮かんでくるくらい冷え込みが身に沁みる深夜の街中は、凍ったアスファルトが街灯に照らされ淡く幻想的な光を放ち、静かに、そして、ゆっくりと時間だけが過ぎ去ろうとしているように思えます。ツンと冷えた鼻と少しカクカクと震える口から出る白い息が徐々に消えていく様は、煙が暗闇に吸い込まれるかのようであり、寒さを助長する光景であるよな、とひとり、飲んだ帰りに思ってしまった今日この頃、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 「またシリーズ物を書くのが飽きたんですね・・・」とお思いになられる方もいらっしゃるのではないか、と勝手に推測しているのですが、前回まで書いていた研修報告記事(ただの飲み食べ報告とも言われています)「秋の名残に吹かれて街を歩き、そして、何かを感じる」は、今回はお休みいたしまして普通記事にさせていただきます。
 前回は「楽記」さんへ伺ったところまででしたが、その後もだいぶ飲んだため、あと3回ほど引っぱれる、と思いながらこの記事を書いているわけです。
 「秋の名残を~其の1」をアップしたところ、「新橋鶴八 分店」さんの親方「五十嵐さん」からお電話を頂戴し、お礼の言葉を頂いたそうです。(マネージャーが電話に出たのでまた聞きです・・・)わざわざありがとうございました。また東京に行く事がありましたら寄らせていただきますので、その時はよろしくお願いいたします。
 さて、12月も後半に入り、当店も忙しくさせていただきましたのでブログアップが出来ませんでしたが、今年は団体のご予約様が多いように思われます。
 忘年会のシーズンですので「珍しい話ではない」と思われるかも知れませんが、忘年会に当店を選ぶ、というのは忘年会メンバーの賛成多数を獲得しないと成立しない話だと思うのです。
 仮に、メンバーの誰かが「私、もっと気軽な店がいいわ!」と主張した場合、当店での忘年会はお流れになりますし、「金額的な問題もあるよな・・・」とメンバーの誰かがボソッと呟いたら確実に流れます。
 「ホニャララノミクス」が地方に波及していない、と囁かれる昨今ですから尚更なのですが、それでも当店を選んでくださる事には頭が下がる思いであります。
 因みに、当店は10名様以上のご予約で貸切りとさせていただきますので、ある程度の団体様でもごゆっくり楽しんでいただけます、と思います・・・他に誰も入れませんからね。
 更に因みにですけど、今年も「マチルダベイ特製お節」の販売をいたしますので、もし気になられた方は一度お問い合わせの上、お考えになってください。完全に酒のつまみの詰め合わせです。
 と、ここまでは一応、年末ですから宣伝させていただきまして、ここからが本題です。(長いよ)

 あと少しで12月最大にして最高に盛り上がるであろうイベント「クリスマス」に突入いたしますが、クリスマスがキリストの降誕を祝う祭り、をどれだけの方が意識しているのでしょうか。因みに、私はそれどころではありませんから意識するとかそういう問題ではなくなります、そのまま天に召したいくらいですよ・・・
 大きな建物がライトアップされたり、街中にイルミネーションが灯り、それを見つめるカップルが「うっとり」している姿は、それはそれで冬の風物詩的光景でいいのですが、ふと自分の事を思ってみるとそのような思い出が無い事に気づかされます。
 だからと言って「くやしい」とか「羨ましい」とかいう想いがあるわけではないのですが、逆に「うっとり」した事がないから「うっとり」させる仕事が合ってるのかな、と、だいぶポジティブに考える様にしています。
 レストランの仕事は、クリスマスを無事に終了させて1年の仕事が終わる、的なところがありますから、クリスマス付近に来店なさった方々を確実に「うっとり」させなければならないのです。
 「うっとりする」気持ちは一度味わってしまうと何度も味わいたくなるドラッグのようなもの。「うっとり」させなければならない人間(この場合、レストラン従事者)が「うっとりしたい」衝動に駆られるのはご法度であります。
 
「じゃあ、料理出し終わったら、うっとりするような事をしてもいいですか?」

 ダメです。料理が出し終わっても最終段階の「デザート」が待っているではありませんか。

「じゃあ、デザートを出し終わったら・・・」

 ダメだ!最後に掃除が残っているだろ!「うっとり」したいと思う前に「ぐったり」するくらい仕事をしなさい!

「じゃあ・・・掃除が終わったら・・・」

 何言ってんだ!掃除が終わったら「お疲れ様」のワインを飲まなきゃならないだろ!「うっとり」する暇なんてないんだよ!

 今、やっと判りました・・・なんで当厨房で働こうとする人がいないか。

 「うっとり」出来ないからではないでしょうか。

 いい仕事をして違う意味で「うっとり」する、という楽しみはあるんですけどね。

 「うっとり」が嫌いな人、当厨房で働いてみませんか?(バカ)


















 
 

秋風の名残に吹かれて街を歩き、そして、何かを感じる    其の3

2014-12-03 23:02:16 | Weblog
   前回までのあらすじ

「“研修”という名の下、東京に来た我々は初日のお昼を「新橋 鶴八分店」さんでお世話になり、その後、私は当店お客様と共に日本橋三越で用事に付き合う事となった。全く買う気もないのにバーバリーショップでトレンチコートを眺めている自分に違和感を感じつつも時間だけは過ぎ、銀座で別れてから急いでホテルに戻りチェックインした私はマネージャーと共に「銀座7丁目ライオン」でビールを飲むのであった。もう日は沈み、昼とは違うざわめきが街に湧き上がる頃、食事の第2ラウンドは切って落とされるのであった。」


 その日の夕方、街はまだ温かさが残っており、冬に手が届いてそうな山形から着てきたコートをちょっとだけ恨めしく思ってしまう気分に苛まれます。そんな事を思いながら我々はタクシーで青山、正確に言うと「神宮前」を目指しました。
 青山通りの青山三丁目交差点を外苑西通り神宮前方面へ曲がり、「ワタリウム美術館」という所を目指します。そこから歩いてすぐの小道を曲がり突き当りに今回の夕食の目的地「楽記」はあるのです。
 よほど強い意志が無ければそこを選ばないのではないか、という立地で、我々山形から来た者はグーグルマップ無しでは到達できないマニアックなお店であります。
 漏れ聞く所によりますとこちらのオーナーは以前「グレープガンボ」という自由なスタイルのフレンチをワインを提供する有名なお店をやってらっしゃったそうであります。
 因みに、「グレープガンボ」さんで有名だったのは「香草の爆弾」という香菜(シャンツァイ。タイ名でパクチー)を使ったサラダであります。
 更に因みに、「グレープガンボ」さんで以前シェフだった方は、現在、銀座「マルディグラ」をやられております「和知シェフ」であります。数年前、「マルディグラ」さんにお邪魔した時、ちょっとだけお話しさせていただいた事があります・・・ホントに「因みに」な情報ですが。
 それはさておき(だったら書くな)、小道を曲がった先の突き当りにあるお店の右脇の壁に「楽記」とシンプルに記してあるだけなので判りづらいかも知れませんが、その文字がライトアップされると重みすら感じます。



 扉を開けて店に入ると手前にコンシェルジュ(と敢えて呼びたい)があり、左手奥にガラス張りのキッチンが広がっているのが見えます。女性スタッフに上階へ行くよう促され、二階に上がると「すみません、ジャズが好きですよね?」と突然質問したくなるような男性スタッフがお出迎えしてくれます。(その方がワインのセレクトもしてくれました。突然質問したくなる意味は各個人で考えてください)
 みんなが揃った頃、「楽記」さんのプロデューサーであり、写真家で中国、香港などの食や茶に精通していらっしゃる「菊地和男」さんが同席しました。今回、我々が来店する事を聞いて一緒に食事する事になったのです。
 厨房の料理人は元「福臨門海鮮酒家」出身で、それをプロデュースした中華の食に精通した写真家が同席、飲み物は全部ワイン・・・そんな上京で食事が始まろうとしている中、ジャズ好きそうな男性スタッフに近づいて携帯の充電をお願いした私は無礼者です・・・判っています、自分でも・・・ですので、途中まで画像がありません・・・文章だけでお許しください。

 まず最初は、スパークリングワインからです。スパークリングワインは確かニュージーランドの物だったと記憶しております。そして、始めに出て来た料理は・・・何と!「香草の爆弾」を中華にアレンジしたものでした。やはり、これは定番なのですね。
 そして、次なる料理は「焼き物」であります。「福臨門」のソレと同じでありながら値段は半分、という前置きを聞いていたので楽しみにしていました、「焼き物」
 「焼き物」は、「アヒル」「豚バラ肉」「焼豚」「鶏レバー」の4種類です。「アヒル」、つまり「ローストダック」は飴色に色付き、ほんのりとした甘さと鼻をくすぐる香辛料、そして、薄く儚い固さの皮が絶妙であります。「豚バラ肉」は皮付きを丁寧に焼いていてカリカリした皮の食感、ジューシーな肉が楽しめる一品であります。「焼豚」は中国お得意の不自然な赤色が綺麗で甘さと八角と思しき香りが堪りません。「鶏レバー」は表面は燻製されているような光沢がありますが、食べると中がネットリとしてレバーの火入れが最高である事を示しておりました。
 次に出て来たのは「青菜炒め」であります。アスパラが入っていたのは確認したのですが他の青菜の説明の時にジャズ好き男性スタッフとワインの話をしていたので聞きそびれてしまいました・・・無礼者ですよね・・・しかし、味は覚えております。野菜のシャキシャキした歯ごたえを残し、噛むと野菜の甘みを感じる、というのを計算して味付けされている炒め物・・・勉強になります。
 そして、メインであります「クエの清蒸」。長崎から仕入れた、と言われて「クエ」に対する驚きもさることながら、値段の心配もしてしまったのは私だけではないはずです、マネージャーもだったと思います、多分・・・いや、絶対。



 少し食べてますが、これが画像です。ここに来て画像がある、という事はお察しの通り、携帯の充電が完了したわけですな、無礼者ですよ、私は・・・
 勿論、これには白いご飯が必須です。汁を掛けて食べる醍醐味がまた場を盛り上げるわけです。
 食事後半になるとワインはニューワールドが中心になり、ジャズ好きそうな男性スタッフはオーストラリアのワインを出してこられましたのでオーストラリアの話で盛り上がってしまいました、一応、住んでいましたからね。
 因みに、こちらのワインは全て自然派ワインであります。ご興味のある方は、是非、ご来店なされてみてください。グーグルマップは必須ですよ!
 最後に、「ハムユイ(漢字が捜せません。イギョを発酵、天日干ししたもの)の炒飯」と「炒麺(麺の種類は失念。炒麺というより汁を吸わせた麺のようだった)」を食べ、終了となりました。
 菊地和男さんのお話も興味深いもので、最後に店全体を案内していただき、色々と勉強させていただきました・・・というか、最後は「菊地和男を囲む会」みたいになっておりましたがね・・・

 もうどう考えても食べれないほど食べて、タクシーに乗り、次の目的であります「バー 保志」さんへと向かうのでした。

 因みに・・・ですが、「楽記」さんでは、7人でワインを8本以上開けたと記憶しております。3本目から数えるのをやめました・・・




 つづく













秋風の名残に吹かれて街を歩き、そして、何かを感じる    其の2

2014-12-02 23:05:18 | Weblog
   前回までのあらすじ

「お客様に呼ばれて東京に行く事になった我々は、初日のお昼を「新橋 鶴八分店」さんにお邪魔し食す事となった。「研修」と銘打っておきながらフレンチではない料理店が続く事に目を瞑り(つぶり)ながら淡々と時は過ぎて行くのであった。」

 
 ニュー新橋ビルを出ると、新橋駅前のSL広場を人々がせわしなく行き交い、ちょっとした「街の喧噪」を作り上げているのが判ります。そこに一歩踏み出しそこに同化すると「せわしなさ」は感じられなくなり、逆にその空間が心地良いとさえ思えてきます。
 周りと歩調を合わせて新橋駅を抜けて銀座側に渡った私は、当店のお客様の用事にお付き合いする事にしてタクシーを拾って日本橋三越に移動しました。
 因みに、マネージャー佐藤は「お土産を買うので・・・」と銀座方面へと消えていきました・・・何のお土産で、誰へのお土産なのか、なぜ銀座方面へ向かったのかは謎のままですが、まぁ、詮索するのは野暮ってもんですな。
 
 日本橋三越に到着した当店のお客様(以下「Hさん」とさせていただきます。ご夫婦での用事にお付き合いした形とお思いください)と私はタクシーを降り、三越内の「ダンヒル」ショップへと向かいました。



 用事は「ダンヒル」でのパンツのお直しでありましたが、その後、「バーバリー」ショップで新しいパンツ購入にも付き合う事となったのです。
 当日、私は何気に「バーバリー」のトレンチコートを着ていたので臆することなくショップに入れましたが、気が付くとコートのボタンが取れそうになっていて・・・そこはちょっと伏せる事にしました・・・
 


 今年はカシミヤのキャメルのコートが流行らしいですが、バーバリーのカシミヤ・・・オー・ルヴォワール・・・また今度、宝くじでも当たったらお願いします。

 その後、7階の「お得意様サロン」をいただき、日本橋三越を後にして銀座7丁目で「Hさんご夫婦」と別れ、銀座を眺めんがらひとり足早に新橋に向かったのは、まだホテルにチェックインしていない、というのもあったのですが、夕食前に待ち合わせでビアホール「銀座ライオン」に集まりビールを飲む、というのが夕方5時から予定されていた為です。その時の時刻「4時ちょい過ぎ」・・・大丈夫か、オレ・・・と思いながらも夕方の銀座をパチリと。


 
 すぐにチェックインし、預けておいた荷物を部屋に置き、急いでホテルラウンジ(小さ目)に行くとマネージャーが「何やってんの・・・」という顔をして待っておりました、すみません・・・いろいろ、押し押しだったものですから・・・
 急ぎ早に歩いて「銀座7丁目ライオン」に入店しまずはサッポロビールジョッキを頂いていると皆さん(Hさんご夫妻と東京在住画商Kさん)がお集まりになり、「白穂之香(しろほのか)」というビールを勧めてくれました。



 言われるままにホワイトビールと明記されている「白穂之香」を飲んでみると、泡の繊細さはシャンパンのようで、鼻から抜ける香りが白ワインに似たフルーティーさを感じる事が出来ます。絹のような印象を持つビール・・・一度ご賞味ください。(特に宣伝を頼まれたわけではありません)

 ビールを2杯飲んで店を出てタクシーで青山に向かったのは、その日の夕食所、中華料理、しかも、広東料理に特化して飲み物はワインしか置いていない、という噂の「楽記」さんへお邪魔するからであります。
 聞いた話では、調理される方は皆さん「福臨門海鮮酒家」出身の方で、特に焼き物が得意とされているのだそうで、今回、画商Kさんにお願いして予約していただいたのでした。(画商Kさんは料理全般の知識と見識が優れてらっしゃる方でありますが、特に中華がスゴイ)
 
 広東料理とワイン、どんな組み合わせになるのか、南青山三丁目交差点を外苑西通りへ行って小道を入ったところ、というちょっと判りづらい立地でありますが、楽しみは膨らんだのでした。

 そして、このシリーズもどれだけ続くのか、ちょっとだけ心配になりながらも、トゥー・ビー・コンティニュー・・・



  つづく



















秋風の名残に吹かれて街を歩き、そして、何かを感じる  其の1

2014-11-27 21:51:29 | Weblog
 それは、急に決まった事でした。
 11月の初め、東京からいらっしゃるお客様とカウンターでお話させていただいている時、「たまにこっち(東京)に来て一緒に食事しないか」と仰っていただき、その流れで11月半ば、正確に言うなら、11月17日(月)と18日(火)の両日、東京へ行く事となったのです。
 久々の研修、という事になるのですが、よく考えてみると前回、東京で「研修」という名の「食べ歩き」をしたのは確か、震災前ですから3年以上行っていない事になります。
 上京前日の夜は「オヤジ料理教室」でありましたから、睡眠時間の確保が難しいのではないか、と思われましたが、大掃除を済ませて帰宅すると深夜3時半くらいでしたので、約3時間くらいは眠れる計算になります・・・残りの睡眠時間は新幹線の為に取っときましょ。
 午前8時過ぎの新幹線に乗り、東京に着いたのは午前11時ちょっと前・・・ホテルに荷物を置き、初日の昼食場所に歩いて行けば約12時、タイムスケジュールはタイトなものになっていたのです。
 初日の昼食は「寿司」であります。新橋駅すぐ脇のビル「ニュー新橋ビル」の2階に「新橋 鶴八」さんという寿司の名店があるのですが、そこから独立された方が同じフロアで「新橋 鶴八分店」を開店されたそうで、その日のお昼は「分店」さんにお邪魔する事となりました。



 余談ですが、元々「鶴八」さんは神保町が本店で、そこからのれん分けを許されたのが「新橋 鶴八」さんです。現在は神保町の親方が引退なされて、違うお弟子さんが継いでらっしゃるそうです。
 今回「分店」さんを開店されるにあたって大親方の許可をもらい「鶴八」の名の許しをもらったそうです。因みに、東京若手寿司屋さんの筆頭と呼ばれている「寿司 しみず」さんも「新橋 鶴八」で修行なされたそうですよ。
 更に因みに、ですが、数年前、「分店」さんではない「新橋 鶴八」さんにもお邪魔した事があったのですが、親方の眼光が鋭く物凄い威圧感に度肝を抜かれました。噂では、江戸前ではないタネ(ネタ。例えば、サーモンやネギトロなど)の寿司を注文すると「親方から習った事がない」と言ってガリを大盛りで出されると漏れ聞きました。お邪魔した時はガリ大盛り攻撃はありませんでしたが、最後は色々お話しさせていただいて大変勉強になった事を思い出します。
 
 余談はそれくらいにして・・・「分店」さんにお邪魔して私とマネージャー佐藤、そして、当店のお客様3人の5人でカウンターに座ったのですが、聞けばその日のお昼は5人で貸切にしてくださったそうです・・・ご配慮、ありがとうございます。
 その話から昼食の始まりです。まずはビールを。そして、つまみに「酒盗」を出してくれました。鯛の内臓を使った自家製の酒盗だそうです。



 分店親方(五十嵐さん)に恐る恐る撮影の許可を聞いてみたところ「店出したばっかりなので広めてください。」と温かいお言葉を頂きました。ありがとうございます。
 そんなやり取りがあり瓶ビールが1本空いたところでお好みで注文です。まずは「平目」。



 「平目」は若干、寝かせた感じもありますが、歯ごたえもあり鼻から抜ける香りに臭みを全く感じません。シャリは固めと言えば固めなのですが、口の中でほろりと崩れるような握りで咀嚼すると米自体の甘さを感じる事が出来ます。
 平目の繊細な旨さ、少し抑え目なシャリの酸、そして、咀嚼後に来る米の甘み、この3つが重なり合う事で成立する美味しさが「寿司」なのだと思わされます。
 続いて「小肌」



 マネージャーは「みる貝」に手を出しておりました。



 「煮蛤」



 「穴子」



 「鮪の中巻」これは、鮪の赤身、中トロ、大トロをカクテルにして巻いてあります。



 最後に頼んだ「胡瓜巻」



 勿論、上記の物だけではなく、〆鯖、車海老、細魚(さより)などなどいただきましたが、どれも素晴らしい握りでございました。

 そして勿論、お昼から燗酒も頂戴いたしました。

 ここから研修の火蓋が切って落とされたのです・・・

 今回は画像が多いので文章は短めだと思うのですが、どうでしょうかね・・・



  つづく



11月の雨は冷たく寒い。しかしそれは、温かいものを囲め、という啓示なのかもしれない

2014-11-14 22:58:01 | Weblog
 11月に降る雨は雪や霙(みぞれ)にこそなれませんが、その冷たさは身体の芯を凍えさせるには十分すぎるほどで、身体ばかりか心の温もりさえも静かに奪っていきます。「November Rain(ノーヴェンバーレイン)」という曲の中でガンズアンドローゼスは「愛のローソクを灯し続けるのは難しいんだ、この冷たい11月の雨の中では・・・」と歌っておりましたが、これから年末に向けて、売り上げアップするのも難しいものですよ、とひとり呟いてしまう今日この頃、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 昼は小雨で空がどんよりし、夕方は暗くなるのが早く、しかも「寒い」とくると気分的に滅入ってしまうものです。その気分的にダウンな作用は目、肩、腰、に来るため、何か明るく、そして温かくなるものを人は欲してしまいます。
 凍えた身体、暗くなった心を優しく解きほぐし、内部から温める北斗神拳的なもの、というと「食事」というキーワードになってしまいますが、その「食事」でも先の条件を満たす食事はどう考えても「鍋」しかありません。
 先日、山形のフリーペーパー系コミュニティー新聞の特集では「読者が選んだ鍋ランキング」というのがありましたが、その順位と鍋内容は「これはブログネタにするしかないな」と思わせる思わせるものでありました。
 まずはその順位と鍋内容を見てみましょう。(ランキングはベスト20までありました)

・1位「キムチ鍋」 ・2位「寄せ鍋」 ・3位「すきやき」 ・4位「豆乳鍋」 ・5位「もつ鍋」 ・6位「トマト鍋」 ・7位「水炊鍋・ちゃんこ鍋」 

・9位「豚しゃぶ・たらちり鍋」 ・11位「アンコウ鍋」 ・12位「鶏団子鍋・ミルフィーユ鍋・チゲ鍋・おでん・きりたんぽ鍋」 


・18位「芋煮鍋」 ・19位「湯豆腐」 ・20位「ワイン鍋」

(やまがたコミュニティ新聞 2014 11月14日号より引用)

 
 このような結果です。(山形の読者が選んだ、という事ですので全国的ではないと思いますが・・・)
 私がこの結果を見てまず驚いたのは、1位の「キムチ鍋」の得票数が「208票」に対して、2位の「寄せ鍋」は「38票」でぶっちぎりの票差だった事であります。
 日韓関係の冷え込みを鍋で温めて・・・などという思惑があるのかは不明でありますが、そんなに「キムチ鍋」なんですね、山形の人は。
 しかし、こうしてランキングを見てみると新興鍋の割合が多く、中にはネーミングで判らないものもあります。例えば「ミルフィーユ鍋」や「ワイン鍋」は一瞬戸惑いさえ覚えてしまいます。
 「ミルフィーユ鍋」はよく考えると、白菜と肉を重ねたものを鍋にしているのではないか、と推測されますが、なぜに「ミルフィーユ」なのか?別に「重ね鍋」でもいいと思いますし、もっと趣があるように命名するのであれば博多帯の模様から取って「豚肉と白菜の博多鍋」というのもいいのではないでしょうか。
 因みに、「ミルフィーユ鍋」と同じ順位の「チゲ鍋」の「チゲ」は韓国語で「鍋」を意味しますから「鍋の鍋」で主食材や内容が判りません。「フラダンス」や「サルサソース」も意味が被っている仲間です、気を付けたいものですな。
 そして、18位の「芋煮鍋」。これは普通に山形の「芋煮」でしょうから、今更「鍋」扱いするのもいかがかと思われますが、仮に芋煮を「鍋物」に昇華させるのであれば、作り方を厳密にしなければなりません。
 例えばこうです。まず、皮付きの里芋の天地(両端)を落とし、六方に皮を剥きます。(上から見ると六角形になるように剥く事)その里芋を米のとぎ汁で茹でこぼしザルに切って水で晒します。牛骨と昆布、葱の青い部分を弱火に掛けて3時間煮出し、最後に追い鰹して濾したものをだし汁とします。濾しただし汁を鍋に移し、淡口醤油、塩で味を調えます。そこに先ほどの里芋を入れて弱火に30分ほど掛け、その後、5センチほどに切った長葱、穴をあけて手でちぎり湯通ししたこんにゃく、も鍋に加えます。
 里芋、こんにゃく、長葱に火が入ったら、すきやき用にスライスされた牛肉(山形牛ロース肉)を鍋の中でたなびかせて火を通し過ぎないタイミングで食し、ほどなく里芋なども食べる、という「鍋」はどうでしょうか。
 パンチが欲しい方は新潟の唐辛子味噌「かんずり」を少しだけ加える、という手もあります。これなら「芋煮鍋」として提案できるのではないでしょうか。
 「そんな面倒な事出来ません!鍋だったら気軽な方がいいんです!」そのような事を言われてしまう恐れもございますが、鍋や焼き肉などの複数同席形式の食事、略して「複同形式」の食事の場合、その「気軽さ」が落とし穴になる場合が少なくありません。
 当ブログでは何度となくその話題を取り上げてきました。その度に「複同形式」食事の難しさと厳密さを訴えてきたのです。その結果、昔一緒に飲んだ女性に「藤原さんのブログ見ましたけど、一緒に焼肉とか行くとめんどくさそうですね(笑)」と言われてしまいました。
 確かに私は「複同形式」の食事の場合、仕切ってしまう傾向があります、いや、仕切ります、完全に。しかしそれは、鍋でも焼肉でもベストな状態で食べてほしい、という願いと共に、「複同形式」食事を軽んじてはならない、というメッセージであります。
 中途半端に煮込まれてしまった牛肉スライスが放置されている「すきやき」、ガチガチに火が入り過ぎて旨味が抜けきってしまった鶏団子が浮いている「鶏団子鍋」、鮭の身が崩れてしまい散乱している「寄せ鍋」、タレものの後に焼いてしまったため焦げたタレが付着している「塩タン」、網に乗せるだけ乗せて話に夢中になり焦げている「カルビ」、こんな場面、許されるのでしょうか?私は許せません。火の入り過ぎた野菜は許しましょう、それはそれで甘みが出るのでそこを問題とはしません。しかし、主素材に関しては厳密に対処したいものです。
 
 そんなめんどくさい私ではありますが、「複同形式」食事では女性や同席者には調理させたりサーブさせたりしません。つまり私が全て仕切りますから同伴者はめんどくさくないはずです。

 ただ、問題があるとすれば、自分の分を調理できない、という事くらいでしょうか。

 しかし、それはそれでいいんです。

 全て終わってから飲みに行けばいいんですから。

 そうなると・・・仕事ですな・・・

 確か、この終わり方、芋煮会の話の時もそうだった様な・・・

 ん~、複同形式の場合は仕方がないでしょうな。

 譲れないんですからね。






























日仏の飲み物とBGMの違いは女性の気持ちの違いでもある

2014-11-13 23:13:08 | Weblog
 寒さが増し、気持ち的に初降雪の準備が出来てくると「秋」という言葉は完全に忘れ去ってしまい、気持ちも、そして、行動さえも「冬」になってしまいます。今まで冷たい飲み物を飲んでいた人は温かい飲み物を飲むようになり、食卓には鍋の登場頻度が高くなり、孤独に苛まれた人は熱燗を頼む・・・そんな今日この頃、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 心の中からどこか上擦って(うわずって)いた「秋」が去ってしまい、代わりに寒さを携えた白き哀愁の「冬」がやって来ると頭の中でこんなフレーズが浮かんできます。

「あなた変わりはないですか。日ごと寒さがつのります・・・」

 そうなると、燗酒が欲しくなる、というものですが、なぜ、燗酒(熱燗)と演歌はワンセットになり、そして、それが揃い、そんな状況に身を置いてしまうと人は遠い目をしてしまうのでしょうか。(しない人もいますが、そういう人は相当酔っ払っている、という事で)
 そして、「燗酒」「演歌」にプラスして「煮込み」も登場してしまうと「アイキャントストップ・ザ・ロンリネス」な状況は一層増して、人は過去の話をしだしてしまうのです、危険ですな。
 それは決して「燗酒」のせいではなく、聴覚的サブリミナル効果と思われる「演歌」が原因ではないか、と常々思っていました。それは演歌の歌詞を読むと判る事です。
 では、先ほどの歌詞フレーズの続き、つまり、都はるみさんの「北の宿から」の歌詞を読み、そこから何が見えるか考えてみましょう。


       「北の宿から」


あなた変わりはないですか

日ごと寒さがつのります

着てはもらえぬセーターを

寒さこらえて編んでます

女ごころの 未練でしょう

あなた恋しい 北の宿

(歌ネットより引用)


 歌詞の1番だけでも悲哀が押し寄せてきますが、2番の歌い出しは「吹雪まじりに汽車の音、すすり泣くよに聞こえます」、3番の歌い出しは「あなた死んでもいいですか、胸がしんしん泣いてます」と段階的に上がってくるのが判ります・・・阿久悠先生!流石ですな!
 この歌詞から考えるに、「恋に破れた女性がまだ未練が残る彼の為に、贈る事の出来ないセーターを傷心旅行先である東北地方の旅館で編んで想いを馳せいている」となるはずです。
 そんな歌詞をAマイナーと思しきメロディーに乗せて歌われ、燗酒のお代わりを聞かれ、目の前に煮込み(この場合、モツやスジ肉などが好ましい。一味唐辛子も添えていただきたいものです)が置かれてしまうとハッピーな気持ちになれる人はいないでしょう。
 しかし、それが「ワイン」と「煮込み」、そして、「シャンソン」となると、摂取するものは似たようなものでも「悲哀」のようなものは感じられず、なんだか「あっけらかん」とした陽気さを感じ取る事が出来ます。
 仮にそれが同じ「冬」だとしても「ワイン」「煮込み」「シャンソン」の組み合わせは「アイキャントストップ・ザ・ロンリネス」な感情は湧き上がって来ません。
 それはやはり「シャンソン」に鍵があります。では、日本で最も知られているシャンソンと言っても過言ではない越路吹雪さんの「ろくでなし」の歌詞を読んでみましょう


      「ろくでなし」

古いこの酒場で たくさん飲んだから

古い思い出は ボヤケてきたらしい

私は恋人に捨てられてしまった

人がこの私をふだつきと云うから

ろくでなし ろくでなし なんてひどい アーウィ!

云いかた


(歌ネットより引用)

 何だかヤケになってますな。しかも酔っ払ってそうです、歌詞的に。
 この歌詞を読むと憎めない可愛い女性を連想する事が出来ますが、飲みすぎて問題を起こしてしまったために恋人に捨てられたのではないか、ということも考えられます。「北の宿から」とは全く対照的と言ってもいいでしょう。
 しかも、歌詞の3番では

コーヒーが湧いたら かげ口を聞かれて

それでもこの街が一番きれいだワ

とりあえず好きだけど お別れよサヨウナラ

鳥のさえずりに 送られて出てゆこう

(歌ネットより引用)

 と流浪癖まで披露しています。「この街にはいい男はもういない。次の街で見つけるか」という意気込みさえも感じられます。
 こんな歌詞の歌が流れ、それほど重くない赤ワインと煮込み(この場合、トリッパ、つまり、牛の第2胃であるハチノスの煮込みが好ましい。一緒にパンも頂きたい。白ワインでも可)を飲み食いしてしまうと、酔いに任せて踊ってしまうくらいの気持ちが出る、というものでしょう。

 「演歌的飲み」と「シャンソン的飲み」この対照的な状況の共通するところは、どちらも「男と別れた」という事柄が起点となっている、という事でしょう。
 どちらがいいか、は人それぞれだと思いますが、どうせなら「どちらの状況も選ぶ」というダブルチョイスでもいいのではないでしょうか。

 しんみり演歌で始まって、シャンソンでハジける、という「燗酒→ワイン」の暴挙的飲みコースも悪くありません。

「だったらこの主人公的立場である女性はどうしたらいいんですか!」

 そうですねぇ、とりあえず、涙こらえてセーターを編んでみて過去の男の事を思い出して大笑いし、そのセーターを切り刻んでからワイン飲みに出掛けてみてはどうでしょうか。

 因みに、只今、当店には「トリッパの煮込み」がございます。

 シャンソンは・・・マネージャーに、歌ってもらいましょうか。




















 
 

「新たな始まり」を考えると、またいつもの話になる。

2014-11-11 21:12:28 | Weblog
 夜中、帰宅する時に吐く息は白く煙り、空に浮かぶ月に息を吹きかけると雲が掛かっているような様子になり、それを見ながら鼻から空気を吸い込むと鼻の奥がツンとし、鼻の頭が冷たくなるのです。それが「初冬」の合図ではないかと思える今日この頃、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 今日は「11月11日」で「1並び」の日でありますが、ただ「1」が並んでいるだけで特別な日のように思えるのは、「13日の金曜日」に何か恐ろしい事が起こるような気がするのと同じであります。
 しかし、「1並び」の日は1年に1度しかありませんから「特別」だと思い込むのは致し方ないでしょう。いや、この際、「11月11日」を「特別な日」に認定し、そこから何か考えてみようではありませんか。(強引)
 「11月11日」は数字だけを表記すると「1111」で何かの始まりを示唆しているようでありますから、「新たな始まり」として考えてみましょうか。
 「新たな始まり」、と言われてもピンとくる人がいないのは判っています。なぜなら私も同じでありまして、これからどうやって話を引っぱっていこうか考えながらキーボードを叩いている状態なのであります。(行き当たりばったり)
 「新たな始まり、だったら新しい料理でも考えたらどうですか?」そのようにご提案くださる方も中にはいらっしゃるかも知れませんが、「新しい料理」、なかなか難しいものです。
 「新しい料理」の理想は、新たに作ろうと思って作った料理ではなく、主素材の的確な調理法を考え、それに付随する付け合せやソースなどのパーツを考え抜いて合わせたひと皿が「新しい料理」になった、というものではないでしょうか。
 「新しい料理」の為の斬新な組み合わせや「新しい料理」の為の奇抜な盛り付けなどは意味を成しません。「考え抜いて作ったらそうなってしまった」というのが自然で、且つ、理想的な「新しい料理」と言えるでしょう。
 しかも、その「新しい料理」は店の料理として定着し、お客様からも支持されなければなりません。「新しい料理」を1回作って満足し、それで終わり、などというのはただの思い付きでしかありません、気を付けたいものです。
 「そんな事どうでもいいから、新たな始まり、の話をしろ!」そのように急かされてしまうと、手を前で組み、そして、その組んだ手を上げて背伸びをしてほんのちょっとだけ気合いを入れてしまいますが、その通り、「新たな始まり」なんでしたな、考えるのは。
 「新たな始まり」はやはり「アルバイト募集」という「新たな始まり」なのではないでしょうかね。(またこのパターン)
 何気にアルバイトを募集しているのですが、広く募集していないからでしょうか、全くアルバイトをする人がいません。
 稀にですが、マネージャー佐藤が「ドンキー佐藤」氏としての仕事がある場合、店を休みにしなければならず、かといって、私がひとりで店を回す一人体制、話題の「ワンオペ」は厳しすぎます。
 そんなわけでゆるーくアルバイトを募集しているのですが、私が「新たな始まり」ではなく、アルバイトで入った人にとっての「新たな始まり」であります。
 では、ここでアルバイトをする人の為に当店で働いた場合のプラス面とマイナス面をまたまた考え(このネタは何回かしています)、当店でアルバイトするご提案をしたいと思います。

  ・プラス面

・料理やワインを覚える事が出来る。(これが仕事ですから覚えていただくしかありません。学生の方の場合、料理やワインを覚えておくと社会に出てからだいぶ役に立つかと思われます)

・まかないが食べれる。(当店には麺物以外認めない人が若干1名おりますが、新たに入った方のためにキチンとしたまかないを作りたいと思いますし、私もそういうまかないが食べたいのです、本当は)

・いろんな方と知り合いになれる。(フランス料理店にはいろんな方がご来店します。そんな方々とお知り合いになれるのは素晴らしい事だと思いませんか。稀に、遅い時間に来てカウンターで眠りこける人もおりますが、その場合、良い出会いありませんから記憶から消去してください)

・歓迎会をしてもらえる。(アルバイトでも歓迎会をします。しかも、何回も歓迎会をしますので逆にマイナス面かも知れません)

・料理やワインを味見できる。(希望すれば何でも味見できます。それも仕事のひとつですな)


 と、こんなところでしょうか。過去のアルバイトの方々は「フランス料理店ならではの緊張感」を口にしておりましたが、それは仕方のない事です。私だって微妙にプレッシャーを感じる事がありますから。
 では、マイナス面はどうでしょうか?あまり書きたくないところでありますが、全てをさらけ出した方が納得してアルバイトできるのではないでしょうか。


  ・マイナス面

・私とマネージャーの話について来れない。(時として、二人で話が盛り上がってしまい、置いてきぼりにする時があります。稀にお客様がいるカウンターでもそのような時がありますから反省しなければなりませんな)

・まかないが大盛りである。(マネージャーがかなり食べますのでそれに合わせて作ると大盛りになってしまいます。これはマイナス面でしょう)

・仕事が緊張する。(先ほども記しましたが、緊張感のある仕事です。その辺は諦めてください)

・オヤジギャグを聞かされる。(時としてマネージャーが炸裂させます。その場合、ウソでもいいから笑ってください。世渡り上手になるための訓練だと思えばプラス面ですよ)

・仕事で失敗した事を飲み会の時ネタにされてしまう。(これも仕方ないと思うのですが、失敗してなくても飲み会のネタにされてしまう可能性がありますから気を付けてください)

・賃金が安い。(最低賃金は守りますが、能力制になりますから期待しないでください)


 こんなところでしょうか。
 
 料理やワインの事は徐々に覚えれると思いますが、それよりも店に慣れる事の方が大事ではないでしょうかね。

 今回の募集はホールでのサービスの仕事を主としたものですが、厨房での仕事は・・・考えた方がいいですよ・・・

「それでも厨房の仕事がしたいです!」

 それくらいの意気込みがあるのであれば・・・前向きに検討します。

 ん~、そんな事を書いていたら、私もバイトしたくなってきました。

 いや、それをやったら死んでしまうな・・・でも、死を覚悟でバイトしてみる、っていうのも・・・

 やめときます。
























日本で「ハロウィン」というイベントが広がる背景には何かあるはずだ

2014-10-31 23:17:42 | Weblog
 あと数時間で11月に突入するのかと思うと今年のカウントダウンタイマーにスイッチが入るような気持ちになりますが、街中ではニヤけた顔のお化けかぼちゃのキャラクターが蔓延し、勢い、マントまで身に纏ってコスプレする人までいらっしゃると漏れ聞きました。そんな10月最後の今日、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 いつからこんなに「ハロウィン」という行事が日本に定着したのでしょうか?街を歩けば黒とオレンジで構成されているキャラクターを至る所で見る事が出来ます。
 たまに米映画(コメではありません)などで仮装した子供が「Trick or Treat(トリック・オア・トリート。いたずらかお菓子か)」と言いながら家々を回っているシーンを見掛けた事がありますが、ほとんどの場合、お菓子を貰っているようです。子供ですからね。
 アメリカでは根付いた行事でしょうから「今年もやって来ました」的なノリなんでしょうが、定着してきたとはいっても「ハロウィン発展途上国」の日本では仮装して家々を回るのは危険であります。
 チャイムが鳴ってドアを開けるとよく判らない格好をした子供が立っていて「イタズラかお菓子か」などを言われたらその行為自体イタズラなわけですから「早く家に帰りなさい」と言ってあげる事しかできません。まぁ、カワイイから許せますけどね。
 では、それほどかわいくない「大人」の場合はどうでしょう。大人の場合、仮装して家々を回ったら確実に通報されてしまうわけですから、「仮装パーティー」というイベントになるわけです。
 何に扮するかは各個人の思い入れがあるでしょうからその話は割愛させていただきますが、問題は、その仮装パーティーが年末年始、そして、年明けの恋愛イベントに結着するのではないか、という事であります。
 皆さん、よく考えてください、なぜここ最近、急に「ハロウィン」というイベントが定着したか、を。
 「ハロウィン」というイベントでかぼちゃを売り込むための「JA」さんの農業政策でない事は明らかです。では誰が、なぜに・・・私は製菓業界が一枚絡んでいると睨んでいます。
 かぼちゃのタルトやパンプキンパイなどがその時期売れるのは誰でも予想される事ですが、それが重要ではありません。「ハロウィン」で製菓業界、特に、チョコレート関連の企業が狙っているのはもっと長期的で、そして、日本に寄与する事を視野に入れたサイレントプロジェクトなのです!(お分かりだと思いますが、この話はフィクションで、しかも、私個人の考えがかなり入り込んでいます。その辺もご考慮していただきながらお読みください)
 「なぜ、ハロウィンにチョコレート関連企業?かぼちゃでしょ?」そのように疑問を抱き、そして、疑惑の眼差しでこの記事を読まれている方がほとんどだと思われますが、そんな誰にでもバレてしまうようなプロジェクトなら作戦指揮者は解任です。あくまでもバレずに、そして、静かにその作戦は遂行しなければなりません。
 最初のキーワードは「仮装パーティー」なのです。仮装パーティーというのは普段の自分とは違うキャラクターを演じなければならない為、意外と大胆になれる自己解放パーティーでもあるわけです。
 引っ込み事案な人でも、例えば「ドラキュラ」の格好をしてみたり「魔女」の格好をしてみたりすると最初は「恥ずかしい」と思うかも知れませんが、段々、その役にのめり込むものです。そこもチョコレート関連企業は計算に入れているはずです。
 
 「Aさん(男性・独身)」は友達に無理やり誘われた仮装パーティーで無理やり「スパイダーマン」の格好をさせられてしまいました。最初は恥ずかしく、壁にもたれながらマスクを口元まで上げてカクテルを飲んでいましたが、よく考えると自分は顔が見えないマスクマンなのだ、と気が付きます。
 容姿に自信がないわけではないが、イケメン、というほどでもない事にコンプレックスを持っていた「Aさん」は、マスクをかぶる事でそのコンプレックスが薄らいでいく事を覚え、そして、先ほどのカクテルの効果も効いてちょっとだけスパイダーマンのように床を這ってみました。すると、意外にウケるではないですか!
 それに気を良くした「Aさん」は手元から蜘蛛の糸を出すようなポーズで踊ってみる事にしました。中には「ナニあいつ?」などという人もいましたが顔が見えなければ別段気になりません。その踊りは奇妙でしたが仮装パーティーを盛り上げる要素としては合格点です。スパイダーマンの踊りにつられてみんなが踊り出すくらい盛り上がったのです。
 マスクをしているため暑くなりちょっと抜け出してカクテルを飲んでいると、向こうから、高山でつばの大きな黒いハットをかぶり、鷲鼻の付け鼻をした魔女の格好をした人が近づいてきました。

「スパイダーマンさん、さっきの踊り、最高だったわ。」

 この言葉がきっかけとなり「Bさん(女性・独身)」と一緒にカクテルを飲む事になり、「Bさん」と意気投合した「Aさん」は、アドレス交換をして次の週末、また会う約束をしたのです。
 
 「仮装パーティー」は出会いの場でもあるのです。それをチョコレート関連企業は調査済みです。しかし、ここまで一切チョコレートは出てきません。ここで作戦がバレるようでいけません、あくまでも「サイレントプロジェクト」なのですから・・・

 「Aさん(男性・独身)」と「Bさん(女性・独身)」が仮装パーティーで出会い、そして、何気に2週間に一度会って飲むような仲になって1ヵ月半がが経ったある日、「Aさん」は悩んでいました。「ハロウィン」から1ヵ月半が経った、という事は、もうそろそろ「クリスマス」という年末最大のイベントが待っているからです。
 「クリスマスに誘って断られたら最悪だよな・・・Bさん、他の人からも誘われてるんじゃないのかなぁ・・・」そんなネガティブな事を思ってしまう「Aさん」は確実に「Bさん」を好きになっていたのです。
 「クリスマス」まであと2週間、そう思うと締め付けられるような思いになってしまう「Aさん」は、覚悟を決めて「Bさん」にメールしてみました。

「クリスマスって、何してる?もしよかったら、オレと食事にでも行かない?」

 メールを打ってから帰ってくるまでの時間は裁判判決を待っているかのようです。気になる携帯をなるべく見ないようにしていた「Aさん」は仕事中も気になって仕方がありません。
 その日の夜、帰宅してからシャワーを浴び、何気に携帯を見るとメール着信の表示がありました。
 「やっっった!・・・いや、待てよ、断りの内容だったらどうする?ぬか喜びは後で辛いから、ここは、あくまでも冷静に。」そう自分に言い聞かせ、メールを開けてみると、こんなコメントが入っていたのです。

「もうちょっとでこっちから誘うとこでした(笑)クリスマス、楽しみにしてます」

 このメールのやり取りがきっかけとなり「Aさん(賛成・独身)」と「Bさん(女性・独身)」は付き合う事になり、クリスマスも楽しいひと時を共に過ごしたのです。

 「仮装パーティー」で出会い、「クリスマス」で付き合う、まるで映画のような流れ・・・ここまでチョコレート関連企業は考えていたのです。ここまで来るともうお分かりの方もいらっしゃるのではないか、と思われますが、続けましょう。

 クリスマスが過ぎ、「Aさん」と「Bさん」は共に初詣も済ませ、1月も楽しく時が過ぎて行きました。
 そして、2月に入ったある日「Bさん」は悩んでいました。2月に入った、という事は、年間行事前半最大の恋愛イベント「バレンタインデー」が近づいてきたからです。

 そうです!ここでやっとチョコレート関連企業の想いは成就されるのです。「ハロウィン」から苦節約4ヶ月、このようなカップルが誕生し、そして、増殖する事を考えて「ハロウィン」に投資していたのです。

 そして、バレンタインデー当日、「Bさん」はチョコレートを選びきれずに色んなチョコレートをたくさん買ってしまいました。

「はい、これ。バレンタインデーだから・・・悩みすぎて結局、全種類買っちゃった・・・」

 その言葉を聞いて「Aさん」はおもむろに「Bさん」を抱きしめてしまいました。

「オレ、チョコレート大好物だからうれしいよ・・・」

「うそ、前に、甘いもの嫌いだ、って言ってたじゃん。」

「じゃあ、今から好きになるよ。」

 そんなやり取りを陰で聞いていたチョコレート関連企業調査員は口元を緩ませて電話で報告しました。

「部長、今年も、ハロウィン作戦、成功です。」

「そうか・・・じゃあ、早く戻って来い。ウイスキーボンボンで乾杯だ・・・」

 という事で、「ハロウィン」のイベントを企画したり流行らせているのは「チョコレート関連企業」なんですな。

 強引ですか?えっ?日本に寄与する事って何かって?

 このふたりは将来結婚するかもしれないじゃないですか、こういう人たちが日本の宝なんですよ。

 

 書いていてこんな感じになりましたが、最初は「かぼちゃのお菓子」の話になる予定だったんですけどねぇ・・・