ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

西山ダム

2018-02-22 12:21:56 | 山梨県
2018年2月18日 西山ダム
 
西山ダムは山梨県南巨摩郡早川町奈良田の富士川水系早川上流部にある山梨県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により新たに電力9社が誕生し山梨県は東京電力の営業エリアとなりました。
東京電力は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、送電網末端部にあたる山梨県では東京電力だけでは電力需要を賄いきれず公営発電である県企業局による電源開発が併せて進められました。
新たに早川上流域での取水権を獲得した県企業局は、昭和30年代から電源開発を進め、奈良田第1~第3、および西山発電所を建設しました。
西山ダムは西山発電所の取水ダムとして1957年(昭和32年)に竣工し、ここで取水された水は西山発電所に送られ最大1万8800キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
早川沿いの県道37号線の奈良田トンネルを抜けると西山ダムに到着します。
県道沿いのダムサイトに大きな駐車場があります。
訪問時はダムの改修工事中で、ダム湖の水が抜かれていました。
 
クレストには3門のローラーゲート
右岸のゲートが補修中でべニア張りです。
 
右岸に西山発電所への取水口があります。
 
取水口をズームアップ。
 
改修工事のためダム湖の水は抜かれています。
かなり堆砂が進んでいますが発電用ダムということ排砂は行われていません。
 
天端は工事のため立ち入り禁止。
 
発電ダムらしいゲートピア。
 
排砂ゲート?も工事中。
 
ダム下から。
 
べニア張りのゲートはこれはこれででレアな眺め。
改修工事のため発電所は止められ、流入量はそのまま流下させています。
 
追記
西山ダムは洪水調節容量のない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに55万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0966 西山ダム(1250)
山梨県南巨摩郡早川町奈良田
富士川水系早川
40.6メートル
112.3メートル
2382千㎥/313千㎥
山梨県企業局
1957年
◎治水協定が締結されたダム

雨畑ダム

2018-02-22 10:59:09 | 山梨県
2018年2月18日 雨畑ダム
 
雨畑ダムは山梨県南巨摩郡早川町雨畑の富士川水系早川右支流雨畑川にある日本軽金属(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
1939年(昭和14年)に設立された日本軽金属は、静岡県清水と蒲原に世界最大規模のアルミ精錬工場の建設を進め、精錬用の電力を賄うために富士川に波木井・富士川第一・第二の各発電所を建設し合計11万キロワットの発電能力を有しました。
しかし富士川の流量は季節変動が大きく、渇水期には十分な発電を行うことができませんでした。
そこで水利権を持つ佐野川および早川に河川流量を平準化させる上部調整池として2基のダム建設を進め、柿元ダムに次いで1967年(昭和42年)に竣工したのが雨畑ダムです。
柿元ダム、雨畑ダムから富士川の渇水期に放流を行うことで下流の自社発電所の安定した運用が可能となりました。
また雨畑ダム建設に合わせて新たに角瀬発電所が建設され最大1万3000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
早川は糸魚川ー静岡構造線と中央構造線が重なる大崩落地帯のため、雨畑ダムでは堆砂が著しく総貯水容量に対する堆砂率は90%を越えています。このため貯水池上流で浸水被害が発生するとともに富士川河口沖の駿河湾の環境への悪影響も見られることから2020年(令和2年)に日本軽金属は雨畑ダムの堆砂について国交省の指導を受ける事態となりました。
この件により、従来発電用ダムでは取水に影響がない限り堆砂対策を積極的に講じてこなかった発電業者の姿勢に一石を投じることになっています。
 
県道37号線から雨畑川沿いの県道310号に入ると雨畑ダムに到着します。
ダム手前から左に下る枝道に入るとダム直下に飛び出します。
アーチダムをこのアングルで見上げるのはなかなか珍しいのではないでしょうか?
 
ダム下流が完全に凍結しスケートリンクのようです。
 
右岸の岸壁に空いた穴、仮排水路の跡でしょうか?
 
県道からダムへ向かう管理道路は立ち入り禁止。
県道をさらに進むとダムの上流面を遠望できます。
貯水池は堆砂の影響で濁っています。
 
左岸にローラーゲートが2門。
 
自家発電を持つことで、日本で唯一アルミ精錬を続けてきた日本軽金属ですが、施設の老朽化を理由に2014年(平成26年)にアルミ精錬から撤退しました。
富士川水系で発電した電力は引き続き静岡県内の自社・グループ工場で使用されています。
 
(追記)
雨畑ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0969 雨畑ダム(1249)
山梨県南巨摩郡早川町雨畑
富士川水系雨畑川
80.5メートル
147.6メートル
11000千㎥/11000千㎥
日本軽金属(株)
1967年
◎治水協定が締結されたダム

大倉川ダム(大倉川農地防災ダム)

2018-02-22 05:00:00 | 静岡県
2016年1月17日 大倉川ダム(大倉川農地防災ダム)
2018年2月17日
 
大倉川ダムは左岸が静岡県富士宮市半野、右岸は同市精進川の富士川水系芝川右支流大倉川にある静岡県経済産業部農地局が管理する農地防災目的のロックフィルダムです。
富士川支流の芝川流域は富士山の火山堆積物で形成された透水性が高い地質で、豪雨になると河川流量が急増し流域農耕地に多大な被害をもたらしてきました。
そこで農林省(現農水省)の補助を受けた静岡県の農地防災事業により1975年(昭和50年)に竣工したのが大倉川ダムです。
富士宮市内野地区で芝川に横手沢分流ゲートを設け支流の大倉川への分流水路を開設、洪水の際には芝川の水を大倉川に導水して大倉川ダムに貯留し、芝川および大倉川中下流域の洪水被害を防止する仕組みとなっています。
大倉川ダム自体は普段は貯留せず、流水は放流設備からそのまま流下させています。
 
国道139号線上井出インターから県道414号を西進、県道184号線を左折して半野集落で右に折れると大倉川ダムに到着します。
天端は車道になっており車の通行が可能です。交通量は多くなく写真のトラックでは仕事サボリと思われる男性
が昼寝をしています。
 
右岸に横越流式洪水吐と管理事務所があります。(2018年2月17日)
 
総貯水容量222万立米のうち洪水調節容量が205万立米を占めるため通常はダム湖はほぼ空っぽ。
(2018年2月17日)
 
これが常用洪水吐になり、流入量はそのまま流下させます。
(2018年2月17日)
 
天端からは富士山が望めます。
富士山が見えるダムとしては山梨県の上日川ダムと2大双璧になります。(2018年2月17日)
 
下流面。(2018年2月17日)
 
洪水吐導流部。(2018年2月17日)
 
非常用洪水吐となる右岸の横越流式洪水吐。
 
右岸上流から。(2018年2月17日)
 
ダム湖左岸は断層のようになっており、そんな断崖から小さな滝が流れ落ちています。
 
大倉川ダムの案内板。(2018年2月17日)
 
 
2年ぶりに再訪、今回は冬場れの晴天の下、冠雪した美しい富士山を愛でることができました。
 
大倉川ダムには農地防災容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により205万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1173 大倉川ダム(0195)
左岸 静岡県富士宮市半野
右岸      同市精進川
富士川水系大倉川
45メートル
152メートル
2220千㎥/2050千㎥
静岡県経済産業部農地局
1975年
◎治水協定が締結されたダム