おれは、土門拳になる。第2章 写真家増浦行仁公式ブログ

写真家<増浦行仁>のオフィシャルブログ。
志を追い続けた増浦が「夢を追う」こととは何かを本音で語る。

遷宮だより

2011年05月16日 | 日記--感じたことなど
4月は出雲大社、5月は伊勢神宮と続けて遷宮にまつわる撮影に行って来た。
出雲大社では、現在ご本殿大屋根の檜皮葺きの作業を行っている。中でも四尺皮(約120cm)を使用しているのは大社だけと聞き、その様子を撮影させていただいた。職人達の手によってリズミカルに一分の隙もなく敷き詰められていく檜皮。見事だ。凡そ60年毎の大修造だが、日本の伝統的な技術はしっかりと継承されている。
一流の職人技には無駄な動きは一切ない。それが仕上がりの美しさに繋がる。余談だが、僕の師匠ギィ・ブルダンもそうだった。無駄に時間をかけたり機材を多用したりせず、さっと撮影して終わり。それでも毎回度肝を抜くほど斬新な写真が生まれた。職人というより天才だったな。

伊勢神宮では、山田工作場の撮影に参加させていただいた。ここは式年遷宮の為の大掛かりな製材などの作業を専門とする施設で、一般には公開されることが無い。神宮司庁からいただいた資料によると、一回の式年遷宮で約1万本の用材が必要で、そこから8万以上の部材を取るとのこと。大切なご用材を無駄にしないためにも墨掛けは熟練者が行う。こちらも20年毎の遷宮で、技法は脈々と受け継がれている。遷宮は、そういった日本古来の技術を守り、伝えて行くという役目も担っているのだ。




3月11日の大震災は、図らずも日本人の本質を世界に知らしめることとなった。
未曾有の大災害の中でも、譲り合い、分け合い、助け合う。この美徳は、古の時代より日本人が培ってきたものだろう。弱肉強食の世界ではあり得ない。その根底は、森羅万象を神として敬い、恐れ、お祀りするという日本人の神観にあるのでは無いかと思っている。
遷宮にもそれらの思いが凝縮されている。出雲大社では、古くなって傷んだ箇所を修繕し再生する“よみがえり”の遷宮。伊勢神宮では、20年毎に一新する“常若”の遷宮。いずれも神への感謝を込めて社を美しく整え、国の平和と国民の幸福をお願いするのだ。
大震災から1日でも早く復興出来るように、僕も心を込めてお祈りし、写真を通して遷宮の真意を世界に伝えるべくお仕えしたい。


僕たちは火、水、風から電気を生み出した。いずれも古よりお祀りしてきた自然の力だ。火の神、水の神、風の神・・・原子力の神様はおられるのか・・・


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