おれは、土門拳になる。第2章 写真家増浦行仁公式ブログ

写真家<増浦行仁>のオフィシャルブログ。
志を追い続けた増浦が「夢を追う」こととは何かを本音で語る。

書道家を撮影

2016年08月18日 | 日記--感じたことなど
暦のうえでは秋とはいえ、関西は猛暑日が続いている。そんな中、僕は京都を訪れた。日本を代表する書道家の一人、杭迫柏樹先生を撮影するためだ。
京都の夏は特に暑い。今日もうだるような暑さだ。京都駅で待ち合せをし、そのまま先生のご自宅に向かった。

先生との出会いは3年前。ある方の依頼で先生の代表作である「霊機」を頂きたいとお願いに伺った時だ。初対面だし、書道家の大御所というと相当気難しいのではないかと緊張していたのだが、実際は正反対であった。とても気さくで穏やかな方だ。一流と呼ばれる人は皆頭が低い。先生はその典型だ。反して、書に対する思いはとても熱い。僕はそのギャップが凄く好きだ。
実は、「神の宮」も先生に書いて頂いた。この書のためにわざわざ出雲大社にお参りしインスピレーションを得られたそうだ。個展や写真集等でも使わせて頂いている。今や先生の書なくして「神の宮」はあり得ない。それほしっくりと嵌まっている。



先生は9月7日から、ご自身の集大成とも言える大きな個展を開催される。日頃何かとご無理をお願いしているので、お詫びと感謝の気持ちで、その個展用に撮影させて頂いたのだ。下記にご案内するのでご興味のある方は是非ご覧頂きたい。

「書 杭迫柏樹の世界 展」
開催日時:平成28年9月7日(水)〜11日(日)
     11:00〜17:00(最終日は16:00迄)
開催場所:京都文化博物館 5階・6階
     http://www.bunpaku.or.jp
*入場無料

齋藤洋介会長とひまわり

2016年08月04日 | 日記--感じたことなど
去る5月10日 ワールド通商株式会社の齋藤洋介会長がお亡くなりになった。訃報が届いたのはその日の夜。iPhoneに写し出された哀しい文字を見ながら、溢れる思いがこみ上げて来た。

2011年から3年間、僕はフランク・ミュラーの日本輸入総代理店であるワールド通商から支援を受けていた。契約期間が過ぎてからも、齋藤会長は何かと気にかけてくださり、親しくお付き合いさせて頂いた。会長室にも度々お邪魔し、大好きな時計のことをいろいろ教えて頂いた。その一時が本当に楽しかった。
そんな会長が深刻な病と知ったのは去年のことだった。かねてより、伊勢神宮と出雲大社への参拝をお誘いしていたのだが、ご体調が優れないとのことで延ばし延ばしになっていた。元気になったら必ず一緒にお参りしましょう、と約束をし、ご回復されるのをずっと待っていたのだ。今年に入ってからは、一層症状が重くなり、誰からのお見舞いもお断りになっていた。僕は、一目でもお会いしたいと思い、スタッフの方に無理をお願いし、特別にお時間を頂いた。僕は不覚にも足を骨折し松葉杖のお世話になっていたのだが、急遽大阪から東京に飛んだ。病の床でも会長は、変わらぬ優しい笑顔で僕を迎えてくださった。
それがお会いした最後となった。



お見舞いの後、病室に飾るお花の写真を額装し、いくつか送ることにした。病室で花見が出来るようにと桜の写真も数枚送った。それが写真家としての僕が出来る精一杯のことだった。会長は、花々の写真を大層喜ばれ、中でも「ひまわりが好きだ」と言われたそうだ。
7月5日に帝国ホテルで開かれた「齋藤洋介の功績を振り返る会」では、会長のご遺影の周りはひまわりの花で埋め尽くされていた。
会長には感謝の言葉以外は思い浮かばない。お世話になるばかりで何もご恩返しが出来なかった。せめて、伊勢神宮と出雲大社をご案内したかった。それが今も心残りだ。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

僕はこれからもフランク・ミュラーを身につけ、ライカで撮影に臨む。たとえ嫌みな奴と思われても・・・