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シマノ、デュラエースのチェーンは、ここがスゴイ!

2012-04-13 06:21:19 | シマノ製品調査
ディープネタシリーズ、ファイナル(多分)です。

今回は、あまり注目されない故に、チョット気になる「デュラエースのチェーンは何がスゴイのか?」です。

いやいや、HPを見てると、シマノのジレンマが感じられますね。
「もっと謳い文句を書きたい、でも書けない」なんて。

ここでは、相変わらず個人の妄想(勝手な推定)ばかりなので、その想いに触れることが出来たか分かりませんが、ご紹介します。



<デュラエースのチェーンは、なにがスゴイか?>
きっかけは、タイガーさんのブログでした。
走られる方なので、チェーンは消耗品化しており、その顛末をブログで紹介されています。
その中で、「デュラのチェーンが良いのでしょうが…」との件が、気になってしまいました。
一体、何が、何処が、どんな風に良いのでしょう?調べました。



まずは、チェーン業界の話からです。

今や、スプロケットを含めたチェーン伝達システムは、非常に高度な設計技術を要します。
私もチェーンについて勉強している一人ですが、例えば、最新情報は機械学会の論文からでないと得られない事もあります。それでも、もちろん、経験に基ずく計算式は載っていないので、苦労しています。

誰がチェーンの技術を握っているのか?
「椿本チエイン」です。図々しくも、自身のHPで自慢する程、国内のチェーン市場を独占しています。

ただ、椿本チエインの沿革を見ると、「昭和28年、自転車用チェーンから撤退」。
…あれ、シマノのチェーンって、椿本チエイン製じゃなかったの??

そんなバカな話はありません。シマノのデュラエースに使われている特許は、椿本チエインから出てるんですよ。


シマノの仕入れ先から調べましょう。大阪のチェーン屋…、ありました。
「和泉チエン」(@阪南市)
沿革には、「昭和46年、椿本チエインと業務提携」。
ビンゴ! 椿本チエインの手下だったようです。


つまり、シマノのHGチェーンは、「開発:椿本チエイン(シマノ)」「製造:和泉チエン」のようです。


こうなると、簡単。椿本チエインの技術が、デュラエースです。
つまり、椿本チエインの特許技術が、デュラエースのスゴイ所に置き換えられます。


やっと、技術の話に入れます。

チェーンは軽い方がいい。当たり前ですね。
軽くする為には、薄く、小さく、肉抜きなんかが行われ、結果、「高強度材を高応力で使う、材料強度ギリギリ設計」になります。

チェーンはその高い応力の為(10速もあるからチェーンが細い)鉄製で、「高強度綱=高炭素綱に熱処理」になります。ここに、機械設計者がよくハマる落とし穴が。

「熱処理高炭素綱+高応力=水素脆性」なんです。これは、水素が綱の中に入ってくる事で、破断強さ、伸び、絞りは著しく減少する現象です。つまり、チェーンが切れます。

この水素脆性を防ぐ為に、ベーキング処理がされます。
更に、椿本チエインが出した特許では、自己修復可能な処理膜となっています。
これが、HPでデュラエースの仕上として書かれている「ジンクアロイ」の一つの意味でしょう。

蛇足ですが、この水素脆性って、12Tとかの高強度ボルトでよく起こるんですよね。
日本のちゃんとしたボルト屋さんは、まともなベーキングが出来ますが、中国のボルトは本当に適当。そもそも、鉄の材料成分からして管理されていない。下手すりゃ、偽造してくる。
だから、絶対に中国性ボルトは使っちゃダメですよ。少なくとも今は。


話を戻します。

椿本チエインの特許を見てると、んな自己修復だけでなく、更に耐食性を上げた処理技術が出されています。
これは、昨今のチェーンオイルに含まれる、極圧剤に代表される添加剤が、この処理膜を攻撃して腐食させるからです。
皮肉にも、チェーンを保護する為の高機能オイルが、時にチェーンを切る原因ともなっていたなんて。

因みに、今の7900デュラエースが発売されたのが、2009年始め。この特許が出されたのが2010年。
…市場で何かあったんでしょうね。


まぁ、今の7900デュラエースも、まだ進化の途中の製品ですね。
次のデュラエースのチェーンは、私が調べきれなかった技術も満載して、出してくるのでしょう。憎きオイルの添加剤に勝つ為に。


オチは、アルテグラのチェーン。
「仕上:グレイ」
何だよ「グレイ」って? さては、耐食性処理をケチったな。
まぁ、肉抜きをあまりしてなく、応力レベルはデュラより低いんだろうけど…、椿本チエインさん、それでいいのかしら?


また今日も、長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

明日からは、いよいよ、ドグマにカンパEPSを組み付ける作業を紹介する予定です。(元気があれば)
ご期待を!


今日はここまで