今回は所用で、ドグマの組み立て中断です。
なので、こんな日は、ディープネタシリーズ、復活します。
先日、「添加剤がチェーンの表面処理ジンクアロイを攻撃して腐食させ、やがてチェーンを切る」とのことを書きました。こちら。
その時、「市場でなんかあったんでしょうね」と、勝手な推定で終わってしまってたので、もう少し調べてみました。
但し、今回のネタは、推定を通り越して、もはや「おとぎ話」的な創作に近い話です。気軽に、話半分で聞いてやってくださいな。
<極圧剤、市場で一体何が起こっているのか?>
まず、添加剤業界について。
添加剤、特に極圧剤を製造しているメーカーは、日本に数社しかないようです。
その中でも、個人的に気になったのが、DIC社(旧大日本インキ)。日本を代表する超大手のケミカルメーカーで、極圧剤では、世界シェアの20%を握ります。
その商品の一つが、硫黄系極圧剤「DAILUBU」シリーズ。詳細はこちら。
HPでの説明を抜粋すると、
<硫黄系と塩素系の違い>
DICの硫黄系石油添加剤は潤滑油の極圧剤として世界的でも有力なサプライヤーとなっております。
その極圧剤分野では、これまで広く用いられてきた塩素系極圧剤(塩素化パラフィン)が燃焼時のダイオキシン生成や生態濃縮性、発ガン性への懸念から、他の添加剤への置換が大規模に進んでいます。
塩素系極圧剤を置換する場合、高い極圧性能を有する硫黄系極圧剤が代替添加剤として主に採用されています。硫黄系極圧剤は金属表面に優れた潤滑性能を持つ金属皮膜を形成します。この金属被膜の生成温度、耐熱温度は塩素系極圧剤を含む他の極圧剤よりも広いため、代替処方設計を容易に進めることが出来ます。
硫黄系極圧剤は、廃棄時においても除去困難な燃焼ガスや有害な燃焼残を残さないため環境に対しても安全です。
とのこと。つまり、極圧剤の市場は、「塩素系」から「硫黄系」に変化しつつあるらしいです。
このDAILUBUを使った特許がでており(NTN。条件限定特許を狙ったもの)、その中に、DAILUBEの効果が書かれています。(NTNの特願2005-112181)
この特許を要約すると、以下です。(ざっくりですが)
「これまでのベアリングの中のグリスは、高粘度(10~16cSt@100℃)で回転抵抗がでかい。粘度を下げると油膜切れが起こる。DAILUBEの様な硫黄系添加剤を使うと表面に硫化鉄が生成され、その分子的な結合(S-S結合→C-S結合)の強さから、油膜保持が可能となり、グリスの低粘度化(4cSt以上)が可能となり、ベアリングの転がり抵抗を下げることができる」
いいですね。試験結果を見ると、耐久寿命(=油膜保持)が、1.7倍程度に伸びています。うーん、このグリスを使いたい!買いたい!
でもね、ここで気になる記述が。
「ただし、S-S結合においてイオウの個数が多くなるほど、その反応性が増す反面、イオウ系添加剤の有する腐食性が顕在化しやすくなる。つまり、一分子中のイオウ原子の個数が多すぎると耐摩耗性が発揮されず、かえって摩耗を促進する傾向がある。したがって、ポリスルフィド化合物に含まれるイオウ原子鎖のイオウの個数は、一分子あたり2個以上8個以下が適当である。」
つまり、「やりすぎると腐食する」です。これが、昨今、「塩素系から硫黄系に変わった極圧剤の怖さ」の正体なのかもしれません。(これは全く推定ですが)
ところで、このグリス、買えるのでしょうか?
当然ながら、この特許は出願されちゃってるので、NTN以外のメーカは、この組成を使えません。
でも、自動車用などを主とするNTNは、んな自転車用チェーンオイルなんて、ニッチな市場には参入しないでしょう。つまりNTNからは、この「BEST配合のチェーンオイル」は発売されないでしょう。
一方、世の中の極圧剤を配合したグリスメーカは、このベアリングメーカ大手のNTNが、BESTであろう配合してきた割合以外で販売するしかありません。先に書いた通り、BEST以外の硫黄量は、効果が少ないか、腐食を招きますがね。
…と書きつつも、現実的には、そのメーカが試験したりすると、このBEST配合なってしまって、知ってか知らずか、それを販売しちゃうメーカもあると思います。
もし、NTNが本気になって、「オイ、コラ!」と特許侵害を訴えれば(特許成立後に)、多分、販売停止にできるでしょう。
でも、現実は、そんな自転車チェーンオイルなんて、ニッチな市場に住むメーカに向かっては、お金と手間が掛かる割りに効果が少ないので、攻撃してこないもんです。
だから、世の中にこの手のグリスは存在するんでしょう、多分ね。
我々、ユーザーはどう考えるべきでしょうか?
特許侵害商品と知りつつ、いいものを手に入れるのか? 中国のミッキーマウスみたいに、特許侵害商品は買わないと決め込むか? いっそ、知らなかったことにするか?
難しい選択となるので、個人的には、この特許が成立しないことを願っています。(NTNさん、ごめんなさい)
まぁ、最終的には自分で作れば、問題ないんだけどね(個人使用は特許侵害外)。
って、できるのかな??
今日はここまで
なので、こんな日は、ディープネタシリーズ、復活します。
先日、「添加剤がチェーンの表面処理ジンクアロイを攻撃して腐食させ、やがてチェーンを切る」とのことを書きました。こちら。
その時、「市場でなんかあったんでしょうね」と、勝手な推定で終わってしまってたので、もう少し調べてみました。
但し、今回のネタは、推定を通り越して、もはや「おとぎ話」的な創作に近い話です。気軽に、話半分で聞いてやってくださいな。
<極圧剤、市場で一体何が起こっているのか?>
まず、添加剤業界について。
添加剤、特に極圧剤を製造しているメーカーは、日本に数社しかないようです。
その中でも、個人的に気になったのが、DIC社(旧大日本インキ)。日本を代表する超大手のケミカルメーカーで、極圧剤では、世界シェアの20%を握ります。
その商品の一つが、硫黄系極圧剤「DAILUBU」シリーズ。詳細はこちら。
HPでの説明を抜粋すると、
<硫黄系と塩素系の違い>
DICの硫黄系石油添加剤は潤滑油の極圧剤として世界的でも有力なサプライヤーとなっております。
その極圧剤分野では、これまで広く用いられてきた塩素系極圧剤(塩素化パラフィン)が燃焼時のダイオキシン生成や生態濃縮性、発ガン性への懸念から、他の添加剤への置換が大規模に進んでいます。
塩素系極圧剤を置換する場合、高い極圧性能を有する硫黄系極圧剤が代替添加剤として主に採用されています。硫黄系極圧剤は金属表面に優れた潤滑性能を持つ金属皮膜を形成します。この金属被膜の生成温度、耐熱温度は塩素系極圧剤を含む他の極圧剤よりも広いため、代替処方設計を容易に進めることが出来ます。
硫黄系極圧剤は、廃棄時においても除去困難な燃焼ガスや有害な燃焼残を残さないため環境に対しても安全です。
とのこと。つまり、極圧剤の市場は、「塩素系」から「硫黄系」に変化しつつあるらしいです。
このDAILUBUを使った特許がでており(NTN。条件限定特許を狙ったもの)、その中に、DAILUBEの効果が書かれています。(NTNの特願2005-112181)
この特許を要約すると、以下です。(ざっくりですが)
「これまでのベアリングの中のグリスは、高粘度(10~16cSt@100℃)で回転抵抗がでかい。粘度を下げると油膜切れが起こる。DAILUBEの様な硫黄系添加剤を使うと表面に硫化鉄が生成され、その分子的な結合(S-S結合→C-S結合)の強さから、油膜保持が可能となり、グリスの低粘度化(4cSt以上)が可能となり、ベアリングの転がり抵抗を下げることができる」
いいですね。試験結果を見ると、耐久寿命(=油膜保持)が、1.7倍程度に伸びています。うーん、このグリスを使いたい!買いたい!
でもね、ここで気になる記述が。
「ただし、S-S結合においてイオウの個数が多くなるほど、その反応性が増す反面、イオウ系添加剤の有する腐食性が顕在化しやすくなる。つまり、一分子中のイオウ原子の個数が多すぎると耐摩耗性が発揮されず、かえって摩耗を促進する傾向がある。したがって、ポリスルフィド化合物に含まれるイオウ原子鎖のイオウの個数は、一分子あたり2個以上8個以下が適当である。」
つまり、「やりすぎると腐食する」です。これが、昨今、「塩素系から硫黄系に変わった極圧剤の怖さ」の正体なのかもしれません。(これは全く推定ですが)
ところで、このグリス、買えるのでしょうか?
当然ながら、この特許は出願されちゃってるので、NTN以外のメーカは、この組成を使えません。
でも、自動車用などを主とするNTNは、んな自転車用チェーンオイルなんて、ニッチな市場には参入しないでしょう。つまりNTNからは、この「BEST配合のチェーンオイル」は発売されないでしょう。
一方、世の中の極圧剤を配合したグリスメーカは、このベアリングメーカ大手のNTNが、BESTであろう配合してきた割合以外で販売するしかありません。先に書いた通り、BEST以外の硫黄量は、効果が少ないか、腐食を招きますがね。
…と書きつつも、現実的には、そのメーカが試験したりすると、このBEST配合なってしまって、知ってか知らずか、それを販売しちゃうメーカもあると思います。
もし、NTNが本気になって、「オイ、コラ!」と特許侵害を訴えれば(特許成立後に)、多分、販売停止にできるでしょう。
でも、現実は、そんな自転車チェーンオイルなんて、ニッチな市場に住むメーカに向かっては、お金と手間が掛かる割りに効果が少ないので、攻撃してこないもんです。
だから、世の中にこの手のグリスは存在するんでしょう、多分ね。
我々、ユーザーはどう考えるべきでしょうか?
特許侵害商品と知りつつ、いいものを手に入れるのか? 中国のミッキーマウスみたいに、特許侵害商品は買わないと決め込むか? いっそ、知らなかったことにするか?
難しい選択となるので、個人的には、この特許が成立しないことを願っています。(NTNさん、ごめんなさい)
まぁ、最終的には自分で作れば、問題ないんだけどね(個人使用は特許侵害外)。
って、できるのかな??
今日はここまで
ディープ過ぎてチンプンカンプンですσ(^_^;)
先日、チェーンネタでリンクさせていただきましたが、私のお仲間さん達もMr.Hさんの記事を見て、「その問題になるチェーンオイルはどこのだろう?」と興味深々でした。
結局その辺にはびこっていると言う認識でよろしいのでしょうか?
我々レベルが気にする必要もないんでしょうかね?
市場のチェーンオイル件、成分分析に出さないと、何が入っているかサッパリ分からないでしょうね。
(ちなみに分析の相場は「20万円/1分析」ぐらいなので、個人レベルでは…)
結局、とどのつまりは、いろんな人のレポートを見て、「良かった」「悪かった」「チェーンが切れた」だのを参考にするしかないかも…。
ただ、(私も含め)デメリットばかりに注目しがちですが、むしろメリットの方が大きいし、不具合が起こる可能性よりも、製品寿命が先に来る方が多いと思いますよ。
経験的には、やはり大手メーカのものが安心かと。
逆に、攻めるなら、独自の技術論を持っているメーカかしら。
長くなりそうなので、このへんで。